無能提督の苦悩   作:EGOGAMI

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能督
人の名前覚えるの超苦手。ごめんね!

伊168
スマホにメモして覚えるタイプ。

朝霜
割とすぐ覚える。

巻雲
顔と名前が一致しない事もしばしば。

早霜
全艦娘完璧に記憶済み。まじリスペクトっスわ。



#16 win-winな関係・・・じゃない!

2月7日 12:29 鎮守府内 中庭

 

空はこんなに広いのに俺の世界はこの鎮守府の中だけ。艦娘の同伴が無いと満足に買い物にも行けない。軍のお偉いさんは何を考えてるのやら。

はァ、マジつっかえ。

 

「なーに黄昏ちゃってるのさ、提督?」

 

スク水の上にセーラー服を来た少女が寝転ぶ俺を覗き込む。

 

「えーっとイムヤちゃん?髪が俺にかかって擽ったいんだけど」

 

あーごめんと小さく舌を出す。これがリアル ”てへぺろ” というやつか。可愛い。

 

「あ、これ提t...能督に渡してだって」

 

1つの封筒を受け取り裏を見ると左下に ”大本営 元帥 猿渡芳一” の文字が見える。

嫌な予感がする。

てか、嫌な予感しかしない。

 

「ありがと、後で見とくよ」

 

封筒をポケットに押し込み芝に身を預け瞼を閉じる。

 

「提督さぁ、私達出撃しないの?」

 

素朴な疑問だろう、実際まだ一度も出撃していない提督を疑う事は当然だ。だが、

 

「ん〜?あー・・・面倒だし、何より君達の命を預かる自信も腕も知識もない。」

 

そーなんだ。とイムヤが隣に腰を下ろす。

 

「それに大本営から命令されてないんだから出撃なんてしなくていいじゃん。平和が一番だよ。イムヤちゃんは出撃したいの?」

 

暗い顔でゆっくりと口を開く。

 

「出撃したいって訳じゃあないけど、前任の出撃命令が大変だったせいで私って要らなくなったのかなぁ....って思っただけ・・・」

 

鎮守府近海は第一艦隊と第二艦隊でパトロールしてもらっているみたいだが、それ以外の艦は基本的に鎮守府内で訓練してるだけ。

使命感というのは時に厄介な物だ。

こんなに幼気な少女にまで牙を剥く。

 

「フツーに必要だよ、万が一ココに深海棲艦が攻めてきたら誰が守ってくれるのさ。君達艦娘でしょ?」

 

数秒間の沈黙。今思えばもっとマシな返しがあっただろうに、長年ぼっちだった弊害だな。

 

「能督は優しいんだね・・・そうだ、さっきの封筒に出撃命令の紙が入ってるかもよ?」

 

いやまさかね。

 

「なーんて冗談だよ」

 

優しく笑みを浮かべるイムヤを横に俺の表情筋が強ばる。

 

「明日って冗談じゃあないよ....」

 

「嘘ッ!?ホントに出撃命令ッ!?」

 

俺の手から溢れた手紙をイムヤちゃんは急いで拾う。

 

「待って、・・・海防艦 択捉の着任と研究員の視察について.....って、出撃命令じゃあないじゃん!」

 

◆ ◇ ◇

 

2月8日 10:38 鎮守府埠頭

 

「ったく、遅せぇなァ・・・」

 

寒い中待たされると自ずと口も悪くなるものだ。確か気温は5度を下回っていたな。カイロを入れたポケットに手を突っ込み身震いする。

 

「全くだぜ、視認出来たら砲撃していいか?なぁ、司令ぇ?」

 

膝下まである銀髪のアホ毛少女・・・確か朝霜ちゃんだったかな、なんて物騒な艦娘だ。だが良い考えだと思う自分もいる。

 

「ふぇ...そんな事しちゃだめですよぉ」

 

巻雲ちゃん、メガネに萌え袖ドジっ子という可愛いの権化がビックリする位分かり易く慌てる。うん可愛い。

 

「そんな事言ってると見えてきたよ、研究員の船。ほら司令官も見えるでしょ?」

 

先を切り揃えた腰まであるダークグレーの髪の少女・・・早霜ちゃんの言葉を少し疑いながらもベルトに提げておいた単眼鏡を覗くと小さく船が映る。

 

「ホントだ、見えた。いや目ェ良過ぎてしょ、遠過ぎてゴキブリみたいに小せぇじゃん」

 

3人の視線が俺に集まる。ゴキブリって言葉に反応したの?例えが変だった?

 

◇ ◆ ◇

 

2月12日 11:08 執務室

 

「いやー、遅れてしまい本当に申し訳ない。なにぶん船酔いが凄くてですね・・・あ、これワタクシの名刺です」

 

刈り上げの理容店カットの男は細い目でヘラヘラと笑いながら白衣の胸ポケットから名刺を取り出す。

 

「どーも。俺の名刺、まだ出来てないんでお渡しできないです。野上彰n...」

 

「もちろん存じておりますとも!」

 

知っとるんかい。いやよく考えたらただでさえ提督の絶対数は少ない。そして幽波紋(スタンド)をもった提督となれば更に限られる。ならば大本営の職員に通達されていても何ら不思議ではない。

一応朝霜、巻雲、早霜は俺の後ろで待機してもらっているが......

名刺に目をやると ”大本営 艦娘艤装研究所代表取締役 田中 進夢(タナカススム)と書いてある。

 

「で田中さん、今日は只の視察ですか?」

 

この男、妙に怪しい。白衣には名前の刺繍が無い。そこまでは看過できる、だがその前にスーツではなく白衣で来た事。他の研究員どころか護衛も付けずたった1人で来た事。

何よりこの男が付けているメガネ、間違いなくカメラが搭載されている。そういうのを買おうと調べていた時期があった為、スパイ道具には少し知識がある。

恐らくカメラだけではなく盗聴器等も付けているだろう。

 

流石(さすが)提督殿、お察しが良いですね。とても込み入った案件ですので、あのー・・・艦娘の方はちょっと....」

 

退出させろという事だろう。怪しい。だが、もうちょっと泳がせてみるか。

 

「分かりました。ごめんけど3人とも、席を外してくれる?」

 

それなら仕方ないと駆逐艦3人は執務室を後にする。

 

「で、込み入った話とは?」

 

田中の薄い目が不気味に少し開く。

 

「はい、提督・・・いや、能督殿はこの仕事に不満があると風の噂で聞きまして。それでこのワタクシ、田中が提督代理になるというのはどうでしょう」

 

これまた大きく出たものだな。俺が提督業を辞めたいというのも事実だ。だからといって、ハイじゃあ交代ね。と簡単なモノではない事もまた事実。

 

「大本営は受理したんですか?」

 

「いえ、大本営には報告しておりません。ですので表向きは能督殿が、主な運営はワタクシが。と考えております」

 

分かり易く胡麻を摺る男だ。しかし、存外悪い条件でもない。

 

「ワタクシは近くで艦娘を観察でき、能督殿はワタクシが用意した近くのアパートで過ごすだけでお給料が貰える。いい条件ではありませんか?俗に言うwin-winの関係というやつです」

 

願ってもない事だが、逆にそれが怪しい。

そして俺はこのwin-winという言葉が大嫌いだ。大体こんな事言う奴にろくな人は居ねぇし自分7:相手3の利益で考えるだろ。

 

「能督殿が宜しければこの書類にサインを頂けませんか?一応契約書という形で残しておきたいので」

 

そう言うと田中は鞄から書類とボールペンを机に置く。

 

「あーハイハイ、サインねェ・・・」

 

田中の口角が上がるのを視界の端で捉えた。

それもその筈、同意書の途中にこう書かれているのを俺は見逃さなかった。

 

”艦娘の扱い及び研究に対し私、能督 野上彰成は一切の口出しを致しません”

 

早すぎて契約書の長文に目を通してないとでも思ったのだろう、ラノベを読みまくった俺の速読を舐めるなよ。

やっとコイツの目的が見えた。同意書を書いたら俺は厄介払い、そして俺がいなくなった鎮守府で艦娘達をモルモットにして遊ぶつもりだろう。

大本営に行った時、艦娘軽視派という艦娘を兵器と見なし、ぞんざいに扱う人間も存在する事、艦娘を研究という名目で解剖する学者がいる事など胸糞悪くなるような噂も耳にした。そしてコイツが噂の学者というところで間違い無いだろう。

確かに提督業は勘弁願いたいが、女の子を弄ぶ事を許可しろと言われ首を縦に振る俺ではない。

さてさて、このクソ野郎をどういたぶってやろうか。そんな思考をめぐらせていると不意に廊下から足音がなる。いらんこと思いついた。

 

「まずい!田中さん、足音です!早く机の下に隠れて!」

 

田中の胸ぐらを掴み無理矢理机の下に潜り込む。田中の頭が机に思いっきりぶつかるが・・・わざとです、ハイ。

 

「な、何するんでs....」

 

「静かに!あの娘にバレてしまいます!」

 

田中の口を塞ぎ小声で注意する。

良ォし、これで消化器官という閉ざされた空間を作る事が出来た。

 

充水(フィルウォーター)・・・」

 

抑えていた手から水が溢れ出す。

 

「ぅはっ!・・・うえッ!・・・ごふぉ!」

 

へへッ、ざまぁみろ。哀れ!余りにも哀れッ!こんな絵に描いた様なクソ野郎をボコれるなんてェェ!!スカッとするぜーーッ!!

 

「サインなんかするか、ばぁか。お前の好きにはさせねぇよ。分かったならさっさと帰んな、このクソ野郎」

 

慌てて机の下から這い出でるが逃がさねぇぞ。帰れと入ったがスッと帰したりしねぇよ。

 

「な、何するんですか!?非道いじゃあないですか!スタンド攻撃するなんて反則ですよ!反則ッ!」

 

かかったな、まんまと俺の(トラップ)によォ。

 

「俺は一言もスタンドなって言ってないぜ。今の台詞(セリフ)でお前がスタンド使いって事は良〜く分かった」

 

ビジネススマイルが壊れた、ようやくボロを出したな。

 

「ッ!!よくもこのワタクシを騙しましたね!」

 

いや、騙そうとしたのはお前の方だろ。

 

「ウィアー・ナンバーワンッ!!」

 

大声と共にリーゼントのピエロ服を着た様なスタンドが現れラッシュをかけてくる。

 

「アクア・スペースッ!!」

 

執務室に拳がぶつかると音が響く。

 

「邪魔邪魔邪魔邪魔邪魔ッ!!!」

 

A.スペースのラッシュによりWe're No1がよろめく。

ん?なんだ、このスタンド意外と弱いぞ?

それにコイツ口を閉じやがった。

そう、 ”閉じた” のだ。

 

充酸(フィルアシッド)!!」

 

もう手加減はしねぇ、コイツをコ□す。コ□さなくても再起不能になってもらう、そうでもしねぇと次の犠牲者が出る。

全く事なかれ主義の俺がなんでこんな事してるのか本当に疑問だよ。

 

「カハッ!・・・あ、熱いッ!」

 

コイツの口に酸を生成しようとしたがすぐに口を開けられてしまった。勘のいいヤツめ。

 

「ハァ....ハァ...もう、許しません・・・」

 

田中の目にはハッキリと殺意が浮かび、どこからともなくカラフルなダイヤル式電話を出し何処かへ電話をした。

 




stand name ウィアー・ナンバーワン(We're.No.1)
stand master 田中進夢(大本営 艦娘艤装研究所代表取締)
stand spec
パワー C
スピード C
射程距離 D
持続力 C
精密動作性 D
成長性 E

名前の由来
海外の子供向け番組、レイジータウンの曲、we are No.1から

能督に休む暇はありません。
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