とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
ある日、僕は運命の子供と出会った―――。
いつものように借金返済のためにジャガ丸君を売っているところを通り掛かったタケミカヅチの住まう国の女の人だ。喉元まで閉じた服の上には黒の外套を纏っており、他者を寄せ付けない威圧的な雰囲気を醸し出していた。
絶対に断られる!そんなことを思いながら「眷属になってほしい」と頭を下げた。一分、或いは五分ほど経った頃だろうか?彼女は落ち着いた声色で「構わんぞ」と言ってくれた。
ああ、神様ってヤツは気紛れにも程があるぜ。ルンルンとした気持ちを抑えきれず、彼女の手を引きながらヘファイストより(借金付きで)譲り受けた教会へと連れ帰った。
やっぱり、こんな場所だとガッカリさせたかな?そんなことを考えていた時期もあった。気付けば借金返済まで四千万ほどになっている。
そして、気付けば教会の庭にて逆さ釣りとなった小人族の少女を焚き火で炙ろうとしている彼女を見るとは思いもしなかった。
「お母さあぁぁん!!このままだとリリの髪の毛が燃えちゃいますよ!?それでも良いんですか?」
「名付けて、スルメ踊りだ」
「名前なんて聞いてませんよおぉぉ!!!ヘスティア様も見ていないで助けてくださいよおぉ!!!リリの、リリの髪の毛が燃えて禿げちゃいますうぅ!!」
はは、眷属は増えたけど。地獄のような特訓を行うとは思いもしなかったぜ。まあ、僕は主神として見守ることしか出来ないけど。
リリルカ君、君の成長には期待しているぜ☆
「リリルカ、もっと身体を動かさねば燃えるぞ」
「無理、無理ですうぅぅ!!リリはか弱い小人族なんですよ!?このままだと禿げた女の小人族じゃないですか!?ソーマ・ファミリアだって、こんなことはしないですよ!?」
うん、それは同意するけど。僕は暴れている君を見るのも楽しくなってきた。とりあえず、今週のバイトは延期しようかな。
「そうか、嫌なのか…」
なんと意外にも彼女は特訓を断られたことにしょんぼりとしているではないか。
ここは主神として慰めるべきか?
なんてことを考えていると「それじゃあ、腕立て伏せしよう」という言葉と共に打ち付けた杭の上に両の手を置かせ、枝を振るって手を離しては杭の上で身体を支える特訓を始めてしまった。
「リリルカ、身体の大小なんて武術には関係無いことなんだ。千の努力、万の努力、積み重ねれば才能を凌駕することがある」
彼女の言う通りだけど。昨日まで悪環境で過ごしていたリリルカ君には届くことはないだろう。ゆっくり、そんなことを考えながら教会へと戻ろうとした時だった。
「じゃ、じゃあ、リリでもモンスターを倒せるようになるんですか?お母さんみたいに『めっしょうらいごうぬきて』という技を使えるようになるんですか?」
「ああ、努力は裏切らない。裏切るのは『ここまで頑張ったんだ』等という自己満足の達成感だけだ」
うんうん、僕だって彼女の言っていることは多少は理解することが出来るぞ。ただ、リリルカ君の言っている「めっしょうらいごうぬきて」とはなにかな?
「ある程度の初歩的な技術を身に付けねば辿り着くことは出来ないが、リリルカなら直ぐに使えるようになるさ」
うまい、飴と鞭の使い方が絶妙にうまいぞ。下げて、下げて、最後には甘やかすように褒める。こんなの落ちないヤツなんていないじゃないか。