とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。   作:SUN'S

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第25話

ゑ月∠日

 

最近、ダンジョンに潜っている冒険者を見掛けるのも少なくなってきた。私の提案する「ボクシング」や「ムエタイ」にて荒稼ぎしようとする冒険者は増加しており、リリルカもダンジョンより空手の試合を行うことが増えてきた。

 

そして、リリルカは「人越拳皇」という二つ名をヘスティアの友人から賜り、私は本郷の二つ名である「人越拳神」を与えられた。正直に言えば本郷の異名を名乗っても良いのだろうか?と考えてしまう。

 

日本では相応の異名を名乗る…いや、変な異名で呼ばれることが多かった。たしかにプンチャック・シラットには精通しているが、あのようなジャングルファイトを行えるほど器用ではない。

 

第一、私はシルクァッド・ジュナザードの弟子ではなく本郷晶の同門ってだけだ。

 

気付けば活人拳の者として戦ったり、殺人拳の弟子を丹精込めて育成したり、情報漏洩を防いだり、いろいろと頑張ってきた。決して、あの「地上最強の嫁」という不名誉な異名を名乗った覚えはない。

 

いっそのこと風林寺の孫娘辺りに押し付けたい。そんなことすれば風林寺の長老の鉄拳制裁を受けることになるだろうけど。

 

ゑ月а日

 

そろそろ新しい刺激を欲する連中がいるとヘスティアに言われた。私は娯楽の提供者ではなく武人だと言っているだろう?

 

むにゅうぅーっとヘスティアの頬っぺたを捏ねるように引っ張り回し、寝不足で出来た浮腫を癒やすことに専念する。しかし、ヘスティアの体躯は変わらないな。ここで生活を始めて、半年ほど経過するのに1センチも変わらないのは可笑しい。

 

人の成長する個人差は激しいと岬越寺や馬が言っていたことだが、ここまで変わらないのは可笑しい。ひょっとして病気の一種だろうか?

 

ベルを追い回す変態の頭へ向かってフライパンを放り投げるのも日課と化してしまった。ヘスティアは「アポロンめ、ベル君を襲おうとしたのか…!」と激昂しており、ペチペチと蝿叩きで頭を押さえて蹲っている変態を叩いている。

 

先日、その蝿叩きで化け物を殴り倒したことは黙っておくとしよう。これも二人の幸せのためだが、あからさまに弛んでいるベルを鍛えるには丁度良い。

 

変態を椅子へ固定する。ベルを強制ダッシュマシーンの上に乗せ、走り続けなければ変態の腕の中へと飛び込んでしまう恐怖のマシーンだ。

 

変態は己の胸の中へ飛び込んでくると思い込んでいるベルを受け止めるために両の手を広げ、今か今かと待ち焦がれている。

 

ゑ月ρ日

 

ダンジョン第37階層にてプンチャック・シラットのような動きと技法を操り、飛び掛かってくる女と遭遇した。強さで言えば特A級の達人ではあるが、気の掌握を行えていない達人寄りの妙手だ。

 

しかし、あの異様な構え方はジュナザードの動きとダブってしまう。不味いな、私はシラットの動きは真似することは出来ないし、対策なんて本郷や逆鬼の話から聞いたことを試す他ない。

 

ねじり貫手を放った右腕をへし折るために身体を絡めてくる女を正拳突きを用いて弾き飛ばす。ゴホッと咳き込みながら首をさすり、あと数センチほど首を絞める角度が下であれば首を折られていたことを理解する。この女は本物の武術家の手解きを受けている、それも私より強い武術家からだ。

 

しかし、強敵と拳を交わすのは久しぶりだ。

 

私を襲ってきた理由と名前を尋ねると「レヴィス」とだけ言葉が返ってきた。

 

いつものように霧散していない化け物の死骸を踏み台として飛び上がり、真上から仕掛けようとしてくるレヴィスの動きを逆手に取る。

 

ダンジョンの壁にある出っ張りを蹴ってレヴィスより高く飛び上がり、天井へ両の足を突き刺し、真上から「人越拳"霞獄"」「人越拳"滅掌雷轟貫手"」を織り混ぜた緩急の激しい百を越える貫手を放つ。

 

しかし、私の貫手を戻す瞬間を狙って天井へ張り付いたレヴィスを見れば衣服を切れているが、致命傷を与えることは出来なかった。

 

右の足を天井から引き抜いて踏み込むように天井へ突き刺し、諸手のねじり貫手を放って私への攻撃範囲を一直線となるように誘導する。やはり、腕の伸びきった瞬間を狙うのは玄人だろうと素人だろうと同じだな。

 

左足と右足を入れ換えるように前蹴りを放てばサッカーボールのようにレヴィスが吹っ飛んだ。少々、かなり力を込めたつもりなんだがな、今の蹴りを受けて起き上がってくるのは予想外だ。

 

フラフラと覚束無い足取りのレヴィスを警戒しながら地面に着地すると「お前を倒すのは今度だ」とダンジョンの奥へと逃げてしまった。

 

一体、あいつは何だったんだ?

 

 

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