とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。   作:SUN'S

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第27話

Φ月㌫日

 

梁山泊に帰宅すると変態の配下のひとりがベル達を襲ったと聞かされた。ベルの容態を確かめるために離れ家の一室へと入れば首を包帯で固定したベルが眠っていた。

 

ベルの内臓や外的損傷を調べる。

 

打ち身十二箇所、骨折等はなし、ベルの呼吸器を潰そうとする殺意ある攻撃を放つ者を配下とする変態の野蛮さには呆れる。馬式針治療を行い、歪んだ気道を修正するために頭を押さえ付ける。

 

ねじり、よじり、ひねり、元の位置を探りながら気道を戻せばスゥーーッという息を吸い込む音が聴こえてきた。気道を治すことは出来たが、変態の配下は勧誘と称してベルを殺害しようとしていたことは明白な事実だ。

 

そんなことを思いながらリリルカの部屋へ向かっていると爆発するような音が聴こえてきた。音の出所を探すために屋根へ上がり、梁山泊を見渡すと庭の巻ワラを滅茶苦茶なフォームで叩いているリリルカが見えた。

 

すでに両の手は流血しており、皮膚は骨が見えるほど破れ潰れている。もう、リリルカは次の段階へと進ませるしかないのか?

 

今はリリルカの気は均衡を保っている。

 

私も師匠の教えを受けながら気の性質を変えた。こうなれば風林寺の長老、あなたの使っていた修行方法を使わせてもらう。

 

Φ月▼日

 

ヘスティア達だけ残すのは心苦しい。

 

もしも変態が仕掛けてきた場合は、その内容を承諾するのは全員揃ってからにしてほしいと伝えるように指示しながらリリルカを連れ、オラリオ郊外の苔や大樹の生い茂った森へと入る。

 

相手は格上だと自覚するのは構わない。

 

リリルカ、体躯や膂力の無さを卑下することはない。私だって知人の中では二番目に力はないからな。そんなことを言いながら焚き火を作り、リリルカの見ている目の前で川辺にて魚を掴み取る。

 

リリルカは私の動きを真似るように腕を川の中へと突き刺すが、私のように魚を掴むことは出来ていない。腕の届く間合いを感じ取り、領域へと侵入してきたモノを掴めば良いと助言する。

 

漸く焼けた魚を食べながらリリルカの動きを見守っていると、カハァーーッという丹田へ力を込める空手独特の呼吸法「息吹」を使い始めた。

 

幾度となく振るわれる貫手を眺めつつ、食べ終えた魚の残骸を磨り潰しながら土へ還してやる。

 

苛立ちを静めようとしているリリルカの心意気には感心するが、べつに怒りを消す必要なんてない。怒りなど心の中に留めればいいだけだ。

 

そう、そのまま相手の行く先を狙う。

 

なんだ、やれば出来るじゃないか。

 

さぁ~ってと第2段階へと進むとするか?初日で「制空圏」を習得させるのは荒事だと分かっているが、私達には時間は無いのでな。

 

Φ月Ρ日

 

リリルカの立っている場所へ向かって蜂の群集を飛ばせば制空圏を築きつつ、飛んでくる蜂の羽を貫手で千切りながら無力化している。

 

私は食事制限を行うつもりはないのだが、リリルカは劇的な状況変化に適応できていないのか。食べる量が普段より増えている。

 

本格的な対人訓練を行うことを伝えれば「お母さんと戦うとか自殺行為ですよ!?」と言われた。達人と戦うのは無謀な行為ではあるが、膨大な経験を得るにはコレしかない。

 

制空圏を築いたリリルカへ貫手を放ち、回し受けで弾こうとしているリリルカの脇腹を熊手にて殴り潰す。スゥーーッと呼吸を整えつつ、前羽の構えを行うリリルカに向かって五撃の熊手を叩き込めば身体の重心を反らし、私の攻撃を受け流してみせた。

 

私はリリルカの放ってきた左のねじり貫手を指を絡めて押さえつけた瞬間、右のねじり貫手が僅かに首筋を掠めた。成る程、時差を利用した諸手のねじり貫手とは驚いた。

 

リリルカは制空圏と小細工を用いて戦えば苦戦しながらも達人と戦うことは出来ることは判明した。このまま続ければ変態の配下を倒すことは出来るだろう。

 

そんなことを考えているとカシマが汗だくになりながら駆け寄ってくるのが見えた。

 

なにか重要な知らせでもあるのか?等と思いながら水筒の水を分け与えつつ、カシマを落ち着かせると「アポロンの奴等、是が非でもお前達を潰すつもりだ。今なら間に合う、早く戻れ!」と言ってきた。

 

リリルカとカシマを持ち上げるとオラリオへ向かって駆け出す。風林寺の長老のような速度は出せないが、半日でオラリオには到着するはずだ。

 

 

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