元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます   作:微 不利袖

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一つ前のあとがき通りシリアス風味です。苦手な方はお戻り下さい。妖精長が記憶を取り戻した少し後のお話しです。それでは、ゆっくり読んでいってね...なんてね


※スキマの独白

 

 

ぱちり

 

 

ぱちり

 

 

 

「ん、あら~これで詰みね~」

 

「えっ、あ...もう、今日は全然ね...」

 

 

追い詰められた玉は逃げ場を失い、私の陣営は白旗を揚げる。幽々子相手に連敗なんて、いつぶりかしらね...

 

今日はいつもみたいに白玉楼にお邪魔して暇を潰している。少しの肌寒さを感じ、そろそろ冬眠の時期ね、なんて思う...今年、ここに顔を出すのもこれが最後かしらね

 

 

「らしくないじゃない~、何か考え事~?」

 

「...私だって、こんな日もあるのよ」

 

「ふ~ん...そう」

 

 

酷く幼稚な言い訳...端から見れば子供の負け惜しみのような返しね、自分で言ってて嫌になる。...きっと、あの子もこんな風に心配してくるのかしら...

 

 

「幽々子様、お茶をお持ちしました」

 

「あら、ありがと~妖夢~」

 

「ん...頂くわ」

 

「すずー...ほぅ...ん~、何か甘いもの欲しいわね~」

 

 

手元に置かれた湯飲みを手に取り一口...ふぅ、温かい。駒の配置を戻しながら物思いに耽る...さて、幽々子みたいに食い意地が凄まじいわけではないけど、こんな風に考え事をしていると甘いものの一つや二つ欲しくなってしまう

 

 

「......妖夢~、悪いけれどおつかい頼まれてくれないかしら~?」

 

「え?甘いものなら昨日いっぱい買って「美味しかったわ~」え...ま、まさか......全部?」

 

「うふふ~」

 

 

ここにお邪魔して、この二人のこんなやり取りを聞くのも何度目かしらね...ま、らしいと言うかなんと言うか...

 

 

「うふふー、じゃないですよ!!お饅頭は一日三つまでって言ったじゃないですか!?」

 

「我慢は身体に毒なのよ~?」

 

「確かに我慢は...って、亡霊じゃないですか!!身体もなにも...無いじゃないですか!!実体が!!」

 

「...キレッキレね」

 

 

それにしても、会うたびにツッコミのキレが増しているような気がするわね...

 

 

「ほ~ら、お客様も待ってるわよ~?」

 

「あ、ちょ!?分かりました、分かりましたから!!」

 

「いってらっしゃ~い」

 

 

ぐいぐいと押されるようにおやつの買い出しに駆り出されて行くのを縁側で見送る。あの長い階段を昇り降りするのは骨が折れるでしょうに...

 

 

「貴女ねぇ...そのうち嫌われちゃうわよ?」

 

「うふふ~、大丈夫よ~。それに...」

 

 

主従関係のヒビについて苦言を呈すると、いつものように朗らかに大丈夫と返される。そして、少し声色を変え続ける

 

 

「二人の方が...色々と話しやすいでしょう?」

 

「......なんのことかしら」

 

「うふふ~、それで隠せてるつもりだったの~?」

 

 

...思ったよりも顔に出てしまっていたのかしら。そう易々と心中を察せられるなんて、妖怪の賢者が聞いて呆れるわね

 

 

「...はぁ、バレてたのね」

 

「あら、何年の付き合いだと思ってるの~?それで、考え事って~?」

 

 

縁側に座りため息を一つ。勘づかれてしまっては根掘り葉掘り、洗いざらい吐くまで解放されないでしょうね。亡霊は執念深いから......それに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの子、についてよ...」

 

 

話したかったから、ここに来たのかもしれないわね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん、あら藍に...橙も。お出かけかしら?」

 

「あ、紫様...そう、ですね」

 

 

ある日の昼下がり。普段は迷い家に住む橙を連れている藍を見かけた。二人して身支度を済まし、玄関に向かうところだったみたい

 

 

「...なんだか元気無いわね。どうかしたの?」

 

「...実はですね、紅魔の妖精メイドの一人が大怪我をしたらしいのです。私としてはあの宴会は勿論、他のことでも良くしてくれたのでお見舞いに。それで橙も...」

 

「お友達なんです、その妖精メイドの子...」

 

 

ずきり、と何かが痛む音がした。明らかに、いつもより声が暗くなっている二人が目に写る

 

 

「...そう、だったの...迷惑にならないようにね」

 

「勿論です。それじゃあ行こうか、橙」

 

「はい、藍様...」

 

 

二人はそのままお見舞いに行った。家に残された私は大きくなってしまった罪悪感に押し潰されそうになった...

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう...貴女が関係してたのね」

 

「えぇ、そう...」

 

 

今までの全てを伝える、なんて嘘だ。あの子が大怪我をしたのも、あの子の記憶が失われたのも、全て私の仕業。頭部にあの妖怪を落とし、その夜館で記憶を消した

 

記憶を残したまま、前世の未練を残したまま意味も分からず生きるなんて...酷過ぎる。前世を知らない、ただの才能有る青い妖精メイド...そうしてあげようとした......名前の知らないあの子為に...彼の為に、と

 

 

「心配してたのよ~?妖夢も」

 

「......そう、なのね...」

 

「勿論私も、ね」

 

 

でもそれは間違いだった。記憶のあるあの子がここ、幻想郷で生きたのはほんの少しの間だけ。でも...それでも、それほどに皆に愛されていた...あの子たちにも

 

 

「...うちの式神の二人ね、少し前にあの子のお見舞いに行ってたの」

 

「...うん」

 

 

声が震える

 

 

「とっても心配そうで...橙なんて、その子のことお友達って...言ってたのよ?」

 

「...うん」

 

 

言葉が途切れる

 

 

「......私...なんて、こと...を......」

 

「...うん」

 

 

涙が伝う

 

 

「...しょうがないわね~...妖夢が戻ってくるまでは、胸貸してあげるわ」

 

「ごめん、なさい!...ごめん、なさい......ごめん...なさぃ...」

 

 

私は泣いた。何百年ぶりに、泣きじゃくった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう、落ち着いた~?」

 

「...えぇ、ごめんなさいね...」

 

 

暫くの間、人目も惜しまず泣いた。人払いをしてくれた幽々子には感謝しないといけないわね...

 

 

「た、ただいま...戻り、ました......」

 

「あら、遅かったじゃな~い」

 

「お、遅!?全力だったんですけど...はー、ひー...」

 

 

目尻を拭った後、庭先から疲れきった妖夢の声が聞こえた。直ぐ様目当てのお菓子を意気揚々と受け取りに行く幽々子の姿に、こんなのに話して良かったのかしら、なんて思う。あーあ、ホントに...

 

 

「ん~、おいひ~♪あ、ふぁい、ゆふぁり」

 

「...ふふっ、ありがと」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなのが友人で良かったわね

 

 




シリアス終わり!構想段階のシリアスはホントに終わりです。展開なにか思い付いたら書く...かもですが。次回はちゃんとほのぼのです!ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また

シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。

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