元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「ほ、ホントに凄い...」
「...そうですかね?」
鈴仙さんの熱い視線を受けながら、手に持っている包丁を動かす。という訳で、今は永遠亭のお台所にて夕飯の準備を手伝わせてもらっているところ、なんですが...
「確かにこの手際なら、ブン屋が記事にする気持ちも分かるな」
「そうねー。鈴仙も負けてられないわよ、ほらほら」
「あはは。姫様、それは流石に酷ってやつじゃ...」
なんでお三方も台所まで来てるんですかね...流石にこれだけの人数に見られるとなると恥ずかしいですよ。もう...
さて、白玉楼での一件では、お手伝いあんまりできませんでしたから...今回ばかりはちゃんと手伝わせてもらいますよ
「...帰ってこない、わね」
懐中時計を懐へと仕舞いながら、そう呟く。既に日は山の向こうへと鳴りを潜め、その対面ではもう欠けた月が空高く昇っている
...遅い、あの子ならもう帰って来る時間の筈。また何か面倒事にでも巻き込まれてしまったのかしら。やっぱり1人で行かせるべきじゃ...今からでも迎えに行きたいけど、私まで館を空ける訳には...
「あれ?どうしたんですか咲夜さん、そんな怖い顔して...」
「ん...どう、妖精長は帰って来たかしら?」
「いえ、まだみたいです...宴会の時のこともありますし、ちょっと心配ですね」
どうしたものかと頭を悩ませていると、門番の仕事を終えた美鈴に話し掛けられる。...こうなってしまった以上、仕方ないかしらね。少しばかり頼りないけれど
「美鈴、少し頼まれてくれないかしら」
「へ?」
「よっ、と。そんじゃ、持ってくの手伝うよ」
「あ、ありがとうございます妹紅さん」
あらかた料理の方も出来上がり、後は食卓へと並べるだけ。結局は妹紅さんに手伝ってもらうことに...ちょっと申し訳ないですね。ちなみに他のお二人は、と言うと...
「ったくアイツら...つまみ食いするだけして先に待ってるって...どんな神経してるんだか」
「あはは...」
「あ、お二人ともー、真っ直ぐ行って突き当たりを右です!私も後から行きますねー」
「あいよー。じゃ、行こうか」
「そうですね。あっ、鈴仙さーん、また後でー!」
どこかあーちゃんに似ているような...なんて考えていると、台所からうさみみと顔を出した鈴仙さんが、廊下に出た私たちへと食卓までの道を軽く教えてくださった。私の呼ぶ声に手を振ってくれた鈴仙さんと別れ、妹紅さんと二人廊下を歩いて行く
「お、こっちこっち!待ちくたびれたよー」
「お前...早く食いたいならこれ並べてな。じゃ、残りのやつ取ってくるよ」
「はいよー、っと。ほらほら、姫様もお腹空かせてるから早く行こ」
「てゐー、まーだー?」
「あはは、ホントですね...お待たせしました、輝夜さん」
言われた通りに右へと進路を変えると、少し行ったところ辺りでてゐさんの姿が見えた。どうやら目印代わりにと、待っていてくれたらしい。こちらに気がつくと手招きで早く早く!と催促してくるのが分かる。余程腹ぺこなんですかね、てゐさん
妹紅さんは持っていた御盆をてゐさんに渡すと、まだ台所にいくつか残っている料理を取りに戻っていった。部屋の中からはこれまた催促の声、永遠亭の方々は食いしん坊さんが多いんでしょうか...
「あら、ちょっといつもより豪勢ね。これも貴女のお陰かしら?」
「いえ、献立は殆ど鈴仙さんがお決めになられましたよ。あ、お茶碗どうぞ」
「ありがと...ってこらてゐ、ちゃんと並べてから食べなさいな」
「むぐっ...はーい、あいたっ!?」
「ったく、ちょっと位我慢しろよ。妖精長、これも頼む」
「はーい、おっとと」
他愛もない話をしながら料理を配膳していく。てゐさんはつまみ食いの常習犯ですね...あ、今日何度目かの手刀が脳天に...思わず自分の頭をさすってしまう
「遅れましたー、ってもう全部並べ終わっちゃいました?」
「遅いよ鈴仙、早く食べよー」
「お、戻ってきたな」
あらかた配膳も済んだ辺りで鈴仙さんが合流。さて、それじゃあてゐさんも待ちわびてますしそろそろ...ってあれ?
「一つ多い...?」
「ん...鈴仙、永琳は?呼びに行ってたんじゃないのかしら?」
「はい、薬の調合をまだ...キリの良い所で切り上げる、と」
食器が一式多い...間違えたかな?なんて考えていると、お二人の会話の中で名前が一つ出てきた。どうやら、まだお会いしていない方がいらしたみたいですね...まだお仕事中らしい
「あら...じゃあ先に食べちゃいましょうか」
「待たなくても良いんですか?」
「んー?待っても良いけれど...いつまで掛かるか分からないわよ?それに...」
「お腹空いたー、早く食べたーい」
「...ね?」
「そ、そうですね」
あぁ...この様子ではもう待てそうにないですね。私含め4人は急かされるように席に着く
「じゃあ折角だし...妖精長、音頭とってくれるかしら?」
「へ?わ、私ですか?」
「そうですね。今日のゲストですし、お願いします!」
「誰でも良いから早くー」
「ちょっと位待てないのか?...ん、頼むよ妖精長」
「え...わ、分かりました。じゃあ」
半ば押しきられるように任される。まぁ、やりましょうか。両の手のひらを合わせて皆さんの方を見る...よし、それじゃあ...
「いただきます」
「「「「いただきます!」」」」
「ぷはぁー!美味しかったー...」
「そうねー、鈴仙もこれくらい料理上手なら...ねぇ」
「え...こ、これには敵いませんよぉ」
食事も終わり、それぞれ談笑したりお茶を啜ったりと、のんびりとした時間が流れている。献立にニンジンが少し多い気がしたんですが、曲がりなりにも兎さんみたいですね
「あれ、あの...卵とニンジンのやつ美味しかった!」
「お口に合って良かったです。簡単ですけど...」
「鈴仙、後でレシピ教えてもらいなさいな。また食べたいわ」
好評でした、にんじんしりしり。簡単で美味しいから良く作るんですよね。フラン様もあれならニンジン食べれるみたいで、重宝してます...あ、そう言えば
「永琳さん...来られませんでしたね」
「そうね...まぁ、いつもこんな感じだから、気にしなくていいわよ」
「一度集中するとしばらく作業に没頭しちゃうんですね、お師匠様...」
...いつも、と聞くと少し心配になってしまう。根を詰めすぎると身体を壊してしまいますし...よし
「鈴仙さん、台所お借りしてもよろしいですか?」
「え?大丈夫ですけど...」
立ち上がり、今一度台所へと向かう。鈴仙さんが行ってたのは確かあっち...少しなら探しましょうかね
「ふぅ...ん、んぅ...」
調合用の器具を置き、伸びを一つ...身体の節々から小気味良く鳴る音が、私自身の疲労を訴えてくる。さて、後もう少し...
「失礼します、永琳さん...ですか?」
「ん...あら?貴女は...」
部屋の外、廊下の方からする聞き馴染みのない声に振り返る。そこには...おそらく妖精、かしら。そう言えばうどんげが妖精が1人泊まるって言っていた...気がするわね。その子かしら...
「どうかしたの?...あぁ、客間ならそこの奥の...」
「いえ、あの...これ」
「?...あら」
道に迷ったのかしら、なんて思っていると手元に何か持っているのが見えた。これは...
「お夜食です。余り根を詰めすぎると、身体によろしくありませんよ...?」
御盆の上にはおにぎりが二つとお漬け物...
「これ、貴女が?」
「簡単なものしか用意できませんでしたが...良ければどうぞ」
うどんげ辺りに聞いたのかしら。わざわざ私のために...最近はしばらく何も食べていなかったし...そうね
「ありがとう、いただくわ」
「はい。これ、置いておきますね...それでは、無理なさらないように...失礼します」
手元の布巾で拭いた机の上に盆を置き、軽い挨拶をして来た道を戻っていく妖精...軽く手を洗いおにぎりを一口
「...あったかい」
久方ぶりの食事にそんな声が漏れてしまう...まぁ、こんな身体になっても、無理は禁物かしらね
「妖精長ー、どこですかー?って、ぎゃああああ?!なんで落とし穴がー!?」
美鈴...どんまい。ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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