元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます   作:微 不利袖

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注意...この小説においてですが、「妖精長が何故、幻想郷に来たのか」という点に注目するため、次の話からシリアスな成分が多くなります。「そんなシリアスは求めていない!」という方はこのお話のあと、数話程飛ばして読んで貰うことになると思われることを、ここで先に申しておきます。誠に申し訳ありません。「シリアスは良いや」と思われる方は話の前に※印が付いていない話が投稿されるまでお待ち下さい。長々となってしまいましたが、34話はそのような展開になるキッカケが起きる程度ですが、それでも少しシリアス寄りの内容です。苦手な方はお気をつけ下さい。いつもより少し長めになっています。


さて、長くなりましたが...それでは、ゆっくり読んでいってね...なんてね



34話 頭上にご用心

 

 

「あ、あのー...」

 

「ん、なんだ?...あ、もしかして嫌いなもんでもあるか?」

 

 

今の状況に戸惑いを隠せないまま、ユウガさんに声を掛ける。いえ、好き嫌いなんかは無い。お出しされたモノは残さず食べるようにしているのでその辺りは大丈夫です。なんですが...

 

 

「お姉ちゃーん、早く食べようよー」

 

「お行儀悪いわよ、こいし...お空もお箸置きなさい」

 

「うにゅっ!?...はーい、さとり様」

 

「あはは、惜しかったね、お空。あたい見たく大人しくしときなよ」

 

「フラン、貴女ちゃんとお箸使えるの?」

 

「む、お姉様よりは上手だもーん」

 

 

なんで私も食卓に!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

普段からお嬢様やフラン様と食卓を囲むことが殆どない私にとって、この状況の違和感が凄まじい...いつもはメイド長に指示されれば給仕に付くんですが...

 

 

「あの、私は別で食べますので皆さんの給仕を...」

 

「あら、構わないわよ妖精長」

 

 

そんな違和感から脱するべく、口に出した提案は途中でお嬢様に遮られる

 

 

「今は家族ぐるみの付き合いなんだから、そんな野暮なことは言わなくていいわ」

 

「あはは、よーちゃんってば咲夜とおんなじこと言ってるよ?」

 

「あ...」

 

 

突然、胸になにか刺すような...ぎりぎりと締め付けられるような鈍い痛みが走る。きっと、お嬢様にとってその言葉はいつも通りで、他愛もなくて、数日もすれば忘れてしまうような...そんな、気に留めることのない文言なんでしょう

 

でも......家族、ですか...。飾り気のない、ただ当たり前のように口にされるその言葉が、少し前まで何も持っていなかった私には、酷く暖かく思えてしまった

 

本当は怖かった。何も分からないまま、何も私のことを覚えていないまま、何も知らない場所で......もしかしたら、私は誰かを残してここに来たんじゃないか...そんな考えに至って、何度も怖いと...苦しいと...

 

 

「ん...妖精長...?」

 

「え...よーちゃん?」

 

「...へ?あ、あれ......?」

 

 

心配をするような声色で今の自分の名前を呼ばれる。返答に困り、覚束ないまま口を突いた私の声は、弱々しく震えていた。え...あれ、なんで......

 

 

「...んっ!」

 

「あ...フラン、様......?」

 

 

ぼやける視界の中、隣に座られていたフラン様が突然私を抱き締めて来た。もう、何も...訳が分からなくなってった。思考が上手く纏まらない

 

 

「...あのね、私、なんでよーちゃんが泣いてるか分かんないの。でもね、よーちゃんが悲しいと、私も悲しくなっちゃうから...」

 

 

抱き寄せる力が強くなり、その言葉はどんどんと悲哀を帯びていく。これは...これ以上は、いけない

 

 

「...すみません、フラン様。もう...もう大丈夫です!大丈夫ですから...」

 

 

強がりなんかじゃない。今の私は元ホテルマンで従者。お客様...いえ、仕えるお人を悲しませるのはダメだ...頬を伝う涙を少し乱暴に拭い、できるだけ明るい声で話す。今は、空元気でも良い、だから...

 

 

「ん?どした妖精さん。あ、もしかして玉葱切ったのが今さらしみてるのか?」

 

 

だか......ふっ...ちょ、ユウガさん...

 

 

「ぷっ...あはは!」

 

「ちょ、よーちゃん?」

 

「い、いえ...ちょっと、面白くて...あはは」

 

 

はー...冗談でこんなに笑ったのはいつぶりなんでしょうか。覚えて無いのが少し残念ですね。さっきまで、酷く暗かった私の心境も、今のを境に明るくなった...これは後でユウガさんにお礼しないといけませんね

 

 

「ふふっ...それじゃ、そろそろ食べましょうか。待ちきれない食いしん坊もいるみたいなので」

 

「さとりさまー!はーやーくー!」

 

「お空、待て!待てだよー?」

 

「うにゅー...」

 

「あたいもお腹空いちゃったかなー、流石に」

 

 

また、いつものように、と言うか...明るい雰囲気が戻ってきた。フラン様はもう心配ない、と言った風にご自身の席へと着き両の掌を合わせている

 

さて、料理を待ちきれない方々の為にも、私も準備をしよう。同じように手を合わせ、号令を待つ

 

 

「あ、そんじゃ妖精さん、頼むよ」

 

「あ...え?私、ですか?」

 

「そうですね。折角ですから、貴方にお願いしましょう」

 

 

わ、私...?ユウガさんの無茶振りに近いお願いに驚いていると、続いてさとりさんの追い討ちまで...いや、でもこんな大役...

 

 

「はーやーくー!」

 

「あ、え...えっと......い、いただきます!」

 

 

お空さんに急かされ、あたふたとしながら最早勢いで言葉を紡ぐ。少しの間が空き、笑みが溢れたり、やれやれ、なんて息を吐く皆さん...そんな空気に

 

 

「「「「「「「いただきます」」」」」」」

 

 

懐かしさを感じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「しょ、と...これで全部です」

 

「あぁ、ありがとな妖精さん。悪いな、結局片付け手伝ってもらって」

 

 

両手いっぱいに抱えた空の食器を洗い場へと運び終え、ユウガさんにそう伝える。昼食は...なんだか、いつもより美味しかった気がする

 

 

「いえ...やっぱり、何か仕事してないと落ち着かなくて...職業病みたいなものですかね。たわし、お借りしますね」

 

「手、届くか?......そうか、職業病...ね。...うん、助かるよ」

 

 

調理の時と同じく、空の箱に立ち、そのまま洗い物をお手伝いする。普段妖精メイドの皆と食事するときよりも、ちょっと多いくらいですかね...まあ、ぱぱっと終わらせましょうか

 

 

「ゆーが、よーちゃん!お外で遊ぼー!」

 

「遊ぼー!」

 

 

さて、取り掛かろう...というところで、奔放な声で洗い場の私たちへと呼び掛けてきたのは...こいしさんのようですね。続くようにしてお空さんも出入口からこちらを覗き込むように顔を出している

 

 

「あー...妖精さんの手伝いもあるし、すぐ終わるだろうから先に庭で待っててな」

 

「分かった!行こ、お空。あ、また後でね!よーちゃん!」

 

「約束だからね!」

 

 

ユウガさんがそう言うと、そのまま私に念を押すようにして、お庭へと続く廊下を走って行かれた。遊ぶ...そう言えば、この場所に来てからはお仕事ばかりでしたかね...

 

 

「ま、そういう訳だけど...洗い物も得意だろ、妖精さん?」

 

「...はい、5分も要りませんよ!」

 

「あ、え...?は、速いな!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な!?妖精さん、なんだそのステップ!?ってぐえぇっ!?」

 

「すごーい!よーちゃん飛べないのに全然捕まんないねー!」

 

「あら、うちのメイドならそれくらい造作もないでしょ?」

 

「あ、こらゆーが。無理そうだからってお姉ちゃん狙うのはダメだよー!」

 

「ひー...あ、あのきゅっ、休憩...うぷっ」

 

「ちょ、さとり様!あんまり無理しちゃ...って、あ!」

 

「次の鬼はお燐だー!逃げろー!......あ、今って鬼誰だっけ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、もう帰っちゃうの...?」

 

「えぇ、そうね。もうすぐ日も落ちる頃だろうし...あまり咲夜に心配は掛けられないもの」

 

 

楽しい時間は過ぎるのが早く感じる...正直、それを実感したのは今日が初めてですかね。遊びも終わり、お空さんの名残惜しそうなその問いかけにお嬢様が仕方ない、と返している

 

 

「ん?あれー、お姉ちゃんは?お燐知らないー?」

 

「あー、自室で休んでますよ。一応ゆーがに付き添ってもらってますけど...」

 

「えー、お見送りしないとなのにー...」

 

 

むすーっ、とした表情で、別れの場に姉が居ないことを残念がるような、少し怒っているような様相でお燐さんとこいしさんが言葉を交わす。さとりさん...明日の筋肉痛が心配ですね

 

 

「ね、よーちゃん」

 

「?はい、なんでしょうこいしさん」

 

 

たたっと私に駆け寄り、声を掛けられる。どこか寂しげな表情に、なんだか罪悪感に似た感情が芽生えてしまう...そ、そんな目で見つめられましても...

 

 

「また、来てくれる...?」

 

「!......はい!勿論ですよ。良ければまた、一緒に遊びましょう。ですが...」

 

 

また...私としては勿論!...と言いたい、いや言ったんですけれど...と、わざと何か含んだような視線をお嬢様へと向ける

 

 

「そうね...なんなら、今度は紅魔館に来なさいな。皆で歓迎するわ」

 

「やった!...あ、それなら館の皆で一緒に遊べるね!」

 

 

成る程...今回は招待されましたけど...今度はこちらでおもてなし、ですね。今日のお料理に負けないようなご馳走をご用意しないと、ですかね。...さとりさんとパチュリー様のお身体が心配になってしまいますけど...

 

 

「!...うん、うん!...約束だよ?」

 

「わっ、と......はい、約束です。妖精メイド一同で、おもてなしさせていただきますね」

 

 

お嬢様のお誘いの言葉に嬉しそうな声をあげるこいしさん。そのまま私の手を握り、改めて約束を契る。...これ、私が答えて良いんですかね...?

 

 

「それじゃあ、約束も済んだみたいだし...帰りましょうか」

 

「うん...じゃーね!こいし、お空、お燐!次は紅魔館で遊びましょ!」

 

「ばいばい!絶対、ぜーったい行くからねー!」

 

「ばいばーい!」

 

「あはは...これはさとり様に要相談、かなぁ」

 

 

そうして、私たちは別れを惜しみ...再開の約束を胸に、地霊殿を去っていった。途中、振り返ってみると、窓から手を振るさとりさんの姿が見えた...あぁ、今日は本当に色々あったなぁ...

 

 

「ん?...おお、アンタら!もう帰るのかい?」

 

 

旧都の道を歩いていると、そう声を掛けられる。ん?この声は...あ!

 

 

「勇儀さん?それに...」

 

「早いお帰りだね。温泉、楽しんでもらえた?」

 

 

勇儀さんに、ヤマメさん!どうやら、壊れて...壊してしまった家屋の修理をしているようで、肩にかなりの量の角材を担いで...って、流石に多すぎませんか?

 

 

「ま、こんな辺鄙でなんにもないとこだけど...また来ると良いさ。そうだ、今度は賭場にでも案内してやるよ」

 

「...?お姉さま、とばってなあに?」

 

「フランはまだ知らなくて良いわ」

 

 

あはは...賭け事はそんなに得意では無いんですけど...。去り際にそんなことを言われ、そのまま手を振り旧都をあとにする

 

出入口である縦穴までの橋...その真ん中辺りには、パルスィさんが背を預けて立っていらっしゃった。通りすぎる際、言葉を掛けてくる

 

 

「...あら、日帰り旅行なんて良いご身分ね」

 

「そうね、腐っても館の当主だもの!」

 

「その妹!」

 

「......あ、その従者です」

 

「...はぁ、今度は引っ掛からないように気を付けることね」

 

 

...半分呆れたような表情、声色でそう返されてしまう。少し恥ずかしいですね...うん

 

橋を越え、縦穴の真下に着き、上を見上げる。外がもう暗くなっているのか、地上から光が届いている様子は無かった...いえ、それよりも...

 

 

「それじゃ、よーちゃん!」

 

「......はぃ」

 

 

入って来たときと同じように、フラン様に身体を預ける。館に戻ったら至急、きーちゃんとかに飛びかたを教えてもらおう。地底の行き来で毎回こうなるのは不味い...

 

 

「それじゃ、掴まっててね。よいしょっ、と!」

 

 

そのまま身体を浮遊感が襲い、ぐんぐんと地面から遠ざかって行く。しばらくすると、色々お世話になったクモの巣...合間を掻い潜ってそこを抜けて行......ん?

 

 

「フラン様、何か言いましたか?」

 

「ん?なんにも...あれ...?」

 

「何か聞こえるわね。...上から?」

 

「──────────」

 

 

声が聞こえた。どうやらフラン様、お嬢様ではなく...しかも上から。そして、近づいて来てる?

 

 

「──あ────あ──────!」

 

「?なんて言ってるんだろ...」

 

「何かしら......!!ちょ、フラン!危な」

 

 

そこで私の視界に映ったのは...木製の、バケツ...?槽?のようなものだった。それ以上、それが何かを認識するよりも前に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の意識は耐え難い頭の痛みにそこで途切れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「有我、それに妖精長...」

 

 

ひらひらと見送る手を下ろし、窓辺で呟く。帰っていく三人の背中が完全に消え、自室の椅子に腰掛ける。私を心配してくれたペットの一人...有我はもう部屋をあとにしていた

 

 

「お空と、そっくり...」

 

 

昼間に聞いた言葉に...既視感を覚えた。そう、有我がここで人型を得た日...同じように、お空が放った言葉...今なら合点がいく。彼女(かれ)らは...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「事実は小説よりも奇なり...ね」

 

 

そんな言葉が、一人の部屋に寂しく木霊した...

 

 





長々と失礼しました。以後、ほのぼのだけが読みたい、と言う方はサブタイトルから※印が消えるまで、ご覧にならない事をオススメします

他に、私の活動報告にて投稿小説に関する質問箱を設置しました。小説に対して疑問や何か聞きたいことがあればご利用下さい

ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また

シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。

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