無能提督の苦悩   作:EGOGAMI

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能督
割と医務室のベッドを気に入ってる。

択捉
罪悪感でいっぱい。

空督
能督の執務室で報告書作成中。



#21 得たモノと失ったモノ

2月12日 18:24 医務室

 

 

無い。

 

ウザいと思った時期もあったがも決して嫌いでは無かった両親から貰った脚が。

茶化して怒った妹から逃げる為の脚が。

クソジジィ(元帥)を蹴り飛ばす為の脚が。

筋肉ダルマ(爆督)のケツを蹴り飛ばす為の脚が。

金髪パーマ(空督)の靴のかかとを踏み潰す為の脚が。

 

無い。

 

無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い無い

 

俺はこれから、どうやって生活していけばいい?どう戦っていけばいい?どうやって逃げればいい?

鼓動が次第に・・・・・・いや、もう既に早い。

頭が・・・目の前が真っ白になるとは正にこの事だ。そんな俺を暖かく優しい温もりに包む。

 

「大丈夫ですよアキくん。私が、榛名お姉ちゃんが守ってあげますからね」

 

いつか聞いたこのセリフ。

色んなモノが込み上げくる。

今の俺は世界一酷い顔をしているだろう。

・・・・・・おい、そこは嘘でも(違います)って言えよ、泣くぞ。もう泣いてるけど。

いや泣いてねぇよ。

泣いてねぇかんな!

 

◆ ◇ ◇

 

2月12日 09:08 医務室

 

『おきてー』

『もうあさだよー』

『てーとくー?』

『もしもーし!』

『もしかして しんじゃった!?』

『そんなわけないでしょ!』

『でもおきないよ?』

 

勝手殺すな。

神サマに 「お前、嫌いだからあの世(こっち)に来んな」って言われた男やぞ?

いや、実際に言われた訳では無いけど・・・

 

「神にも見放された男だぞ、そう簡単にタヒなねぇよ」

 

目は開けない。ここで目ェ覚ましたら何か負けた感じがするから。

 

『ほらいきてる!』

『おきてるのまちがいじゃあない?』

『かみさまにみはなされたって』

『なんかいたいね』

『そーだね』

 

イタイって言うな。同調すんな。

ホント誰だよ。人が脚無くしてセンチになってる時に止め刺しに来る奴らは。

 

『とどめだってーひどいねー』

『せっかくおみまいにきたのにねー』

 

「にぎゃぁぁあ!誰じゃあ!儂はまだ寝てたいんじゃあ!」

 

布団を蹴飛ば・・・・・・脚無いんだった。

投げ飛ばすと同時に数人の妖精さんが飛んだ?舞った?浮かんだ?分かんね。

 

『やっぱげんきじゃん!』

『でもあしないよ!』

『でもげんきはあるよ!』

 

空元気だよ。

元気無いよ。

脚も無いよ。

 

「おい、薄ら笑いチビ・・・じゃあなかった能督、朝食の準備か出来m....」

 

こんなに口悪い奴は一人・・・では無いが声質からアイツ(空督)だと分かる。だがパーマのかかったショートカットでは無かった、ストレートでお姫様カット肩下まで伸びた綺麗な金髪は可憐さを醸し出していた。

空督に何があったかは知らんがしれーっと俺を薄ら笑いチビ呼ばわりした事は許さんからな。

 

「おい、パツキンロン毛ブス。もっぺん言ってみろ」

 

朝食の乗ったトレーを机に置くとやれやれとポーズをとる。

 

「能督、いや太眉ギザ歯チビ提督。脚だけじゃあなくて聴力も無くしたんですか?それにアンタもロン毛でしょ」

 

なんで言い直した!?!?しかも増えてる!!

コイツめぇ....復活したら覚えとけよォ・・・

 

「はいはい、お二人共。そのくらいにしてご飯にしましょうよ!ね、提督?」

 

芦黄色の髪の少女が長いツインテールを揺らしながら入ってくる。

 

「いえ、私はもう頂きましたので」

 

名前なんだっけ、この娘。白露ちゃんとか時雨ちゃんとかと同じ制服だけど....

 

「ごめんなさいねぇ、提t....空督さん。村雨は能督のなのぉ♪」

 

そうだ、村雨ちゃんだ。忘れt....いや、忘れてないぞ。今言おうとしただけって....

待て、今しがた聞き捨てならん事を聞こえた気がする。ま、いっか。この煽りチャンスを逃がす俺では無い。太眉ギザ歯チビの分を盛大にお返ししてやろう。さぁて。

 

「ぷっぷ〜!お前(空督)の事じゃあ、ありませぇん!・・・ありましぇ〜ん!!」

 

はっはー!指を指して腹を抱えて頬を膨らませて馬鹿にしてやったぜ。

 

「そうですか、失礼しました。村雨、次からは空督、能督と言い分けるように。」

 

村雨は、はーいとベッドの横に置いてあった丸椅子に腰を落とした。あれぇそんだけかよォ、つまんねぇの。

 

「では脚無し能無し提督、失礼致します」

 

うっせうっせ、一々悪口を付け足すな。あと、”左手” で敬礼したの見逃さんからな。

扉が閉まるのを確認すると舌をだし白目剥きべろべろばーと全力で馬鹿にしてやった。

二度と来んなばーか。

村雨に目をやると手で口元を隠し眉を八の字にして、くすくすと笑っている。可愛い。

あ、そうだ。忘れない内に言っとかなきゃ。

 

「村雨ちゃん、ご飯食べ終わってからで良いからちょっと付き合ってくれない?」

 

村雨はキョトンとしているが・・・可愛い。

 

◇ ◆ ◇

 

2月12日 09:31 工廠

 

ゴウン、ゴウン。ギュイーン。バヂヂヂヂ。

うん、ゴメンけど言わせて。

 

うるせぇ!

 

いやね、俺や艦娘、鎮守府や国の為に一生懸命汗水垂らして、顔や手を煤や油塗れにして頑張ってくれてるのはホント感謝してるよ。

でもね・・・

 

五月蝿ぇ!

 

村雨に車椅子を押してもらいながら工廠に来たはいいものの・・・・・・

 

やっぱうっせぇ!

 

そんな愚痴を心の中で叫んでいると・・・心の中でだよ?口には出てないからね。

少し緑がかった銀髪で前髪ぱっつんの艦娘がポニーテールを揺らしながら走ってきた。

頭の上で手を振ってるせいか単に制服が短いだけなのか、十代半ばの健康的なお腹が丸見えだ。丸見えって響き、なんかエッチだな。

 

「突然どうされたんですか?それに提督、脚の方は・・・」

 

あ、そうだ。あのギャグを試そう。なんだかんだあって、まだ誰にも言えてないからな。

 

「あーゴメンけどメロンちゃん。俺の脚知らない?無くしちゃったみたいでさぁ、ハッハッハ!」

 

工廠の空気が凍った。

時が止まったかの様に。

おっとォ、俺のスタンドはアクア・スペース・ザ・ワールドに進化したのかな?

 





(進化して)ないです。
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