乙女ゲー世界はモブたちに厳しい世界です   作:鈴名ひまり

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──忙しい
全然執筆が進まない──


疑惑

 冷たい暗闇の中を彷徨っている。

 上下も左右も分からない無重力の闇の中で俺は出口を探している。

 早くしないと、ヤツらが来る。

 俺を殺そうとするヤツら。

 必死で周りを見回していると微かな温かさを感じた。

 微かな光が見える。

 出口だと思って俺は走る。

 後ろから声が聞こえる。

 その声に籠もった感情は読み取れないが、俺に対する敵意がビリビリ伝わってくる。

 振り返ってはならない。

 全速力で光に向かって走れ。

 光がだんだん強く、大きくなる。

 そこで誰かが呼んでいる。

 早く、早く、そう言っているように見える。

 しかし、光を目前にして何かが立ちはだかる。

(どけよ!)

 俺を通せんぼする何かを必死で払いのける。

 光が揺れた。

 後ろから聞こえてくる声と、光の中から俺を呼ぶ声が大きくなる。

 俺は焦る。

 早く!早くあの光の中に!

 あの光が消える前に──

 背後からの冷たい気配が俺の背筋を震わせる。

 ソレが俺に触れる直前──俺は光の中に飛び込んだ。

 全身が不思議な温かさに包まれる。

 どっと溜息を吐いて俺は倒れ込んだ。

 なぜだろうか──もう動けないのに、なぜか安心する。

 そういえば──暗闇から抜け出したはいいけど、ここはどこなんだ?

 そんな疑問すら浮かんですぐに霧散する。

 

 

◇◇◇

 

 

 目が覚めると知らない天井──じゃなくて天幕が目に入る。

 俺は天蓋付きのベッドに寝かされていたらしい。

 何だか今日は寝覚めが良い。

 ここの所ずっと死なせた黒騎士に襲われるか、あるいはあのまま黒騎士の大剣に刺し貫かれる悪夢を見て夜中に飛び起きていたが、昨夜は見なかったようだ。

 ベッドの寝心地が良かったからかと思ったが、ふと手に違和感を覚える。

 側に目をやると、右手が誰かの手に包まれている。

 クラリス先輩が俺の手を握ったままベッドに突っ伏していた。

 上半身だけベッドにもたれかかった姿勢ですうすう寝息を立てている。

 どうやら俺は昨夜あのまま寝落ちしてしまっていたらしい。

 クラリス先輩は自分の部屋に戻らず、俺と一緒の部屋で一夜を明かしたようだ。

 どうしたものかと思っているとクラリス先輩は目を覚ました。

「おはよう」

 女神のような微笑みを向けてくる。

「あの──先輩、もしかしてずっとそこで──」

「──尋常じゃないうなされ方だったわよ。私が手を握っていたら、段々落ち着いたけれど」

 その答えからするとどうやら俺は昨夜も悪夢を見ていて、クラリス先輩はうなされる俺の手を握り続けてくれたらしい。

 なんか申し訳ない気持ちになる。

 ──どうして俺みたいなモブのためにそこまでしてくれるのだろうか。

「でも、今は落ち着いているようで良かったわ。さあ、顔を洗っていらっしゃいな」

 クラリス先輩が立ち上がり、洗面所に続く扉を指差した。

 俺もベッドから降りた。

 ふと服装が変わっていることに気付く。

 たしか昨日は制服のままだったはず。なのに今はバスローブみたいなゆったりした服を着ていた。

 いつの間に着替えたのか疑問に思いつつも、俺は洗面所に向かう。

 

 大理石の洗面台にはまるで生活感がなかった。

 曇りや水垢ひとつない大きな丸鏡やきっちりと端を揃えて掛けられた真っ白いタオルを見ると、使うのを躊躇してしまう。

 ピカピカに磨かれた真鍮製の蛇口を捻り、隣に置かれていた固形石鹸を使って顔を洗う。

 随分と高級なものらしく、もっこりした泡が肌に馴染む。

 前世だったら洗顔グッズとして大人気になっただろう。

 泡を流し、寝癖を直して、洗面所を出ると、扉に制服が掛かっていた。

 アイロンがけされたらしく、新品のようにパリッとしている。

 着替えて外に出ると、クラリス先輩が待っていた。

 

 

◇◇◇

 

 

(嘘は言っていない──けれど──)

 クラリスは昨夜のことを思い出す。

 抱きしめていたらいつの間にか眠ってしまったリオンをベッドに寝かせた後──うなされ始めた彼を放って置けずに手を握っていた。

 何の夢を見ているのかは分からなかったが、恐らく戦いの夢だろう。

 人伝てに聞いた情報では、リオンは黒騎士に蹂躙される味方を救うため、単騎で黒騎士に挑み掛かったらしい。

 クラリスは黒騎士については一般的に流布されている程度の情報しか知らないが、それでも凄まじい強敵であることは知っている。

 先の戦争では名の知れた王国の騎士が何十人も討ち取られ、当時から【剣聖】の称号を持っていた【ウィリス・フィア・アークライト】ですら、敵わなかった。

 そんな相手にたった1人で挑む恐怖はとても想像できない。

 戦いが終わった後も悪夢を見続けるほどに、心の奥深くに刻まれてしまった恐怖。

 それが和らぐのなら、何でもしてあげたいとクラリスは思ったのだ。

 だから──ベッドに引きずり込まれた時も、抵抗はしなかった。

(所詮──()()()()()だし)

 今更惜しむ気持ちなどなかった。

 だが──どこかで心が痛む。リオンは間違いなく憶えていない。

 学園に戻ったなら、彼はまた元通り──1人の学園男子生徒に戻るのだろう。

 婚活のために女子生徒に声を掛けて、時々アンジェリカとお茶をして──自分のことは1人の先輩としてしか見てはくれない。

 そしてクラリスは自分の心に潜む欲望に気付く。

(──!本当に、汚いわね)

 自分だけが知っている事実──それをダシに使って強引にリオンを自分のものにしてしまいたいという欲望。

 それを満たしても、幸せな未来は誰にも訪れないと分かっているのに。

 それでも──クラリスはリオンが欲しかった。

(駄目よ──そんなの、愛じゃなくて所有欲じゃない)

 囁く自身の心の声を振り払う。

 リオンが欲しいのは確かだが、それ以上にリオンを不幸にしたくはなかった。

 

 

◇◇◇

 

 

 アトリー家の朝食は実家の規模の割には質素なものだった。

 熱々のお茶に始まり、ベーコンエッグと豆のスープと、サラダとトースト。

 バルトファルト家の普段の朝食と大して変わりなかった。

 もちろん食材は違うのだろうが、アトリー家は豪勢さよりも栄養バランスを考えた堅実な食生活をしているらしい。

 ゾラの一家にも見習って欲しいものである。

 あの連中が実家に来る度にやたらと豪勢な食事を要求されて、しかも文句まで言われる。

 何度「だったら食うな」とか、「そんなに言うなら自分で作れよ」と言ってやりたいと思ったことか。

 まあそれはさて置き、昨日晩飯を食べないまま寝落ちしてしまったせいで空腹だったので、余計に美味しく感じた。

 クラリス先輩は微笑みを浮かべて俺の方を見ていたが、どこかその笑顔に翳りがあるように感じた。

「先輩?どうかしました?」

 一応聞いてみる。俺が何かしでかしたのが原因なら、平身低頭して謝り倒す所存である。

「うん?どうもしないわよ。どうして?」

 クラリス先輩はきょとんとした顔で言う。

「──いえ、何となく──何か考え込んでるみたいだったので」

 何か考え込んでるみたいだったので、という最強の誤魔化しを使用する。

「大丈夫よ。それより今日は予定あるのかしら?」

 予定──特にはないが、俺にはやることがある。

「──はい。食べたらお暇します」

 また噓を吐いた。

「そう。貴方も大変ね」

 そう言うクラリス先輩の表情に翳りは見えなくなっていた。

 ──さっきのは何だったんだろう。

 

 

◇◇◇

 

 

 アトリー家の屋敷を出た俺はまた学園の寮に戻ってきた。

 ノートを広げてタスクを書き出していく。

 やることは沢山ある。

 取り急ぎ優先度が高いのは公国に関する情報収集。

 ヘルトルーデが言っていた「代わり」とは何なのかを明らかにしたい。

 もしかしたらゲームには出てこなかった別の何かが存在しているのかもしれない。

 考えてみれば、ゲームでエンディングを迎えても、現実はそれ以降も続くのだ。

 ならば、今のうちに公国に関する情報を細大漏らさず集めておかないと、後で予想外の事態に陥りかねない。

 リビアが意識を取り戻す見込みがない以上、彼女の力に頼らずに破滅を回避する方法を模索しなければいけないのだ。

 ルクシオンに命じればパパッと調べてきてくれそうだが、ルクシオンはアロガンツとパルトナーの整備にかかりきりであと何日かは留守だ。

 ちなみにヘルトルーデから奪い取った魔笛も調べるよう命じておいたが、これも後回しにされている。

 そして公国と繋がっている奴の特定。

 怪しいのはオフリー伯爵家の関係者だ。

 オフリー伯爵家は取り潰され、当主と後継ぎは処刑されてしまっているが、オフリー伯爵家が属していた派閥を調べれば目星がつくだろう。

 これについてはレッドグレイブ公爵家の力を借りられそうだ。アンジェに口添えを頼めば協力してくれるだろう。

 俺は宮廷での派閥争いの事情など知らないので、協力者は必要だ。

 他にも聖女の力のこととか、【王家の船】のこととか、後はマリエのこと。

 リビアのポジションを奪っている時点でマリエのゲーム知識に期待はできないが、もしかしたら、俺の知らないことを知っているかもしれない。

 俺が適当に読み飛ばしたキャプションの内容とか、あるいは俺が知らない攻略情報とか裏設定なんかを知っていたら儲けものだ。

 ついでにリビアのポジションを奪った目的についても問い質す必要があるな。

 問題はどうやってマリエとサシで話をするかだが──お茶会に誘うってわけにもいかないしな。

 ルクシオンと相談しよう。

 先にレッドグレイブ公爵家の協力を取り付けることから始めるか。

 

 

◇◇◇

 

 

 数日後。

 俺はアンジェと一緒にレッドグレイブ公爵家の屋敷に来ていた。

 ヴィンスさんは留守だったのでギルバートさんが話を聞いてくれた。

「つまり──内なる敵はまだ存在していると、君はそう考えているわけか」

「はい。内通者の生存は定かではありませんが、彼らに指示した者がいるはずです」

 それを聞いてギルバートさんは溜息を吐いた。

「厄介だな。その内通者が誰なのか分からないことにはこちらとしても動きようがない。君の言うことを確かめようにも、生存者への事情聴取をやり直すことから始めなければならない」

 難しい顔をするギルバートさんに俺はひとつ、提言する。

「心当たりはあります。オフリー伯爵家の関係者に的を絞れば良いかと」

 ギルバートさんは目を細めて問うてくる。

「そう考える根拠は?」

「先日自分が討伐した空賊団、オフリー伯爵家、公国、この三者は繋がっていたと自分は考えています。件の空賊団を討伐した際、疑問に思ったのですが、空賊にしては装備が極めて充実していました。オフリー家が横流ししていたにしても些か高性能すぎるものをいくつか見かけました」

そう言って俺は空賊団からの分捕り品目をギルバートさんに見せる。

 分捕った時には詳しく調べなかったが、飛行船に積まれていた大砲や鎧用のライフル──それらは明らかに王国製のものではなかった。

 にも関わらず、かなりの高性能で下手な軍隊よりも充実した装備体系だったのだ。

 スクラッパーギルドにも問い合わせ、売り飛ばした空賊の武器を調べさせてもらったが、これがビンゴ。

 公国製だった。巧妙に銘を隠していたが、スクラッパーギルドの目利きが見つけ出してくれた。

「分捕った空賊の武器を調べた結果、公国から密輸された新型でした。つまり、公国との繋がりがあったのです。ですが、空賊と繋がっていたオフリー伯爵家と公国との間で直接のやり取りがあった証拠は見つかっていないと聞きます」

「──続けたまえ」

「オフリー伯爵家と公国の双方にパイプを持っていた──いえ、今も持っている人物がいると考えられます。内通者に指示したのはその者かと」

 ギルバートさんは考え込む。

「ふむ────オフリー伯爵はフランプトン侯爵の派閥に属していた。同じ派閥の貴族か、あるいは侯爵自身か──絞り込めるとはいえ、容疑者は多いな。しかもおいそれとも探れない大物揃いときた」

 フランプトン侯爵、か。ゲームにはそんな名前のキャラは出てこなかったな。

 オフリー伯爵家の後ろ盾──その割には随分あっさりとオフリー伯爵家を切り捨てているが。

「フランプトン侯爵は今回の交戦を機に公国に接近しようとしているらしい。ゆくゆくは公国を再び王国の傘下に加えたいのだろうが──処分は手緩いものになりそうだ。リオン君の話と照らし合わせると、今回の交戦自体、侯爵と公国軍が共謀したのではないかと思えてくる」

「仮にそうだとして──何の目的でそのようなことを?」

 アンジェが質問した。

「──侯爵は公国軍を利用して政敵を物理的に排除しようとしている──確証はないが、十分あり得る」

 政敵を排除するために自国を憎む敵国と手を組む──馬鹿じゃないのか?

 そんなことをしても「相手を利用していたと思ったらこちらが駒にされていた」という状況になるのがお決まりのパターンなのに。

「調べてみる価値はありそうだが──なかなか尻尾は掴めないだろうな。発言力が下がれば情報力も下がる」

 ギルバートさんは溜息を吐く。

 アンジェはしばらく難しい顔で考え込んでいたが、ふと気付いたように再び質問した。

「ヘルトルーデ殿下の処遇はどのように?」

 俺も聞き耳を立てる。

「意見が割れているな。シェフィールド伯爵をはじめ犠牲になった学園生の親たちは戦争犯罪人として処刑するよう求めている。だがフランプトン侯爵と彼の派閥はそれに反対している。一時は学園に留学させるという話まであった」

 いや学園に留学ってそれはないでしょ。

 多くの学園生を死に追いやった相手が受け入れられるわけがない。

 本当にそのフランプトン侯爵とやらは何を考えているのか。

「さすがに留学は反対多数で流れたが──今のレッドグレイブ家に発言力はほとんどない。去年までなら鶴の一声で流れが決まったものだが──今の王宮は予測不能だ」

 レッドグレイブ公爵家は予想以上に弱体化していたらしい。

 この分だと俺の後ろ盾としてのパワーも怪しく思えてくるな。

 かといってほかに頼る相手もいないしな──。

「何はともあれ、リオン君、情報提供には感謝する。今後の方針を決めるにあたって、大いに役立つだろう」

 ギルバートさんは先程までとは打って変わって笑顔で言った。

「いえ、情報は持っているだけでは意味がありませんから」

 そう、情報は適切に処理・利用できる立場の人に届けられて初めて意味がある。

 ルクシオンが戻ったらあいつにも伝えなければ。

 ふとギルバートさんが俺に質問してきた。

「時にリオン君。つかぬことを聞くが、結婚相手の目星はついているのかな?」

 ギルバートさんの問いは答えに困るものだった。

 質問の意図を確認する。

「いえ、まだですが──なぜそれを?」

「我々としても君の後ろ盾になる以上、君のことは調べさせてもらっているが──結婚相手が決まったと言う話は聞こえてこないものでね。正直なところ、下手な相手と結婚してもらっては不都合も出てくるだろうと思っていた」

 ──なるほどな。要するに俺をレッドグレイブ派閥により深く取り込みたいのだろう。

 そのためには敵対派閥に属する家の娘と結婚などされては困ると見た。

 だが──心配は無用である。マイナスの意味で。

「ご存知でないかもしれませんが、俺はほとんど全校生徒に嫌われていましてね。お茶会に誘っても梨の礫、けんもほろろです。女の影もありませんよ」

 なぜかアンジェが少し不機嫌そうな顔をする。

「そうなのかね?独力で昇進し続ける五位上の騎士が身向きもされないというのは些か信じ難いのだが──」

 いやいや、独力じゃないです。

 ユリウス殿下たちとの決闘に勝ったのも、空賊をあっさり討伐できたのも、アンジェを救えたのも、公国と戦えたのも全てルクシオンがいたからこそであって──

 ──ん?ちょっと待って。今さっき聞き捨てならない単語が聞こえたんだけど?

「え?俺の階位は五位下で卒業後に昇進という話では?」

 ギルバートさんは少し首を傾げ、続いてはたと気付いたような仕草をすると、恥ずかしげに微笑みながら爆弾を落としてきた。

「ああ、君にはまだ伝わっていないのだったね。実は──」

 その続きを聞いた俺は血の気が引いた。

 

 

◇◇◇

 

 

 学園に戻る俺の足取りは重い。

 なんと俺はまたしても意に反した出世をしてしまうことになったのだ。

 要約すると、今回の公国との戦いで最大の功績を挙げたのは俺なのだそうだ。

 学生や船員たちを救助した功績に、1人の死傷者も出さずにアンジェを奪還した功績、王国艦隊に公国艦隊の情報を伝え、迅速な会敵に貢献した功績、ヘルトルーデを捕らえた功績、さらには誰も討ち果たすことができなかった黒騎士こと【バンデル・ヒム・ゼンデン】子爵を単独で破ったのが決定打となった。

 俺は【従軍勲章】と民間人に贈られる【奉仕勲章】に加え、20年前の公国との戦争以来、受章者がいない【白金双翼章】なる勲章を授与されることになった。

 これに留まらず、アークライト家、フィールド家、セバーグ家、ローズブレイド家、そしてなんとミレーヌ様までが俺に推薦状を出し、俺はこの度【四位下】の【子爵】に陞爵することになってしまったのである。

 アンジェもこのことは知らなかったらしく、血の気の引いた顔で冷や汗を流す俺を見て気の毒そうにしていた。

 望まぬ出世の悪夢再び──全く想定してなかったと言えば嘘になるが、さすがに頭がクラクラしてくる。

 子爵──子爵って!

 俺に一体どんな働きを求めるんだ!そんなに期待されても困る!

 男爵相当の貢献ですら、できるかどうか甚だ怪しいのに子爵になってしまうとか──どうすればいいんだ!?

 これじゃもし無事にゲームクリアまで辿り着けても俺にとっては結局バッドエンドじゃないか!

 ──本当にこの世界はモブに厳しい。

 

『おや、この世の終わりのような顔をしていますね。まさかまた昇進したのですか?』

 部屋に戻るとルクシオンが早速核心を突いてきた。

「四位下の子爵に昇進だって──また負担が増える──ははは、悪夢だ──」

 乾いた笑いを漏らしながらベッドに倒れ込む。

 だがルクシオンは至って真面目な声で言ってきた。

『そうでしょうか?むしろ良かったのではないですか?』

「え?なんで?」

 ルクシオンは右肩辺りに寄ってくると耳打ちするように言ってきた。

『──クラリスと結婚できますよ』




白金双翼章
危機に陥った味方を救いあげた、救世主のごとき活躍をした者にのみ許される名誉。その授与規定は過酷であり生還して受賞した者の方が少ないとされる。しばしば遺族が代理で受章するという。
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