元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
いつもは静かなこの大図書館。パチュリー様が本のページを捲る音だけがこの広い空間に響く。...そんな静けさの心地良い場所ではあるけれど、今日は違うみたいです..。
手に持ったいくつかの蔵書。パチュリー様の読み終わった本を元の場所へと戻していく中、お二人の談笑する声がとても楽し気に聞こえる...。
ちらり、と本棚の隙間から様子を伺う。...うーん、魔理沙さん、今日は本を返しにきた訳ではないみたいで...多分またいくつか持って帰るんだろうなぁ...。
正直な話、別にここにある蔵書の貸し出しに関してはパチュリー様曰く、別に構わない、とのこと。何度か読んだ物や、特に興味の無い物などもあるからでしょう...。
だけど、司書として蔵書の管理を任されている私からすると、勝手に持って行くのは止めて欲しいところなんですよねぇ...いつの間にか穴だらけになった本棚を見ると胃が痛くなってしまう...。
「...こあ、ちょっと来て頂戴」
「あ、はいは~い。只今~!」
おっと、ご主人様のお呼びみたいですね。直ぐに返事を返し、お二人の元へ向かう。...一応、魔理沙さんに本のことお願いしておこうかな...
ガラス片の入った塵取りを片付けた後で、私は別の仕事に手を付けていた。今いる場所は倉庫。色々な生活用品がところ狭しと並んでいる中で、作業をしている。
「えーっと...次は常備薬の確認、かな」
手元にあるリストを見ながら、どれがどのくらい消費されているか、足りなくなっていないか等を確認していく。...なんでこんなに胃薬があるんだろうか...え、これでも先月より少ないの?
「...ん?これって...」
薬類の確認をしていると、「パチュリー様用」と書かれた紙の貼られた小箱があった。...あれ、これ喘息のお薬...にしてはちょっと数が多い気が...。
普段、パチュリー様のお薬は大図書館の方にほとんど置いているんだけれど...こっちにこの量ってことは......後で持って行こうか。
まあ、ひとまず目の前の仕事を終わらせよう。...えーっと...お皿足りてないね...後は...
けほっ...こあに紅茶の用意を頼み、再び魔理沙と談笑する。少し久しぶりなのもあり、まだ話したいことは多く残っている...やっぱり誰かと話すのは良い刺激になるわね...。
「...あ、ところでパチュリー。久々に弾幕でもどうだ?最近は骨のあるヤツがいなくてさ、退屈してたんだよ」
...スペルカード、ね。そういえば、最後にやったのはいつだったかしら...フランにせがまれてやった覚えがあるような...まあ、久々にやりましょうか...。
「...そうね、少し試したいスペルカードもあるし、咳もあんまり酷くないから...」
「お、流石話が早い。被弾三、スペカ三でいいぜ」
「えぇ、久々だけど...退屈はさせないわ...」
私が合意を言い終える前に、意気揚々と箒に跨がる魔理沙...らしいと言えばらしいわね。さて、ひとまず...
「ん?...なんだこれ...」
「結界、みたいなものよ...」
軽く詠唱を終えると、私たちの周りに薄紫色の半透明な壁が現れる。...流れ弾が本に、なんてことが無いようにね...こぁが怒っちゃうから...。
私は魔導書を片手にふわり、と宙に浮かぶ。それを見た魔理沙も同じように浮かび上がって来た...さ、やるからには先輩として、負けるつもりは無いわ...
沢山のチェックや物の残数、他にも色々と補足をしておいたリストをメイド長に渡して、今は大図書館へ向かっている。...もう魔理沙さんは帰ってるだろうか...
手に持った小箱に目をやる。一応、メイド長に聞いてみたけれど、別に買いすぎた訳でもないらしく、大図書館の方へ運んでおいて、とのこと。
「...すっかり慣れちゃったなぁ...」
そんな言葉が口をついた。...いつの間にかこの館で目が覚めて、おおよそ一ヶ月。最初は戸惑いもあったけれど、どうにかやっていけている。
元の暮らしに未練は無い。...というよりそんなに覚えていないしね。...記憶に関しては、人としても、妖精メイドとしても、どこか穴が空いたような...そんな感じだ。
ぶんぶん、と首を振る。まあ、そんなに思い詰めても何か思い出したりする訳でもない...今は妖精長として、自分のやるべきことをしよう、うん。
「...ん?あれは...」
大図書館までもうすぐとなり、なんなら扉が目に入った。そこに、見覚えのある黒い妖精メイドの姿があった。どうやら中を覗いているようだ...
「どうかしたの?くーちゃん」
「...ん、あぁ、妖精長か...いやなに、少し面白いものがね...ほら」
?...おもしろいもの...。くーちゃんに促されるように扉の合間から図書館を覗く。
「って、うわ...これってもしかして...」
「ん、弾幕ごっこだよ。パチュリー様がやってるのはオレも初めて見るよ」
見上げる形でその弾幕ごっこが目に入った。はえー...初めて見た...。妹様や他の妖精メイドから聞いたことはあったけれど...こんな感じなんだ。...相手はどうやら魔理沙さんみたいだ。
ふっと視線を落とすと、小悪魔さんも二人を見上げている。...よく見ると、二人の周りには薄い...結界?のようなものが見えた...はへぇ...。
「ところで、妖精長は何か用でもあるんじゃないか?...ほら、その箱...」
「ほえー...っは!...そうでした...」
っと、いけないいけない...見惚れてしまった。そうそう、これを届けに来たんだった。ノックは...まあ、今は要らないだろう。少しだけ開いたドアを押し、私は中へと入る。
「...あれ?貴女は確か...妖精長さん...でしたっけ。何かご用ですか?」
「失礼します、えーっとこのお薬が...」
そう、小悪魔さんに声を掛けられる。ひとまず要件を...と話そうとしたそのとき、周りにあった結界が突然消えてしまった。
ったく、パチュリーのやつホントに久々なのかよ...んー、このままだとジリ貧だしな...ここらで一発かまさないと...でももうスペカは一枚だしなぁ...どうするか...
「...あら、来ないのね...それじゃあこれで...げほっ?!ごほっごほっ...」
「って、パチュリー!?」
最後の詠唱に入ろうとしたパチュリーが、突然咳き込み始めた。すると、周りの結界が消え、パチュリーはそのまま、真っ逆さまに落っこちていく。ッ不味い、間に合うか...
...もう、なんでこんな時に...自由落下していく体、力は上手く入らないし、呼吸もままならない...。鳴りを潜めていた喘息の発作。...やっぱり、少し無理し過ぎたかしら...
逆転した視界の端、こぁが何か言ってるみたい...ダメね、うまく聞こえないわ...。少しずつ近づく地面...痛そうね...大丈夫だといいけれど...
ドサッ
...あれ、痛く...無い?...少し暖かな、柔らかい感触...どうなったの...?
「...たく、世話の掛かるヤツだぜ」
「...けほっ...魔理...沙...?」
「おいおい、あんましゃべんない方がいいぞ」
頭の上辺りから、魔理沙の声が...ってえ?ちょ、もしかして今って私...お、お姫様抱っこされてる?......魔理沙に?......ええっ!?
「おーい、小悪魔。薬ってないのか?喘息用の...ってお前は...」
「ここにありますよ。魔理沙さん...小悪魔さんは急いでお水を取りに...ってパチュリー様大丈夫ですか!?顔真っ赤ですよ!?」
「って、おまっ、大丈夫かよ!?」
いつの間にか居た妖精長。いや、違う違うの。そんなに心配されるほど、喘息の発作自体は激しくないの、動悸は激しいけど。顔が真っ赤なのは...べっ、別にそう言う訳じゃ...って魔理沙、顔近っ...あ
「...むきゅう」
「パチュリー様ーっ!?」
「パチュリーっ!?」
生きてます(2話連続 3度目)
パチュリー様
喘息持ちの出不精魔法使いさん。とは言え、宴会などのイベントごとには積極的に出向くようになったのでマシにはなっているらしい。魔理沙さんのことは...まぁ、ねぇ...?態度で分かる、でしょ...はい
小悪魔さん
パチュリーさんの使い魔。基本的には大図書館で本の整理をしている。いつの間にか魔理沙さんに持っていかれてしまった本たちに頭を抱えている
ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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