元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
番外編※元主婦でしたが幻想郷とかいう場所に迷い混んで選択を迫られてます。前編
最愛の人を亡くした。
電話が鳴ったのは12時を回った頃。また同僚の人達と飲みに行って遅くなっているんだろうな...なんて考えは一瞬で消し飛ばされてしまった。
私は直ぐに病院へ向かった。信じられなかった...いや、信じたくなかったのが本音だろう。静寂に包まれる病室の中、すっかり冷たくなってしまった彼の手をとり、辺りが明るくなるまで静かに泣いた...
それからの生活は酷かった。自分の胸の真ん中が、ぽっかりと抜け落ちたような、生きることに疲れてしまったような...。
その日も慣れないパートが終わり、街灯のまばらな夜道を一人、静かに歩いていた。とぼとぼ、なんて音が聞こえる気さえした。
詳しく話を聞いたけれど、トラックとの事故だったらしい。正直、原因はどうでも良かった。彼がいなくなってしまったことに何も変わりは無かったのだから...
いつも明るくて、それで色々と気配りのできる面白い人...私なんかには勿体なかったなぁ...。
「...あれ?...ここは...」
そんな、もうどうにもならないことを考えながら歩いていた私は、あることに気づく。...見覚えのない、暗い路地。周りには灯りもなく、人気のないボロボロの平屋に雑木林。立っている場所は、乱雑に踏み均されたような獣道。
何故か分からないが、そのまま進んでいく。ここがどこかなんて知らない。けれど、勝手に足が動く。不思議には思ったけれど、その先を考えられるほど、頭は回らなかった。
「...ここって...」
しばらくして着いたのは、古びた神社...?のようなところ。穴の空いた賽銭箱に、削れた石灯籠や寂れた本殿。...こんな所にどうして...
ふと我にかえると、いつにも増して疲れがドッと、両の肩に重くのしかかってくる。...少し休もうか。私は境内にあった枯れ木に背中を預け、腰を降ろす。
「...なんか、疲れちゃったなぁ...」
そんなことを一人ぼやく。見上げた夜空は、都会の喧騒に阻まれることなく、各々が光輝き様々な星座を作り出している...。
つうっ...と頬を撫でる何か......また、泣いちゃったみたい...弱いなぁ、私。こんなんじゃ、あの人に怒られちゃうかな...。
急に一人で...独りでいることが怖く、酷く心細く思えた。両の膝を抱え、顔を埋める。流れ出す涙は止まるどころか、勢いを増していった...
「はっ!......ふぅ...こんなところですかね...」
構えを解き、額の汗を拭う。私は日課である朝の鍛練を終え息を吐く。後はいつも通りに門番としての仕事に就く。...今日も平和だと良いなぁ。
「ん?...あれは...」
門の前で立っていると、森の奥、霧の湖方から声が聞こえた。...この声は...
「あ、やっぱりチルノさん達でしたか」
「やっほー、めーりん!おはよー!」
「待ってよ、チルノちゃ~ん!」
飛んできたのは館近くに住む妖精の二人だった。チルノさんを追うように、大妖精さんが飛んでくる。まあ、よくみる光景だ。
「おはようございます、チルノさんに大妖精さん。こんな朝早くにどうかされましたか?」
「あ、あの実はですね...「変な人が倒れてたのー!」...そういう訳なんです...」
...人?ですか...平和、では無さそうかなぁ...
「...ん?あれ...ここって...」
目が覚めると、知らない天井だった。...というか、私...えーっと、確か良く分かんない神社で...泣き疲れて寝ちゃった...のかな。でもここって...
私は体を起こし、周りを見渡す。...うん、どうみても部屋。ホテルの一室みたい...ベッドの上で考えを巡らせる。...なんでこんな所に?
「うーん...ん?」
色々と昨晩のことや、今、現状のことを考えている中で、ふとある何かが視界に入る。私はそちらに目をやる。
「「......」」
「...子供?」
ベッドの脇に可愛らしい少女が二人、膝を付いてベッドに手を置いてこちらを見ている。...よく見るとメイド服?のような...そんな格好。片方が赤を基調としたデザイン、もう一方は白いデザインだ。
「...えーっと...おはよう...?」
「!...起きた、起きたよー!!」
「おきたよー」
「って、ええ...?」
とりあえず挨拶かな...なんて思い、声を掛けてみると、二人は驚いたようにそう言い残し部屋を出ていった。...なんで?
ポカンとしていると、開け放された扉の外、廊下から足音が聞こえてきた。...誰かを呼びに行ったのかな?さっきの子達は...
「あ、おはようございます...目が覚めたようで...良かったです」
「え、あ...おはようございます...えっと」
部屋に入ってきたのはさっき子達と同じような、ただ着ている服が青くなっただけの少女。ぺこり、とお辞儀をして挨拶をしてきた。少しおどおどしながらもひとまず返しておく。
「ごめんね...えっと、ここって一体...?」
「...そうですね、とりあえず一から説明しますね。実は...」
...どうやら、森の中で倒れていた私をこの館?に運んで寝かせて置いてくれたらしい。...ありがたい話だけど...あの神社の近くにそんな館があったなんて...。
そして目の前の少女、メイドさんらしい...。こんな小さな子供がなぁ...というか、さっきの子達もなんだ...。それにしても、この子10歳いかない位だろうけど、しっかりしてるなぁ...。
「ひとまず、私はメイド長に貴女様が起きたことをお伝えしてきますね...申し訳ありませんが、このお部屋でお待ち下さい」
「へ?...あ、はい...分かっ...りました...」
そんなことを考えていると、そう青いメイドの少女は扉を締め、メイド長さん?とやらの所に行ってしまった。...とりあえず待ってようか...そう、思っていたところだった。
「...へ?何...これ」
突然、目の前に...えっとなんて言ったらいいんだろ...裂け目?なんか空中に筋みたいなのが...ってうわ、なんか開いた...
「ふぅ...ご機嫌よう、良く眠れましたか?外来人のお嬢さん」
「ほえ?...え、あ、はい...そりゃぐっすりと...」
開いた穴の中からは金髪の女性が現れた。...はい?どうなってんの?女性はその裂け目に肘を置き、そんなことを聞いてくる。...いや、夢?これ...
「...えーっと、貴女は?」
「八雲紫。ここ、幻想郷と呼ばれる場所の管理者です」
...?えーっと、げんそう...きょう?かんりしゃ?...頬をつねる。
「痛い...」
「夢ではありませんよ。ここは外界...簡単に言えば、貴方が元いた場所とは隔絶された場所...と言っても、急に理解は出来ませんよね。詳しく、経緯を説明しましょう」
そこからはぼんやりと、その人の話を聞いていた...。
「忘れられたモノの流れ着く場所...」
やはり夢物語なのではないか、という内容をどうにか飲み下し呟く
「とはいっても、貴方は稀有な例です。外界...貴方が元いた場所へ帰ることも出来ます」
「へ?か、帰れるんですか!?」
帰れる、という言葉に強く反応する。それなら一刻も早く我が家へ...って、あれ?
「えぇ...と、時間のようです。もし帰りたい、という意志があるのなら、博麗神社という場所へ向かって、そこの巫女に頼んで下さい。それでは」
「え、あ!...消えちゃった」
何かに気づいたのか、帰る方法を端的に言い残し、その人...紫さんは不気味な裂け目の向こうへと消えていった。
こんこん
それとほぼ同時に部屋の扉がノックされる。
「失礼します。昼食の準備が出来ましたので、こちらへどうぞ。ご案内致します」
がちゃり、と開かれた扉からは先程の青いメイドの少女が入ってきた。どうやら昼食の時間らしい...ふと腕時計を見る。時刻は12過ぎ、随分とぐっすり眠ってしまったらしい。
言われるがままにそのメイドさんの後をついて行く。その道中、さっきの、紫さんの言葉を思い出す。
『帰りたい、という意志があるのなら』
私の帰る理由って、なんだろう。
ちゃんと書けたかなぁ...なんて。後1話、予定してます。ここまで読んでくださりありがとうございます。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
-
読んでる
-
読んでない