元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
「そう......で、魔力媒体が必要、ね...」
「そ。パチェならどうとでもできるでしょ?」
読みかけの本をぱたんと閉じ、お嬢様の話した内容を簡素にまとめ、そう返すパチュリー様。今は善は急げとお嬢様と私の二人で大図書館に来たところですね
それにしても、魔力媒体。聞いただけではなんか、漫画とかアニメで魔法使いさんが使う杖とか、魔導書とか...その辺りを想像しちゃうんですけど...あ、あと魔理沙さんの八卦炉?とか
「そうね、それくらいなら......少し時間を頂戴。今、用意してくるから」
「えぇ、お願いね」
なんて考えているとあっさり承諾。ロッキングチェアから腰を上げたパチュリー様はそう言って、奥にある私室へと向かっていかれた。結構突然の無茶振りだと思ったんですけどね...
「んー、待ち時間はどうしても暇ね...あ」
「?...どうされたんですか、お嬢様?」
とさっ、と空いたロッキングチェアに腰を下ろし、頬杖をつくお嬢様。もて余した時間に仕方なさを感じながら、何かが目に留まったのか声を漏らす
「丁度良いわね...妖精長、貴女チェスはできる?」
「チェックメイト、ですかね」
「な!?ちょ、もう一回!もう一回よ!」
業務も特になく、そんな訳でチェスをすることになったんですけど...なんだか、幽々子さんと将棋した時とはうって変わって勝ち越せちゃいましたね...
「...レミィ、負けてるところ悪いけれど用意出来たわよ」
「うぐぅ?!...そう...ありがと」
駄々をこねるお嬢様を諭すように、戻って来られたパチュリー様が話す。本当に少し、でしたね...まだ一時間経っていなかったんですが...
「そう...妖精長もチェス......これ、渡しておくわね」
「はい、って...紙、ですか...?」
そうやって渡されたのは...紙、いや布?...だった。表面には魔法陣のような、紋様のようなものと、読むことのできない何か文字の羅列があった。これが魔力媒体...
「あら、こんなので良いの?」
「ん...聞いたけれど、外界の暖房器具に使う程度でしょう?森を焼き払う訳でもないし、それで大丈夫よ」
「ま、それもそうね」
流石にお嬢様も疑ってかかる。外見は本当にただの布、ですしね...って、森を焼き払う...?ん?......なんとも物騒な話が出たような気がするけれど、気のせいということにしておく
「さ、これでアレも動かせるわね。早速試しましょ!」
「あっ、お嬢様!?」
ぱっ、とパチュリー様から受け取った、えっと...この際、魔力布って呼びましょう。それをお嬢様にかっさらわれる。そのまま大図書館をあとにする...って、ちょ!?
「はぁ...年相応、と言うよりは見た目相応、かしら...ま、レミィらしいと言えばらしいけれど」
そんな様子にため息を吐いて苦言を呈するパチュリー様。お嬢様...確か500歳、とかですもんね...いや、それより
「すみません、お嬢様の無茶振りに...」
「良いのよ......そう、貴女は知らないのね。ああいうの、いつものことなの」
いつもの...パチュリー様も、おそらくメイド長も大変なんですね。私が初体験なだけで今までも...
「...そう言えばあれの使い方、教えてなかったわね...」
「あ」
しんみりする間もなく、意気揚々と走っていったお嬢様の後を追う。破ったりしちゃダメですからね!?
「えっと、貼り付けてから...」
「どう、妖精長。動きそうかしら?」
こたつへと潜り込み、その裏へ魔力布を貼る...って、凄い...勝手に引っ付いた。その後は確か紋章に手をかざせば...
「わっ!ほ、ホントに光った。なら後は...」
パチュリー様に言われた通りの手順をこなすと、魔力布がぼんやりと光を放ち始める。これで所謂コンセントが挿さった状態。後は電源を入れれば...
「あ、出来た...お嬢様、動きましたよ!」
「ホント?やった!あ......こほん...流石、妖精長ね。咲夜が一目置いてるのも頷けるわ」
熱源の部分が赤く染まり、ほんのり暖かさを感じる。なんだか少し、懐かしいですね...首をこたつから出し、点火の報告をする。はしゃぎ気味なお嬢様を見るに、見た目相応、というのも的を得てますね
「ところで妖精長」
「?はい、どうされましたか」
パチュリー様の言葉に納得していると、少し難しい顔をしたお嬢様がそう切り出す
「これ、どうやって使うのかしら?」
「これは......!凄いわね...想像以上よ...」
肩まですっぽりとこたつに潜り込み、満足げにそう溢すお嬢様。目をキラキラとさせて、今まで体感したことのない心地好さを堪能している
一度入ればもう脱け出すことのできない魅力、というか魔力がありますからね、こたつ...まぁ、このこたつはホントに魔力あるんですが
ひとまずは仕える主人の要望に応えられたようで一安心。ぬくぬくしながら残りの仕事はなんだったかと思い...ん?
「あれ...?」
違和感...一度考えるのを止める。何故か、入った覚えのないこたつに、自分の身体が肩まで潜り込んでいることに気がつく。え、なんで?いけないと思い、這い出ようと...あれ?
「で、出れない...!?」
出ることができない。いくら踏ん張っても身体がこたつから一ミリも動かない。なんで!?
原因は全くもって分からないがこたつに囚われてしまった。ふんぬー!...ぬ、抜けない。多分私が非力なのもあると思いますけど...全然抜ける気配もない
「たっだいまー、さぶいぃ...あれ、よーちゃんにお姉さま」
「え?あ、フラン様!」
そんなふうに一人でぬくぬく奮闘していると、部屋の扉が開き、元気な声と共にフラン様がやって来た。確か今日は朝から遊びに...いえ、それよりも
「すみません、フラン様。ちょっと引っ張ってもら「って、あー!!」えっ!?」
「よーちゃん!それ、こたつ!?」
どうにか引っこ抜いてもらおうとフラン様に助けを求めた時、それを遮るようにして驚いた声を出されるフラン様。そしてこたつを指差し目を爛々とさせている...
「去年の春、神社で遊んでる時に霊夢に教えてもらったの!!今は使ってないけど、冬には暖かくて気持ちが良いのよ、って!!」
どうやら存在自体は認知しており、あの口振りや目の輝き...これからの展開が手に取るように分かってしまう。ま、不味い...ひとまず冷静に抑えてもらわないと
「そ、そうだったんですね...あの、フラン様!このこたつ、ちょっと変なので間違っても入って来たりは「おっ邪魔しまーす!!」フラン様ぁ!?」
このままフラン様まで抜け出せなくなっては困る、と制止しようとするも、言い終わる前に華麗なヘッドスライディングが炸裂。こたつ内部でしばらくもぞもぞされた後、亀のように顔を出される
「えへへ~、暖か~い...」
「......それなら良かったです」
「んー...ん、あら、お帰りなさい、フラン」
「ただいま、お姉さま~...気持ちい~、はふぅ...」
二人揃って満足げに顎を天板に預けている。なんならお嬢様は今、フラン様のご帰宅に気づいた様子ですしね...こたつの魔力、恐るべし...
それにしても不味い...これ以上の被害が出る前に、なんとかしなければ
「どう?ちゃんと動いてるかしら...」
「あらパチェ、貴女もどう?暖かいわよ~」
これ以上の被害は...
「へっくし!あれ、妹様。もうお帰りになられてたんですね...って、こたつ!?」
「めーりんも入りなよ~...にへへ~...」
被害は...
「パチュリー様ぁ...お紅茶の準備できました、ってうわぁ!?」
「むきゅぅ......」
...
「...妖精長。説明、お願いできるかしら?」
「私にも分かりません...」
これを機に、紅魔館でのこたつ使用は禁止された...
「よっ、香霖。...お、アレ売れたのか?なんか曰く付きとか言ってた、あのこたつ」
「いらっしゃい。あぁ、アレなら......あぁ、結構良い値段で売れたよ」
「なんだ今の間」
こたつの魔力(ガチ)という訳で...次回は少し間空くかもです。それでは、また次回
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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