元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます   作:微 不利袖

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それでは、ゆっくり読んでいってね...なんてね


10話 宴会と書いて〝たたかい〟と読む#3

 

 

「さあ、着いたわよ!」

 

「ここが...博麗神社、ですか」

 

 

気の遠くなるような長く続く石階段を登りきり、お嬢様がそう告げる。...というかこんな所に神社って、参拝客はちゃんと来ているんだろうか...周りでは多種多様、様々な人妖が入り乱れ、宴会を楽しんでいる様子が伺える。

 

準備の手伝いのために早めに来た筈なんだけれど...境内や神社の中は、もう既にかなりの賑わいを見せている。ちなみにチルノさん達はお知り合いがいたのか、直ぐにすっ飛んでいってしまった、奔放というかなんというか。

 

 

「お!お前ら良く来たな、歓迎するぜ」

 

「あ、魔理沙ー!やっほー!」

 

 

そんな中で、少し離れたところから聞き覚えのある声が聞こえた。そこには見慣れた白黒衣装にとんがり帽子の魔理沙さんの姿があった。フラン様が呼び掛けに気づいたのか、手をブンブンと振って声をあげている。

 

 

「おう、というか全員来てるじゃんか。実は初めてじゃないのか?」

 

「そうね、折角久々に宴会があるから、とお嬢様もおっしゃっていらしたから...それより、宴会が始まるのはもう少し夜が更けてからじゃなかったかしら?」

 

「あはは...それなんだがなー...」

 

 

こちらに来た魔理沙さんがそんなことを言う中、メイド長が疑問に思っていたことを質問した。渇いた笑いを一つ挟んで答えが返ってくる。

 

 

「久々だからって、待ちきれなかった奴らが勝手におっぱじめちまってなー。気持ちはわからんでもないが...」

 

「...ホントにそういう面子が多いのね...」

 

「だろー?乾杯の音頭ぐらい主催の私にさせろっての。ろくに肴もできて無いのに飲みやがって、たくよー」

 

 

苦言を呈するパチュリー様に愚痴をこぼすように返す魔理沙さん。空きっ腹に酒、というのは人妖問わずに身体に悪そうだけれど...。さて、私達の仕事は、と

 

 

「そんなわけで咲夜、いつもみたいに頼めるか?」

 

「えぇ、今日は頼もしい子達も連れて来てるからね」

 

「お料理なら任せてください~、モノクロさ~ん」

 

「おおっ、って美鈴、お前なにやってんだよ...」

 

「いやぁ...乗っかられちゃって...」

 

「特等席です~」

 

 

勿論料理のお手伝いだ。頼もしい子達、と言われると私としては少し荷が重いけれど。なんて考えているとその言葉に続くようにきーちゃんが...何故か門番さんに肩車されてそう答えていた。

 

 

「大丈夫なのか?妖精メイドって...」

 

「大丈夫よ、なんなら能力抜きなら私より動ける子だっているから。ね、よー...精長」

 

「へ?いや、えっと...」

 

「って、お前も来てたのか青いの...コイツがお前より...?」

 

 

はい?私ですか?メイド長。...というか魔理沙さん、青いのってなんですか青いのって、もう何回も会ってるでしょうが。

 

 

「妖精長です、魔理沙さん。今日はお手伝いさせてもらいますので、よろしくお願いしますね」

 

「お、おう...よろしくな。まあ、咲夜が言うんなら大丈夫か。それじゃ、頼んだぜ」

 

「じゃーねー、魔理沙!後で飲もうねー!」

 

 

そう言い残し他の参加者の方々がいる方へ向かう魔理沙さんの遠ざかる背中に、声を掛けるフラン様。ひらひらと手を振っているところから、聞こえているようだ。フラン様も嬉しそうに笑っている。

 

 

「それじゃあ美鈴、後の事はよろしくね」

 

「はい!任せてください。そんなわけですから...」

 

「ほら、きーちゃんもそろそろ降りて来てください。美鈴さんも困ってますよ」

 

「...は~い、お邪魔しました~、門番さん」

 

 

少し名残惜しそうにぱたぱたと降りてくるきーちゃん。おそらく、あの雨の日からかきーちゃんは美鈴さんによくなついているようだった。元から一緒にお昼寝をしたりする程には仲良しだったみたいだけど。えーと、あとは...

 

 

「重ーい!門番さん変わってー!」

「かわってー」

 

「ありゃりゃ...任せてください、よっ、と」

 

 

黒こげになった小悪魔さんを担いだあーちゃんとしーちゃん。まだ意識が戻っていないらしく、美鈴さんに代わってもらっている。...パチュリー様は怒らせてはいけない、よし、覚えた。そのままメイド長と私達妖精メイドを残し、お嬢様達は宴会の喧騒に紛れていった。

 

 

「ん...あれ?妖精長?」

 

 

そんなことを考えていると、そう呼ぶ声が聞こえた。あれ?よーちゃん呼びをしてこないうえに、この声は...

 

 

「って、むーちゃん?!」

 

「よっ。妖精長達も宴会きてたんだね、館の仕事は済んだのかい?」

 

 

むーちゃん?!あれ、なんでこんな所に...ってあらららら??

 

 

「おいむーちゃん、どうかしたのか...って妖精長」

 

「くーちゃんまで?!」

 

 

一人ならず二人まで...いや待てよ、もしかして。周りを見渡す。...あぁ、悪い予感は的中した。少し遠くに、他の妖精メイド達を見つけてしまった。神社にて全員集合。いや、なんで?

 

 

「むーちゃんくーちゃん、宴会のこと何処で?」

 

 

怪しいのはあーちゃんとしーちゃん。大人しく着いてきてくれれば御の字とおもっていたけれど、あの二人ならやりかねない。そう思いつつも、目の前の二人に問いかける。

 

 

「んー?あぁ、今日の朝休暇を貰っただろ?そんで館から出る時に門番さんがさ。な、くーちゃん」

 

「ん、オレも一緒だったよ」

 

「いやー、宴会休暇ってやつだね。メイド長も怖いだけじゃ無いんだなって、あたし見直しちゃったよ」

 

 

あはは、と笑いながらそう返された。美鈴さんの優しさが今はとても...いや、やめておこう。1割どころか1分、1厘も悪くないんだから、うん。

 

...あーちゃんとしーちゃんに目をやる。

 

 

「じゃ、じゃあよーちゃ...妖精長。私達はこの辺で...さらばっ!」

「さらばー」

 

「ちょっ?!こら待て!って、あー...」

 

 

二人の逃げた先を見てそんな声が漏れてしまった。...こんなこと言うのもあれだけれど、可哀想である。

 

 

「...あら、お手伝い...するんでしょ?」

 

「いや、あの......ひゃぃ...」

「ひゃぃ」

 

 

メイド長のドスの利いた声はもう、ナイフより怖い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...やっぱり怖いな...」

 

「しー。また刺されるぞ、むーちゃん」

 

 

 




しーちゃん

白いメイド服を着た妖精メイド。普段からぼーっとしてたり、他の妖精メイドの言動を真似たりと少し流されやすい性格。素直な子

ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また

シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。

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