元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「永遠亭か...となると、鈴仙にはもう会ったか?」
「ずぞぞー...んくっ。鈴仙さん、ですか?」
一口分のうどんをすすり終え、そう返す。用意していただいたお昼はきつねうどん。ちらっと藍さんの方の器を見ると、おっきい油揚げが三枚...やっぱりお稲荷さんなんじゃ...?
「あぁ、この前の宴会では主人のお守りで来れなかったみたいなんだが、普段から手伝いに来てくれてるんだ。よく飲みに行ったりもするよ」
「そうだったんですね...納得です」
鈴仙さんも優しい方でしたからね。また、ゆっくりお話してみたいです。ずぞぞー...んー、美味しい
「ぷはぁ、ご馳走さまでした!藍さま、私は皆にご飯あげて来ますね」
「ん、そうか。器は流し台に置いといてくれるか?」
「はい!それじゃ、お先です」
がたん、とちゃぶ台に器の置かれる音が鳴り、早々に昼食を終えたのは橙さんだ。食べるの早いですね...ずぞぞー
「皆にご飯...ってことは、あのネコたちはここで飼ってるんですか?」
「そうだな。あのネコたちは皆橙の式神候補でな、どちらかと言えば飼っている、というよりは住み着いてる、の方が正しいがな」
ずぞぞー...えーっと、橙さんが藍さんの式神だから...式神さんの式神さん候補、ということですかね
「式神さんの式神さん候補、ですか...ちょっとややこしいですね」
「ん?正しくは式神さんの式神さんの式神候補、だな。ずぞぞー」
「?...となると...」
式神さんの式神さんの式神候補...えっと、式神候補がここのネコたちで、その主人が橙さん。その主人が藍さんだから...
「じゃあ、藍さんも誰かの式神さんなんですか?」
「あぁ、そうだな。この前の宴会には来られなかったが、れっきとした主人がいるよ」
はへー...そうだったんですね。そう言えば、鈴仙さんのお話でお名前も出てたような出てないような...ずぞぞー
「んー...こう見るとお二人って、お母さんと娘さんみたいですね」
「ごふっ?!そ、そそそ、そうか!?いや橙は大事な式神だがそんな親子みたいだなんて言われると少し照れるというかなんというか確かに可愛いし頑張り屋で健気なところもあってだな...はっ!?...すまん、取り乱した...」
「...ふふっ、素敵ですね」
藍さん、かなりの親バカさんみたいですね...さてと、残りもささっと食べちゃいましょうか。ずぞぞー
「ご馳走さまでした、とっても美味しかったです」
「む、そうか!...口に合ったようなら良かったよ。器、そこに置いといてくれるか?」
昼食を終え、空になった器を持って台所へと向かう。やー...おうどんなんて食べたのはいつぶりですかね。こっちに来てからは初めてですし、美味しかったなぁ...
流し台では既に藍さんがお二人分の器を洗っており、遅れてやって来た私に、そう目線で促してくる。流石に手伝うにしても、手は足りてそうですかね
「これが終わったら直ぐに出発しようか。妖精長は戻ってゆっくりしてて良いぞ」
「分かりました。色々とありがとうございます、藍さん」
「構わないって言ってるだろう?...まぁ、そうさな...代わりに、と言ってはなんだが...」
言葉の途中でカチャカチャと洗い物をする手を止め、台所を後にしようとするこちらへと顔を向け微笑み掛ける
「また今度...一緒にゆっくり飲もう」
!...ホントに、底抜けに優しいなぁ...
「いやなに、無理にとは「是非!...ご一緒させてもらいます」...そうか、嬉しいよ」
少し食い気味になってしまったけれど...うん、藍さんとはのんびり話しながら飲んでみたいです。どうせなら、メイド長と...あと、妖夢さんに鈴仙さんともご一緒したいですね
それじゃあ洗い物が終わるまで、お言葉に甘えてゆっくりしましょうか...
「...」
昼食をとっていた居間へと戻り、直ぐ側の縁側へ座り外を眺めながら藍さんを待つ。外では、お昼を終えた橙さんとネコたちが戯れ
「だー!こら、待てってばぁ!!」
「ふしゃー!!」
戯れ...いや、威嚇されて...あれ、式神候補なんじゃ...?
「ぎにゃー!?ちょ、こっち来ないでー!!」
「「「ふしゃしゃー!!」」」
...追いかけ回されてます
んー...式神候補ってことは、もう既に皆手懐けてるようなものだと思ってたんですが...まぁ、喧嘩するほど仲が良い、とも言いますしね。案外仲良しなのかも
「お前はどう思います...?」
「なーお?...ごろごろ」
なんて話し掛けてみるものの、膝の上で私に良いようにされているネコは、まるで疑問符でも浮かんでるかのように鳴いて身をよじらせている...んー、ここが良いんですか?よしよし
この子は最初に私の前へ出てきた子で、今橙さんを追いかけ回している子たちとは少し離れてお昼寝してましたが、私に気づいたのかお膝の上に...
「さっきは説得してくれたみたいで、ありがとうございますね」
「なーお」
む、もっと撫でろ、ですか?しょうがないですね...藍さんが洗い物を済ませてくるまで、ですよ
「ぎにゃーっ!!??」
そんなこんなで膝上のネコと戯れていると、橙さんの一際大きな叫び声が聞こえてくる。この子もビックリしたのか身体を跳ねさせている
さっきまで追いかけ回していたネコたちは、一仕事終えた、なんて感じで各々が屋根やら木の上やら自分たちのお気に入りのスポットへと足を運んで行く
「うぅ...もぉ」
「皆さん、仲良しなんですね」
「でしょー?...って、何がどうなったらそう見えるのよ!?ばかぁ!!」
身体の至るところに引っ掻き傷を携えた橙さんが、ため息混じりに縁側へとやってくる...っと、妖夢さんに勝るとも劣らないツッコミですね。そのまま不機嫌そうに私から少し離れて腰をおろす
「...どうすれば、仲良くなれるのかな」
耳が垂れてしまい、明らかに元気のない声でぼそりと呟く橙さん。...そうですね
「ちょっと、手伝ってくれますか?」
「?...なーお!」
うん、良いお返事ですね。心優しい協力者を抱き上げ、橙さんの隣へ腰をおろす
「...ん?何よ...急に」
「よっ、と。はい橙さん、撫でてあげて下さい」
「なーお」
「!...べ、別に私は......こ、こう...?」
恐る恐る、と言った感じで身を乗り出し、震える手でネコの頭へと手を出そうとする橙さん
「あ、手は下から出してあげて下さい。怖がっちゃいますから」
「え!...そ、そうなの?じゃあ...」
そおっ、と出された手がネコの下顎に手が触れる。気持ち良さそうに喉を鳴らし、満足げな顔をしている...
「なーお...ごろごろ」
「ほ、ホントだ...気持ち良さそう...って、わ!」
ぴょんっ、と橙さんの膝の上へ飛び乗り、なでなでを催促するネコ。うん、嬉しそうですね...ネコも、橙さんも
「これで仲良し、ですね」
「!...うん!...あ、ありがと!えっと...」
「妖精長です。よーちゃんって呼んで下さい、橙さん」
「橙、で良いよ...ありがと、よーちゃん!」
「!...はい、どういたしまして、橙」
「なーお...ごろごろ」
「...今行くのは、無粋だろうな。ふふっ」
その様子を見て、壁に背を預け耳を傾ける親バカさんが居たとか居ないとか...
「よっ、と。大丈夫か?妖精長」
「は、はい...大丈夫です」
久方ぶりの地面に、少し身体が慣れていないような感覚...ここは私の職場、紅魔館の前。一日ぶりなのに、なぜだかもっと長い間帰っていなかったような感覚がする
飛べないことを藍さんに話したところ、あっさりと尻尾への搭乗を快諾して下さった。乗り心地は良かったんですが...高い所が、ちょっと...うっぷ
「咲夜のやつも心配してるだろう。元気な顔を早く見せてやると良い」
「そうですね...何はともあれ、ありがとうございました、藍さん」
「あぁ、また橙と遊んでやってくれると嬉しいよ。それじゃあな、妖精長」
「あ、また今度飲みましょうねー!...行っちゃった」
あっという間に空の彼方に消えていった藍さん...振る手を下ろし、薬の袋を持って館の方へと歩いて行く。あれ?門番さんがいない...休憩だろうか
とことこと門を通り過ぎ、両開きの扉に手を掛け、ぎぎぃ、と開け放つ...
「ただいま戻りま...し......た」
「お帰りなさい、妖精長...それで、他に何か言うことは?」
そこには、満面の笑みで声が笑っていないメイド長の姿があった
~少女弁明中~
「はぁ...貴女は本当に色々と巻き込まれるのね」
「申し訳ありません...」
一部始終を正直に話したところ、ひとまずはお咎め無し、となった。館の皆さんや他の妖精メイドたちに謝っておかなきゃ...
「それで、美鈴は?」
「え、門番さん、ですか?」
「あら、一緒じゃなかったの?」
「え、妖精長さんですか?もう帰りましたけど...」
「そ...そんなぁ......うぅ」
気持ち多めになっております。次回も水曜日までには...ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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