そのうち応援回書かないと(使命)
「なんでてめぇがここにいる?」
来たのは俺が拒絶したやつ...北沢だった。
「えっと...それは...」
「質問を変えよう。なんで俺の家を知ってる?まさかストーカーじゃないだろうな?」
「それは知り合いに教えてもらったから。」
知り合い?高輪か?
でも高輪は北沢のこと知らなかったはず...じゃあ誰だ?
「それはいいからはぐみについて来て!」
「はぁ?何を言い出すんだ急に...」
「いいから...」
「お、おい!」
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「お、おい北沢!ちょっと待てって!」
「どうしたのカイくん?」
「どうしたもこうもないわ。いったいどこまで行くつもりだ?」
「ライブハウスだよ!」
どんだけ怒らせば気が済むんだ。
「カイくんはまだ知らないからはぐみが教えてあげるんだよ!」
「知らない?何が?」
「音楽の楽しさだよ!」
......意味が分からない。
音楽の楽しさも。それより...
「なんでお前はそんなに俺に構う?」
普通あそこまで拒絶すれば、大抵の人間は離れて行く。
過去にも北沢みたいな人間はいた。最初はどいつもこいつも馴れ馴れしく話しかけてくる。人の地雷を知らないで。そして地雷を踏めば誰も近づかない。
そんな反応当たり前だ。しかしこんな自分で言うのもあれだが、俺に話しかけたやつのほとんどは株上げ目的だった。
しかしこいつはどうだ?地雷を踏んではまた踏みに来る。いや、地雷に囲まれた俺を見つけに来る。
そして他のやつとは違う、北沢は株上げのために接しに来てるわけじゃなさそうだと。
「なんでだろう?ハロハピの一員だから?」
「なんで疑問形なんだよ。」
「はぐみも分からないからね!」
「自慢げに言うな。」
『ハロハピの一員』こんな言葉は所詮株上げにしか聞こえない。だけど北沢のこの言葉は素の意味なのかもしれない。
そしてあくまでも建前なのかもしれない。
「ったくアホくさいな。」
「あ、やっと笑ってくれた!」
「嘲笑というやつだ。」
こいつはいい意味でも悪い意味でもバカなのかもしれない。
だけどそんなバカは今まで一度も会ったことはない。
彼女のバカに付き合ってみるのも悪くないかもな。
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「......ハァ........ハァ...カイくんすごいね...息が切れないなんて...」
「肺活量なめんなよ。」
一回何十分も休まず吹いたことあるんだからこれぐらいなんてこともない。
「それでライブハウスで何すんだよ?」
「一緒に演奏するためだよ!」
一緒に演奏?正気か?
「悪いがそれは出来んな。」
「え〜なんで!?やろうよ!」
バカに付き合う俺も俺だが、ここまで抜けているとは思ってなかった。
「あのなぁ、どっかのバカが強引に連れてきたせいでトランペット家に置いて来たんだよ。」
「今バカって言ったね!」
いやそこ反応するのかよ...
「それでおまえベース持ってないし...まぁ貸し出し用があるか。だけどトランペットなんてある訳ないから演奏なんて出来ない。」
「そんな〜」
取りに行けばいい話だが、一回帰ってまた来るなんて面倒なことやりたくない。
「神戸様のトランペットはここに用意させていただきました。」
「............あんたたち誰?」
第一印象はハンターです。
でも女性だし、そもそも人間だから違うか。じゃあSP?北沢の?今どき肉屋の娘にSPなんているの?ていうかいつの時代にも肉屋にSPはないか。
「申し遅れました。私たちは弦巻家に仕える者です。」
弦巻ってあの金髪か。あいつお嬢様だったのかよ。雰囲気的にそうみえるけど。
「正体はわかった。だけどなんで弦巻家の人が俺ん家に入れるんだ?」
「............それでは失礼します。」
逃げたな。
別になんか盗まなきゃ良いんだけどさぁ...そもそも盗むところか置いていきそう。
「はぐみのベースもある!よかった〜」
「北沢は慣れてるのか......」
こんなの慣れたくない。怖くて眠れねぇよ。
「それでなんの曲やんの?俺あんたらのバンドのオリジナル知らないけど...」
「ならカバー曲にしよう!『シルエット』はどう?」
「それならいける。主旋律でいいんだな?」
「うん!じゃあ行くよ〜!」
北沢が「ワン、ツー」とカウントしてベースを弾き始める。
ベースとトランペットの演奏。明らかに異様な光景だ。そもそも楽器の種類が足りない。
だけどそんな演奏は自然と成り立っていて、それが演奏の意欲を注いでくれる。
(観客がいないのが残念だな。)
なんで観客を求めているのかは分からなかった。でも誰かに聞かせたい。今までの動画撮影とは全く違う感情がある。
そしてあっという間に曲が終わる。
「すっっっごく良かったよカイくん!」
「なぁ北沢。よければもう1曲やらないか?」
「っ!いいよ!何曲もやろうよ!」
「次はなにする?」
「『シュガーソングとビターステップ』はどう?」
「いいなそれ。吹きがいがある!」
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もう何曲やったか分からない。時間も結構経っていて、月島が「そろそろだよ。」と声を掛けてくれなければ永遠に続いていただろう。
流石の疲れから息が上がってしまい、快適なはずの室内は暑く、汗が少し滲んでいる。
北沢は少し紅潮してるようだ。多分自分もそう。頬を触れば少し温かいから。
しばらくは互いに顔を見合わせるだけで会話はなかった。