元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「えっと、確かこっちの方に...」
「ぜーっ...ぜーっ...ちょ、貴方、待って...けほっ」
聞こえてくる声に音、三人の追いかけっこで荒れてしまった痕跡を辿って走る。流石に温泉施設、かなり広いですね...でも
「また悲鳴...あっち、ですか。...急がないと!」
「た、体力おばけ...はーっ、ひーっ」
「って、大丈夫ですか!?さとりさん!」
「あ、後で...後で追い付きます、けほっ...から...」
酷い息切れ...それに顔面蒼白、といった目に見える症状...もしかして、なにか重い持病「体力が無い、だけ...です...はーっ、はーっ...けほっ」...こいしさんのことは任せて下さい
「お願い、します...はぁー...」
「あれ...おかしいですね...」
幾つかの曲がり角を通り過ぎ、主とその友人の妹様を追いかけていた、のですが...
「聞こえなく...なった?」
お三方の追いかけっこが原因の喧騒...いつの間にか聞こえなくなってる?あるのは倒れた観葉植物や、床に転がる桶。痕跡は有れど、その発生元である三人の姿が無い
いつの間にか他のお客さんの往来も戻り、従業員のような人...多分妖怪さん、ですけど...も片付けに取り掛かっている。後で関係各所に謝りに行かないと...あ
「もしかして...外に...?」
一つの可能性が脳裏に過る。あの大きな街に出られると流石に捜すのは...いや、でも外だとしてもまだ近くにいるはず。確かあの角を曲がればフロント...早く行かないと!
「わぷっ!?...いたた...」
「っと、大丈夫かい?」
走り出した私はその曲がり角から出てくる方に気付かず、勢いそのままぶつかってしまう。しかし、その方の身体が大きいうえに、私自身が小柄なのもあって一方的に後ろに転け、しりもちをついてしまう。あいたたた......って、あ
「す、すみません!少し急いで...て......」
謝罪の意を口にするも、途中で言葉が詰まる。理由は三つ...まず一つ目。今はしりもちをついていて、その方を見上げる形ではある...あるんですが、それを踏まえても高い身長。しかも、声色で分かるように女性...
その驚きを納得させるのが二つ目。金色の前髪...それを押し退けるように額の中央辺りから生える角、だった...そう、私は以前にも会ったことがある。鬼...萃香さんと風体に差異はあるものの、そのガタイと角で確信して良いでしょう
そして三つ目...私の言葉を詰まらせた最後の要因。その大きな体躯、その両肩には...
「「きゅう...」」
「お嬢様!フラン様も!?」
「ん?あんた、こいつらの知り合い?」
漫画のようなたんこぶを引っ提げ、目を回した二人が担がれていた
「めいど?...あぁ、したっぱみたいなモンかい」
「したっ!?...そ、そうですね」
すっかりノックアウトされてしまったご両人に驚いた後、自分がその二人の従者であること、姉妹喧嘩がヒートアップしてこうなってしまったことの説明と謝罪をした
どうやら力ずくではあったものの、この...勇儀さん、という方が暴れる二人を止めて下さったらしい。あれ、そう言えばこいしさんは...
「はー...や、やっと追い付いた...」
「あ、さとりさん!」
そうやって話していると、私が来た道の方から荒い息使いと共に声が聞こえた。右手を壁、左手を自身の膝に置き、呼吸を整えている
「お、さとり。そいつとこいつら、あんたの知り合いかい?」
「すー...はー...ふぅ。えぇ、その二人も私の友人とその妹です」
「ほー...ま、仲睦まじく温泉でゆっくりするのは良いけど、しっかり手綱引いて貰わなきゃ困るね」
「...私の客人に対して、いささか失礼では?」
「?レミ姉とフランはお馬さんってことー?」
少しばかりお二人の間に険悪な雰囲気が流れ......いや、お馬さんって違...ん?......ん!?
「って、こいしさん!?」
「ひひーん!...なんちって」
いつの間にか居なくなり、いつの間にか姿を現したお馬さ...こいしさん。いや、今はそんな場合じゃ...
「ぷっ...あっはっはっは!!冗談だよ、冗談。このくらいのいざこざ、地底じゃいつものことだからねぇ」
「はぁ...鬼は嘘吐かない、じゃ無かったんですか...?」
...ん?
「ははっ!そんなんじゃ、酒の席で笑い話の一つも出来やしないさ」
「ぱからっ!ぱからっ!」
「こいし、人前だからやめなさい」
...あれ、皆仲良し...?
「へぇ!あんた萃香に会ったことあるのかい」
「はい、この前の宴会で初めてお会いしました」
結局のところ、特になんのいざこざも起こらず。なんなら今は三人で談笑しながら、気絶してしまったお嬢様とフラン様が目を覚ますまで待機中ですね。フラン様が下敷きになってお嬢様はその上に乗って、まだ目を回してます
さとりさんはというと、走り回って疲れたからもう一度温泉入ってきます、とのこと...汗も凄かったですしね、うん。因みに、お二人が起きて、さとりさんが戻り次第、さとりさんのお家にお邪魔することになっている
「あ、あの大宴会ってやつでしょー?楽しかったなー」
「え、こいしさん来られてたんですか?」
「うん!お料理もお酒も美味しかったよー?特にお料理!」
「それなら良かったです、頑張って作った甲斐があります」
「え、あれよーちゃんが作ったの!?すごーい!」
やっぱり真正面から褒められるのはまだ慣れませんね...えへへ
「へぇ...そんなに旨いんなら、いつかご馳走になりたいねぇ」
「鬼はいっぱい食べるし、いっぱい飲むよー?」
「あ、あはは...できれば手加減して貰えると...」
ただでさえ、とんでもない幽霊さんもいらっしゃるので...ご容赦を...
「...うーん...ん?あれ、よーちゃん?」
「あ、フラン様!大丈夫ですか?」
「んー...ちょっと頭いたーい...」
「おはよー、フラン」
そんな話の最中、どうやらフラン様が目覚めたようですね。腫れの引いた頭をさすって少し眠そうにしてますね...あんなに大きなたんこぶだったのに殆ど治ってる
「...って、お姉様おもーい!そいっ!」
「あだっ...はっ!な、なに!?」
「レミ姉も、おはよー」
起きたフラン様に投げ飛ばされ、身体を打ち付けて目を覚ましたのはお嬢様。寝起きなのと突然のことで少しパニックを起こしてますね。目覚めは悪そう、ですね...
「ふぅ...二人とも起きたんですね」
「あ、さとりさん。はい...ちょっとわちゃわちゃしてますけど」
「ふふっ...そうですね」
丁度、お風呂上がりのさとりさんも合流。タイミングばっちりですね
「じゃ、私はこの辺で失礼しようか。妖精さん、今度の宴会楽しみにしてるよ」
「はい、勇儀さん。色々とありがとうございました」
二人の意識が戻ったのを見届け、お役ごめんと立ち去る勇義さん。掛けた感謝の言葉を背に受け、そのままヒラヒラと手を振って下さった。なんというか...カッコいい...
「さてと...それじゃ行きましょうか、我が家に」
「はい、お邪魔します」
温泉...また来たいですね、なんて
「へっくち!ん~...亡霊って、風邪ひくのかしら~」
「?...どうしたんですか、幽々子様?」
さとりさんは出不精なのでこうなりましたね、少しは運動しましょう。ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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