「はじめようか…。」
杏がまるで世界の半分を拒否したあとの竜王みたいなオーラを見せた。いつもは中ボスにいじめられてるドライアドみたいな雰囲気なのに…。
『3 2 1 GO!』
何をしているか?スマブラだ。杏がめっちゃ練習したと言うので付き合ってやることにした。一応俺はうまい方だと思っている。少なくともエンジョイ勢には絶対負けない。俺はアイクラ、杏はジョーカーを使っている。
「あ、掴んじゃった。」
アイスクライマー、通称アイクラは掴みから10割コンボが確定してしまう。どういうことか?相手は死ぬ。
「もう一回!」「いいよ?」
GAME set!
「もう一回!」「どうぞ?」
げーむせっと!
ーーーーー
「なぜ勝てないんだ…!」
始めてから3時間が経過した。途中経過は45勝0敗だ。杏がどうしてそこまで俺に勝つことにこだわるのかはわからないが、多分何かしらあったんだろう。これだけだと杏がゲームが下手みたいになるが、こいつも相当うまい方だと思う。
「今日はもう遅いし終わりにしよう。」
「ぐぬぬ…。わかった…。」
悔しそうに下唇を噛みながら言うとスイッチを取り外して部屋へと戻っていった。
ーーーーー
「お兄ちゃん強すぎないか?」
杏は部屋に戻ると改めてそう感じた。お兄ちゃんがスマブラが上手なことは知ってたよ。しかしここまでとは…。杏は何一つお兄ちゃんに勝てないと言うのか…。いや?まて。
「実力で勝てないなら、対策を超すれば勝てるんじゃ。名案だ!」
楽するためならなんでもするぞー!
ーーーーー
今日暇だな。文香さん、じゃなくて文香家に呼ぶか。…敬語にしていいか今日聞こう…。
『今日空いてますか?』
『はい。空いてますが、どうかされましたか?』
『俺の家来ません?』
『!行きます。今からいいですか?』
『いいっすよー。』
文面だとけっこう敬語を許してくれるのになー。直接だと、『文香です!』って毎回言うからなー。可愛いからいいけど。
ピンポーン
「お邪魔しまーす。」
「どうぞ。」
文香さんがやってきた。座布団と飲み物は準備してあるし、大丈夫だろう。じゃ、単刀直入にいくか。
「何を致しましょうか…?」
「あ、まず言いたいことがあるんだけどさ。」
「……な、なんでしょうか?え…?」
すごい動揺してるんですけど。なんか変なこと言ったか?まだ話したいことがあるって言っただけだぞ?待って泣きそうになってるって…。やばいやばい。
「敬語に戻してもいいでしょうか。」
「…ふぇ?あ、いいですよ。」
「ありがとうございます。文香さんを呼び捨てにするのは少し抵抗あったんですよね。だからよかったでふ!?」
いきなり腕を引っ張られた。近い近い!
「翔くん?」「は、はい?」
「誤解するような言い方しないでください。」
「あ…。そういうことでしたか…。」
そういうことか。なんで泣きそうだったのかわかった。そりゃあ照れながら泣いた顔で俺に詰め寄るわけだ。
「ただいまー。って、え!?」
「「あ。」」
振り返ると杏が絶妙に気まずそうな表情で玄関に立っていた。
「これは海よりも深いわけが…。」
「杏はなんにもみていない!じゃ、ばいばい!」
「あんずー!!」
妹に引かれた挙げ句気を遣われた…。あ、ちなみにこの後事情を説明したのちスマブラをした。全勝だった。
文章を書いていると、杏も文香さんも声が聞こえてくるような感覚に陥ります。加えて、二人の声はあの声以外ないなーと思わされます。声優ってすごいですね。