元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「すごーい!もう乾いてるー!」
「そ、そうですね......はぁ」
そう驚きの声を漏らすのは、綺麗になったお洋服に袖を通したフラン様。確かに、1時間程度で乾燥まで終わってシワ一つ無いなんて...凄いですね
勇儀さんと別れた後、私たちはさとりさん宅へと向かう前に洗濯していた衣服を取りに行き、今は丁度着替えを済ませたところです......はい、お手伝いしました......
「...普段から着替えは貴方が?」
「いえ、最近は他の妖精メイドの子に代わって貰ってたんですが......」
「同情しますよ」
ぐぬぅ......今度また地底でこんな機会があったら、着替えはさとりさんに「同情は、しますよ」...さとりさん、ちょっと面白がってませんかね...?
「それじゃあ我が家に案内しますね」
さとりさん?
「ところでさとり。あの施設、地底の妖怪たちで建てたの?それにしては造りがちゃんとしてたけど」
私たちは温泉を発ち、さとりさんのご自宅へと向かっている。地底ということもあり陽の光は届いておらず、可愛らしい日傘は二つともお役御免となっている
そんな道中、そう質問を投げ掛けるのはお嬢様。口振りから、あの施設に何か違和感があったらしい...因みにフラン様とこいしさんはお二人で愉しげにお喋りしている。ガールズトークってやつですね
「鋭いですね、レミリアさん。あの施設は、河童の方々に助力して貰ったんですよ」
「成る程ね、納得したわ」
「河童さん、ですか?」
河童、その単語には実は心当たりがあった。少し前にあった大宴会、神社の裏に用意されていた大規模な調理場。それを作ったのが河童さん、という話を仕事の合間に話して貰った覚えがある
確か...機械に滅法強く、職人であり、商売人である...らしい。少し「...ん?」となったものの、天狗が新聞記者さんだとか、妖精がメイドさんだとかで慣れてたので直ぐに受け入れることができた。この場所では常識に囚われちゃいけないみたいですね、うん
「えぇ。と言っても、基本的には現場監督みたいな立場ですね。建築は鬼やその他の妖怪たちが請け負っていたので」
「ふーん...確か、この街の家屋も鬼が建ててるのよね?」
「そうですね。仕事も早いですし、力仕事ですから」
はへー...新しく鬼が大工さん、というのが幻想郷知識として加わりました。もしかすると、妖怪さんは皆何かしら一芸に秀でているものなのかも、ですね
「ま、壊れるのも早いんですが」
「...え?」
それってどういう...そう続くはずだった言葉はそこで遮られる。轟音、そして家屋を崩しながら今歩いている大通りの端から端までを飛んで行った、人影。いや......え?
「はぁ...まぁ、こういうことです」
「いや、あの...今のは......じゃなくて!」
あぁ、またか...なんてため息混じりに呆れた様子のさとりさんを尻目に、家屋に突っ込み瓦礫に埋もれるその誰かに駆け寄る
「だ、大丈夫ですか!?...って、え?」
その瓦礫の山からは腕が一本だけ、何故か大きな盃...?なみなみとお酒の入ったソレを手にして露出していた。いや...なんで
「ぶっはあっ!...いやー、良いの貰っちゃったねぇ!」
「あ、勇儀さん!?」
「ん?おぉ!また会ったね、地上の妖精さん」
瓦礫を押し退け、ガバッと起き上がってきたのは、さっき別れたばかりの勇儀さんだった。空いた手で口元を拭い、飛んできた方を見据えている
「珍しいですね、貴女が飛ばされる側なんて」
「だろー?久々に骨のあるヤツが来たよ」
心配することも無く、さとりさんが声を掛ける。さっきの様子から、こんなことも日常茶飯事なんですかね...?
「骨がある、ですか...そこら一帯、ソレが終わったらお願いしますよ」
「はいはい、分かってるって...よっ!」
「わぷっ!?」
その言葉を最後に勇儀さんの姿が消え、軽い掛け声とは裏腹に轟音と崩れる瓦礫だけが残されていた......結局、今のは一体...?
「喧嘩、ですよ。片手塞いでましたし...今日は被害がいつもより小規模ですね」
?...これで、小規模?......何度目を擦っても瓦礫の山と成り果てた家屋はそのまま。ざっと見積もって十数棟......しょう...きぼ?
「少し前に鬼の...萃香さんがここに立ち寄った時は、街が半分更地になりましたから」
「さらっ!?」
「鬼は喧嘩大好きだからねー。勇儀は特に!」
鬼が鬼たる所以を目の当たりにしましたね......萃香さんもちゃんと鬼、なんだなぁ...なんて
「これが地底の日常ですよ。そろそろいきましょうか」
「は、はい...」
少しの戸惑いを残しながら、早くも瓦礫の撤去に取り掛かっている妖怪さんたちを横目に、さとりさん宅へ向かうのでした...
「ここが...」
「たっだいまー!」
「おっ邪魔しまーす!」
「はぁ...つ、着きましたよ......うぷっ」
「アンタねぇ...この勾配でもダメなの?...先、行ってるわね」
街...正しくは旧都、らしいです...からしばらく歩き、少し離れた小高い丘の上、そこには立派なお屋敷が鎮座していた。って、さとりさん...ホントに体力無いんですね。ここまでとは...
ぜーはー言ってるさとりさんとは違い「ちょ、ちょっと...けほっ」...さとりさんとは違い元気なお二人、こいしさんとフラン様は各々挨拶をしてお屋敷の中へと入って行った
「ようこそ地霊殿へ。妖精さん?は見ない顔だね」
「あ、はい。お嬢様方は何度か来られ...て......」
気さくに話しかけられ、あ、ここ地霊殿って言うんですね...なんて思いながら、声のする方へ目線を動かし話す......が、今日何度目ですかね...言葉が詰まる。理由は明白
「え、いや...ネコ...?」
「代わりに今日はあの銀髪お姉さんはいないみたいだねー...ん、どうかしたのかい?」
そこで喋っていたのが、ちょこんと座る黒いネコだった。いや...ちょっと、ちょっと待って貰って...え?
「え、ネコが喋って...る?」
突然の事に軽くパニックになる私。今日は...いえ、この身体になってから驚くことばかりですね。特に今日は...ですが
「ネコ?...あ、そういやそうだったね。よっ、と」
「へ...?」
驚きは連鎖する。喋る黒ネコさんがくるっと、軽やかに宙返りすると...ネコミミと尻尾を携えた女性へとその姿を変えていた
「すー、はー...ただいま、お燐」
「お帰りなさい、さとり様。いやー...二人とも元気でしたねー」
「そうね。少し分けて欲しいくらいね...」
...もう難しく考えるのはやめにした方がいいですかね。黒ネコさん...お燐さんはさとりさんの従者さん、と...覚えました
「それじゃ案内するよ、妖精さん。あたいはお燐、よろしくね」
「よろしくお願いします、お燐さん」
お燐さんにそう促され、お屋敷の中へ入る。すると中では既に、他の住人さん?従者さんらしき...立派な翼を携えた女性の方が、先に入っていたお嬢様方とわいわいお喋りしていた。......黒い羽根。カラスさん、ですかね?
「うにゅ?初めましての人?」
「はい、私は、ふぇっ!?えっと...あの」
「じー......」
その方はこちらに気づいたようで、一先ず挨拶を...と思い自分の名前を告げようと...したんですが、突然目の前に、それももう目と鼻の先くらいの距離にそのご尊顔を近づけられ、凝視してくる。しばらくして口を開いた彼女が放った言葉は
「貴女、私にそっくり!」
「はい?」
疑問符が付きそうな程には藪から棒だった
こんな感じですね。妖精長、色々有りすぎて混乱状態でしたね...ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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