とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
◇月∴日
白髪の少年ことベル・クラネルは夢見る無垢な子供だ。こっそりと「冒険すれば女の子と仲良くなれますか?」等と聞かれたため、誤魔化すように「実力を付ければ寄ってくる」と言っておいた。
リリルカの拳打を下段へ払い落とし、鶴頭を顎に叩き込みながら考えていると「ベル君のことは任せたまえ!」と自信満々なヘスティアが割り込んできた。
ヘスティアは読心術でも使えるのだろうか?そんなことを思いながらヘスティアの背中へ当たり掛けていた「山突き」をヘスティアを抱き締めるように受け止め、寸止めを覚えるように言い聞かせる。
そんな他愛ない早朝の鍛練を終えた頃だろうか?寝癖だらけの頭を直しながらベルが教会の外へ出てきた。来たばかりのリリルカなんて私やヘスティアを離さず、三時間ほど眠っていたというのにな?
身体の緩んだ筋肉を締め上げ、天を穿つように貫手を放てば螺旋状の砂塵を作り出す。
ダメだな、42点だ。
緩み切っている感覚を正すため、ダンジョンへ二日ほど潜ることにした。リリルカの「休みですか?修行は休みですか!?」と鬼気迫るように聞かれた。
そこまで嫌なのか?
◇月_日
ダンジョン第5階層にてベルの振るう短剣を避ける小鬼を眺めつつ、ベルの意識が途切れたところを不意打ちを狙おうとしている犬面や小鬼はバレないように片付ける。
しかし、ベルの一生懸命な戦い方には可愛らしさすら感じてしまうな。短剣を大きく振り下ろし、がら空きの後頭部を叩こうとした小鬼の石を抜き取り、ベルに向かって「よそ見とは余裕だな」と注意する。
先日、調子に乗ったリリルカでさえ五匹相手するのに手間取っていた。しっかりと相手の動きを見極め、相手の隙を突かねば倒すことは出来ない。
リリルカはベルのことを心配そうに見ている。リリルカなりに「自分と同じような過ちを犯すのではないか?」と考えているのだろう。しかし、あの出来事からリリルカは過信や慢心を捨てている。
不用意な接触を避けつつ、ベルの背後を守るように立ち回っているのだ。後輩の頑張る姿を応援しようとしているのか?そんなことを考えていると気付けばウシがベルを追い回していた。
なんだ、新しい遊びか?
リリルカは「懐かしいですねえ…」と虚ろな瞳をベルとウシへ向けていた。次の瞬間、金髪の美少女がベルを助けていた。あのまま起死回生の一手を考えるか、私達の元へ逃げてくれば良かったのにな…。
ベルは情けない姿を見せたことに対して羞恥心を抱いているのか、ダンジョンに響き渡るほど大きな叫び声を発しながら逃げてしまった。
◇月∈日
ハローワークにて金髪の美少女と愉快な仲間達に取り囲まれていた。犬耳の青年は威張り散らすように突っ掛かってくるため、達人級へ放つ気当たりを叩き付ければハローワーク内部の人間で立っている者は十数人ほどになっていた。
はあ、ゆっくりとした休日を楽しもうと思っていたんだがな。そんなことを思いながら槍を向けてくる金髪の少年を睨み付ける。リリルカより大きそうな体躯ではあるが、室内で槍を使うのは難しそうだ。
犬耳は恐怖を掻き消すために無茶苦茶なフォームの直線的な蹴りを放ってきた。彼の仲間は止めようとしていたが、動の者を止めるのは至難である。
あまりにも中途半端な蹴りを正すため、しっかりとした特A級武術家の「前蹴り」を見せつけるように叩き込めば大人しくなった。
彼の仲間は「すまない」と謝りつつ、殺意を込めた視線を向けてきていた。いきなり、仕掛けてきたのはそちらなのだがな?等と思いながら受付嬢を叩き起こし、この惨状を見せる。
おお、気絶してしまった。