とあるオタク女の受難(ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか編)。 作:SUN'S
リリの目の前には大きな岩を背負って馬車馬のように走り続けるベル様とヘスティア様に腕のみで草むしりを強要されるアイズ様の姿があります。そして、リリは本格的な「技」の修行を行うために用意された「ドーギ」というモノを着ています。
「お母さあぁぁぁん!!!リリの足が抜けちゃいますううぅ!!ほら、限界です、やめましょう!!」
そう、リリは「マグボルト君」という車輪型ダッシュ強制マシーンなるモノを走っています。止まれば身体を冷水で濡らされ、半日ほどバホを続けることになります。
冷水を噴射する筒の動力源はリリの走った分なので、走れば走るほど冷水の量は増えていきます。お母さん、リリのことを嫌っているんですか?
「あぁああぁぁぁぁ!!!」
「ふっ、くうぅっ、きっつい…!」
ヘスティア様は「足の力が強いのは歩いてるためか、知らないことを知れるのは良いことだぜ」と言いながらアイズ様を押す速度を上げていき、私は冷水を噴射されたので庭にてバホの体勢を取ります。
たぶん、きっと、これは御褒美の日光浴だと考えれば頑張れます。ふう、これは休息を取っていると考えるのもいいですね。
「リリルカ、貫手の修行を行うぞ」
「滅掌雷轟貫手ですね!!」
「まだ、お前は貫手を放てるほど指先を鍛えていないだろ?今日は砂壺を突き刺し、指先を鍛えるだけだ」
「むう、お母さんの技を教わりたいです…」
そんなことを小さな声で言いながらお母さんを待っているとリリより大きな壺を担いで来る姿が見え、ドン引きしてしまった。えっ、アレを突かないとダメなんですか?リリのちっちゃな手だと壊れちゃいますよ?
助けを求めるようにベル様を見れば失神しており、アイズ様を見れば迎えに来たファミリアの方と草むしりを続けるために地面を掴んで踏ん張っている。
「あれは止めなくて良いんですか?」
「アイズは梁山泊の一員ではないし、帰るときは潔く帰ってもらうとしよう」
お母さんは、そんなことを言いながら手刀をアイズ様の首へ叩き込んで気絶させました。リリは気絶するまで修行を続けたことはありますが、気絶させられる人を見るのは初めてです。
「ベル君が目を覚まさない…!」
「こうすれば起きる」
ベル様の背中を膝で蹴りつけ、気絶すら出来ないのだと理解させています。ただ、お母さん的には常識なのか。お母さんの技術を褒めても「すごくない、すごくない」と受け流されます。
この人の常識を学んでいけば
「リリルカ、腕の関節を曲げるな。この体勢を維持することを意識してみろ」
お母さんは後ろから抱き締めるように身体の位置を変えてくれます。ダンジョンで見たお母さんの動きを真似るように足の指先から手の指先までねじり込んでいき、壺を突けばひび割れるだけで、貫通することは出来ませんでした。
くっ、お母さんのようにねじりの無駄を減らさないと壺を壊さずに貫くことは出来ません。リリ、一生の不覚として胸の片隅に刻むことにします。
「リリルカ、よく見ておけ…」
お母さんの言葉を聞き、見逃さぬよう見れば左の貫手は接触した箇所しか貫いておらず、リリの放った貫手とは比べ物になりませんでした。普通の貫手なのにリリの放った見様見真似の「ねじり貫手」とは違う。
ポフッとリリの小さな頭を撫でる手の感触は岩のように硬くなっており、お母さんの培ってきたモノを継承する覚悟を決めるには十分な重さです。
そして、リリはお母さんの使った滅掌雷轟貫手を会得するまで頑張るつもりです。