元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「...帰っちゃったわね~、残念」
見えなくなって行く背中に名残惜しそうに独り言を溢す。残念ね、お夕飯も一緒に食べたかったのだけれど...あんなに大事にされてたなんて、やっぱり悪いことしちゃったわね~...
「...もう出て来てもいいんじゃないかしら~?」
虚空に問い掛けるように言い放つ。すると、私のちょうど隣辺りの空間が突如として裂ける...やっぱり盗み見してたのね、相変わらず趣味の悪いこと
「ふぅ、そうみたいね...それで、どう?面白い子だったでしょう?」
「えぇ、とっても良い子だったわ~」
そこから姿を現したのは私の古い友人。不気味な空間から身を乗り出し、その切れ目に腰を降ろしてそう投げ掛けてくる
「お料理も上手で気遣いもできて...ウチに欲しいくらいね~」
「...庭師の子が聞いたらどんな顔するかしらね」
「?妖夢なら喜んでくれるんじゃないかしら~」
んー、次の宴会にも来てくれるのかしら~、またご馳走になりなたいわね~。なんて考えながら古い友人...紫と言葉を交わす
「...あの子があの件の?」
「えぇ、そうね。理想とは少し違うけれど...まぁ、悪くは無い、かしらね。少なくとも私は今のあの子が気に入ってるから...」
「そう...まだ先の話だと思うのだけれど...」
「ふふっ、私たちにとってはすぐでしょう?」
少し前に話してくれた、ちょっと悲しいけど仕方の無いこと。少し酷いことかもしれないけれど、紫の気持ちも分かるもの。私は止めたりはしなかった...それは良いとして
「気をつけないとまた太っちゃうわよ~?」
「うっ?!...だ、大丈夫よ。この前よりちょっと減ったんだから、これくらいなら...」
会話を切り上げ、スキマを駆使して少し離れたちゃぶ台の上のお饅頭に手を伸ばす紫。...貴女、この前ダイエットするって言ってた筈じゃなかったかしら~?
「優しい友人として、これ以上紫がぷにぷにになっちゃうのは見過ごせないわ~。これは没収ね~」
「なっ!?今は......ぷ、ぷにぷにじゃないわよ!」
恐る恐る自分のお腹をつまみながらそう言い返してくる紫を尻目に、さっとお饅頭の乗ったお皿を回収する。うふふー、亡霊は太らないから気が楽ね~。あーむっ、んーおいし!
「ふぅ...これで大丈夫ですかね」
「うぅ~、ごめんなさいです~」
館での作業も一段落し、一息つきながらそう呟く。さて、メイド長と一緒に館へと帰って来たは良いものの...まぁ、予想通りと言うかなんと言うか...ぐちゃぐちゃになったお部屋の後片付けが待っていたのだ。
申し訳無さそうに謝ってくれているけれど...これはきーちゃん悪くないと思いますけどね、うん。これからは私とメイド長が一緒に館を留守にしないように、ですね...
「気にしないで良いですよ、今回は私が留守にしたのが事の発端ですから。きーちゃんは頑張ってくれましたよ」
「うぅ~、よーちゃんはいつも大変なんですね~...いつもありがとうです~」
まぁ、悪いのは私...ですし、人と同じように妖精にも向き不向きがあるようですからね。この館で働いて良く分かりました。
例えばですが、言わずもがなきーちゃんはお料理が上手だし、みーちゃんは庭仕事が得意、くーちゃんは本の整理、そーちゃんは水仕事...等々、そんな風にそれぞれ皆得意なことがありますからね
「あとはテラスの方ですかね。きーちゃんは他の皆を手伝ってあげて下さいね」
「はい~、分かりました~」
そう言い残し、私は一人でテラスへと向かった。普段はお嬢様がおやつ...ティーブレイクに良く使われているんですが、帰って来た時にテーブルやら椅子やらが散乱しているのがちらっと見えたのだ。恐らくまだ片付いていないでしょう
「うっ...思ったより酷いですね...」
現場に着くと予想通りしっちゃかめっちゃか...一体何をどうしたらこうなってしまうんでしょうか。幸い、今日はティーセットが外に出されていなかったので、割れ物の処理は大丈夫ですかね
「ひとまず散らかった椅子を...って、わぷっ?!」
片付けを始めようとしたその時、ビュオッと、一陣の風が周囲に吹く。突然のことに思わず間の抜けた声をあげ、目を閉じてしまう。今日は天気も良くて風も穏やかだったんですけど...
「新聞のお届けに参りました!...って、あややー...随分と散らかってますねぇ」
ばさぁっという聞きなれない大きな羽音、同じく聞きなれない溌剌とした明るい声...恐る恐る目を開く。するとそこには
「なんでこんな......むっ、もしや宴会の最中、留守を狙った襲撃が?...となると明日の朝刊の一面は決まりですね...あっ、そこの妖精さん!何があったのか詳しく取材させて下さい!」
「...はい?」
カメラと新聞を携えた黒い羽根を持つ女性がペンとメモ帳を手に、有りもしないスクープに目を爛々と輝かせていた
「なーんだ、そうだったんですねぇ...ちょっぴり残念です。あ、これはこっちで大丈夫ですかね」
「はい、細かい位置は後で私がやりますので。手伝って貰って申し訳ないです」
なんとか興味津々な彼女に説明をして落ち着いてもらった。流石に襲撃はないですよ...変に想像力豊かな人...人ではなさそうですかね?さっき飛んでたし羽根もあるし...
「いえいえ!大切なお得意様ですからね、これくらいお任せ下さい!」
「ありがとうございます、助かります。えっと...」
「清く正しい射命丸こと、射命丸文です!以後、お見知りおきを」
「は、はい...ご丁寧にどうも。私のことは妖精長とでもお呼びください、射命丸さん」
突然の前口上に少し面食らってしまったけれど、同じように自己紹介で返す。先ほどの口振りに装いなどから、恐らく新聞記者の方なんだろう
「!...ふむふむ、そうですか。貴女がそうなんですね...」
「えっと、何か...?」
「いえいえ!こちらの話ですので、お気になさらず」
少しばかり引っかかる点も合ったものの、そのまま作業を続ける。射命丸さんの手伝いもあり、思っていたよりも片付けは早く終わった。有難い限りです
「ふぅ...これで大丈夫ですね、ありがとうございました。射命丸さん、おかげ様で早く終わりました」
「いえいえ!...それでですね、少々厚かましいかもしれないんですが...」
「?...はい」
「館についての取材を少し...って、うっひゃあ?!」
申し訳なさそうにそう言う射命丸さんの言葉を途中で遮ったのは、目の前を過ぎ去っていった一本のナイフ。突然のことに驚いたのか、射命丸さんは腰を抜かしている...って、このナイフは...
「残念だけれど、ウチは取材NGって何度も言ってるわよね?」
「さっ、ささささ、咲夜さん!?......い、いやぁそんな、私は夕刊を届けに来ただけでして取材だなんてそんな」
「...今日の晩餐はローストターキーが良いかしら」
「あーっ!私この後取材の予定が有るとか無いとかなんとか!あっ、これっ、確かに渡しましたからね!?おっ邪魔しましたー!!」
「え?あっ、ちょ...わぷっ!?」
「...はぁ、相変わらず逃げ足の速さは幻想郷一ね」
立っていたのはメイド長。手には数本のナイフ...それを目にした射命丸さんは慌てて新聞を私に押し付けると早口に挨拶を済ませ、ばひゅんと飛んでいってしまった...
「災難だったわね、大丈夫だったかしら?」
「え?は、はい。片付けのお手伝いもしてもらいましたし...これ、どうぞ」
新聞を渡しながら問いにそう返す。メイド長の口振りから、何度か取材には来ているようですね。それで追っ払われている、と...少し可哀想に思えてきた
「館に関して変なことを書かれても困るのよ。今日の内容は何かしら...!」
そう言いながらバサッと新聞を開くメイド長。すると、目を大きく見開いて新聞と私を交互に見比べてきた...?どうかしたんだろうか。気になった私は、そのまま新聞を覗き込む...するとそこには
『大宴会にて、無限の胃袋ノックアウト!?立役者は紅魔の妖精メイドだった!?』
「...へ?」
でかでかと書かれた見出しに、幽々子さんの酔い潰れた写真で、どんと一面が埋め尽くされていた。次の面には
「わ、私?」
いつ撮られたのかも分からない私の写真が載っていた...え、なんで?
まぁ、伏線と日常的な...本当は16話に書こうと思ってたんですが、長くなりそうだったのでこちらに。さて、この物語はどうなるのやら。ここまで読んでいただき感謝です...それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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