無能提督の苦悩   作:EGOGAMI

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爆督
馬鹿真面目お兄さん、国の平和に対する思いは並々ならない。

蝋督
艦娘大好きお兄さん、艦娘に対する思いは尋常じゃあない。

蜥督
自分大好きっ娘ちゃん、兄に対する思いは複雑。



#28自信家と自惚れ屋と自己中

3月4日 10:29 大本営 側督執務室前廊下

 

「失礼しますッ!爆督到着しましたッッ!!!!」

 

”おっけ〜入っていいよ”と優しい声が扉の向こうから聞こえドアノブに手を伸ばすとガチャリとひとりでにドアノブが回りドアが開いた。同行した大和、翔鶴、川内、雷、電、鳳翔は(爆督)の後ろに並んでいた故、ドアノブに触れずとも開いたドアに疑問を持たなかった、ドアの向こうに居た異形の存在についても。

 

「いらっしゃい爆督、ビックリさせちゃったかな。ボクのスタンドヴィジョンって不気味でしょ?ゴメンね〜」

 

執務机の椅子に座る提督、傍に立つ一航戦赤城、加賀そして五航戦の蒼龍と飛龍。

だがそれよりも目を引いたのはフヨフヨと空中に浮かぶ異形の物体だった

剥き出しの脳みそ、脳みそを囲う羽の付いた軸受、脳みその下部にはタイヤが3本回転しておりタイヤの隙間から6本のコードが生えている。

測督には悪いが控えめに言ってグロテスクだ、艦娘たちにこのスタンドが見えなくて良かったと思えてしまう程に。

 

「改めて自己紹介するよ、岡田勝広。二つ名は測督、階級は一応大将って事になってるけど・・・まぁいいや、この不気味なスタンドはサイバー・クライストと呼んでる。能力は何となく知ってるよね、そんな感じかな〜。君の事はボクのスタンドで知ってるから本題に入ろうか」

 

自己紹介をしながら車椅子で移動し客用机の前にくると側督は俺にソファ座るように手で促した。

側督、数々の難関海域を攻略した実力の持ち主なのだが何より凄まじいのが出撃した艦娘は一隻たりとも、一撃たりとも被弾する事無く海域を攻略した事だ。

最初は泊地を任されていたらしいが実力で昇級し海軍の中では”神の采配”等と呼ばれている。

噂では前の元帥から次期元帥に推薦されていたが側督が断り当時の猿渡提督が新元帥になったらしい。

 

「測督、レクリエーションの件ですがッ!」

 

測督の言う通り自己紹介をせず本題に入ろうとすると遮る様に測督が口を開いた。

 

「おっけ〜、でも今のボクは足と目が少々不自由でね。詳細は赤城と加賀に任せてあるからボクは失礼するよ、バタバタして申し訳無いけど急ぎの用があるからね」

 

俺が気に入らなかったのか、それとも本当に忙しいのだろうか。俺と測督は会話という会話を交わす事なす赤城と加賀が交換留学、レクリエーションの概要を説明の説明を始めた。

 

「何か分からない事とかあったら聞いてくれて構わないからね、ボクは工廠にいるから赤城か加賀に案内してもらってね〜」

 

足が不自由と言っていた測督だったが蒼龍と飛龍に車椅子を押してもらいながら執務室を後にした。

 

◆ ◇ ◇

 

3月1日 15:08 蝋督鎮守府 休憩室

 

「歩美ちゃんはブラックコーヒーでいいんだっけ、ブラックとか大人だネ。そんけーするヨ」

「気軽に下の名前で呼ばないで頂けますか?蝋督、私の事は空督と呼んでください」

 

いつの間に(空督)の事を下の名前で呼ぶようになったのでしょう、距離の詰め方に鳥肌が立ちます。

 

”キビシー”っと自分のおでこをペシっと叩くき、おちゃらける蝋督に反省の色は見られない。

(空督)、蝋督、浜風、磯風、浦風に囲まれた円卓にはクッキーやシフォンケーキ、見た事も無い洋菓子が所狭しと並んでいた。

そして一層目を引く二つの業務用生クリーム、泡立ててあり蓋を外すと直ぐに絞れる便利なタイプだ。

 

「はまかぜはウィンナーコーヒーだよネ、ほい生クリーム、いそかぜはシロップ二つとミルクが三個だったネ、うらかぜはシロップミルクどっちも一個ずつに生クリームだよネ、はまかぜ使い終わったらうらかぜにネ」

 

流石というべきか鳥肌モノと言うべきか艦娘達の好みを完全に把握している、今ここに居る艦娘は三人だけだがこの調子、この提督なら全艦娘の好みを把握している事だろう。

蝋督のスタンド:リビング・エンドが円卓の周りを右往左往しシロップやミルクを三人に配っている。

浜風が生クリームを三分の一程使うと残りが入った容器を空中にかざす、すかさずR.エンドが受け取り浦風にまわす。

浜風によると艦娘達はローテーションでお茶会という名の蝋督主催の豪華なケーキパーティが行われているらしい。

所属艦娘の人数からして1ヶ月で一周するみたいだが私は (空督)は提督なので2泊3日の間は毎日参加して貰いたいと言う、蝋督はちょっとアレだがケーキやコーヒーに罪は無い。

私が配属された基地、通称空督基地は勿論の事、爆督鎮守府に居た頃からこんな素敵モノを食べる機会は無かった、そんな事を考えながらブラックコーヒーを一口啜る。

少しに気になっていた生クリームの量、この五人の中で生クリームを使うのは浜風と浦風、蝋督はココアだから生クリームは乗せない。

ただでさえ大きい業務用生クリーム、浜風か浦風がぐびぐび飲んで二杯目にも使うのかという訳でも無さそうだ、ケーキやマフィンに乗せて食べるにしても一本丸々使い切るのは難しいだろう。

ならばなんで二本もの生クリームを用意したのだろうか、そんな私の素朴な質問は蝋督の言動で説明してくれた、蝋督は空いてない方の生クリームを開けチューブの搾り口を口に含んだ。

「・・・ッ!!」

蝋督は男にしては綺麗な手で生クリームを搾り人間とは思えない速度で吸い込み、ズゾゾゾゾと生クリームからは出ない様な音と共に蝋督の胃に流れ込んでゆく。

 

「・・・ッ!?え、どういう事・・・ですか」

 

思わず立ち上がり私が呆気にとられていると浜風がコーヒーを一口啜り説明してくれた。

 

「うちらは慣れとっけどこの娘(空督)は初めてなんやからもうちょいお上品に飲みぃや」

「そりゃー確かに今のは下品だったなぁ!ごめんなぁ空督さん?」

 

浜風に続き浦風まで、一方磯風は・・・気にも止めてない様だ。蝋督の人柄がここの艦娘達は全体的にメンタルが強い気がする、ここまで反応が薄いと私の感覚がおかしいのかと思えてくる。

 

「あー初対面の女の子に今のは無かったネ、流石に僕も反省だヨ。・・・じゃあ今度は歩美(空督)ちゃんの綺麗なパツキンロングヘアーを吸わせてヨ!!」

 

助平な表情をし、手をワキワキさせる蝋督の頭に便所スリッパが飛んでくる。私の目にも止まらぬ早さで浜風が蝋督の頭をひっぱたいたみたいだ、何処からともなく取り出した便所スリッパを背後の腰辺りに仕舞う。

私の視力は良い方だ、動体視力も悪いとは言わせない程の自信はある。

そんな私ですら目で追えない速度を繰り出す浜風のツッコミ(?)、恐るべし艦娘、恐るべし浜風。

 

「今のは今日一でキレていたな浜風。中々いい音だったぞ」

 

今まで殆ど口を開かなかった磯風が静かに口を開き浜風を賞賛する、意外と言えば意外だがそれよりも隣で腹を抱えて大爆笑する浦風が気になって仕方なかった。

 

「まぁこんな感じだけどフツーに出撃してフツーに戦果を上げフツーに演習してフツーに遠征してるから大本営からは目をつけられてるけど大丈夫だヨ」

「それは(艦娘)達のおかげでしょう、蝋督と言ったらセクハラしてサボってお菓子食べてるだけじゃあないですか。それを人が鎮守府を運営しているとは言えません」

 

やっぱりというかなんというか呆れて声も出ない。当の本人(蝋督)は”えへへ”と相変わらず反省の色は窺えない。

ダメだこの提督、早く何とかしないと。

私に変な使命感が芽生えてしまった。

 

◇ ◆ ◇

 

3月19日 08:03 能督自室

 

「ほら起きんね、はるばる妹が起こしに来てやったけん、とっとと起きぃ。蹴飛ばすばい」

 

ウチの鎮守府の中で(能督)の事を”お兄ちゃん〜”やらと呼んでくる艦娘は多少なりとも在籍している、だが自分の事を妹と自称しこんなにコテコテに訛った喋り方をする娘は知らない。

 

「いー加減にせんと兄ちゃんのスマホん中にあるエロか画像ば艦娘ちゃん達に送っばい」

「おはよーございまァァァッスッ!!」

 

ふっざけんな、そんなことしてみろ?ドラム缶のコンクリ詰めにして有明海に沈めてやるからなァ!?

待て、目の前にいる少女。肩下程まで伸びた茶髪、俺とは真反対の細眉に三白眼。真っ白な軍服に身を包んだ少女は紛れもなく野上和美、不肖我が実妹だった。

 

「うるさか、起きろっては言ったばってん・・・声のボリュームば考えんね、近所迷惑たい」

 

約1ヶ月半振りに聞いたコテコテの九州訛り、最後に見てから髪も少し伸びたみたいだ。

・・・いやいやいやいや、危うくスルーしようとしたが駄目だろ、スルーしちゃあ。

なんでスタンドも使えない一般人の妹が女性用の提督服を来てココ(鎮守府)に居るんだよォ!?

 

「Why!?って顔ばしとんね、その様子やとやっぱり書類に目ば通しとらんみたいやね。おじいちゃん(元帥)から書類が行っとるはずばってんねぇ。兄ちゃんの紙に目を通さん癖ば、はよ治した方がよかばい」

 

俺が熊本のネカフェからココに連れてこられた間、何度か浮かんだ妹のヴィジョン。

心配してた様な、どうでも良かった様な・・・とか思っていた矢先にコレだ。

でも何故?・・・っていう質問は例の書類に目を通してからじゃあないと和美だけじゃあなく榛名や山風からも、どやされる事だろう。あーやだやだ、怖いったらありゃしねェよ。

 

───────

 

「野上和美 階級准尉 二つ名を蜥督(セキトク)准尉ィ!?蜥督ゥ!?・・・なにそれ?」

 

クソジジィ(元帥)からの書類には俺の妹が提督見習いである事、既に蜥督という二つ名を与えられていた事、そして提督見習いとしてココ(鎮守府)に派遣された事。

士官候補生試験を約1ヶ月半の間にクリアした事。はぁ...あらら?俺この”士官候補生の試験”とやらを受けてませんが、合格してませんが、なんでですかねぇ。

 

「和美ィ、お前この試験1ヶ月半で終わらせたの?これフツー何年とかかかるんじゃあないの?あ、あれか。ジジィの口添えか、じゃあ仕方ないねェ」

 

我ながら兄とは思えない冷たい態度で言葉を投げると、、いつぞやの俺の如くふんぞり返って会話のボールを投げ返した。

 

「いやフツーにクリアしたばい、1ヶ月半で。ほら私って天才やけん」

 

いやいやいやいや、有り得ない有り得ない。

俺の3つ下の16歳女子が仮にも海軍の訓練をクリアし准尉(少将の7つ下の階級)まで上り詰めるなんて、それもたったの一ヶ月半で。

 

「兄ちゃん口が開いとっばい、その顔は・・・信じとらんね。なんならおじいちゃん(元帥)と訓練生時代の教官に電話でもすれば良かたい」

 

和美がここで嘘をついたところでメリットは少ない、だったら本当に士官学校の試験に受かり有り得ないほどのスピードで昇級したというコト?

得意気に話す妹を他所に俺は固まったままだった。

 

◇ ◇ ◆

 

2月24日 11:39 能督鎮守府 中庭

 

「さァ!ばっちこォい!龍田ちゃぁぁあんッッ!!!」

「うふふっ♪死にたい提督はどこかしらぁ♪」

 

おっとりとした口調からは想像出来ない程のスピードで迫り来る一人の少女。

紫がかったセミロングヘアーの上でくるくると回る天使の輪っかの様な艤装、左目の泣きぼくろが印象的な少女。

薙刀(竹製)を提督である(能督)に容赦無く振りかぶる少女。

天龍型軽巡洋艦 二番艦 龍田。

クソジジィ(元帥)の時の様に重心を落とし右へステップする、0コンマ数秒前まで俺がいた位置に龍田の武器が音を立て空を切る。

安全の為、本物の薙刀ではなく竹製の薙刀を使った訓練なのだが・・・恐怖心が凄い、凄い怖い!

 

「ちょ、ちょっとタイム!こ、これって練習ってか訓練だよ・・・ねェ?」

「そうですよぉ?」

 

会話が終わる前に龍田は地面を蹴る、龍田の体制から見るに・・・俺の左脇から右肩への切り上げっぽい!

アマルガムの槍で防御体制をとるも・・・意味なし、瞼を開けた時には既に右頬の数ミリ隣まで龍田の薙刀の先が迫っていた。

いや、なんで?薙刀は俺の左下にあったやん?

それがなんで俺の右頬に来てるの?

 

「能督、いくら怖くても目は閉じちゃダメですよ〜♪これが訓練じゃあなかったら・・・うふふふふふっ♪」

 

いくら棍術の練習をしていたと言ってもあくまで独学、上達にも限界がある。

そこで槍に似た武器、薙刀を使う龍田に訓練という名の稽古をつけて貰っていたのだ。

・・・にしても訓練とは言えない程の気迫、殺意、龍田の正面に立つだけで足が震え、尋常じゃあない量の汗が吹きでる。

 

「そうですねぇ...能督は反応”は”出来ているので後は恐怖心と足の運びと棍の有効な扱い方と身体の動かし方ですねぇ♪」

「そ、そっすかァ...」

 

トゲっ・・・!圧倒的言葉のトゲっ・・・!!

俺の長所動体視力だけですやん、それ以外ゴミですやん、ガラスのハートは粉々やで。

フォロー出来てないやん、全力で貶しに来てるやん。凹むぜェ。

 

田中の件、あれからアマルガムの槍に改良を施し鋼と同等・・・とまでは行かなくとも、かなり丈夫に生成する事ができる様になった。

俺も竹製の薙刀を使おうとしたら天龍に”大丈夫大丈夫、オレ達には当たらねぇから(笑)”と全力で煽られた。

龍田との訓練が始まる前、アマルガムの槍を作っている途中に龍田に言われた一言。

「私達艦娘は頑丈なので本気で当てに来てくださいねぇ・・・手を抜いたら・・・うふふっ♪」

とか言われた、長門姉と言い香取姉と言い龍田と言い艦娘ちゃん達にとって脅迫は乙女の嗜みなのかもしれない。そうに違い無い。

そして刃を交えること約数秒・・・今の俺じゃあ絶対勝てない!

コラそこ”龍田の攻撃を防げてない癖に”とか言わない、気にしてんだから。

 

「おい能督、そんなんじゃあオレには勝てねぇぜ?」

 

何この(天龍)さっきまで借りてきた猫みたいにチョー大人かった癖に!

なになになになに?この変わり様、怒り通り越して呆れるですけどォ!?いやフツーにあったまキタ。

 

「ほゥ?そこまで言うのなら試してみよっかァ?」

「望むとこだぜ」

 

天龍は肩にかけていた竹刀を一振、威嚇するように空を斬る。

俺もアマルガムの槍で中段の構えを取り、前方にA.スペースを出す。

スタンド使いでは無い天龍はA.スペースを視認する事も触れることも出来ないが、A.スペースが天龍の竹刀を白刃取りで止める事は出来る。

ちょいとばかりズルい気もするがアレだけ煽られたのだ、一発ぐらいズルしてもバチは当たらんだろ。

 

「フフフ能督、口角が上がってるぜ?オレが怖くて笑うしか無いのだろ」

 

いやこの娘煽りスキルA+だね、チョー煽ってくんじゃん。

いかんいかん、油断は大敵だ。幾ら確実に一発お見舞い出来ると言っても天龍に警戒されたら一発くらわせる事が出来ないかもしれない。

気を引き締め、槍を握る手に力を込める。

 

「よっしゃぁっ!いくぜ!!」

 

フハハハ!真っ直ぐ突っ込んで来るとは馬鹿め!天龍、おバカ。おバカ、天龍。

そんな一振、見きったぜ!!!!

次の瞬間、A.スペースの手から放たれた”パンッ!”という音、そして竹刀と俺の頭から出た”ペシィンッッ!!”という悲しい響きが鎮守府中に響き渡り俺は意識を失った。

 




弱視の側督ですがスタンドは概念なのでヴィジョンは分かるみたいです。

stand name:リビング・エンド(L.エンド)
stand master: 松岡敦士(蝋督)
stand spec
パワー B
スピード B
射程距離 D
持続力 C
精密動作性 C
成長性 C
燕尾服を着た様なヴィジョンの近距離パワータイプの人型スタンド、顔は火の着いたキャンドルの様に見える。
触れた物を蝋燭にする能力、拳で触れたもの(生物、無生物かかわらず)蝋燭に変えてしまう。引火性は高く高温になりやすい為、1度火がつくと大怪我は免れない。1回触れるだけだはゆっくりとしか蝋燭化しないが、何度も触れたりしっかり掴むと瞬く間に蝋燭化してしまう。

オーストラリアのバンド、The Living Endから。
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