元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「...来ないなぁ、あの妖精」
後ろを振り返りそう呟く。既にかなり走って来たのか、永遠亭も視界に入っている。...追いかけて来なかったなぁ、つまんないの
妖精だし、あれくらい言えば追っかけてくるモンだと思ったんだけどねー...なんて、期待外れな遊び相手に落胆したものの、まぁ今日も姫様と遊ぼうかね、と永遠亭へ足を踏み入れる
「お、鈴仙。今日のお夕飯なにー?」
「んー、まだ決めてないわよ。それより、いつもの見回り終わったの?」
廊下をとことこ歩いていると、鈴仙とばったり会った。両手には危険!なんて物々しい文字の書かれた木箱を持っている。おそらく薬か何かだろう
「もう済んださ、今から姫様と遊ぼうかと思ってね」
「そう、終わってるなら別に構わないわ」
「そんじゃ、あたしは行くよ」
「あ、そうだ。てゐ、ちょっと良いかしら?」
「んー?なにさ」
なんか、日に日にお母さんみたいになってるなぁ...なんて考えながら他愛ない話を終え、姫様の部屋へと再び歩き出す。すると、何か用でもあるのか鈴仙に呼び止められる。あたしも暇じゃあないんだけどねぇ...
「竹林でメイド服の妖精さん見かけなかった?」
一瞬思考が止まる。...妖精、身に覚えはある。そう言えばあれってメイド服だったような...いや待て、ここで正直に言うのは早計だ。ひとまず様子を見るのが得策...
「......いんや、見てないけど...その妖精がどうかしたのかい?」
「そう...実は咲夜さんから伝書があって、いつもは咲夜さんが必要なお薬を取りに来るんだけど...」
「...うん」
「今日は代わりに館で働いてる妖精メイドさんがくるらしくてね...」
「......うん」
「昼過ぎには着くようにさせる、って聞いてたんだけどもうすぐ夕暮れでしょ?」
「............」
「もしかしたら迷ってるかもと思ったんだけど...アンタが見てないとなると「あ、ちょーっと野暮用を思い出した!夕飯前には帰るよ!」あっ、ちょっとどこ行くのよ!?てーゐ!...」
まずいまずいまずい!もし追っかけてくる途中で迷ったとなると相当まずい!鈴仙の話を遮るようにして竹林の方へと走り出す。まさかあの妖精がお得意様の使いだったなんて...バレたらまずい!まーた実験台にされるー!注射はもう御免だー!!
「よっ、と。大丈夫か?」
「は、はい...なんとか」
そう声を掛けられながら、ロープを掴んだ私はされるがままに引っ張りあげられる。はー、良かった...どうにか夜までに間に合うかな、これ
「すみません、おかげで助かりました...えっと」
「ったく、またあの悪戯兎...ん?あぁ、妹紅で良いよ。それより怪我は...って、お前妖精か?」
「ありがとうございます、妹紅さん。そうですね...とは言え、この羽根は飾りみたいなモノで...」
「?...飛べないのか、珍しい妖精もいるもんだな」
お礼を言いつつ、助けてくださった女性...妹紅さんの疑問に答えて行く。まぁ、そうですよね...飛べない妖精なんて私の知り合いには居ませんし。いい加減誰かに教わりたいけど、教えてもらって飛べるようなものなんだろうか...
「申し遅れました、私は紅魔館で働いております妖精メイドです。妖精長、とでもお呼び下さい」
「妖精長...ん?なんかどっかで聞いた、いや見たような...まぁ、良いか。それで、こんなところに何か用でもあるのか?」
自己紹介に軽く首を傾げる妹紅さん。...白い髪の女性、メイド長のおっしゃっていた特徴そのまま。おそらくこの方で間違いないでしょう...今度こそ
「はい、実は永遠亭、という場所にお使いを頼まれまして...案内人さんを探していたんですけど、兎の耳を生やした方に着いていったらこの穴にズボッ、と...」
「...災難だったな...同情するよ」
いたたまれない表情のまま肩を叩かれる。今言葉に出してみて気づいたんですけど、流石にちょっと酷い気がする...なんでこんな目に?
「ま、同情ついでにしてやるよ、案内」
「!...何から何までありがとうございます、妹紅さん」
「なに、気にしなくて良いよ。こういう案内も好きでやってるからさ」
気前良くそう言ってくれる。良かったぁ...これでどうにか今日中にお使いを終えられそうですね。妹紅さんに感謝です
「あ、気をつけてな。その穴みたいに色々と罠があるから」
「はい。...妹紅さんは分かるんですか?罠の位置」
「んー、まぁこんな簡単な罠なら大丈夫さぁあああっ?!」
素朴な疑問を投げ掛けた次の瞬間、妹紅さんが視界から突如として消えた。落とし穴!?と思ったものの足下に穴は無い...じゃあ、と思い目線を上げる
「...手の込んだことするなぁ、あの兎ぃ...」
「だ、大丈夫ですか!?妹紅さん!」
しなる竹から伸びるロープで宙ぶらりんになった妹紅さんが目に映った
あんの悪戯兎...今度会ったら丸焼きにしてやろうか。というか大見得きって罠引っ掛かるの普通に恥ずかしいんだけど...
「だ、大丈夫ですか!?妹紅さん!」
心配してあたふたとしている妖精長。このくらいなら自分でどうにかなるし良いか。さてと
「あー...大丈夫だよ。それよりちょっと危ないから、離れといて」
「へ?わ、分かりました...」
「ん、そんじゃあ...よっ、と」
妖精長には少し離れてもらい、身体から炎を出す。ボウッと勢い良く燃え上がり、そのまま足に繋がっていたロープが焼き切れる。そのまま着地して炎を収める
「これでよしっ、と。それじゃ、行こうか」
「......えっと、今のって...」
「?ただの妖術だけど...」
元々陰陽師としてやっていた時期も長かったし、多少の妖術なら使えるし火の扱いには自信がある。兎肉の焼き加減は保証できそうにないが...丸焦げにしてやろうか、アイツホントに許さん
「あーっと、まぁ魔法みたいなモンだよ。少し違うけどね」
「はえー...凄いですね」
魔法...妖術、と呟いている妖精長を尻目にそのまま案内を続ける。妖精にしては大人しいし、少し世間知らずな印象を受ける。あの氷精とは大違いだな
「この竹林、凄いですね...ホントに名前の通りと言うか」
「結界みたいなのが張られてるからね。がむしゃらに歩いても出られないし、永遠亭には着けないようになってるのさ」
この竹林は元々普通の竹林だったらしいが、永遠亭の奴らが住むようになってからそういう他者を寄せ付けないような目的で結界が張られたらしい
幾つかある結界の合間を縫って行けば、永遠亭までたどり着けるけど...今のところその道が分かるのは私と永遠亭の奴らくらい。私はいつの間にか慣れた、長いこと住んでるし
「そうなんですか、ちょっと不便ですね...」
「まぁ、腕は確かだし、薬の評判も中々なんだよ」
時折振り返り、話しながら目的地へと向かう。...うーん、やっぱり見たことあるような.....妖精長ねぇ...ん?新聞でそんな名前見た気が...あっ、そうだ
「あー!思い出した思い出した、妖精長って昨日新聞に載ってたあの妖精長か!...なんか見たことあると思ったら」
「昨日の新聞...あっ、あれですか。ちょっと恥ずかしいですね」
なんでも一昨日の大宴会であの亡霊の女主人が満腹になったとかなんとか...あの日の料理、いつもよりも美味しかった気もするし
「その反応...どこまでホントか分かんなかったけど、あながち虚言でもないみたいだな」
あの烏天狗、すぐあることないこと書くからなぁ...竹林暮らしで外の情報に疎くなるから、仕方なく新聞取ってるけど...まぁ、今回はそこまで嘘っぱちな訳でもないらしい。てかいつもそうしてくれ、頼む
「永遠亭までって、あとどのくらいですかね」
「そうだな...まぁ、行って帰ってで夕方くらいかな」
今が多分...2時くらいか?まぁ、このまま行けばそれくらいだろう...っと、また落とし穴。侵入者対策とは言え、いくらなんでも仕掛け過ぎだと思うが...
「ま、焦っても良いことないしな。そこ、気を付けてな」
「え?あ、こんなところにも...はい、ありがとうございます」
時間はたっぷりあるさ、のんびり行こう
「ぬあー!?くっそ、誰だこんなとこに穴掘ったのー!?...アタシだったわ!こんちくしょう!」
自業自得が過ぎる
こんな感じですね。さて、無事にたどり着けそうかな?妖精長。ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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