元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます   作:微 不利袖

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はい、14話になります。番外編挟んで遅くなりましたが、これにて宴会編は終了ですね。それでは、ゆっくり読んでいってね...なんてね


14話 厨房と書いて〝せんじょう〟と読む#4

 

 

「おーおー、まーた派手にやってるねぇ...」

 

「むぐむぐ、んくっ...あら、萃香じゃな~い。貴女も一緒にどうかしら~、美味しいわよ~?」

 

「いや、もう空じゃんかその皿...」

 

 

人だかりの出来ている境内の一画。積み重なった皿に囲まれ、冥界の女主人は口元を汚しながら人懐っこく冗談を口にする。紫のやつと一緒で、結構長い付き合いになるけど...まぁ、いつも通りと言うかなんと言うか...

 

 

「今日は紫は来てないのね~...お料理美味しいのに残念だわ~、持って帰りたいくらいね~。あーむっ、ん~」

 

「そうさねぇ...どこでなにやってんだか」

 

 

そんな会話をしながら、空の月を見上げる。ったく、何が目的なんだか...まぁ、別に何でも良いけどね。そうそう、それよりも、だ

 

 

「よっ、と。そろそろどうだい?紫も居ないし、一杯付き合っておくれよ」

 

「ん~?...そうね~、ちょうどお腹も膨れたところだし...良いわよ~、一緒に飲みましょ~」

 

 

どんっと、持ってきた一升瓶を置き、幽々子の対面に座る。へぇ...腹が膨れた、ねぇ。実は初めて聞くセリフなんじゃないか?ま、飲むんなら何だっていいか。さてと、今夜は良い酒が飲めそうだ...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおぉ、なんだこれ...」

 

 

幽々子の食いっぷりで心配になり、厨房の様子でも...と思って見にきたんだが、これは...

 

 

「どいてー!モノクロさん!」

「どいてー」

 

「うわっと!...今のは確か...」

 

 

厨房の一画を見ている中で、私の両脇を走り去って行ったのは紅魔館の...いや、それよりもだ

 

 

「そーちゃん洗ったお皿貰いますね!くーちゃんはそこのと、あとこれも持ってって下さい!はーちゃんはくーちゃんと一緒に!」

 

「...ん、どんどん洗うよ」

 

「これと、これね。はーちゃん、行こっか」

 

「......」こくん

 

 

半分怒号のようにも取れる乱暴ながらも的確な指示、そして一切止まることのない手元での作業...こりぁ咲夜の言ってたこともあながち間違いじゃなさそうだな...

 

 

「あら、魔理沙じゃない。...ふふっ、言ったでしょう?私より動けるって」

 

「...あぁ、確かにその通りだったみたいだな」

 

 

ぼけーっとその光景を見ていると、件のメイドからそう、どこか自慢気に言われる。両手に持った料理からして、今から運びに行くところだろうか

 

 

「幽々子だが、いつもより明らかに食べるペースは早かったぜ」

 

「...そう、分かったわ」

 

 

私から見た情報をそのまま伝えてやる。食べるペースが早い、ということは満腹までも早い、ということ。流石の亡霊でも、胃袋には必ず限界ってもんがある...多分

 

 

「悪いが、料理に関して私が手伝えることは特にない。頑張ってくれよ」

 

「えぇ、皆に伝えておくわ。終戦は目と鼻の先ってね」

 

 

すれ違い様に短く言葉を交わす。へっ、頼りになるなぁ、紅魔のメイドは誰も彼も...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい...」

 

「みーちゃんは食材の補充を!おーちゃんは空になったお皿の回収お願いします!あと...」

 

 

じゃんじゃん指示を飛ばす。皆はとても良く動いてくれている。この調子なら...いや、相手は未知数、人ならざる者。どこまでいっても気が抜けない

 

 

「おーい、そこの妖精さんよー」

 

「あーちゃんしーちゃん、帰って来て直ぐで悪いですが、そこの料理出しちゃってください!」

 

 

やっぱり最初の方から手伝ってくれている三人の疲労はかなり多いだろう。でも、それでも頑張ってくれている。そんな中で私が動かない訳にはいかない...

 

 

「むー...おーい!そこの青い妖精さんよーい!」

 

「そこの鬼の方はお皿を...って鬼の方!?」

 

 

勢いそのまま指示を飛ばしている中で少し違和感を覚えたのも束の間、視覚からの情報でそう答えを出す。調理台からひょっこりと出た頭、こめかみの辺りから生えている捻れた二本の立派な角...そう、間違いなく鬼そのもの。ただ...

 

 

「...ちっちゃい?」

 

「なっ!?...流石に失礼じゃないかい?」

 

 

私と同じくらいの背格好にそう漏らしてしまう。いや、だって鬼って言ったら、こう...ねぇ?ぐわーって感じのもっとおっきいお方を想像すると言うか...

 

 

「あっ、す、すみません...えっと、それで何かご用ですか?...えっと」

 

「ん?...あぁ、萃香で良いよ。いやなに、少しばかり厨房の方に言伝てがあってね...咲夜のヤツは居るかい?」

 

 

ひとまず鬼のお方...萃香さんに謝罪し、用件を聞く。どうやらメイド長に用があるらしい...けれど

 

 

「すみません、メイド長は今料理を運びに神社の表の方に。良ければお伝えしておきますが...」

 

「あ、そう...そんじゃお願いしようかな」

 

 

言伝ての言伝て、というなんとも遠回りになってしまうが、それでもまぁ大丈夫だろう。それに、早く用件を済ましてもらって調理に戻らなくては...

 

 

「コイツ、酔い潰れちまったからもう大丈夫だって伝えといてくれ」

 

「...へ?」

 

「すぴ~...」

 

 

調理台で見えていなかった身体を覗かせ、そう言い放つ萃香さん。その小さな体躯に似合わず、肩に担いでいたのは...頬を真っ赤に染め上げ、幸せそうに眠っている先ほどの大食いさんだった。空いている左手には空の瓶が一つ。鬼殺し「真打ち」と書かれている

 

 

「あら萃香、って...そう、終わったのね......」

 

「おう、お疲れさん咲夜。いやー、今日も良く食ってたよ」

 

「すぴぴ~...むにゃむにゃ」

 

 

目の前の事態に頭が追い付かず、一種のパニック状態に陥る中で、メイド長が厨房へ帰って来た。萃香さんを一瞥すると安堵の息を漏らし、肩の荷が降りたような表情を見せている。えーっと...つまり

 

 

「えっと、メイド長...これは...」

 

「そうね...お疲れ様、妖精長。貴女の...いえ、貴女たちのおかげね」

 

「あ、そう...ですか...はあぁっ」

 

「ちょ、大丈夫!?妖精長!」

 

 

その言葉を聞いて、どっと疲れがのし掛かってくるのを感じ、膝からがくりと崩れ落ちてしまう。そっか、終わったんだ...良かった。...でも、酔い潰れたってことは...まだまだだなぁ、私

 

 

「へぇ、あんたが今日の功労者って訳か。お疲れさん、えっと...妖精長?だったっけ?」

 

「あ、いえ...皆さんのおかげです。それに、満足してもらえなかったみたいですかね...」

 

「んー?そうでもないよ、ほれ」

 

「むにゃむにゃ...もうお腹いっぱ~い...くかー」

 

 

!...そうですか...なら良かったなぁ。ん、やっぱりちょっと疲れちゃったかなぁ...ちょっと瞼が重いや

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あらら...ま、いっか。そんじゃ私はコイツを本殿に寝かせてくるわ。亡霊つっても重いもんは重いしな」

 

 

おっと...ついでにこの妖精さんも、な

 

 

「すぅ...すぅ...」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ...ひとまずは終わったわね。お疲れ様、藍、妖夢」

 

「は、はい!今日もご迷惑おかけして申し訳ありません...」

 

「ははっ、良いんだよ。困った時はお互い様だからな。咲夜も、お疲れ様」

 

 

萃香との話を終え、残りの皆にも声をかける。もう、妖夢は相変わらずね...乗り切れたのは皆のおかげなのに。それに...

 

 

「おっと、そう言えばあの子たちは...」

 

「はい、あの手際の凄かった...」

 

「一緒にお酒は、今日はダメそうね...疲れて眠っちゃったみたいだから」

 

 

間違いなく、あの子たちの協力なくしてこの宴会は平和な終わりを迎えることはできなかったでしょうね

 

 

「そうか...またいつか一緒に飲もうと、そう言っておいてくれると助かるよ」

 

「お料理のコツとかもお聞きしたいです!」

 

「そう...きっと喜んでくれると思うわ」

 

 

各々からの感謝は、責任を持って私がしっかりと伝えることにする。今日の功労者は間違いなく妖精長...よ、よーちゃん、ね...えぇ

 

 

「さーくやー!終わったのー?」

 

「あらお嬢様、って真っ赤っか...」

 

 

そんな中、後ろから元気な声...ってお嬢様でしたか。もうすでにかなりの量飲まれているらしく、ご尊顔がスカーレットデビルになってしまっている

 

 

「はい、お料理のお手伝いは終わりましたわ。今日はいつまでここに?」

 

「愚問ね!もちろん朝までコースよ!」

 

 

...日傘、あったかしら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふあぁ...あら~、もう朝なのね~...ん?」

 

「すぅ...すぅ...」

 

「あら...持って帰りたいくらい、ね~...うふふっ」

 

 

 




はい、これにて宴会編終了です。いやぁ、こうするしか無かったんや。さてと次回はどうなることやら...なんてね。ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また

シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。

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