とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
リリ達は見知らぬ冒険者の引き連れた怪物進呈の囮として利用され、やむを得ずダンジョンを更に潜ることになりました。ベル様とヴェルフ様の二人には体力を温存してもらうため、リリはモンスターを一手に引き受けています。
「人越拳"霞獄"!!!」
まだ、リリの貫手はお母さんのような正確無比な貫手には届いていないけど。ベル様達を守るには十分なモノへ変わってる。
もう、あの時のように無力なリリではないんです。ヴェルフ様の大剣を盾代わりに地面へ突き立て、軸足を入れ換えながら廻し蹴りを放って文字通りに放火魔を蹴散らしていくーーー。
「リリィーーーッ!!」
「リリスケ、退けえぇ!!」
ベル様達の叫ぶ理由なんて分かり切っている。この階層には必ず生息している冒険者殺しの異名を持つ迷宮上層の化け物"ミノタウロス"だ。
カハァーーッと肺の中の酸素を吐き出し、丹田へと力を込めるように意識する。ミノタウロスが振り下ろしてきた石の戦斧を頭の上で交差させた両の腕で受け止める。
ふふっ、お母さん直伝の「十字受け」は「Lv.6」のアイズ様にも通用する代物なんですよ。貴方みたいな木偶の坊は早々に退場することですね!!
「前蹴りいぃ!!!」
お母さんが「如何なる強者でも金的を受ければ死ぬ」と言っていました。女の人には効果のない攻撃とも言っていましたが、リリには「まだ、早い」と教えてくれませんでした。
残りのミノタウロスを倒すためにダンジョンの壁を蹴り、首を膝と肘で挟むように攻撃する。これは小人族のリリにしか出来ない技です。
息を吸えなくなって倒れ伏すミノタウロスを踏み台としてダンジョンの天井付近まで飛び上がり、ミノタウロスの真上から一直線に断ち切るように「人越拳"断空手刀斬り"」を叩き込みながら着地する。
ベル様達の安否を確認するために振り返れば内股になってプルプルと震えていました。むっ、二人とも脱水症状を起こす前に水分補給を行わないとダメですよ。サポーター時代から使っているカバンの中から水筒を取り出し、二人へ手渡します。
まだ、目的地には遠いです。
それに遠征途中の冒険者の方々と出会えれば地上へ帰ることは可能なんです。
希望を捨てるのは早いですよ。
「ヴェルフ、リリを怒らせるのはやめようね」
「そ、そうだな」
「リリがどうかしましたか?」
二人の声が聴こえなかったので尋ねると「な、なんでもないよ!?」と口を揃えて誤魔化してきました。むう、リリには内緒の話ですか?
パーティーなのに隠し事は無くしたいです。まあ、お母さんに教わった技を隠しているのはリリも一緒なんですけど。次こそ二人の会話を聞き取ってみせます。
「ヴェルフ様、少しだけ大剣をお借りしますね」
「お、おう、構わないが……」
二つの大剣を鎖帷子を使って繋げ合わせ、縦穴を降りるために必要な簡単なリフトを作ります。お母さんだったら階段を作ったり、梯子を作ったり、いろいろと出来るんでしょうけど。
まだ、修行中のリリには無理です。