たったひとつの譲れない正義   作:ルルル・ルル・ルールルールー

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第3話 海軍本部にて

 ガープさんの船で揺られること数日。まるで要塞のような大きな建物、海軍本部のある島、マリンフォードに到着した。

 マリンフォードには海軍本部以外にもたくさんの建物があり、見たこともない建築様式の建物がズラリと並ぶ様は壮観だ。ガープさんに聞いたところ、海兵さんの家族が暮らす住居やお店が軒を連ねる大きな町があるらしい。島の中だけが世界の全てだったわたしにとっては、まるで別世界に来たようでワクワクとした気持ちが抑えられない。

 

 この数日間、わたしは船の中で見習い海兵として、雑用から海賊との戦闘までいろいろとお手伝いをさせてもらった。わたしとしては、海賊と戦うのが一番楽しかったけど、掃除や洗濯、調理などの雑用もなかなかやりがいがあった。船の上での生活は何もかもが新しいことで満ちていて、毎日充実感を感じることができた。

 

 おかげで、船員のみんなとも仲良くなれたし、海軍に入隊してから役立ちそうなこともたくさん教えてもらえた。ガープさんは、最初に職場体験と言っていたけど、まさしくその通りの貴重な経験ができたと思う。

 

「ふぅ〜、疲れた疲れた」

 

 首や肩をぐるぐると回しながら真っ先に船から飛び降りるガープさん。普段のエネルギッシュな姿を散々見て来たので、疲れたなんて本当に思ってるのか疑わしい。見た目はおじいさんなのに、お年寄りっぽい所作がここまで似合わないのも変な感じだけど、もう慣れてしまった。

 

「ガープさん、この後は元帥さんのところに行くんですよね? 少し緊張しますね……」

 

 わたしもガープさんの後に続いて船を降りる。予定ではこの後、海軍の最高司令である元帥さんに任務完了の報告をして、そのままわたしの海軍入隊についての話をしてしまうとのこと。いきなり海軍のトップと会うのはさすがに緊張する。

 

「そんな緊張せんでも平気じゃろ。というか、お前さんも緊張するんじゃな」

 

 ガープさんはそう言うけど、緊張しなくて良いと言われて緊張が無くなるなんてことはない。悪魔の実の能力者になって、海賊を何人も殺した。殺し合いの場で過剰な緊張感を持つことはなくなったけど、それでも緊張が全くないわけではない。まして、こういう場面では緊張の種類が全然違う。偉い人と会うのは慣れていないので少し怖い。ガープさんも偉い人だけど、この人は特殊だと思う。

 

「大丈夫じゃ」

 

 元気付けるためかわからないけど、ガープさんがわたしの頭をその大きな手で撫でてくる。だけど、撫で方が乱雑で頭がぐわんぐわんして辛い。髪がぐちゃぐちゃになるし鬱陶しいので、ぺいっと手で払いのける。

 

「ぶわっはっはっはっ!! 緊張は解けたようじゃな!」

 

 乱れた髪を直しながら、恨みがましい目でガープさんを見ていると、ガープさんはそう言って笑う。

 たしかに、乱暴だけど緊張はどこかにいった気がする。でも、もう少しマシな緊張の解し方はなかったのだろうか。まぁ、ガープさんがこういう人だということは長い船旅で知ってた。優しいけど、不器用な人だ。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 海軍本部の建物に入り、長い廊下を歩いて元帥さんの部屋の前に辿り着くと、ガープさんはノックもせずにズカズカと部屋の中に入っていってしまった。わたしも後に続いて、躊躇いながらも部屋の中に足を踏み入れる。

 

「帰ったぞ! センゴク!」

 

「ノックくらいしろといつも言ってるだろう、このアホが!」

 

 部屋の中に入った瞬間、元帥さん──センゴクさんの怒声が聞こえてきて少し萎縮してしてまう。やっぱり怖い人なのだろうか。とはいえ、これはさすがにノックもせずに部屋に押し入ったガープさんが悪いと思う。

 

 この部屋はセンゴクさんの執務室なのか、書類が積み重なった机と椅子に、休憩用と思われるテーブルとソファ。中でも一番目を引くのはセンゴクさんの背後に額縁に入れて掲げられている『君臨する正義』の文字。ガープさんが言っていたことだけど、海軍将校のほとんどは自分だけの〝正義〟を掲げるらしい。わたしも今のうちに考えておけと言われたけど、今はまだ全く思い浮かばない。一応案はあったけど、『海賊を殺す正義』では印象が悪いからダメだって言われた。

 

 センゴクさんはアフロと呼ばれる髪型でメガネをかけ、あごひげを三つ編みにした特徴的は男性だった。椅子に座っているので身長は正確にはわからないけど、多分ガープさんと同じぐらい。体格はガープさんよりも細身だ。

 

 島の男の子たちが言っていたことだけど、チャンピオンだからアフロだとか、アフロだからチャンピオンだとか、アフロはさらなる野性を呼び覚ますとか……

 よくわからないけど、センゴクさんからはガープさんと同じく強者の気配を感じる。元帥だからなのか、アフロだから元帥なのか……

 

「ん? ガープ、そっちの娘は何だ?」

 

 無限のアフロの思考に陥りそうだったわたしの思考を断ち切ったのはセンゴクさんのそんな言葉だった。

 わたしは慌てて姿勢を正し、船で教えてもらったちゃんとした敬礼を返す。

 

「海軍に入隊希望のリラ・シエルです」

 

「詳しいことは後でわしから話す」

 

「そうか。私は海軍本部元帥、センゴクだ。とりあえず座って話そう」

 

 センゴクさんに促されてソファに腰掛ける。ガープさんは部屋に入ってすぐ、当然のようにソファに座ってた。わたしがソファに座ったのを確認したセンゴクさんは急須でお茶を淹れてくれる。それを受け取ると、センゴクさんは自分の分のお茶を淹れ、対面のソファに座った。ガープさんにはお茶を淹れないらしい。二人の関係性がよくわかる。とても仲が良いのだろう。ぞんざいに扱えるというのは、仲が良いことの裏返しなのだ。きっとそうだ。

 

 それから、ガープさんは『雷島』の調査任務の報告から、わたしを保護したこと、途中に遭遇した海賊、わたしの能力についてなどところどころ端折りながら簡潔に報告する。

 

「ふむ、なるほど。『雷島』の異変は悪魔の実が原因だったか。ご苦労だったな、ガープ」

 

 わたしが原因とは言わずに、悪魔の実が原因だと言ったのはわたしに対する気遣いなのだろうか。だとしたら、センゴクさんはやっぱり優しい人なのかもしれない。お茶も淹れてくれたし。

 

「それで、海軍に入隊希望だったな」

 

「はいっ!」

 

「いい返事だな。ガープの報告では身体能力が高く、強力な能力があるが、戦闘には慣れていない。それでも懸賞金7000万を無傷で仕留める程度の実力はある、か」

 

「なかなか将来有望じゃろ?」

 

 うむ、と頷くセンゴクさん。これは結構期待されているのかな? 

 元帥のセンゴクさんと中将のガープさんに期待されるというのは、とんでもなく嬉しいことだ。思わず口元が緩みそうになるけど、気合いで我慢する。

 

「有望だからこそ、すぐに実戦投入するには惜しいな。将官になれるかもしれん海兵を教育不足でみすみす死なせるわけにはいかん」

 

 海軍の階級については船で教えてもらったことがある。

 下から、雑用、三等兵、二等兵、一等兵、伍長、軍曹、曹長、准尉、少尉、中尉、大尉、少佐、中佐、大佐、准将、少将、中将、大将、元帥。

 少尉以上からは海軍将校と呼ばれ、その中でも特に優秀な一握りの海兵が准将以上の将官だ。

 将官になれるかもしれないと期待されると、さすがに嬉しさ以上に驚きが勝る。

 

「なら、海軍学校に寄越すか? たしか、ちょうど今ゼファーの手が空いとったじゃろ」

 

「そうだな。ゼファーに任せればシエルは間違いなく将官になれるだろう」

 

 わたし抜きでどんどん話が進んでいく。

 海軍学校ってなんだろう? 

 ゼファーって誰? 

 

「ということで、シエル。君にはまず海軍学校で教練を受けてもらう」

 

「えっ、はっはい!」

 

 突然話が振られて吃ってしまった。恥ずかしい。それはそれとして、どうやらわたしは海軍学校というところに行くことになったらしい。

 話の流れからして、海軍学校は訓練を受けたり航海術などの海兵として必要な知識を付けたりする場所なのだろう。

 さっさと実戦投入されて海賊をたくさん殺したい気持ちはあるけど、ちゃんとした教育を受けて海賊との戦いでの生存率を上げることができるのなら、こちらからお願いしたいくらいだ。

 

「期間は四年ほどになると思うが、その間生活に必要な物はガープの給料から天引きして用意する。それとは別に、自由に使える給料も出そう。ガープの給料から」

 

「わしの給料から!?」

 

「海軍学校での同期は正式な海兵になってからも無二の友人やライバルとなることが多い。海軍学校での四年間は君にとって得難いものになるだろう。しっかり励みなさい」

 

「はい!!」

 

「わしの給料!」

 

 

 

 

 




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