とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
☆月`日
リリルカの貧弱な肉体を強くするため、背中と足首をショベルのような持ち手のある木の棒に縛り付け、廃教会の敷地内に存在する雑草を引き抜くことを指示する。なぜか「これは死にます、今度こそ絶対に死んじゃいます」と言い始めた。
ヘスティアは「手伝えることは手伝うよ?」という好意を受け取り、リリルカを動かす騎手を交代してもらうことにした。その片手間、私はヘスティアの友人であるヘファイトスという女性より電気を通しやすい物質を買い取り、商店街の流通出店のゴム縄を集めてきた。
これこそ「サンポススンデサガレバジゴク」という「前進」と「突き」を止めれば蓄えた電圧を使用者へと返すエコなトレーニング器具を作成するために必要なモノだ。
コレを使えばリリルカの華奢な肉体だろうと並大抵の攻撃では後退することのない身体作りを行うために必要な行程は一段落だが、あのまま続ければ「白浜兼一」のような武術家へ到達するだろう。
暫くするとヘスティアとリリルカが帰ってきた。二人とも泥だらけになっており、フラフラとしながら完成したばかりの畳の上に倒れてきた。
☆月・日
そろそろダンジョンへ潜るとしよう。今更ながら逃げようとするリリルカを縛り上げ、ダンジョンへ連れていけばお誂え向きな小鬼が出てきた。
小鬼の持っている棍棒を奪い取り、リリルカの前へと放り投げる。リリルカは無手ゆえに怯えているのか?それともモンスターが怖いのだろうか?そんなことを考えながらリリルカの構え方を修正する。
左足は閉じろ、手刀受けはこうだ。
小鬼には動けぬように気当たりを浴びせている。
まあ、逃げ出すことはないだろうな。
もはや生きるためにはリリルカを殺すしかない小鬼は拳を握り締め、リリルカへと拳を放った瞬間、リリルカは固く目を瞑りながら小鬼の拳を受け流してみせた。偶然とは言えど「回し受け」を成功させると良い勘してるな。
まだ、目を閉じているリリルカへ「真ん中だ、そのまま突け」と叫べば言う通りに「正拳突き」を放ち、小鬼を通路の端から端まで吹き飛ばしてしまった。なにより小鬼の身体は「く」の字に折れ曲がり、まともに衝撃を吸収すら出来ていない。
やはり、リリルカは驚いたような表情を浮かべながら自分の拳を見詰める。まだ、弟子級の最下層だぞ?それだけで満足されるのは此方が困ってしまう。
努力の成果を実感させるため、リリルカをダンジョンへと連れてきたのは間違いではないな。
ゆっくりと深い呼吸する繰り返すリリルカは左右の掌を小鬼の脇腹へ打ち付け、両の手を腰近くで溜めるように構え、前屈するように半歩後退すると強烈な両手の掌打を叩き込んだ。
おお、ドラゴン擬きを倒す時に使ったヤツだな。うん、見様見真似の不完全な「兇叉」ではあるが、武術家のセンスはあるな。
月日
翌朝、ダンジョンから帰宅するとヘスティアが白髪の少年を押し倒していた。私は不純異性交遊へ口出しするつもりはないが、世間一般では「変態女」とドン引きされるようなことをしているぞ。
そんなことを言えば「うっ、そう、だね…」と名残惜しそうに少年を手放してくれた。リリルカは「ヘスティア様は幼い男の子が趣味なんですか?」等と尋ねていた。
ヘスティアはリリルカの暴走を止めてほしそうな目を向けてくるが、自分の招いたことは自分で片付けないとダメだと思うんだが?
ふむ、しっかりと食べねば筋肉は付かないぞ?腰の抜けた少年を立たせながら指摘すると「えっ、あ、はい!」と元気のある声が返ってきた。
しかし、これは見ただけで分かるほど彼には武術家の才能は欠片もないな。よし、君も「梁山泊オラリオ支部」へ加入することをオススメしよう。
リリルカ、後輩の教育は先輩の役目だと気負う必要は無いぞ?お前と同じように修行を付ければ良いんだ。
リリルカにヒソヒソと少年には聞こえないように言えば恍惚とした表情を浮かべており、プレゼントとして玩具を貰えた子供のように喜んでいる。
ヘスティア、ダンジョンへ行くのは明日だ。
今日は加入者へ御馳走を振る舞うとしよう。