元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます   作:微 不利袖

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そんなこんなで16話です。さて、咲夜さんはどうするんでしょうかね...お気に入り感想、評価栞等々、本当にありがとうございます。とても励みになります、うれしい。それでは、ゆっくり読んでいってね...なんてね


16話 半分幽霊さんは死にたがりさん

 

 

「ご馳走さまです。洗い物、手伝いますね」

 

「あ、お粗末様です...って、お客人にそんな...」

 

「お気になさらず。それに、いつもお仕事している時間ですので、何かしていないと落ち着かなくて...石鹸、お借りしますね」

 

 

色々と騒がしかった朝、朝食を終えて私は何かお手伝いしようと台所までやって来た。妖夢さんもすっかり落ち着いたみたいで...良かった良かった。遠慮を押し退け、半ば強引に石鹸をお借りする

 

それにしても、本格的な和食を戴いたのはいつ振りですかね。昨日の宴会ではいくつか作ったものの、館では基本洋食のメニューが多かったので、素朴な味付けの日本食はなんだか新鮮に感じましたね。お味噌汁、美味しかったなぁ...なんて考えながら食器を洗う

 

 

「あの、本当にすみません。ウチの主人がご迷惑を...」

 

「もう...大丈夫ですよ、気にしてませんから...むしろ朝ご飯まで用意して頂いて、こっちが申し訳ないくらいですから」

 

「それでもこんな暴挙、到底許されることじゃ...」

 

 

カチャカチャと食器の触れ合う音が止まり、そう切り出される。...うん、やっぱり妖夢さんは良い人ですね。気遣いのできる優しいお方です...でも

 

 

「あたっ?!...へ、な、何を...?」

 

 

ぺちんっと可愛らしい音が響く。私が妖夢さんの額を指で弾いた音...あれ、思ってたより弱々しいや。被弾した妖夢さんはまさしく鳩が豆鉄砲食らったような顔をしている

 

 

「次謝ったらぐーですよ、ぐー」

 

「え、いや...あの」

 

「もう...良いですか?勝手に連れて来た幽々子さんも幽々子さんですけど、そんな中で呑気に寝てた私も悪いんです。はい!これでおしまいです!」

 

「...で、ですが」

 

 

拳を振りかざしながら、冗談混じりに言う。せめて私の目が届く範囲の方には、そんな暗い顔をして欲しくないですしね。ただ、それでも何か言いたげな妖夢さん...そうですか、ならば...

 

 

「...妖夢さんって、そういうのお好きなんですね」

 

「えっ?いや...ちょ「いえっ、そうですよね。そういう趣味とか趣向だとかも有りますよね...やっぱり人それぞれって言うかなんと言うか...」いや違いますよっ!?そんな人のこと...へ、変態みたいに!!というかなんでそんなあからさまに距離とるんですかっ!?違いますってばぁ!!」

 

 

さっきまでとは裏腹に明るい声色でまくし立ててくる妖夢さん...うん、こっちの方が良いですよ、やっぱり。演技には自信が無かったけど、上手く引き出せたみたいで良かったですね

 

 

「うん、やっぱりそっちの方が似合ってますよ、妖夢さんは...」

 

「だから!!...って、へ?...あ」

 

「ふふっ...改めまして妖精長です。皆さんからは、よーちゃんって呼ばれてます」

 

 

自分の変わりように驚いている彼女に唐突な自己紹介をして、右手を差し出す

 

 

「従者同士、これから仲良くして下さいね」

 

「!...はいっ、魂魄妖夢です!まだまだ半人前ですが、こちらこそよろしくお願いします」

 

 

握り返される手はまだ少し濡れていたけれど、温かく感じた...ってあれ、そういえば何気に仕事仲間以外の初めての友人なんじゃ?......もしかして友達少ない?私

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

能力を駆使し、常人では到底出すことの出来ない速度を保ちながら宴会会場へと向かう。ひとまずは現場を押さえないといけない。話はそれからね...

 

 

「...チッ、面倒ね」

 

 

しばらく走り、昨日も登り降りした気の遠くなるほどに長い石階段を前に苛立ちを隠せなくなるも、直ぐ様かけ上がる

 

今朝振りの境内はもうほとんど後片付けも終わり、酔い潰れた呑兵衛たちが倒れ伏しているくらい。その処理に追われているであろう、神社の主に声をかける

 

 

「ったく...ん?あら、咲夜じゃない。何か忘れ物でもしたの?」

 

「...えぇ、とっても大事なものをね」

 

 

酒が回りきり夢見心地の参加者の首根っこを掴み、バツの悪そうな顔を浮かべる霊夢。こちらに気付き、そう投げ掛けてくる...あながち間違いではない質問に苦笑を交えて返す。いえ、それよりも

 

 

「貴女、青い従者服の妖精を見かけなかったかしら?」

 

「妖精?......あぁ、それなら」

 

 

運が良い。最初にあたった人から情報が得られるなんてツイてるわね。まったく、それで一体どこに...

 

 

「幽々子のヤツが持って帰ったわよ?」

 

 

呼吸が止まる

 

 

「白玉楼で新しく雇ったのかしらね?まぁ、妖夢だけじゃ厳しそうだったし...ってあれ、咲夜?」

 

 

続く言葉が何だったのかは、早送りされる時間の中では聞こえなかった...ただ、それが分かれば十分。ナイフを握る手に力が入る。さて、あそこに行くのはあの異変の時以来ね...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「...あ、ありません。参りました」

 

 

そんな訳で、お手伝いも終わり手持ちぶさたになっていたところに声を掛けられて将棋を指している、ということですね。すでに五回ほど挑んでいるんですが...幽々子さん凄い強いんですよね...

 

ちなみに妖夢さんはと言うと、買い出しに行くという事で人里に行ってますね。私も行ってみたかったんですけどね、人里。流石にここまで手伝わせる訳にはいきません!だそうです、むぅ

 

 

「お強いですね、幽々子さん...全然歯が立ちません」

 

「うふふっ、やっぱり私が弱いわけじゃ無かったみたいね~。こんなに勝てるなんて、楽しいわ~」

 

「え、てことは...」

 

「普段は殆ど負け越してるわね~」

 

 

はえー...そうなんですね。幽々子さんも十分お強いのに...上には上がいる、ということですかね。バラバラになっている駒を元の配置に戻しながら、そんな会話を交わす

 

 

ぱちり

 

 

ぱちり

 

 

ぱちり

 

 

「...あの」

 

「ん~?待った、なら...一回までなら良いわよ~」

 

 

しばらく駒が盤上を駆ける音のみが響く。追い詰められたこちら側の王将に目を向けられながらそう返される。ただ、そうではないんですよね。というか一手戻しても手遅れじゃないですかね、これ...

 

 

「どうして、私を連れて来たんですか?」

 

「あら...そうね~......」

 

 

私の素朴な疑問。何故、私のことを?口元に手をあてて、しばらく考え込んでいる幽々子さん...

 

 

「...少し、興味が湧いたから、かしらね~」

 

「興味、ですか...」

 

 

ぱちり

 

 

答えと共に打たれる一手...詰み、ですかね。この方には、色んな意味で勝てない気がします。何を聞いても、のらりくらりとはぐらかされるような...そんな感覚

 

ふと、誰かの足音が聞こえた気がした。私は障子の開け放しになっている縁側の方へ耳をすませる...妖夢さんがもう帰って来たのだろうか。それにしては、少しばかり早すぎる気がするけれど...

 

 

「あら~、妖夢ったらお財布でも忘れてたのかしら~」

 

「えっ、忘れ物ですか?」

 

「良くあることよ~。もうっ、おっちょこちょいなんだから~」

 

 

間の抜けた可能性を語られ、幽々子さんの方を向く。...まぁ、確かにやりかねないかなぁ、なんて考えていると背後に迫る足音は消え、三人目の声が...

 

 

「えぇ、私としたことが、こんなに大事なことを忘れるだなんて...」

 

「...あら~、珍しいお客さんね~」

 

「め...メイド、長?」

 

 

酷く聞き慣れた声が聞こえた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて...説明して貰えるかしら、妖精長...?」

 

 

意図的ではないけれど、少し怒気を孕んでしまった声色でそう問い掛ける。彼女は私の手元...ナイフと私の顔へと視線を何度か移しながら言葉を詰まらせている

 

恐らくこの事態の原因である、冥界の女主人に目を向ける。いつもの通り掴み所のないような微笑みを浮かべ、口元を扇子で隠したままこちらを見据えている。正直、この方は色々な意味で苦手ね...

 

 

「...あ、あの!」

 

 

観念したのか、覚悟が決まったのかは定かでは無いけれどそう口火を切る。聞かせて貰おうかしら、事の顛末を...

 

 

「わ、私が無理を言って幽々子さんのお屋敷をお訪ねしたい、とお願いしたんです。立派な日本庭園があるとお聞きして...つい」

 

「!...そう」

 

 

嘘、ね...口元は扇子で隠したままだけれど、表情に僅かながら驚きの色が見え隠れしている。頭を下げながらそう言いきった彼女...はぁ

 

 

「あたっ?!...へ?」

 

「今回はこれで許してあげるわ...」

 

 

ナイフを懐に仕舞い込み、無防備に晒された頭頂部へと手刀を振り下ろす。どすっと鳴った鈍い音に、何が起こったのか分かっていないような間の抜けた声が漏れる。更に言葉を続ける

 

 

「話してくれれば休暇も与えるわ...今度からはちゃんと前もって話して頂戴」

 

「...はい、申し訳ありませんでした...」

 

「それと...」

 

 

普段から頑張ってくれている彼女...話してくれればやぶさかではない。最後に一番伝えたかった事...

 

 

「余り心配させないで...お願いだから...」

 

「!...はい...すみません...」

 

 

軽く頭に手を乗せ、そう出来る限り優しくそう言った...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさいね~、あんまり来たがってたから~...」

 

「いえ、こちらも申し訳ありません。ウチの妖精メイドが押し掛けるような形でお世話になってしまったようで...」

 

 

そう言うメイド長のとなりでぺこりと頭を下げる。咄嗟に私が行きたがった、と嘘を吐いてしまったけれど、幽々子さんも上手く合わせてくれている...申し訳ない

 

 

「よーちゃん、だったかしら~?最後に少し二人で話さないかしら~」

 

「!...メイド長...」

 

「...構わないわよ、出来るだけ手短にお願いね」

 

 

そう言うとメイド長は門の方へと先に歩いていく。残された私と幽々子さんは縁側に座り、少しおしゃべりをし始める

 

 

「すみません、突然合わせていただいて...」

 

「うふふっ、お安いご用よ~...それに」

 

「?...はい」

 

「卵焼きのお礼、ってことでどうかしら~?」

 

 

!...この方にはやっぱり敵いませんね、何もかも完敗です

 

 

「...ありがとうございます...あ、そろそろ帰りますね。妖夢さんが帰って来られたら、よろしく伝えて下さい。お世話になりました」

 

「また近いうちに遊びに来て良いわよ~、きっと妖夢も喜ぶわ~」

 

 

一つお辞儀をし、別れの挨拶を告げメイド長の元へと向かう。振り返るとひらひらとてを振る幽々子さんが見える...もう一度、深くお辞儀を返しておく

 

 

「お待たせしました、もう大丈夫です」

 

「そう、じゃあ行きましょう...私たちの帰るべき場所まで」

 

「...はい!」

 

 

こうして、私は白玉楼を後にした...あれ、そう言えば

 

 

「メイド長、館のお仕事はどうなってるんですか?」

 

「ん?黄色い妖精メイドの子に任せているわ」

 

「えっ」

 

 

...大丈夫、かな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体どうすればー...助けて下さいー、門番さーん!」

 

「へ、どうしたんですか...ってうわっ!館がー!?」

 

 




戦闘は無し、咲夜さんは優しいんだ。館の惨状をみてどうなるか、ですが...良ければまた次回も読んで貰えれば幸いです。それでは、また

シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。

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