とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
▽月≦日
アイズの友人という褐色肌の姉妹は戦闘部族より出家してきた優秀な戦士とのことだ。アイズと行っていた組手の動きを見様見真似とは言えど完璧な動きでやってのけた。
ある意味では一種の天才、私の動きを真似るように言えば「アイズの師匠から直々だよ!!」と言いながら嬉しそうにピョンピョンと跳ねる。
このティオナ・ヒリュテは逆鬼と似ているような気がするな。大雑把そうなのに繊細なところとか自分の友人や弟子のために命を賭するところとかな。それゆえに「前羽の構え」を教え、野性の勘だけで私の正拳を受け流すように誘導する。
次は両の手を離さぬように添え合わせ、私の正拳を受け流しながら攻撃するように言えば「お、おお、後ろの手が攻撃になった!?」と驚いている。
アイズを筆頭とした感覚派は教えやすいな。姉の方も興味を持ったのか。ティオナの動きを真似しつつ、窮屈そうに胸を押し込んでいる。
なんだ、私より大きそうだな。
アイズは「ティオナ、ティオネ、才能ある?」と小さな声で確かめるように聞いてきた。たしかに武術の才能は有しているが、二人の瞳は闇の武術家の暗さを宿している。
▽月;日
ベル達がタケミカヅチの弟子を名乗る和装の男女から土下座されていたが、ヴェルフは不機嫌そうな表情を浮かべており、ヴェルフより大きな男は「自身の判断は間違っていない」と語っている。
ふと、風林寺の長老の言っていたのとを思い出した。長老の言葉は有り難いモノばかりだ。
ただ、あの爺は「己の大切なモノを守る時こそ人は強くなる」と言いながら高価な鳥獣戯画を買いあさり、こっそりと自室の棚や壁の中に隠していることが多い。
日本の梁山泊は大丈夫なのだろうか?
そんなことを考えてしまえば財政難にて破綻しているのではないだろうか?アパチャイと香坂は変なことを仕出かしていないか?
グルグルと不安なことばかり浮かんでくるが、今は弟子の育成に専念しなければな。
ヴェルフの脳天を叩きつつ、さっさと帰還する準備を行うように指示する。私はリリルカの荷物を担ぎ、ヘスティアも乗せて帰る。アイズには苦労を掛けてしまったが、地上へ帰還すれば私の作成した修行道具を譲渡しよう。
▽月а日
帰還する準備を終えた日ーーー。
ダンジョンでは比較的に安全圏内だと言われていた階層の天井を突き破り、先日の巨人とは色違いのヤツが降りてきた。
ピリピリと肌を刺激する感覚、特A級の達人と同等以上のモノだ。まだ、完全ではないリリルカ達を守りながら戦うのは難しい。本郷は最高位の達人であるシルクァッド・ジュナザードを死闘の末に倒したと聞いているが、私はヤツに勝てるだろうか。
ゴキッと指の骨を鳴らし、敵を探すように首を動かしている巨人へと向かって駆け出そうとした瞬間、木の影から私の足を引っ掻けようとするために足が伸びてきた。
やはり、この薄気味悪い気当たりを放つヘルメスという男を信用することは出来ない。ヘスティアの友人を名乗っているが、ベルを品定めするような視線ばかり向けている。
ハッキリと言ってしまえば不愉快な男ではあるが、勝算の無い戦いは行わないタイプの人間だ。余計なことを考えている暇はない、一刻も早くヘスティア達を安全な場所へ運ばねばダメだ。
ヘスティア達を抱き上げながら高台へ向かって飛び上がり、刀剣にて柵を作っている武器庫らしき場所にベルとヴェルフを放り投げ、リリルカとヘスティアを抱えたまま着地する。
タケミカヅチの弟子達を回収するために雑木林へ向かって飛び降り、犬や熊を倒しながら陣形を組んでいるタケミカヅチの弟子を抱き上げ、ヘスティア達のところへ駆け抜ける。
行く道を阻もうとする化け物の頭部を蹴り潰し、踏み台として死骸を活用する。奴らとて最後は人の役に立てたんだ。なにより向かってくるモノは獣ばかり、今だけは余計なことは考えるな。