元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「ようこそ...って」
「よく分かったねー、地霊殿まで気付かれないと思ってたんだけどなー」
悪戯っぽい笑みを浮かべ、首を傾げながらそう告げてくる緑の髪の少女。そこに居るのが至極当然、といったような立ち振舞いに文言...
困惑の色を隠せないままフラン様の腕に抱かれ、長く暗い縦穴を降下していく
「んー?...あ、こいし!?」
「やっほー、フラン!久し振りだねー」
その最中、ふと隣に目線を移したフラン様が驚いたように声をあげる。こいし...え、名前ってことは...お知り合いの方なんですか!?こいし...さんも気さくに返している
「あら、こいしじゃない。わざわざお出迎えに来てくれたの?」
「んー?ま、そんなとこだねー。レミ姉も久し振りー!」
続いてそのやり取りに気付いたのか、お嬢様も一つ挨拶を交わす。お出迎え...それに久し振り?口振りから察するに、恐らくですが...
「フラン様、この方が仰っていたご友人の...?」
「ん、そうだよ!こいし、この子はウチのメイドのよーちゃん!」
「あ、合ってた...よろしくねー、よーちゃん」
「えっ、あ...よろしくお願いしまへぶっ?!」
「うぴゃあっ?!」
フラン様に抱かれながらも、今日訪問する予定だったお嬢様たちの友人、こいしさんに挨拶を返...そうとした時、突如として落下していた感覚が止まる
何かにぶつかった?...というよりはせき止められた、ような感覚。突然の出来事に、潰れたカエルのような声が出てしまう。勿論、私を抱いて降りていたフラン様も同様に、ソレに止められて少々可笑しな声をあげる
私たちを止めたその何かは、落ちてきた私たちを跳ね返し、トランポリンのように反発する。けれど、ソレから離れることは無く、数度ぼよよんと揺れ、動きを止める。これは一体...っ!?
「あいたた...ビックリしたぁ...って、うぇっ、なにこれぇっ!?」
「うわー...大丈夫ー?二人とも」
「これは、蜘蛛の巣?かしら...随分大きいのね」
上から聞こえてくる声...どうやらこれは蜘蛛の巣らしく、引っ掛かったのはフラン様と抱かれていた私だけだったらしい。確かに下は暗いうえに、喋ってて見て無かったですし...いや、問題はそこじゃない
「あ、ああっあ、あのっ!フラン様っ!?」
「うぅ~、べとべとするぅ...んー?どうしたの?」
「で、出来ればお早く退いて下さるとっ...えっと、そのぉ...」
現在、私の置かれている状況はかなりマズイ。倫理的に。簡潔に説明すると、上から順に、フラン様、私、蜘蛛の巣、となっているんですが...まず最初に私は今あお向けで背中側が蜘蛛の巣に引っ付いており、ついでに両手両足もしっかり引っついて身動きが取れない状態です。続いてフラン様ですが前方向に倒れるような形で蜘蛛の巣に引っ掛かってしまったようでうつ伏せになっており私と同じく両手両足を絡め取られ動かせない状態になっています。とどのつまりですね、あの...
「えー、でも引っ付いて動けないよ...こいしー!お姉さま!助けてー!」
「こいしさん!お嬢様!助けてください!出来るだけ早く!」
当たってます!色々と!!結構しっかり!!!!
身体は正面から密着する形で固定され、私があお向け、フラン様がうつ伏せなので、綺麗なご尊顔が殆どゼロ距離...なんなら喋るだけでその吐息が当たってるんですが!?
それにですね...あの、一応中身男なんですよ!なんか前も同じようなことあった気がするんですけど!!あー、平常心平常心
「全く...しょうがないわね。こいし、そっち側引っ張ってくれる?」
「はーい。それじゃ、せーのっ!」
「うへぇ...まだべとべとするよー」
「大変な目に逢いました...」
二人がかりで引っ張ってもらい、クモの巣から逃れた後、ようやく縦穴の底、地底までやって来ました。目の前には橋が一つあり、その先には立派な町が広がっている。未だに私とフラン様の衣服には、蜘蛛の糸が所々にへばり付いたままになっている
「こいしさん...あのクモの巣は一体...?」
「んー、多分ヤマメのだと思うけど...あ、ほらあそこの」
先程のクモの巣に心当たりが無いか、こいしさんに聞いたところ、知り合いの方らしく直ぐに名前が出てくる。ヤマメ...さん。恐らくですが、蜘蛛の妖怪さんでしょう...って、ん?
「あそこの...?」
そう言うこいしさんが指差すのは目の前にある橋の中程。見ると二人の方々が談笑している様子だった。あのどちらかが...
「やっほー!ヤマメー!パルスィー!」
「...取り敢えず行きましょうか。用があるのは旧都の向こう側なんだから」
「はーい、お姉さま。うぅ~、気持ちわるーい」
二人の名前を呼びながら、元気に橋の方へと駆けていくこいしさんの背中についていく私たち三人。こいしさんのお家で何か拭くものでも借りれると良いんですけど...
「やっほー!ヤマメー!パルスィー!」
「それでねぇ...ん?...おお?こいしちゃんとは珍しい。まーた地上で遊んでたの?」
「相変わらず元気ね...妬ましいくらいに」
適当に橋の上でパルスィと談笑していると、私たち二人の名前を呼ぶ元気な声が聞こえてくる。そっちからってことはまた地上に出ていたらしい。パルスィはいつも通り、と
「えへへー...あ、そうそう!ねぇ、あの縦穴にあった蜘蛛の巣ってどうしたの?」
少し照れながらそんなことを聞いてくるこいし。これは誉められてはないと思うけれど...蜘蛛の巣ね
「ん?あぁ、あれね。この前飛べない妖怪が落っこちてきてね、その時は私がいてどうにか大事にはならなかったんだけれど...いつでも私がいれる訳でもないし、ってことで一応張っといたのさ。それがどうかしたの?」
まぁ、知らない間に仕事場でぽっくり逝かれてても寝覚めが悪いからね。出入りに関しても、ちゃんと目を凝らして見れば分かるから邪魔にはならないだろうし...ん?
「へー...なんだってさ、二人とも」
「むー...もうちょっと分かりやすくしてよー!」
「こいしと喋ってて下見てなかったフランもフランよ。現に私は引っ掛かってないんだから」
「あーっ!というか分かってたなら教えてよお姉さま!」
「ちょ、フラン様落ち着いてください!」
地上からのお客さん。あー、大体分かっちゃった...
「フラン様、これは仕方なかったことですから。機嫌直して...」
「つーん」
「あ、そっぽ向いちゃった」
お話を聞いたところ、どうやら安全の為に張られていたものだったらしいので、どちらに非があった、という訳でも無かったんですが...フラン様がちょっとご機嫌ナナメな状態です
「んー、地霊殿行こうにも...二人ともべとべとだしねー」
「そうですね...」
「つーん」
確かに、このままお家にお邪魔するのもどうかと思いますし...と言っても手元には何かできそうな物も持ち合わせていませんし...
「...そんなに汚れてるのが嫌なら温泉にでも行けば良いんじゃない?」
「え、温「温泉っ!?え、地底にあるの!?」あ、フラン様!?」
色々と悩んでいるともう一人の...パルスィさん、と呼ばれていた方がそうぼやくように言う。ってフラン様、興味津々じゃないですか...
「あー、色々とあってね。元々湧いてはいたんだけど、最近ちゃんとした施設が出来上がったんだよ」
「へー、そうだったんだ...私も知らなかったや!」
「私、温泉行ってみたい!!ね、良いでしょお姉さま!」
「温泉ね...私もちょっと興味あるわ」
ご機嫌ナナメだったフラン様も凄い食い付き方。まぁ、そこならべとべとも洗えるでしょうし...
「そうね、お邪魔する前に入りに行こうかしら」
「やったー!温泉なんて初めて!!」
「そうだねー、私も行ってみたいかなー」
「温泉一つで随分楽しそうね...あー、妬ましい」
どうやら満場一致で行くことが決定しそうですかね。それにしても温泉、ですか。私っていつぶりなんでしょうか...初めて、かも?
「それじゃ、早速行きましょ!」
「私も初めてですかね...ちょっと楽しみです」
いきなりトラブルに遭遇してしまいましたけど、なんとか丸く収まりそうですかね...
「よーちゃん、一緒に洗いっこしよーね!」
「あ」
心の中で特大の地雷を踏み抜いてしまった音がした
次回、妖精長死す
デュエルスタンバイ!
...嘘です。
ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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