元ホテルマンですが妖精メイドに転生してメイド長に一目置かれてます 作:微 不利袖
1話 メイド長は感情の起伏が激しい
私は三星ホテルに勤務するホテルマンでした。現場ではスタッフの皆に指示を出し、勿論自分でも動く...まぁホテルの中枢を担う役目を任されていました
ある日の夜、仕事を終えいつものように家路についていたところ、信号無視をしたトラックに轢かれてしまい命を落としてしまったはずでした...そのはずなんですが...
「妖精長、私は人里まで買い出しに行くから戻って来るまで館のことは一任するわね」
「任されました、メイド長」
妖精のメイドさんになってメイド長に一目置かれてます
目が覚めると知らない天井でした。ここはベッドの上みたいですね...あれ?私は確かトラックに轢かれて、それで...ん?
突然記憶に靄が掛かった様になり、それ以上思い出す事が出来なくなってしまった...どうなってるんだ?一体...
私はとりあえず自分の事を分かるところだけ挙げてみる。名前は...あれ、嘘だろ...ここから分かんないのか。性別は...男、職業は...ホテルマン、仕事の内容も案外覚えてるみたいだ
ん?...男?......。下半身に違和感。
ウッソだろ...マジ?咄嗟に掛け布団を弾き飛ばす。その事実を目にする前に私は固まる
「え、女物のドレス...いや、青い...メイド服...?!」
自分の今の装いに驚き、そして口をついて出た声色により一層仰天した。完全に女性...いや、年端も行かない少女の声だった。余りにも理解の追い付かない情報たちに少しの間思考が滞ってしまう
1分程黙り、私は部屋を見渡す。高そうな装飾の施された家具がところ狭しと並んでいる。どうやら病室のベッド、という訳ではないらしい。総じて目に痛い程赤い...いや、紅いといったところか
その中でドレッサーを見つけた。鏡!私はベッドから跳ね起き...!?直ぐに気付いた。明らかに目線がいつもより低い、体も軽い気がする。いくつもの違和感を引っ提げ、私は真実を覗き込んだ
「...嘘...だろ...?」
そこに映し出されたのは
二対の羽を携えた可憐な少女だった
とんでもない現実を叩き付けられてから、私は一人ベッドの上で胡座をかき現状を理解しようとしていた
実は、少し記憶を思い出そうとしたところ、身に覚えのないことをいくつか覚えているのが分かった。自分が妖精であること。そしてここがお屋敷であり、そこで働くメイドだということ...私は頭を抱えた
「転生、ってヤツか?漫画じゃあるまいし...」
自分で馬鹿馬鹿しいと言ってやりたい...だが、それ以外に現状の説明がつかない。それが一番しっくり来る、来てしまっている。私は背中に手をやる...薄く、半透明なソレはちゃんと触れるし意識を集中させれば動く。まごうことなき羽、だった
結論、恐らく私...人間だった私は死んだんだろう。トラックに持ってかれたのは覚えてる、うん。そしてこの体に転生した。意味分からん...が、一番答えとして不自然ではないだろう。でもなー...
そんなことをいたちごっこの様に考えていると、足音が聞こえてくる。どうやらこの部屋へと少しずつ近づいて来ているようだ
足音がちょうど扉の前辺りで止まり、ガチャリとドアノブが音を立て開かれる。そこには、20代くらい?のメイド服を身に纏った女性が立っていた。こちらに気付くと声を掛けて来た
「あら、起きていたのね。なら良いわ、早く来なさい」
「あ、え...は、はい」
ひとまず返事をしておく...覚えている。この人は私の上司に当たる人だ。そして朝になるとここで働いている妖精のメイド達を集め指示を出している...ん?達?...ってことは私みたいなのがまだ居るってことか?
色々と分かって、もとい思い出してきた。なんならこの屋敷の大体の間取りまで分かる。私は溢れて来る情報を整理しながら上司、メイド長に付いていく
...いつもより歩くのが遅い。立派な羽根はあるものの、残念ながら飛び方はまだ思い出せない。すっかり短くなってしまった足で頑張って付いていく
しばらく歩いていると食堂に着いた。中に入ると、私と同じような背格好の妖精メイド達が10人程度集まっていた。違いと言えばメイド服の色くらいだろうか。まだ何人かは欠伸をしたり、眼を擦ったりと眠そうだ
「ひとまず、皆集まったようね。それじゃあ今日の仕事を割り振って行くわ。今日は......」
そこからは仕事の割り振りがしばらく続いた。基本的にベッドメイキングやら食事の用意、掃除洗濯etc...ほとんどホテルと似たような内容だった。私はベッドメイキングと部屋の清掃を言い渡された。他の妖精メイド達にもそれぞれ仕事が割り振られて行く
「それじゃあ皆、取り掛かって頂戴」
「...あ、はい」
考え事のせいで返事が覚束ない。私は覚えていた間取りを思い浮かべ、客室を回っていくことにした。んー、こうすれば効率良いかな。今は朝の...8時くらいかな...まぁお昼前には終わるだろう
「ふぅ...さて、私も取り掛かろうかしら...」
妖精メイド達にいつものように指示を出し、私は仕事に向かう...まぁ、ほとんど使い物にならないのだけれど。妖精メイド達は基本的に仕事はできない、直ぐに遊び始める。監視していればしぶしぶやってはくれるが、それなら私一人がやった方が早い
ため息を一つ吐く...まったく、結局は大半の仕事は私がやらないといけないのよね。ひとまず、お嬢様と妹様の朝の支度から。そのあと使えない子達の尻拭いね、お昼までに終わると良いけれど...
やってみると案外簡単だった。部屋数は多かったが、部屋自体は綺麗に掃除が行き届いているのもあり、シーツの交換と少し掃除するだけで充分に綺麗になった。他の妖精メイドが遊んでいたのが見えたけれど...まぁ気のせいだろう
さて困った、お昼までまだまだ時間が余っている。今は...10時過ぎ。んー、流石に2時間ちょっと何もしないのもなぁ...メイド長に何か仕事が無いか聞こうか。私は屋敷の中を探すことにした
それにしても広いお屋敷だなぁ...なんて考えながらしばらく歩いていると、遊んでいる妖精メイド達を叱っているメイド長を見つけた。あー、やっぱり遊んでたのか...お説教が終わったのを見てメイド長の側に駆け寄る。
「メイド長、よろしいですか」
「どうかしたの?...また花瓶でも壊したのかしら」
「あ、いえ。ベッドメイキングと清掃が済みましたので、何か他にお仕事が無いかと...」
「...え?」
メイド長は少し間を開けて聞いてきた
「ごめんなさいね、疲れてるのかしら...もう一回言ってもらえるかしら?」
「?...貰ったお仕事が済みましたので他に何かやることがないかと...」
「 」
「...メイド長?」
口をぽかんと開いて動かなくなってしまった...あれ?もしかして仕事が遅かった...とか?となるとかなり厳しいのかなぁ、このお屋敷。するとメイド長は、ハッとして客室の方へ向かった...とりあえず付いていこうかな...怒られるかなぁ、私
耳を疑った。仕事が済んだ?聞き間違いではなかった。あの使えない妖精メイドの子が?...百聞は一見に如かず、自分の目で確かめなければいけない。嘘だとしたらあの青い妖精メイドはそれなりにとっちめなければ...
私は客室のドアを開く...目を擦る...頬をつねる...痛い。...ちゃんと、掃除、できてる...?私は急いで他の部屋も調べることにした
できてる。できてる。できてる、できてる、できてる、できてるできてるできてるできてる...ちゃんと...できてる...一瞬、思考が止まる
はっ、そうだ、あの青い妖精メイド。あの子、できる子なんだ......あれ?...おかしいわね...私、なんで泣いて...?
「あのー...メイド長?何か不手際でも、ってメイド長!?なんで泣いてるんですか!?メイド長!?メイド長ー!!」
妖精長
青を基調にしたメイド服を身に纏う妖精。もともとホテルマンだったという記憶と妖精メイドだったという覚えがあるものの、双方の境界が曖昧である。仕事に関してはいわゆる、なんでもできるマンでとても優秀。まだ飛べない
ここまで読んでいただき感謝です。それでは、また
シリアスパートですが、読まなくてもある程度お話に支障が出ないように書いているつもりです。因みに、そのシリアスな部分は読まれているでしょうか。
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