能督
50m走の最高記録は6.81秒。何故か足は生まれつき早い。
空督
最高記録は8.12秒。士官学校にいた為、同年代の女子より早く走れる。
択捉
11.7秒。至って平均的。
2月10日 13:21 鎮守府埠頭
【人は犠牲無しに何かを得る事は出来ない】
今日になり
「提督ッ!タヒんじゃあダメです!しっかりして下さい!」
択捉の一生懸命な声が聞こえるが・・・いやー、もう駄目だろ。この脚じゃあ助かんないよ。
「能督ッ!聞こえますかッ!今医務室に運びます!それ迄耐えて下さい!」
筑摩姉が脚の無い俺を抱え鎮守府内へ急く。ってか死ぬ前に女の子にお姫様抱っこされるとかどんな罰ゲームだよ。
「大淀!府内放送で出撃可能な艦を呼んでッ!」
陸奥姉が無線で大淀姉に連絡を取っている。
意識が朦朧とする中、ドゴォン!ドゴォン!と砲撃による雑音が耳を刺す。
「もう・・・諦めようよ.....こんな脚じゃあ生きてても仕方無いしさァ.....」
「・・・・・aさい!.....ていt・・・」
あー、もう誰が何言ってるかも分からなくなってしまった。どうやら俺の奇妙な冒険はここで終わってしまうらしい。
あの研究員をボコった罰がこれかな。
考えてみればクソつまらない人生だったと思う、悔いはない。だが強いていえばfpsゲームのシーズン6をプレイ出来なかったな。
◆ ◇ ◇
2月10日 12:30 鎮守府埠頭
「択捉型海防艦の一番艦、択捉です。精一杯戦いますので宜しくお願いします!」
朱色のボブカットヘアーの幼女がもみ上げの三つ編みを揺らしながら一生懸命敬礼をしている。小学生低学年、いや幼稚園の年長あたりにも見えるが海上で深海棲艦と戦う立派な戦士だ。そう思うと感謝の様な罪悪感の様な複雑な感情が胸中を蠢く。
先日やってきた山風も幼かったが、択捉は更に若い。若過ぎる。年端もいかないとはこんな娘の為にあるのだろう。
「おけ、じゃあ択捉ちゃん。早速だけど最初の任務を言い渡しまーす。先ずは俺の部屋n....」
「えぇ、ちょっと早速過ぎませんか?もうちょっt・・・」
なんだァ?この
「空督アンタさぁ、人の話は最後までちゃんと聞こうよォ。最初の任務は鎮守府内にどんな施設が何処にあるのか覚える事だよ?」
「え?あ、あの・・・そのぉ...すいませんでした.....でも、能督の部屋に。って今言おうと」
どんな勘違いをしていたのか知らんが耳を赤くして俯いている。帽子で表情は読み取れないが顔真っ赤状態というのは間違い無いな。
「俺の部屋の位置から教えるって事だよ。択捉ちゃんが秘書艦になったら朝イチの仕事、俺を起こすだからね?」
夜はどんなに遅くても24:00には寝るが、なにぶん朝が弱い。
「なるほど!提督の生活リズムを整えるのも秘書艦の仕事なのですね!」
「「違う、そうじゃない」」
◇ ◆ ◇
2月10日 13:07 鎮守府埠頭
「さーて施設の場所とかは大体把握出来たかな?」
可愛らしくデコレーションしたピンクの手帳をポッケになおし、ピシッと敬礼する。
「はい!メモしたので大丈夫です!」
私にはこんな可愛い小物なんて似合わないし仮にこんな物持っていたら、あの
「あ、そーだ。何か質問はない?」
チビの癖にわざわざ択捉に目線を合わせて話す。
「質問ですか....あ、私の出撃はいつですか?」
困惑しているのか眉を八の字にし頬をポリポリと掻きながら、あの薄ら笑いを浮かべる。
「いやー、暫く・・・てか今の所出撃予定は無いよ?」
択捉はキョトンとした顔でこちらを見る。
なに、この
「お前なんか変な事考えてるだろ」
なんでこんな時だけ勘が鋭いのよ。
「そう言うアンタこそ......」
ウー!ウー!という突然鳴るサイレンに少し怯んでしまった。
「緊急事態発生ッ!深海棲艦の襲来です!これは訓練ではありません!繰り返します、これは訓練ではありません!」
大淀の警報を聞き終わる前に
先に動いたのは私でも、択捉でもない。嫌そうにギザ歯を覗かせるチビ、能督だった。
「アクア・スペェェェスッ!!」
悔しいが能督が少将という私より上の地位に就いた理由が分かったかもしれない。
「グレイ・マシーン!!」
早く早く早く!早く空気弾を造らなきゃ!
もっと早く空気を圧縮しなきゃ!
でなきゃ、また演習の時みたいになる!
でも今は演習じゃあない。深海棲艦は手加減してくれない。手足が無くなるかもしれない。死ぬかもしれない。
じゃあ私が出来る事は何?
1つでも多く敵機を撃ち落とすこと?
あのチビを援護する事?
敵の親玉を見つける事?
私は一体何をすればいい?
「ボサッとしてんじゃあねェ!お前がする事は択捉ちゃんを守る事だろがッ!」
そうだ、択捉はまだ正式配備してないから艤装を展開出来ない。すっかり失念していた。
急いで択捉に駆け寄り空気弾を構える。
「チュミミィイイン」
G.マシーンの合図、よし以前より早く空気弾を生成できた。これで敵機を!
数日前にふと筋肉ダルマが言った事を思い出した。
「お前の空気弾は連発出来ないんだから早く生成する技術を磨くか、一発あたりの質を上げろ。そして迷ったら撃つな、記憶したか?」
圧縮出来る空気には限度がある。それを超えれば私の指がひしゃげてしまう。ならば生成時間を縮めるほか無い。
「提督!艤装を展開出来ません!」
分かっている。そして私がすべき事も分かっている。
「択捉、ちゃんと聞いて。ココから走って工廠に行くの、貴女1人で。私がスタンドで援護するから振り向かないで走って!さぁ!」
ハイ!と元気よく返事し小さい四肢で一生懸命に走り出す。
「キエェェェエェェ」
身の毛もよだつ様な奇声二つ分が背後から響く。
「そこッ!」
ドシュン!ドシュン!と2発。
一機に一発、確実に当て各個撃破。
半分程えぐれた敵機二機はフラフラと埠頭のコンクリートに落ちる。
幾ら生成時間を短縮出来たからと言って無駄撃ちは出来ない。
・・・しまった!択捉は!
「ギエェェェエェェ」
択捉のすぐ背後に敵機が迫っていた。
艦娘といえど艤装を展開していなければ只の女の子に変わりない。
見た目10歳にも満たない娘があんなのに撃たれれば・・・
死ぬ。
ココから択捉まで遠い。空気弾でも間に合わない。私のせいで1つの尊い命が消える。
「択捉ちゃんの保護はお前の仕事だろがーーッ!!!」
ドゴォン!という雑音が耳を刺し、黒煙をあげる。走り寄り黒煙が晴れる頃には能督に突き飛ばされ肘、膝を擦りむいた択捉と能督が横たわっていた。
だが足りなかった....択捉を守る私の判断力、能督の択捉へ向かう速度。そして・・・
能督にある筈の2つの脚が、足りなかった。
能督はアマルガムの棍で応戦してました。
空督は隠れ巨乳です。