元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「よーちゃん、一緒にお出掛けしましょ!」
「はえ?」
フラン様からの突然の提案に間の抜けた声が口から漏れる。今は朝、先ほど他の皆に指示を出し終え、今から自分の持ち場へと移動しようとした矢先、そう声を掛けられた...いや、でも確か...
「今日はお嬢様とメイド長とご一緒にお出掛けされる筈では?」
そう、昨晩メイド長からは館の留守を任せる、と言った旨の話を聞いていた。幽々子さんのお世話になった時のこともあり、館には最低でも私、若しくはメイド長のどちらかが必ず駐在することになっている
「私まで館を空ける訳には...」
「あら、そのことなら大丈夫よ。妖精長」
事情の説明中、背後から声を掛けられる。この声は...
「お嬢様...大丈夫、というのは一体どういう...?」
さて、明日はお嬢様と妹様に同伴し、出掛ける予定になっている。一応、妖精長には説明もしておいたから気にすることは余り無いと思うのだけれど...
「あ、さーくやー!」
「あら、妹様。明日は朝早くからお出掛けですので、余り夜更かしはいけませんよ?」
廊下の曲がり角から姿を現し、明るい声色で私を呼んだのは妹様。そのまま元気よくこちらへと近付いて来られる
「そうそう、その明日なんだけどねー」
「?...はい、明日がどうかなされましたか?」
「よーちゃんも一緒に連れて行きたいの」
私の投げ掛けた質問に満面の笑みでそう答える妹様。よ、妖精長もですか...少し難しい問題ね、これは...。二人して館を空ける訳にはいかない...心苦しいけれど、出来ない旨を伝える他ないかしらね
「申し訳ありません、妹様。私と妖精長、二人して館を空ける訳にはいきませんので、今回は...」
「あら、楽しそうね、それ。良いわ、妖精長も一緒に連れて行きましょう」
「え...あ、お嬢様!?それは「え!?お姉さま、良いの?...やったー!!明日楽しみ!」ちょ、妹様!」
突然私の謝罪を遮ったのは、私の主人、お嬢様の言葉。それを聞いた妹様は嬉しそうにぴょんぴょんと身体を跳ねさせている...ど、どうしたものかしら
「ふふ、嬉しそうね、フランったら」
「お、お嬢様...しかし、妖精長も同行するとなると館の留守が...」
「あら、それなら代わりに貴女が館に残れば良いじゃない」
「そういう訳で、咲夜に話は通してあるわ。安心なさい」
「そう!だから一緒に行こうよ、よーちゃん」
「は、はぁ...」
どうやら、私とメイド長が入れ替わる形で話がついているようですね。それに、館の心配事が無いのなら特に行かない理由もありませんしね、うん
「そういうことでしたら、分かりました。私が同行させていただきますね」
「やった!そうと決まれば早く行きましょ!ほら、おねーさまも!」
私の同行が決まるや否や、待ちきれないとばかりにぐいぐい腕を引っ張ってくるフラン様。わわっ、ちょっと待ってくださいって...あ、そう言えば
「お、お嬢様、お出掛け先は一体どこでしょうか」
そう、どこに行くのか、である。余りこの場所の地理には詳しい訳でも無く、行き先が少しばかり気になり口を突いて出た質問
「地獄よ」
あ、地獄ですか。私も多分行くのは初めてで...す......あ、え............え?
「も、元、ですか...ビックリしましたよ、もう」
「ふふ、でも面白かったわよ?貴女の反応」
日傘を片手に持ち、お嬢様の隣を歩きながらそんな会話を交わす。ある程度舗装された道の両脇には木々が鬱蒼と茂っていて、少し先を日傘片手に踵を弾ませながら進むフラン様が見える。それにしても...
「地獄なんて言われたら、あんな反応もしてしまいますよ、お嬢様...」
館でそう言われた時は遠回しな解雇通知かと思ってしまったんですけど...そう、これから私たちが向かうのは、地底というところらしい
そこは元々地獄の一部だったらしく、その跡地に妖怪の方々が一部、地上から移り住んだのだとか...ここまでの道中でお嬢様やフラン様がお話ししてくれました
「それにしても、そんな場所にもご友人がいらっしゃるんですね」
「えぇ、もう結構な付き合いね。最近は余り顔を出せて無かったのだけど...」
更に言うと、行き先は地底に住むご友人のお住まいらしい。今更ながら、お嬢様の人脈って結構広い気がする...
「そうだねー、もうどのくらい行けてなかったかなー?」
「二ヶ月とかそのくらいだねー」
「あら、もうそんなに経ったかしら...時間の流れは早いものね」
そんなことを考えながら歩いていると、先を行っていたフラン様が戻ってきてそう言う。二ヶ月、ですか...人の尺度だとまぁ、久し振りですが...吸血鬼となるとどうなんでしょう
「あ、そろそろ妖怪の山だね。地底の入り口までもうすぐ!」
「ホントだ!ほら、よーちゃん早くー!」
「ちょ、待って下さいフラン様ー!」
「これが入り口...ですか?」
「そ!いつもここからお邪魔してるの」
腕を引くフラン様に連れられ、辿り着いたのは何処までも続くような...全く底の見えない暗い縦穴。てゐさんの落とし穴とは比べ物にならないですね...いや、というか
「ここを降りるんです...よね」
「そうね。唯一の出入口なんだから、もう少し分かりやすくても良いと思うけれど」
「出てくる時ちょっと迷っちゃうんだよねー、うん」
いやまぁ...立地も確かにそうですけど。いや、あのぉ...
「それじゃ、行きましょう」
「うん!ほら、よーちゃんも行くよー」
「行こ行こー」
「あ、あの!」
今にもその縦穴へ飛び込もうとしているお三方を呼び止める。皆さんの頭上にはハテナマークが出ているようにも見える程に首を傾げたりだとか、少し困惑したような視線が浴びせられる
「どうかしたの?よーちゃん」
「あの...実は...」
「えー!よーちゃん飛べないの!?」
「はい...お恥ずかしながら...」
「へー、妖精さんなのに不思議だね」
地底へと続く縦穴の前、よーちゃんのカミングアウトを聞き驚いた声をあげてしまう。ほえー、飛べないんだね...確かに、言われてみればよーちゃんが飛んでるとこ見たことない...かも
この縦穴は降りるというよりは落ちる、だもんねー...飛べないってなっちゃうと妖精とは言え危ないし。うーん...あっ
「私、良いこと思い付いた!」
「はえ?」
「あ、あの...フラン様...?」
「よし!それじゃ、よーちゃんしっかり掴まっててね」
飛べない事実を話した私は、今かなり困惑している。フラン様が良いことを思い付いたらしく、その策に乗る他ないとは思いますよ。私飛べないんですから...でも、それでもですよ!
「な、ななななんでお姫様抱っこなんですかぁっ!?」
右手で背中、左手で膝裏を支えられ、為す術なくフラン様の衣服をぎゅっ、と掴み、そう慟哭する。いや、あの!運んでもらえるのは助かるんですけど!!もっと他に無かったですか!?ほら、おんぶとかなんとか...
「んー、おんぶだと羽根がうまく動かせないからこうするしかないんだもん」
「いーなー、私も抱っこして欲しいなー...なんちゃって」
「ほら、フランに妖精長も、早く行くわよ」
「はーい、お姉さま。それじゃ、れっつごー!」
私の叫びも通ずることなく、そのままフラン様に抱かれ、四人で縦穴の中へと......あれ、四人...?...あ、え!?
「あ、貴女...どなたですか...!?」
「あれ、バレちゃった...?ま、歓迎するよ!よーちゃん、だっけ?」
さて、皆さんはどこで「ん...あれ?」ってなりました?ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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