とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。   作:SUN'S

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第21話

Α月ゑ日

 

あの災害にて負傷した者を助け出すため、一ヶ月ほどダンジョンを居住区とすることになった。あのベルを襲った連中は「姐さん」と慕ってくるが、私はジェームズ志場の得意としていた賭博試合を提案しただけだ。

 

ヴェルフ達は「ボクシング」の拳のみで戦う様子を気に入り、選手としてリングへ立つことがある。そのせいなのか、梁山泊へ出入りする者が増えてきた。

 

ベートは中国拳法を習得するために日夜鍛練を続けている。タケミカヅチの弟子であるカシマ・桜花は良質な筋肉の持ち主であり、志場や岬越寺が見れば気に入るだろう。

 

基本的な左の速射砲を習得させつつ、サイドステップスウェーバックを叩き込んでやる。精密機械のような左の速射砲、急所を確実に叩き潰す右の大砲、この二つを習得するのは大変なことだ。

 

この前のように静観を決め込もうとしていたヘルメスを捕まえ、徹底的な修練を行えば悪しき考えを改めるはずだ。

 

アスフィはヘルメスの汗を流す姿を幻惑や幻術の類いと思っているのか。いつものように迎えに来たが「また、幻惑の魔法を使っているんですか?」と聞いてくる。

 

Α月Σ日

 

ある日、ヘスティアをガネーシャという象の仮面を被った男が訪ねてきた。彼の話を漸くすれば「ボクシングはオラリオの定期的な娯楽としよう」ということだった。ダンジョン内部では、すでに行われていることだぞ?

 

ガネーシャは「このオラリオには一攫千金を狙うモノは少なくない」と語ってきた。

 

それ相応の対価として彼らの願う「一攫千金」こと「ファイトマネー」を払う代わりに公然にてボクシングを行ってほしいということらしい。そして、ボクシングを教える指導者として「拳人」を借りたいと言ってきた。

 

私は私利私欲のために人を使う人間でないことは瞳を見れば分かる。このガネーシャという男は他人のために考えてばかり、自分のことは二の次に考えるタイプの人間だ。

 

ヘスティアは「ガネーシャ、君の言っていることは分かるけど。レベル差や体格差を覆すことなんて出来るのかい?」と問い掛けていた。いや、体重や体躯は測定すれば階級で識別することは可能だろう?そんなことを言えば「体重を計れるのか!?」と驚きながら聞かれた。

 

ヘスティアは「また、発明品を…」と頭を抱えながら立ち上がり、ガネーシャへ向かって「良いだろう、彼女を派遣しよう」と承諾していた。

 

Α月κ日

 

オラリオ"ミドル級"ボクサー「カシマ・桜花」のセコンドを務めるタケミカヅチとオラリオ"ミドル級"ボクサー「モルド・ラトロー」のセコンドを務めるのは私だ。

 

モルドには「ダンジョンの時のように反則技を使うな。ここはオラリオの人々が集う場所だ」と伝えた。もう一つは「今日の主役はお前だ、しっかりと見せてやれ」と背中を叩いてやる。

 

赤い染料で染め上がったグローブを叩き合わせているモルドに樹脂を固めたマウスピースを歯を保護するために装着させ、相手の動きを潰すように至近距離で打ち合うように指示を送り、フックを使うように声を掛ける。

 

モルドは化け物と生死を賭けた逃走劇を繰り返してきたため、自分では気付かないほど屈強な足腰を作り上げていた。あの足腰から作り出された勢いを乗せた左右のフックを受け続ければカシマとて無傷でコーナーへ帰ることは不可能だ。

 

モルドのシフトウェイト振るえば振るうほど加速するタイプへ作り替えている。このまま「1ROUND」を乗り切れればいい。そんなことを考えていた瞬間、モルドのフックを掻い潜り、カシマのリバーブローが深々とモルドの横っ腹に突き刺さっていた。

 

しかし、その程度の打撃ではモルドを止めることは出来ない。モルドの得意とする右の振り下ろし(チョッピング・ライト)はカシマの顔面を捉え、思いっきりリングへ叩き付けた。

 

モルドは「姐さん、どんなもんだ!」と勝利を確信したように右腕を突き上げ、カウントダウンを聞きながらコーナーへ近寄ってきた。

 

まさか「肉を切らせて骨を断つ」を実行するヤツが居るとは思わなかった。モルドはコーナーにもたれ掛かり、立ち上がろうとしているカシマを見下ろしている。耳を澄ませば「立つな立つな立つな立つな」とモルドが呟いていた。

 

よく見ればガクガクと足を震わせている。カシマのヤツは一発のリバーブローだけでモルドの踏ん張りを奪ったのか。

 

しかし、あのまま「右の振り下ろし」を使わねば勝てなかった。カンカンカンと闘技場に試合終了のゴングが鳴り響いている。モルドは「姐さん、アイツの拳はヤベーッ」と言ってきた。そうだな、お前の苦し紛れに放った「右の振り下ろし」が無ければ失神K.O.だった。

 

 

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