とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
∩月↑日
リリルカの本格的な「技」の鍛練を開始するため、耐久力と柔軟性の高い素材を使った胴着を作ることにした。空手胴着を作ろうかと考えながら「弟子一号」と左胸の辺りに刺繍する。
ダンジョン内にて見付けた蔦を乾燥させたモノを寄り合わせ、ムエタイのバンテージを作成していると「僕も手伝うよ」とヘスティアがソファの横に座ってきた。私の動きを真似るように蔦を細く硬く捻り合わせる。
ヘスティアにはベルの分を任せつつ、リリルカやベルの身体を守るために必要な防具を作るため、オラリオ郊外へ砂鉄を求めて向かう途中、金髪の美少女が駆け寄ってきた。
何処かで見たような気がする。
ああ、ハローワークで絡んできたチンピラの一人だな。そんなことを考えながらオラリオ郊外の川辺を歩き、鍬で地面を引っくり返すように耕して回り、砂金を含んでいる土を避けながら砂鉄を笊の上に乗せ、バケツの中へ土を振り落とす。
砂鉄の量は十分なのだが、二人の防具を作るには三日ほど掛かりそうだな。じーーっと見詰めてくる金髪の美少女を見れば「私は興味津々です」と顔に書かれていた。
∩月ゝ日
二日ほど経過した頃だろうか?
いつものように鍛造を繰り返していると金髪の美少女がジャガイモを頬張りながら座っていた。
なぜ、私のところへ来るんだ?
そんなことを考えながら完成したばかりの手甲を持ち上げ、刀剣や爪牙を防げる耐久力を調べながら柔軟性や肌触りを確かめる。
持ってきていた木人の腕へ手甲を装着させ、ハローワークにて貸し出されている直剣を振り落とす。ギイィィンという鈍い音と共に直剣はへし折れ、直剣を打ち付けた手甲には傷一つ付いていない。
微調整を行う必要はあるが良い仕上がりと言えるが、念のために拳頭や骨を補強する鉄板を重ねるように付けておこう。リリルカ達の喜ぶ顔を思い浮かべつつ、鎖帷子を用意していると金髪の美少女が「それ、使えるの?」と聞いてきた。
無言を貫いていた美少女の問い掛けに驚きながら「使えるぞ」とだけ答え、教会へ帰る準備を行っていると失敗作の鎖帷子を見詰めていた。それを欲しがるのは別に構わないが、失敗作を使われるのは此方が困るんだ。
あと、あのチンピラには謝ることを覚えさせないとダメなんじゃないか?このままだとチンピラ街道を突き進んだ挙げ句、ふらっと何処かへ消えてしまうかもしれないぞ?
やんわりと言葉を選びつつ、闇人へ落ちる前に助け出すことを金髪の美少女に助言する。
∩月ξ日
ベルのダンジョンデビューを祝うため、ヘスティア達といっしょにベルの呼ばれた飲食店へ向かうことになった。洋酒は好きではないため、酒を飲んで騒いでいるヘスティアの介護やリリルカ達へ料理を小分けする。
十分ほど経った頃だろうか?
活気に溢れていた店内は団体客の来店と共に静かなモノへと変わっていき、赤い髪の無乳の似非関西弁を聞きながらキャベツらしき野菜を食べている。
団体客の来店から程無くして新米冒険者を貶すような言葉を言い始め、空気を悪くする輩を見るために振り返ろうとした瞬間、ベルが店を逃げるように飛び出してしまった。
奴らの嘲笑っていた者はベルのことか。全力全開の気当たりを叩き付ければハローワークの時より素早く防御体勢を取り、店内を探るように警戒している。
気当たりによって酔いの醒めたヘスティアは「さっきのトマト野郎ってのはベル君のことかな?」と無乳へと詰め寄り、闇人のような気当たりを放っていた。
リリルカは「あ、これは死にますね」と言いながらカウンター席へと逃げ込んでしまった。姉弟子、同門をバカにされたのに逃げるのはやめような?
この前のように迫ってくるチンピラを店の外へ放り投げ、怒り心頭の店主には「家具は弁償させる」と告げると頭を押さえながら立ち上がろうとしているチンピラの眼前で立ち止まり、未だに騒いでいるチンピラを睨み付ける。
チンピラの直線的な蹴りを受け止め、足首を掴んで手加減せずに夜空へ向かって放り投げる。やはり暗鶚衆の技は身体と合わない。
コキコキと首の骨を鳴らし、臨戦態勢を崩さない奴らの間を通り抜けていき、赤い髪の無乳へ「貴様は子供を馬鹿にする男を仲間としているのか?」と問えば顔を反らし、反論すらしようとしない様子に呆れてしまう。
金髪の美少女が駆け寄って来るなり、私へ向かって深々と頭を下げてきた。仲間の失態を謝れるのは素晴らしいことだが、お前には関係無い。そう告げると「私を強くしてください」と言ってきた。
ん?お前は仲間のために謝ったのでは…。
たしかに自業自得ではある。
チンピラも報われん男だな。