乙女ゲー世界はモブたちに厳しい世界です   作:鈴名ひまり

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マリエの正体

「珍しいな。マリエが休むなど」

 学園の食堂でユリウスは首を傾げた。

 今までマリエが周囲に何も言わずに学園を休むことはなかったのに、今日は朝からマリエの席が空いたままだ。

「こんなこと今まではありませんでしたね。辛い時でも逃げなかった彼女が──」

 ジルクがマリエがいじめられていた時期を思い出して呟く。

()()()()をお披露目できると思ったのだが」

「あれを見せればきっと喜んでくれたでしょうにね」

 マリエとの付き合いを巡って起きた決闘でユリウスたちは全員鎧を破壊された。

 しかし、それでもめげずに使えるパーツを集め、足りない分は手分けして買い集め、自分たちではどうしても手に負えない作業は腕利きの鎧製作者(詐欺師)に依頼して、これまでで最高の鎧だと思えるものが完成したのである。

 それを今日、マリエに見せようと思っていたのだが、昼休みになっても登校してくる様子がない。

 ユリウスは一抹の不安を覚える。

「──放課後にカイルに訊いておくか」

「そうですね」

 ジルクもマリエが心配なようだった。

 

 

◇◇◇

 

 

「あれ?ここどこ?」

 マリエが目覚めた時、そこは見知らぬ部屋だった。

 寮のベッドより幾分か狭いベッドにパジャマのまま寝かされていた。

『お目覚めですか?』

 不意に妙な声が聞こえてきたので振り返ると、ドアの前に赤いひとつ目を持った球体が浮かんでいた。

「ちょっと!ここどこよ?あんた何者よ!」

『お静かに願います。それと、叫んでも誰も来ませんよ。ここはマスターの船ですからね』

 自分が眠っている間に拉致されて飛行船に乗せられていると悟り、マリエは蒼白になる。

 球体はマリエに近づいてくる。

『マスターが貴方との対話をお望みです。無事に帰りたければ質問には全て正直に答えるように。逃走を試みた場合は──』

 表情のない機械が赤いひとつ目を光らせ、電光を纏いながら脅迫の台詞を口にするのは純粋に恐ろしかった。

 冷や汗を浮かべてこくこくと頷くマリエに球体は踵を返して部屋を出て行った。

 入れ違いに入ってきたロボットが食事を運んでくる。

 ロボットは皿を机に置くと、後ろ向きに進んで部屋を出ていった。

 ドアが横にスライドして閉まり、ガチンと音を立てて施錠される。

「なんでこんなことに──私はどうなるの?」

 マリエは嘆いた。

 誰が何のために自分を拐うのか、マリエにはさっぱり分からない。

(マスターって誰なの?質問って何?まさか私の秘密を知ってる奴がいるの?)

 自分に質問があるらしい「マスター」について考えるマリエだが皆目見当がつかない。

 考えているとお腹が鳴ったので出された食事に手を付ける。

「あ、美味しい」

 特別贅沢なわけでもないが、日々の経費を切り詰めた質素な食事よりは美味しい。

 夢中で食事を平らげると、ロボットが入ってきて食事を下げていった。

「ねえ!マスターって誰なのよ?質問って何?」

 ロボットに問いかけてみたが、全く反応せず、後ろ向きに進んで部屋を出て行く。

 突破しようかとも思ったが、ロボットの腕に銃口のような穴があったため、怖くなって諦めた。

 

「いつまでここにいればいいの──」

 閉じ込められたまま暗くなっていく外の景色を眺めながらマリエは呟く。

 もうかれこれ半日も部屋に閉じ込められたままだ。

 ()()()()()()()()()のは本来マリエにとっては安息を意味するが、見知らぬ部屋に閉じ込められていてはそうはいかない。

 心細さでどうにかなりそうだった。

(助けてよ──)

 ユリウス、ジルク、ブラッド、グレッグ、クリス、カイルの顔が思い浮かぶ。

 そして最後に浮かんだ顔は朧げで判然としなかったが、それまで思い浮かんだどの人よりも頼りになる人の顔だった。

(──お兄ちゃん──助けて)

 不意に聞き覚えのある声が微かに聞こえてきた。

『この部屋です』

 扉のロックが解かれ、あのひとつ目の球体が入ってきた。

 そしてその後ろに続いて入ってきた人物にマリエは目を見開く。

「あ、あんたは──」

 

 

◇◇◇

 

 

 マリエは俺を見て驚きと怯えの入り混じった表情になっていた。

「おい、お前何かしたんじゃないだろうな?こいつ怯えてるじゃないか」

『何もしていませんが?逃走防止のため立場を教えただけです』

 しれっと言うルクシオンだが、マリエは明らかにルクシオンを見て怯えている。

「ね、ねえ──そいつのマスターって、あんたなの?」

 マリエが恐る恐る訊いてくる。

「そうだが?」

「お願い!何を知りたいのか知らないけど、分かることは何でも答えるから!逃げたりしないから!だから、拷問はやめて!」

 マリエが涙目で懇願してくる。

 ルクシオンを睨みつけると、そっぽを向いた。

『拷問とは人聞きの悪い。大人しく従えば無事に帰れるというのに』

「嘘よ!あんた電撃打とうとしてたじゃない!」

 ルクシオンのやつそんな風にマリエを脅迫したのか?

 胡散臭いにも程があるだろ。

「お前──もうちょっと穏便なやり方あるだろ」

『新人類相手に気を使うつもりはありません。私が気を使うのは人類だけです』

 ──こいつ、サラッと俺のことを認めていないって言っているように聞こえるな。

 普段から俺を馬鹿にしているのも、新人類だからって理由だろうか?

 今度しっかり上下関係について話をしよう。

「お前──まあいいや。それよりマリエといったな?お前には聞きたいことがいくつもあるんだが──主人公が死んだのは知ってるな?」

 本当は死んでいないのだが、死んだことにしておいた方が都合が良い。今はまだ。

 マリエは一瞬表情を強張らせたがすぐに戻る。

「──そうみたいね」

「これからどうするつもりだ?公国はまだ王国との戦いを続ける気だぞ。おまけにヘルトルーデ以外にも王女がいて魔笛がもう1つ、公国の手に残ってる。お前が主人公のポジションを奪ったのはこれ全部解決できると見込んでのことか?」

 一番知りたいことを真っ先に聞いておく。

 するとマリエは不敵な笑みを浮かべてとんでもないことを宣ってきた。

「ええそうよ。私が全部代わりを務めればいいのよ」

「──は?」

 聞き間違いだろうか。

「お前──冗談なら笑えないぞ」

「冗談じゃないわよ。私が聖女になればいいのよ。【聖なる腕輪】は私を聖女と認めたわ」

 もう回収していたのか。

 いや、それよりコイツがキーアイテムに聖女と認められた?なぜ?

 固まった俺にマリエは袖をまくって腕輪を見せつけてきた。

 腕輪が白い光を発する。

 信じ難いが、この反応は間違いなくマリエを聖女と認めている。

「ほらね。私にも聖女の資格はあるの。そういえばあんた、【聖なる首飾り】はどうしたのよ。持ってた空賊を潰したの、あんたでしょ?」

「──何がどうなってるんだ?」

 俺は頭を抱えたくなる。こんな設定ゲームにはなかった。

 ルクシオンが会話に割り込んでくる。

『なるほど──本来主人公にしか使えなかったはずのアイテムが実はそうではなかったと。興味深いですね。一度双方の持つ知識の突き合わせが必要と判断します』

 ルクシオンの提案に、俺もその必要性を感じた。

 あの乙女ゲーをクリアしているなら、自分が聖女になろうなどとは考えないはずだ。

 

 

「つまりお前はリビアの力と聖女の力を混同してたってわけだな?」

「だ、だって知らなかったのよ。戦闘パートが難しすぎて──それ以降はセーブデータと攻略情報で見ただけだったの」

 どうやらマリエはゲームを自分でクリアできず、中途半端な知識のまま主人公に取って代わろうとしていたようだ。

「そんな中途半端な知識を当てにしてこの世界を引っ掻き回したのかよ。しかも逆ハーレムとか──どれだけ迷惑なことしてくれたんだよ」

 直後、俺はこの発言が完全に地雷だったと思い知る。

「だって!それしか思いつかなかったのよ!前世じゃとことん不幸せだったし、今世だってそうよ!転生した家が領地も小さくて凄く貧乏で──家族もプライドだけは高い両親と、屑な兄姉ばかりなの!」

 マリエが涙目で訴えかけてくる。

「小さい頃から邪魔者扱いされていじめられるし、服のひとつも買って貰えないし、ロクな食事にもありつけないし!おまけに7歳の時に森の中に1人で置き去りにされたのよ!その時は死ぬかと思ったわ!その時治療魔法の才能があるって分かって、私はまだやれるって思ったわよ!なのに──なのに森から帰ったら、皆なんだよ生きてたのかよって目で私を見るし、ただでさえ厄介者扱いされてたのが更に酷くなるし!その時から私は自分の力で家を出て行って、誰よりも幸せになってそいつらを見返してやるって誓ったのよ!」

「お腹が空いて仕方ないから、森で草とか木の実を採って食べて、動物を狩って生きてきたわ!何度も死にかけたし、それ以上に怖い目に遭ったわよ!それこそ死んだ方がマシなんじゃないかって思えるくらいに!そんな生活に耐えられたのも、いつか学園に行けば王子様たちと出会って、幸せな暮らしを手に入れられると思えばこそよ!そのために治療魔法だって沢山練習したわ!私は──私はドン底から這い上がって幸せになりたかっただけなのよ!」

 泣きながらまくし立てるマリエの言葉には激情がこもっていた。

 怒り、悲しみ、悔しさ──それらがミックスされた感情をぶつけられた俺は思わずたじろいだ。

「お、おぅ──それは、何て言うか──大変だったな」

 コイツが主人公に成り代わろうとした理由が想像以上に重かった。

 よりにもよって攻略対象全員に粉をかけて逆ハーレムを作ったのは頂けないが、その考えに至るまでの経緯があまりにも不憫すぎて怒るに怒れない。

「ま、まあ、過ぎたことを言っても仕方ないよな。──おい、いい加減に泣き止めよ」

 不意に泣いているマリエのお腹から「グゥゥゥ」という音が聞こえた。

 マリエがピタリと泣き止み、お腹を両手で押さえて恥ずかしそうにする。

「お前──腹が減ったのか?」

 マリエが小さく頷く。

 仕草が前世の妹に似ていて、どうにも放っておけなかった。

「ルクシオン、食事を用意してやれ」

『はい』

 ルクシオンが部屋を出ていくとマリエは少し落ち着いたようで、荒くなった呼吸を整えていた。

 ふと疑問に思ったことを訊いてみた。

「ところで──さ?お前はゲームをクリアしたわけじゃないんだよな?ならセーブデータはどうやって手に入れたんだ?」

 マリエは俯いて言い難そうに答えた。

「兄貴──お兄ちゃんにクリアして貰ったのよ。その後すぐ死んじゃったけど」

 こいつにも兄貴がいたのか。

 奇遇だな。俺にも妹がいたよ。

 

 

 ──ん?ちょっと待て。兄貴にクリアさせた?その後すぐにその兄貴が死んだ?

「え?俺は妹が海外旅行に行くからその間にクリアしてってあのゲームを押し付けられたんだけど?──え?お前、まさか──」

 マリエの両眼が驚愕に見開かれる。

「お兄──ちゃん?」

 俺はマリエの顔をまじまじと見つめた。

 このムカつく顔は──間違いない。

 マリエは前世の妹だ!

「お兄ちゃあああああん!!」

 マリエがまた泣き出し、思い切り抱きついてきた。

 振り解くのは簡単だったが、さっきの話を聞いた後ではそんな気にはなれなかった。

 ただでさえ転生者は心の奥底に心細さを抱えているのに、こいつは呪われているのではないかと思うほどの苦労をしてきたのだ。

 俺は溜息を吐いてわんわん泣くマリエの背中をさすってやる。

 妹に対するわだかまりなどとっくに消え失せていた。

 

 

◇◇◇

 

 

 ──夜。

 俺は愕然としていた。

「あの乙女ゲーに続編だと?」

「そうよ。兄貴が言ってたヘルトラウダともう1つの魔笛は3作目のラスボスなの」

 マリエが空になった皿にシチューのおかわりをよそいながら言った。

 既に3杯目である。こいつの胃袋はどうなっているのやら。

 まあそれはいい。

 それよりあんな無理ゲー甚だしいゲームに続編作れるだけの人気があったなんて、とても信じられないんだが?

 マリエはシチューを食べながら説明してくる。

「2作目はアルゼル共和国が舞台で、3作目でホルファート王国に戻るの。ちなみに3作目はユリウスたちが3年生でユリウスの弟が入学して来るのよ。1作目のイベントを別視点で見られて、卒業後の様子も楽しめるわ」

「ちょっと待て。ユリウスの弟が入学してくるイベントなんてなかったはずだぞ?」

「そりゃそうよ。後付け設定なんだから」

 ──身も蓋もない説明をありがとう。

 それにしても、ゲーム知識が不完全だったのは俺も同じだったらしい。

 困ったな。

「俺たち以外にも転生者っているのかな?いたとしたらそいつらから情報を聞き出したいんだけど」

「──まあ、無理よね。この世界ってSNSとかないし」

 世界のどこかに俺たち以外の転生者がいたとしても探し当てる手段がない。

「結局俺たちだけで何とかしないといけないのか」

「で、でも無限復活のタネは魔笛って分かったんでしょ?だったらそれを盗み出せば解決じゃない?」

「──だといいけどな」

 魔笛を奪っても国家間の根深い対立は解消できないとルクシオンは見ている。

 それにまだ何か切り札を隠している可能性も否定できない。

 やはり保険が必要だ。王家の船と──リビアの力が。

 今のところ確実にハッピーエンドに導けると分かっている手段はそれだけだから。

「──ところで、お前に見てもらいたいものがある」

「何よ?」

「さっきは死んだって言ったけど──主人公は生きているんだ」

「──え?」

 

 医務室。

 カプセルに収容されたまま眠り続けるリビアを見てマリエは目を見開いていた。

「──どうにかならないか?」

 無駄だとは思ったが一応訊いてみた。

 俺の知らない【聖女】に関する知識をマリエが持っていることに期待したのだ。

「こんなの──禁術レベルでもなきゃ無理よ。私が今ここで聖女になったとしてもどうにかなるとは思えないわ」

 マリエはかぶりを振った。

『禁術とは何でしょうか?』

 ルクシオンが質問した。

「私も詳しくは覚えてないけど──3作目で聖女が主人公の恋人を救った時に使っていたのよ。たしか、あの世に行こうとする魂を無理やり連れ帰るの。そのためのキーアイテムが要るし、それに代償があるのよ」

 ──何となく分かるが一応続きを促す。

「何だ?代償って?」

「──もう1つの魂よ」

 マリエは重い声で言った。

 やっぱりか。よくある設定だ。

 リビアを復活させたいのは確かだが、そのために生贄が必要となると──俺にはとてもそんな残酷な決断はできない。

 誰だって死にたくはないし、死んだら悲しむ人がいる。

 この前の合同葬儀で俺はそれを思い知った。

「ゲームだとその代償をどこから用意したのか結局分からなかったし──植物状態の相手にも使えるのかは分からないし──」

「つまり、リビアの復活は望み薄ってことか──」

 俺は頭を抱えたくなる。

『生命維持は可能ですが、意識中枢の修復は私の医療設備では不可能です。現状、オリヴィアの意識を回復させる手段は──ありません』

 ルクシオンも言い難そうに告げてきた。

『都合よく最高グレードの医療設備を備えた施設や艦艇が稼働状態で残っていれば、まだ希望はありますが──その可能性は限りなくゼロに近いでしょうね。私がいた基地の医療設備も完全に失われていました』

 ──ルクシオンでもどうにもならないのか。

「2作目と3作目の課金アイテムはどうなんだ?ルクシオンみたいな船はないのか?」

「うーん──2作目にもあったことはあったんだけどよく知らないわ。私は買わなかったし」

 マリエはかぶりを振った。

 残念ながら俺の当ては外れたようだ。

 あのゲームでルクシオンは課金アイテムとして登場していたから、続編にも同じような課金アイテムが登場していれば、それもこの世界に存在するのではないかと思ったのだが。

 一応ルクシオンにも訊いてみる。

「他にお前の味方が生き残ってるかどうかは調べられないか?」 

『──生憎ですが私にはそのための手段がありません。データのリンケージは基地内部に限定されていましたし、軍用の周波数やビーコンの使用権限も与えられませんでした』

「つまり無理ってことだな?」

『──はい』

 聖女の魔法は使えないし、旧人類の科学技術も頼れない。

 リビアを救う手立てが1つも見つからない。

「あ、待って。ダンジョンは?幾つかのダンジョンは古代遺跡だったはずだけど?」

『最高グレードの医療設備を備えた施設が稼働状態で残っている可能性は極めて低いでしょう。あったとしても見つけるのにどれだけ時間がかかるかは分かりません』

 古代遺跡を虱潰しに探せば僅かながら可能性はあるようだが、それだと何年かかるか分かったものではない。

 公国と王国の情勢は俺の予想以上に危ないようだし、間に合わない可能性の方が高い。

 どうすればいい?

 頭を抱える俺にマリエが提案してくる。

「やっぱり私が聖女になるのが今のところは一番いいんじゃない?魔笛さえ確保すればラスボスは出てこないから聖女の力だけで済むんだし。聖女になれば神殿の禁書庫にも入れるから禁術について何か分かるかもしれないわよ?もう1つ魂を用意しなくて済む方法とか」

 マリエの提案は理に適っているように思えたが、その後に続いた私欲塗れの理由で台無しになる。

「それに聖女になれば私は神殿から毎年お金貰えるし!私は贅沢な暮らしができて、兄貴は蘇生魔法の情報を私を通じて手に入れられて、WIN-WINじゃない」

「お前──贅沢がしたいからって理由で聖女になるのかよ」

 別に止めはしないが、どうにも複雑な気分だ。

「い、いいじゃない。これまで散々な人生送ってきたんだから。私は着飾ってご馳走食べて輝いていたいの!」

 ──クソッ。こいつの悲惨すぎる過去を聞いてしまったせいで言い聞かせる言葉が浮かばない!

 俺は根負けした。

「そうかよ。じゃあ聖女にでも何でもなればいいだろ。【聖なる首飾り】だってそこにあるしさ」

 カプセルの横に置かれた【聖なる首飾り】。結局リビアの力にはなっていないようだ。

 だったらマリエを聖女にするのに使った方が有効だろう。

「やった!」

 小躍りしそうなマリエを見ているとどうにもモヤモヤする。

 そもそもコイツが逆ハーレムを作ってゲームを引っ掻き回さなければ、リビアはこんなことにならず、俺たちが頭を悩ませることもなかったのだ。

「贅沢にかまけてないでちゃんと調べて情報を渡せよ」

 嫌味も兼ねて釘を刺しておく。

「分かってるわよ」

 マリエはすっかり上機嫌だった。

 

 

◇◇◇

 

 

 翌日。

 しれっとした顔で学園に戻って来た俺はアンジェに呼び出しを受けた。

「放課後に313号室に来てくれ。話がある」

 有無を言わさない妙な迫力がある声でアンジェはそう言った。

 別に俺としては断る理由はなかった。

 ()()()()のだ。

「ねえ、リオン君。放課後買い物に付き合ってよ」

 昼休みにクラリス先輩からお誘いを受けた俺は完全にダブルブッキング状態になった。

 どうすればいい!?アンジェに呼び出されていると正直に言うか?

 でもそうしたらクラリス先輩に自分を優先して欲しいって言われるだろうし、そうなったらアンジェを、引いてはレッドグレイブ家を怒らせかねない。

 かといってアンジェを優先したらクラリス先輩に恨まれる。

 バレなきゃいい、とはいかないだろうし、アンジェからの呼び出しであることを隠せばバレた時に余計ヤバいことになる気がする。

「えーと、実は用事があって──」

 目が泳ぎ、返事を濁す俺にクラリス先輩の表情が少し硬化する。

 あ、これマズい、とはっきり分かった。

「用事って何かしら?私に話しにくいことなの?」

 これは──下手に隠すと却って良くないことになりそうだ。

 直感でそう判断した俺は素直に白状することにした。

「実は放課後はアンジェから呼び出しを受けていまして──」

「あら、そうなの?」

 クラリス先輩は驚いた素振りを見せなかった。

 ──まるで予期していたかのようだ。

 そしてクラリス先輩は更にとんでもないことを言い出した。

「なら私もついて行くわ。間違いなく私と貴方の婚約絡みの話でしょうし」

 ──修羅場の予感に冷や汗が噴き出る。

 クラリス先輩は笑顔を崩さなかったが、目が全く笑っていなかった。

 本当に──なんで俺にはこうも厄介事ばかり降りかかってくるのだろうか。

 




蘇生魔法って書籍版だとどうなるんだろう──たぶんゲームで支払われた代償は初代聖女の魂なんじゃないかと思うけど。
あとファクトってもしかして3作目か6作目の課金アイテムだったりするんだろうか?
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