とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
「ベル、目の前の小鬼は武器なしだぞ」
僕は先生の言葉を聞きつつ、ゴブリンの顔と腹を殴るように両の手を突き出して殴り飛ばす「山突き」と呼ばれるカラーテの技を放ち、仰け反るように倒れるゴブリンへ向かって
あの強化種と認定されたミノタウロスとの戦いで「Lv.2」へとレベル・アップを遂げたけど。アイズさんや先生のような戦い方にはほど遠い。
そんなことを考えながら飛び掛かるように突進してくるゴブリンの頭を左右の肘を使って揺さぶり、脳天を叩き潰すように握り拳を縦のまま振り落とし、ゴブリンの頭を弾き上げるように膝を叩き込めば完璧なコンボだった。
「リリルカ、拳槌を教えたのはお前か?」
「はい、リリはベル様のナイフを使うときの動きと拳槌打ちは合っていると思いました」
「やはり、お前の観察眼には目を見張るな」
「えへっ、そうでしょうか?」
リリの教えてくれた拳槌はナイフと合わせればゴブリン程度なら一撃で倒すことは出来るけど。今の僕は神様のナイフを使わず、ステイタスを引き伸ばすことを目標としている。これは武器を失った時、辺りに武器として使えるモノがない場合を想定した訓練だと説明された。
ゴブリンの突き出した腕を掴み取り、背中合わせの状態へ身体の向きを変えながら首の関節を締め上げ、足を絡み合わせて背骨と首をへし折る。これは声を発することは出来ない暗殺へ特化したジュジューツだと教わった。
しかし、技の決まり具合が悪かったのか。ゴブリンから身体を退かせた瞬間、四つん這いの体勢から飛び上がるように襲い掛かってきた。
「これならどうだ!!迎門鉄臂!!」
これはリリや先生の使うカラーテとは違う武術だけど。膝蹴りと突き上げを同時に放つ技であり、ある程度の防御も兼ね備えている。もしも突き上げをを外しても膝蹴りでカバーを行いつつ、肘を振り下ろせば頭蓋骨を砕くことだって出来る。
僕やリリは先生のおかげで、そこまで危険な局面へ陥ったことはないけど。そんなことを考えていたせいなのか、膝も拳もゴブリンには届いていなかった。やばいっ、距離をミスったァーーーッ!!
「もう、ベル様ってば迂闊ですよ?」
僕の隣をすり抜けて可愛らしい声と共に異常な回転を加えた貫手を放ち、ゴブリンの胴体を突き貫いているリリの姿には一種の憧れを感じてしまう。ハッ、僕はアイズさん一筋だって決めてるんだ!!
今のは危なかった。
うぅっ、おじいちゃんの言っていた「出会い」っていうのはコレのことなのかな?そんなことを考えながらリリの手を借りて立ち上がり、一匹残らず殲滅されたゴブリンの哀れな最期を見届けることになった。
「リリ、やり過ぎじゃない?」
「えっ、そうですか?」
たぶん、レベル・アップしたリリには勝つことは出来ないんだろうな。まあ、今も触れることすら出来ないほど実力は開いてるけど。