覚えているのは、ひどく雨が降っていたこと。
『折角パパに買ってもらったのに、コイツ全然使えないからもういらない。』
ボロボロになって壊れた自分を置いていったマスター。
『あなた、だいじょうぶ?』
打ち捨てられた自分を抱き上げた小さな両手。
『キレイな灰色に青色、それから・・・。ふふっ、私とお揃いね。』
柔らかく微笑んだ少女の碧の瞳。
それが、
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ーーー数年後。
とある街中にある、四方を高い塀に囲まれた豪奢な造りの洋館。
その一室、月下美人の華の装飾が刻まれた大きな扉を、子ども程の人影が控えめに叩いた。
そして扉の向こう側に居るであろう人物へと声を投げ掛ける。
「おはようございます、お嬢様。そろそろ朝食のお時間です。」
発せられたどこか厳しさを感じさせる声は、その体の小ささからはかけ離れていた。
例えるならば成熟した男性の、甘い低音ボイスといったところだろうか。
「お~きてるよ~ぉぉぉ・・・。入って~ぇぇぇ・・・。」
声をかけてから待つこと26秒。
部屋の主からの返答は、間延びした、未だ微睡みの中にあることを容易に想像させるものだった。
「はぁ・・・まったく・・・。」
扉の前で待機していた人影は、軽く肩を落とすような仕草をして扉に手をかけた。
「失礼致します。・・・・・・お嬢様、まだお着替えもなされていないとは。」
部屋へ入ると、正面には背の低い小さなテーブルとそれを挟むように置かれた2つのソファ。
その向こうには左右を白いレースのカーテンに囲まれた大きな窓。
左には分厚い本の敷き詰められた大きな本棚と書斎机、紅茶関連の品が納められたカップボードが。
右にはドレッサーデスクやクローゼット、ハットスタンドと大きな姿写し、そして。
「んふぁ~・・・アッシュ~・・・もう朝~?」
天蓋付きのクイーンサイズのベッドに、上半身を起こし延びをした状態で彼女は居た。
大きな欠伸をしながら瞼をこする姿からは、とてもお嬢様といった気品は感じられない。
「今朝は良い天気ですよ。・・・また夜更かしですか?」
「メダリーグの名試合動画が面白くてついね・・・んっ、眩し。」
アッシュと呼ばれた人影が窓に掛けられたカーテンを開くと、差し込んだ柔らかい光が一瞬彼女の目を眩ませる。
開けられた窓から入り込んだ朝の風が部屋を駆け抜け、光が目に馴染んだ頃。
「・・・・・・おはよう、アッシュ。」
彼女の碧の瞳には、灰と青を基本色としたハイイロオオカミを模したメダロットが映っていた。
そして優しく響いた声の主へと向きなおった彼の碧の
「おはようございます、ルナお嬢様。」
初めて出会った日から変わらない、柔らかな微笑みが映し出されていた。
ーーーーーfragment No.01 END