乙女ゲー世界はモブたちに厳しい世界です   作:鈴名ひまり

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公爵令嬢奪還戦

 ──戦いが始まる少し前。

「何ですか?あの船は?」 

 部下から新たな艦影を視認したとの報告を受けたゲラット伯爵は双眼鏡を覗き込んで訝しむ。

「不自然な形ですね。それに──大砲が2門だけ?」

 隣で同じように双眼鏡を覗き込む部下も不思議そうにしている。

 艦砲は手数を重視して舷側の砲郭に搭載されているものであり、旋回式の砲は小型艦にしか搭載されていない。

 なればこそ、目測で700メートルはある巨大な敵艦が旋回式の砲を2門しか搭載していない、というのは彼らにとっては不可解だった。

 しかもその船はこちらに砲門を向けてどんどん接近してくる。

「どうやら王国籍の船のようです。如何しますか?」

 部下が伺いを立ててくる。

「沈めなさい。あんな品のない、武装も貧弱な飛行船で我々に挑む愚を教育してやるのです。よろしいですね?殿下」

 ゲラットがヘルトルーデに同意を求めると、ヘルトルーデは頷く。

「全艦転進!濡れ鼠どもは捨て置き、あのデカブツを攻撃するのです!」

 ゲラットの命令で一斉に艦隊はエンジンを唸らせて敵艦目掛けて進み始める。

 だが、敵艦はあっさりと回頭して逃げ出した。追っても追っても距離は縮まらず、大砲の射程内に収めることは遂にできなかった。

 

 

◇◇◇

 

 

「また現れたのですか?目障りな」

 ゲラットは再び姿を見せた巨大な敵艦を見て舌打ちする。

「伯爵。どうやら今回は交戦の意思があるようです。その証拠に王国旗を掲げて、甲板にも兵員と思しき人員を配置しております」

 部下の報告が事実であると双眼鏡で確かめたゲラットは少し考え──

「いいでしょう。来るならば叩き落とすまでです。今度は逃げられないようモンスターに包囲させましょう。よろしいですね、殿下?」

 ゲラットはヘルトルーデの方に向き直りながら言った。

 ヘルトルーデは頷き、次女に合図して魔笛を持ってこさせると、吹き口に口を付ける。

 名状し難い不思議な音色が響き渡ると──モンスターたちが一斉に動き出し、敵艦目掛けて突き進んでいく。

「いくら何でもこの数のモンスターに襲われれば身動きできなくなるはず。その隙に距離を詰めれば──」

 ゲラットはニヤリと笑って髭を撫でる。

「全艦戦闘用意!同航戦に備えろ!」

 艦長が命令を伝え、通信士が僚艦に発光信号で伝達する。

「全艦面舵回頭!右舷各砲台要員は速やかに持ち場につけ!」

 公国の艦隊が見事な単縦陣を組み、敵艦に向かって進む。

「敵艦との相対速度変わらず!有効射程まであと2分ほどです!」

 部下の報告にゲラットは満足げに髭を撫でる。

「さあ──来るのです」

 そう言った直後──

「敵艦発砲!!」

 部下が叫ぶ。

「馬鹿な!この距離で当たるわけが──」

 言い終わらないうちに砲弾が先頭を走っていた軍艦に着弾する。

 砲弾はシールドに当たって爆発したが、その爆発の大きさにゲラットたちは戦慄する。

『シールド消滅!』

 被弾した軍艦からの悲鳴のような通信を通信士が伝えてきた。

『後続艦と交代させろ!全艦シールド出力を最大に!有効射程に入るまで持ち堪えろ!』

 別の軍艦に乗っていた指揮官が慌てて命令を下す。

 騒がしくなる通信にゲラットは内心焦り始めた。

 直後、部下が叫ぶ。

『敵艦再度発砲!』

『何!?早すぎるぞ!』

『衝撃に備えろ!』

 砲弾は後続艦と交代しようとしていた先頭の軍艦に再度直撃した。

『被弾!機関部壊滅!舵取機室も被害甚大!航行不能!』

 あっという間に1隻が脱落した。

 最新型の戦闘艦に優秀な乗員を乗せていたというのに、たったの一撃でシールドを失い、さらに間髪入れずにもう一撃であっさりと航行不能に追い込まれたのだ。

「ええい、化け物ですか──!」

 ゲラットは歯ぎしりをする。

 

 

◇◇◇

 

 

 一方その頃、パルトナーでは歓声が上がっていた。

 たった2斉射で公国の軍艦を1隻脱落させたパルトナーの火力に、生徒たちは勇気付けられ、士気は大いに上がる。

「凄い火力だ!」

「これならいける!」

「いったれオラァ!」

 熱狂する男子生徒たちに対してディアドリーは幾分か冷静だった。

(あの火力──やはりロストアイテムは伊達ではありませんわね)

 門数こそ極端に少ないが、既存のあらゆる砲より長射程かつ高威力で、ほとんどどの方向にも全火力を指向できる主砲を持つ飛行船──王国がその価値を見抜いたなら、誰がどう動くか想像もつかない。

 別の問題の予感を感じつつもディアドリーは目の前の敵に意識を戻す。

 敵は大量のモンスターをこちらに向けて放っている。それらがパルトナーに到達するまでもはや幾ばくもない。

「モンスターが来るわよ!シールドを!」

 ディアドリーの合図で女子生徒たちが口々に呪文を唱え、シールドを展開し、パルトナーのシールドに重ねる。

 その直後にモンスターたちから放たれた魔法の光弾が次々にパルトナーに着弾したが、シールドは難なく持ち堪えた。

『これより同航戦に移行する。全力でモンスターを迎撃されたし』

 アナウンスが流れ、パルトナーは向かってくる公国艦隊とモンスターの大群に舷側を向け始める。

 そして──

『クリス・フィア・アークライト、出撃する!』

 クリスの乗る鎧が空中に飛び出し、モンスターたちに向かって行った。

『大物は私が仕留める!』

 そう言ってクリスは再び魔法攻撃を放とうとしていた巨大なエイのようなモンスターに斬りかかった。

 鎧に握られた大鉈が青白く輝き、モンスターを左右に両断する。

 甲板で再び歓声が上がる。

『各射手は任意に射撃を開始されたし』

 アナウンスが流れると、パルトナーの主砲が再び火を噴いた。

 砲弾が空中で炸裂し、一気に大量のモンスターを殲滅する。

 更に舷側に並んだ対空機関砲も一斉に射撃を開始し、次々にモンスターを貫いていく。

 窓に配置された射手たちもめいめいが射撃を開始したらしく、あちこちから銃声と白煙が上がっている。

 その猛烈な弾幕を前にモンスターたちは近づいてきた傍から黒い煙に変わっていく。

 的が小さい小型モンスターはそれでもすり抜けてくるが──

「小物は俺たちがやるぞ!女子を意地でも守れ!」

 槍を持った男子生徒が甲板に辿り着いたモンスターをひと突きで倒す。

 それに負けじとばかりに他の男子生徒や船員、更に専属使用人たちも雄叫びを上げてモンスターに立ち向かう。

 ディアドリーも彼らに続いて前に出ると──

「吹き飛びなさい!」

 腕を横薙ぎに振るう。

 発生した風の刃がモンスターを切り裂いた。

 一気に数十のモンスターが煙になるが──その煙を突き破って新手のモンスターが次々に現れる。

「全方位から来るぞ!」

 既にパルトナーは無数のモンスターに包囲されつつあり、弾幕をすり抜けて甲板まで襲いかかってくる小型モンスターもどんどん増えている。

「くそッ!なんて数だ!」

「怯むな!押し返せ!」

「こっちに手が足りねえ!誰か手を貸してくれ!」

「今行く!」

「バルトファルトは何してるんだ!」

「口ではなく手を動かしなさい!」

 短い間に甲板は戦場と化していた。

 

 

◇◇◇

 

 

「よし、思ったより奮戦してくれてるな」

 俺は高高度からパルトナー周辺の戦闘を眺めて呟いた。

 人が相手にできない大型モンスターはクリスの乗る鎧とパルトナーの対空砲が倒し、更に接近したモンスターは射手たちに狙撃され、甲板に辿り着いたモンスターも接近戦で倒されている。

『マスター。公国艦隊がパルトナーと並走しました。間もなく攻撃が始まるでしょう』

 ルクシオンが言った直後、公国の軍艦から一斉に爆煙が噴き出す。

 パルトナー周辺に無数の爆発が生じる。シールドに当たった砲弾が炸裂しているのだ。

「シールドは大丈夫だろうな?」

 念のために確認する。

『マスターは心配性ですね。現在のパルトナーの機能は30%まで抑えてあります。まだまだ余裕ですよ』

 機能を抑えるように指示したのは俺だ。

 できるだけ長く艦隊とモンスターを足止めして、公国に戦力を吐き出させればその分アンジェの救出は楽になる。

 パルトナーの機能をフルに使えば公国艦隊を殲滅することだってできるが、それだと色々と面倒なことになる。何より怒りに任せて大量虐殺をやって後悔したくはなかった。

「頃合だな。行くぞ」

『失神しないでくださいね』

「抜かせ」

 俺は操縦桿を押し込み、公国の旗艦目掛けて急降下を開始した。

 空気抵抗を抑えるため、アロガンツは頭を下にし、両腕を後ろの方に流す姿勢を取る。

 自由落下ではないため、操縦者である俺には強烈なマイナスGがかかるが、目は公国の旗艦から離さない。

 旗艦は鯨のような巨大モンスターの上に建物が載ったような姿をしている。

 浮島を使った飛行船なら見たことがあるが、モンスターを飛行船にするなんて聞いたこともない。

『減速します』

 ルクシオンが告げると、アロガンツはスラスターを吹かして減速し、戦闘態勢に入る。

 両手には斧が握られている。

「さあお姫様を返してもらうぞ!」

 建物の壁に斧を叩きつける。

 金属製の壁はたちまち切り裂かれ、人が数人は一度に通れそうな大穴が開く。

 アロガンツのハッチを開けると、俺は短機関銃を手に飛び出し、船内に乗り込んだ。

「外は任せたぞ!」

『マスターこそ、中で迷子にならないでくださいね』

 アロガンツはルクシオンの操縦で旗艦から離れていく。

 そのまま駆けつけてきた公国の鎧と空中戦を始めた。

「さてと、アンジェのいる部屋はこの向こうか」

 ゴーグル型の端末がアンジェの監禁されている部屋までの道を示してくれる。

 俺は急ぎ足で通路を進むが、曲がり角で公国兵に出会した。

「誰だ貴様は!?」

 誰何してきた公国兵に俺は問答無用で短機関銃を撃ち込む。

 発射されるのは非殺傷のゴム弾だが、衝撃で気絶させるくらいの威力はある。

 公国兵はたちまち昏倒した。

 更に通路を進むと、銃声を聞いて駆けつけてきたらしい公国兵の集団が現れる。

「おい貴様!何者だ!」

「止まれ!止まらんと撃つぞ!」

 公国兵たちが前方に立ち塞がり、拳銃を向けてくる。

 俺は怯まず短機関銃の引き金を引く。

「邪魔だどけえええええ!」

 短機関銃の弾幕が公国兵たちを薙ぎ倒していく。

 その連射速度に面食らったらしい公国兵たちは1発も発砲しないまま全員倒れた。

 空になった弾倉を素早く交換する。

 倒れた公国兵たちを踏み越えて俺は止まることなく進み続ける。

 

 

◇◇◇

 

 

 時計の針は少し戻り、公国艦隊旗艦の艦橋。

 ゲラットは焦れていた。

 モンスターを使って敵艦を取り囲み、身動き取れなくするという作戦はうまくいっている。

 既に公国艦隊も敵艦目掛けて猛攻撃を始めているが、一向に沈む気配がない。

「何をしているのですか!さっさと沈めるのです!」

 通信士から受話器を奪い取り、発破をかけるゲラットだが、返ってくるのはゲラットを苛立たせる()()()()()()()ばかりである。

『シールドが固すぎます!』

『こちらの砲撃が通りません!』

『モンスターも迎撃されております!』

『待ってください、奴ら沈めた船に乗っていた餓鬼どもです!』

 特に最後の方はゲラットの逆鱗に触れる。

「何を寝惚けたことを言っているのです!亡霊を相手に戦っているとでも言うつもりですか!手の込んだ言い訳を考える暇があったら撃つのです!」

 ゲラットは怒鳴る。

『で、ですが伯爵、本当です!奴ら王国の学園の制服を──』

「まだ言いますか。グダグダ言っていないで全火力で沈むまで撃ち続けなさい!これは命令です!!」

 ゲラットが受話器に怒鳴りつけていると部下がゲラットの肩を叩く。

「伯爵!敵と思しき鎧が本艦に向け急速接近中です!」

「ッ!ならばさっさと鎧を出させなさい!早く!」

 ゲラットは癇癪を爆発させた。

 部下が慌てて伝声管で命令を伝える。

 窓の外を見ると飛び立った公国の鎧が灰色の大きな鎧を追い回し始めるのが見えた。

「損害は?」

「艦橋外壁に穴を開けられたようですが、それだけです」

 部下たちのやり取りを聞いたゲラットは人質を奪還しに来たのではと推測する。

「誰か、念のために人質を見てきなさい」

 ゲラットの命令で数人の騎士が艦橋を駆け出していく。

 

 

◇◇◇

 

 

 アンジェがいる部屋の前まで辿り着いた俺は入り口に立っていた騎士2人をあっさりと昏倒させると、腰のホルスターから実弾入りの拳銃を抜いた。

「アンジェ!ドアの近くにいるなら離れて!」

「リオン!?お前、リオンか!?」

 中から驚いた声がする。間違いない。アンジェだ。

「説明は後だ!ドアから離れて!」

「わ、わかった!──離れたぞ」

 俺は拳銃でドアの鍵を撃ち抜いて破壊し、全体重をかけて体当たりする。

 ドアが勢いよく開き、俺は思わず前につんのめる。

 アンジェは部屋の隅にいた。

「リオン!なぜここに!?」

 アンジェは驚きと喜びの入り混じった表情で言う。

「助けにきた。ほら、さっさとここを出るぞ」

「あ、ああ。だが、私が乗っていた船は沈められた。そちらの救助は──」

 敵に囚われて監禁されてもなお、自分よりあいつらの心配とか本当に──アンジェは健気だ。

「それならもう済ませた。拾った連中はパルトナーに乗せてある」

「そうか──リビアは?」

「──心配ない。ちゃんと助けたよ」

 俺はまた1つ、嘘を吐いてしまった。

「そうか、よかった──本当によかった──」

 アンジェはホッと息をついた。

 心が痛む。リビアが本当はどうなったか知ったら──いや、今考えても仕方ない。

 俺はアンジェの手を引いて部屋の外に出る。

 アロガンツとのランデブーは来た時に開けた大穴。

「ルクシオン、迎えに来てくれ」

『了解です』

「ルクシオン?」

 アンジェが怪訝な表情になるが無視して通路を進む。

 不意にアナウンスと共に艦内に警報が鳴り響く。

『緊急事態!人質が逃げたぞ!探せ!』

 アンジェがいなくなったことに気付いたらしい。まあ、この状況で侵入者が現れたら人質を見に行くよね。

 だが、もう遅い。

 大穴に着くと、アロガンツは追いすがる公国の鎧を撃ち落とし、こちらに飛んできた。

「ちょっと失礼するぜ」

 アンジェの肩を掴み、膝の下に腕を差し入れて抱き上げる。

 いわゆるお姫様抱っこの状態で俺はアロガンツに乗り移った。

「り、リオン!?」

 アンジェが顔を真っ赤にしているが、我慢してもらうしかない。

「悪いけどしばらくこのままで我慢して」

 アロガンツのコックピットは決して広くはない。座席をもう1つ作っている余裕もなかったので、アンジェの座る場所は俺の膝の上しかない。

 視界が遮られないように横向きに座ってもらう必要があるので、お姫様抱っこのままというわけだ。

 茹で蛸状態のアンジェを余所に俺はアロガンツを発進させた。

 すぐに追っ手がかかる。

『待てえ!』

『逃がさん!』

 公国の鎧が続々と発進して追ってくる。

 振り切って逃げようかとも思ったが、かなりスピードが出るらしい。

 ──仕方ないな。

「待てって言われて待つ馬鹿がいるかよ!これでもくらえ!」

 振り向きざまにライフルを撃つ。

 公国の鎧は弾を躱すが、弾は軌道を変えて鎧を追っていき、その手足を吹き飛ばした。

 残った鎧は一瞬怯み、その隙に俺は大きく距離を離す。

 公国の鎧はそれでも諦めずに追ってくるが、今はお預けだ。

「ルクシオン、ドローンで足止めしろ」

『全ドローンを射出します』

 コンテナと大腿部から多数のドローンが展開する。

 追ってくる公国の鎧目掛けてマシンガンや光学兵器を撃ちながら突撃していく。

『な、なんだこいつは!?』

『叩き落とせ!』

『素早いぞ!当たらない!?』

『ぐあああああ!』

 公国の鎧は突然現れたドローンに面食らったらしく、数機が攻撃をもろに受けて叩き落とされる。

 すぐに態勢を立て直そうとしていたが、そうはさせじとドローンが内懐に飛び込む。

 そのまま乱戦になり、公国の鎧は追って来なくなった。

 さてと──さっさとパルトナーに着艦するとしよう。

 俺は操縦桿を倒し、パルトナーに向かって全速力で飛ぶ。

 パルトナーはモンスターに取り囲まれ、公国艦隊に袋叩きにされていたが、シールドで防ぎつつ撃ち返している。

 公国艦隊の方もパルトナーの反撃を何重にも重ねたシールドで辛うじて防ぎつつ、必死で大砲を撃ちまくっている。

 うまい具合に膠着状態が維持されていた。

『バルトファルト!戻ってきたか!アンジェリカは?』

 クリスがアロガンツを視認したらしく、通信を送ってきた。

 見るとクリスの鎧がこちらに向かって飛んでくる。

「バッチリだ。こっちのことは心配するな。自分で着艦する!」

『──分かった!』

 クリスの鎧が反転してモンスターの群れに斬り込んでいくのを傍目に俺はアロガンツにライフルを構えさせる。

「ルクシオン、道を開けるぞ」

『了解です。ヘルブラスト、どうぞ』

 ライフルの銃口に魔法陣が出現する。

「公爵令嬢のお通りだ!道を開けろ!」

 ライフルを発射すると炸裂した弾から雷撃が迸り、モンスターの群れが消し飛ぶ。

 格納庫の扉が開き、俺は素早くアロガンツを滑り込ませた。

 アロガンツを追ってきたモンスターが雪崩れ込んでくる前に格納庫の扉は閉まる。

 やった。やり遂げた。

 一番助けたかった人を救い出せた。

 俺はどっと溜息を吐きたくなるのをなんとか堪えた。

「さ、降りるよ」

 ハッチが開き、俺はアンジェを抱っこしたままアロガンツを降りた。

 アンジェを下ろすと、彼女は俯き気味に言った。

「リオン──お前は本当に──ありがとう」

 恥じらいながらも安堵の表情を浮かべて感謝を伝えてくるアンジェに思わずドキッとする。

 そして──

『マスター、王国の艦隊が到着しました』

 タイミングバッチリだ。

「よし──これでこっちの勝ちだ!」

「増援が来たのか!?」

 アンジェが聞いてくる。

 俺はニヤリと笑って答える。

「ああ、今度はこっちが公国に殴り返してやる番だ!」

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