出会い。
「ただいまー。」「おかえり。」
俺の名前は双葉翔。高校生だ。部活は卓球部。趣味は漫画を読むこととゲーム。
「今日家に人が来るー。」
「わかった。準備しとくわ。」
こいつは双葉杏。一つ違いの俺の妹だ。アイドル活動していて、今から来るらしい人も同じ事務所の方だろう。こう考えると俺は役得かもしれない。
来客に備え座椅子と座布団を用意し、なんとなく片付けた。
ピンポーン。
「どうぞー。上がってー。お兄ちゃん鍵開けて。」
「はいはい。」
鍵を開けて扉を開けたその先には…
「お邪魔します。あなたが杏さんのお兄さんですか?」
「はい、杏はリビングにいますよー。」
「ありがとうございます。私は鷺沢と申します。お邪魔します…」
え?超可愛いんですが?今の少しの会話で好印象しかなかった。お淑やかな人だ。杏とは大違いだな…
「お、文香ー。じゃ、どれ読む?」
「んー。どうしましょうか…」
まあ、あの二人の邪魔をしちゃ悪いし、俺は部屋にいるとするか。そっちの方が二人にとって都合もいいだろう。
「お兄ちゃんはリビングいていいよー?せっかくアイドルが二人もいるんだから楽しみなよ。」
「え?じゃ、お言葉に甘えるわ。」
やったぜ。杏はともかく文香さんと同じ空間にいれるということが幸せでならない。この世界でナルトをあんなに美しく読める人は彼女しかいないと思う。
出会いから1時間ほどがたち、自分も最近買ってきた漫画も全部読んでしまった。部屋でスマブラでもしようかなーと思ったそのとき、
「すみません…、お手洗いはどこにありますか?」
「あ、そこの扉開けたとこです。」
「ありがとうございます…。」
びっくりしたー…。恋してないのに初恋の距離感ってこんなんなのかと切に思った。きっと文香さんは大学生だしそういうのは経験豊富なんだろうな。たぶん。
「お兄ちゃん、顔に色々出てるよ。」
「あ、マジ?」
顔に出てたか。文香さんいなくて良かったわ。俺のイメージが十面相になるところだった。
「じゃ、いい時間になってきたし今日はお開きにしようかー。」
「わかりました…。今日は、ありがとうございました。」
「はいはーい。」
一応の礼儀として玄関まではお見送りに行った。…まあ、文香さんだからっていうのはあるが。
「さようならー。」
「お邪魔しました。また、機会があれば遊びに参りますね。」
文香さんは屈託のない綺麗な笑顔を浮かべながらそう言うと、俺らの家を後にした。
「お兄ちゃん文香さんタイプでしょ。」
「そんなことないが…?!」
俺のタイプは年上で落ち着いた人だ。つまり図星だ。というか、文香さんを好きにならない訳がない。というか逆にあの人の悪いところをおしえてほしいくらいだ。
「そうなんでしょ…?」
「なんでそんなに悲しそうに言うんだよ。」
妹にも可愛いところはあるもんだな。いや、アイドルにスカウトされる時点でそりゃそうか。
「大丈夫。杏も好きだよ。」
「っ…!あ、今、も、って言ったね。やっぱり文香さんタイプなんじゃん。」
…やっぱり可愛くないやつだ。