笑顔を育むトランペッター   作:スタプレ

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一気に投稿疲れたなり。

コロナでどこも行けないのが辛いです...


8話 そうか·····これが、

 

色んな声が聞こえるこの場所はすでに日は落ちていた。

そんな歓声ははっきり言って雑音。何1つ光ってない星空もそれのせいだと思えるぐらい。

 

そして漂うのはアルコール臭さと、暑ぐるしい熱気。ここは球場だ。

親が熱狂的なファンから私設応援団に入っており、小学生の俺もトランペットを吹かされている。

 

間違えれば親からの拳。下手ならば客のヤジが飛んでくる。

 

「おう、坊ちゃんよぉ!ラッパ下手くそちゃうか?関西好きじゃないんかボケ!」

 

好きなわけないじゃないか。強制的に連れてこられてんだから。

 

「おい快知!!ちゃんと吹かんか!今チャンスだろ!」

 

「ごめんなさい......」

 

無駄にガタイのいい親父の拳は凄く痛い。そんな暴力から常に怯えていた。

そして客のヤジに反応しちゃいけない。もっと酷い暴力が待っているからだ。

 

こんな楽しくない...いや、日々辛い日常を送っている俺に助けの手は伸びて来ない。

嫌なら来なきゃいい世界だ。当然のことだ。

 

そして両親が死んでもしばらく応援団に在籍させられていた。どうやら親父の遺言のせいらしい。

 

応援団が問題起こして解散するまではこのような生活を送っていた。

 

感情の麻痺からか、トランペットを触れても精神的な病状はなかった。

ただ『音楽』という言葉は恨んだ。何が楽しいんだ。そんなこと思えるのは頭がお花畑のやろうだけだ。

 

 

 

 

 

 

そしてそのお花畑に自分もなってしまったかもしれない。

 

この胸の高鳴りはまだおさまりそうにない。

 

「どう...だった?」

 

北沢が聞いてくる。北沢は演奏に慣れているはずなのに、彼女もまた今の感情を満喫している。

 

「分かんねぇ...」

 

正直自分でも何を思っているのか分かんない。けど、

 

「不思議とマイナスな感情が一切湧かない。むしろその逆。何曲もやるうちにこの高鳴りが止まりそうになくなる。そしてまたやりたくなる。これはなんだ?」

 

「よかったぁ...」

 

よかったって何も解決してないけど...

 

「それが楽しいってことだよ。」

 

「これが......楽しい...?」

 

「はぐみも上手く説明出来ないけど...でもね、カイくんがドキドキしてるならそれは楽しいってことだよ!」

 

音楽で楽しいなんて感情一切湧かないと勝手に思っていた。だけどその概念は1人の女子の手で覆されてしまった。

 

上手い下手関係なく、やりきった想いが水となり、そして砂漠化した心に『楽しい』という芽が出てきたんだ。

 

「なぁ北沢。お願いを1つしていいか?」

 

「なぁにカイくん?」

 

「また一緒に演奏...頼んでもいいか?」

 

「いいよ!一緒にやろ!」

 

「ありがとな。北沢はとても優しいやつだ。」

 

「えへへ。どういたしまして〜」

 

さぁ時間が過ぎているからさっさと退室しないとな。

 

「これから来て欲しいところがあるけどいいかな?」

 

「別にいいよ。」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ここがこころん家だよ!」

 

「やっぱでっけぇ家だなぁ。」

 

「そんなに驚いてない!?」

 

スタジオを出て、俺は北沢に連れられて弦巻家に来ている。

何も北沢が「仲間を紹介したい」って。どうせハロハピのメンバーだろと聞くと、北沢は「カイくんエスパーなの!?」と言われた。

エスパーだったら他にためになることをしてますよ。

 

そして弦巻家はいわゆる豪邸ってやつだが、そこまで驚かない。

神戸家も富豪の方だから、ある程度のお金持ちは知っている。

だから黒服を見て弦巻家の者と分かったら納得したというわけ。

ちなみに神戸家の本家はこれより少し小さいぐらい。

 

「こころーん!カイくん連れてきたよ!」

 

「トランペットさんが来たのね?」

 

「あのなぁ...一応神戸快知という名前があるんですが...」

 

どうやらハロハピのメンバーはこれで全員集合みたいだ。

 

「自己紹介するわね!私は弦巻こころ、ハロハピのボーカル担当よ!」

 

「よろしく弦巻。」

 

「私は瀬田薫だ。ギター担当。よろしく子猫ちゃん。」

 

「子猫?あとなんか役者くさいなあんた。」

 

「よく分かったね。私は演劇部所属なのさ。」キッ

 

「ふーん...」

つまり芝居と現実の区別がつかなくなってしまったって解釈でいいかな?

 

「私は松原花音です。ドラム担当です。よ、よろしく...」

 

「よろしく松原。ドラム担当とはちょっと意外だな。」

 

「よく言われます...」

 

「奥沢美咲です。よろしく〜」

 

「よろしく。一応このバンドにもまともそうな人間いるんだな。」

 

「最後に私はb...「知ってる」え〜!」

 

北沢の反応がおかしかったのでつい笑ってしまった。

 

「そういえばクマの着ぐるみに入っている人はいないのか?」

 

「カイくん何言ってるの?ミッシェルはミッシェルだよ?」

 

あれ?これ俺が変なこと言ってんの?

 

少し混乱してると、奥沢が手招きして呼んでいる。

 

「どうした?」

 

「実はミッシェルという着ぐるみは私がやっているんですけど、あの3人は理解してないので、私とミッシェルは別人ということになっています。」

 

「そういえば奥沢の担当楽器を言ってなかったのはそういうことか。あの3人とは北沢、弦巻、瀬田でいいんだな。」

 

「通称3バカって呼んでます。私イコールミッシェルになると少しややこしくなるので...」

 

「分かった。つまりサンタを信じる子供の相手みたいにすればええんだな?」

 

「話が早くて助かります〜」

 

こいつはこいつでとても苦労しているんだな...

 

それにしても北沢たちは着ぐるみという存在を知らないのか...めちゃくちゃ純粋なのか、ただのバカなのか...

 

「そうだわ!いいこと思いついた!」

 

「なんだいきなり大声だして。」

 

「次のライブは快知も出ましょうよ!」

 

ライブに、俺が、ハロハピに、混じって、出演。

うん何言ってんのこの娘?

 

「いいね〜やろうよ!」

 

「実にいいアイディアだ。」

 

北沢と瀬田は乗り気なんですが...

 

え?これって冗談じゃないの?

 

奥沢と松原もなんか言って...っと思ったら、松原は「ふえぇ...」って言って困っとるし、奥沢は手を額に当てて、なんか諦めた表情をしているし。

 

 

..................マジで言ってんのかこれ...

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