無能提督の苦悩   作:EGOGAMI

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能督
肩下まで伸びた黒髪、赤のメッシュが特徴のロン毛提督。

金剛
逃げないでクダサーイ!提督LOVE勢 筆頭。

比叡
紛うことなきお姉様LOVE勢。ガチレズ。

榛名
能督の幼少期に1度あっておりその事を覚えてない能督に対し落胆気味。

霧島
俺が提督なのか疑ってる。仕方ないね。



#2 能督と金剛四姉妹

1月26日 11:23 医務室

 

見慣れない白い天井。身体中痛むが何とか上体を起こす。

 

白いベッド、薄水色のカーテン、薬品などが並ぶ棚、ペン立てに入れられた複数の体温計。松葉杖や車椅子。

 

そして俺が寝ていたベッドに上体を預け眠る一人の女の子。

 

間違いない、俺はクソジジィ(元帥)に啖呵を切り返り討ちされ、この医務室に搬送後、この女の子に看病されていたのだろう。

 

薄緑色の患者服を脱ぐと胸元から下腹部にかけて包帯でグルグル巻きにされていた。壁に叩きつけられた時に負傷したのか。

 

「あー...マジ痛てぇ...」

 

あんのクソジジイ、全力で孫をボコリやがって。もうちょっと手加減してくれてもいいだろう。

 

女の子を起こさない様にゆっくりとベッドから降りようとしたが、

 

「ん、ぅん〜...あ、アキくん!やっと目が覚めたのね!」

 

思い出した。俺は幼少期、この女の子に会っている。というか此処に来た事がある。

 

◆ ◇ ◇

 

?月?日 08:16 自宅

 

妖精さんが見えると両親に伝えると慌てて何処かに電話をし、後日軍服を着た顔のシワが多い壮年男性が迎えに来た。

 

「初めまして、儂が君のおじいちゃんだよ」

 

男はぎこちない笑顔でそう言い放った。

それが僕とおじいちゃんのファーストコンタクトだった。

 

「突然だけどおじいちゃんとお出かけしようか?楽しい所に連れてって上げるよ」

 

僕は近所で知れ渡っている程のわんぱく少年だった。友達は居なかったけど。

だからこそ、楽しい所と聞いただけでワクワクし、二つ返事で爺ちゃんと一緒に車に乗り込んだ。

とても長い間、車に揺られていたがいつの間に寝てしまい気がついた時には港みたいな所に着いていた。

 

 

当時の僕、いや俺は理解出来ていなかったが、そこは間違い無く鎮守府だった。

 

 

「じゃあ、じいちゃんはちょっとだけお仕事して来るから、この娘とまわってらっしゃい」

 

おじいちゃんに紹介して貰ったそのお姉ちゃんは綺麗な長髪が特徴で巫女服の様な格好をした美人さんだった。

 

「初めまして。高速戦艦、榛名です。貴方が未来の提督なのね?よろしくお願いします」

 

そう言う彼女はとても朗らかな笑顔で微笑んでくれた。

コーソクセンカンとか、テートクとかよく分からなかったけど一緒に遊んでくれるなら何でも良かった。

 

「未来の提督さん、んー...長いね。アキナリ君だから・・・アキくんって呼ぶね!じゃあアキくん、迷子になっちゃいけないから手を繋いで一緒に回ろっか?」

 

多分だけど、僕の名前はおじいちゃんから聞いたんだろう。

榛名お姉ちゃんの手はとても優しく、そして暖かかった。

 

鎮守府内では沢山の妖精さんと触れ合ったりもした。

 

鎮守府を見て回っている途中で金色の何かの破片を見つけ、僕は妹のお土産にでも持って帰ろうと思い手を伸す。

 

「痛っ!」

 

榛名お姉ちゃんはどうしたの!と、慌てて膝をつき僕の手を覗く。僕の指から数滴出血してるのを見た途端、急いで僕を抱え医務室に走った。でも、いざ治療しようとした時には血が止まる所か何事もなかったかのように綺麗に治っていた。

 

 

 

 

・・・ そう、その日からだ、俺の近くに魚人の様な亡霊が見え始めたのは。

 

◇ ◆ ◇

 

1月26日 11:24 医務室

 

そうだ、何故今まで忘れていたのだろう。

俺は以前、此処に来た事がある。そしてこの喜々として俺の目覚めを喜ぶ女の子、彼女は金剛型高速戦艦三番艦 榛名だった。

 

「あ、アキくん久し振り!あ、今は提督って呼んだ方が良かったですか?」

 

幼少期に会った年下男子として接して良いのか、提督として接して良いのか分からなかったのだろう。喋り方がちぐはぐだ。

 

・・・にしてもだ、19歳にもなって”アキくん”は流石に恥ずかしい。

だが、提督業なんざしたくもない、やる気もない俺を”提督”等と呼ばれるなんて勘弁願いたい。

 

「アキくんも提督も止めてよ、榛名お姉ちゃ...榛名姉。俺はもう19だし、提督をするつもりなんて更々無いからね。そうだ悪いけど、ジg...元帥には辞めたと言っておいてくれない?」

 

まだ、身体中痛むがダラダラと寝ている間に色々と書類等の準備を強制されるかもしれない。兎に角この鎮守府からは一刻も早く逃げなくては。

 

「え?や、辞めるって。どうしてですか?! あぁ、そんなに無理して歩いたら転んじゃいますよ!」

 

榛名姉の心配を他所にヨタヨタと医務室の中を物色する。

 

「ごめんけど榛名姉、俺の服知らない?あと、杖とか有ると嬉しいんだけど」

 

流石に患者服の短パンに包帯の半裸状態で動き回るのは些か不便を伴うだろう。

少なくとも普通の服と歩行補助用の杖でもあれば鎮守府を出てタクシーか何かで街に行けるかもしれない。

 

「て、提督・・・これならありましたけど...」

 

榛名姉の手元にあったのは複数の勲章が飾られた白の軍服。正しく提督服であった。

 

「勘弁してよォ、これ着たらホントの提督じゃんよ。他になんか無いの?」

 

榛名姉は静かに首を横に振る。

仕方ない、勲章や飾緒を外しその飾りを榛名に預ける。尤も返して貰う事は金輪際無いだろうがな。ハハッ!(某ネズミ風)

 

そこら辺に有った松葉杖を拝借し(返すとは言ってない)医務室の扉を開けようと、スライド式のドアに手を伸ばす。が、俺の手がドアの指掛けに触れる前にガラガラと勢いよく開く。

 

「テートクが起きたってホントーデスか!?」

 

「ハァ...ハァ...姉様...廊下は走っちゃダメですよ...」

 

「やっと新しい提督が着任したのね...フゥ...」

 

勢いよく開いた扉から見えたのは巫女服の様な格好をした女の子、正しくは艦娘が3人。

長い綺麗な茶髪のシニヨンが可愛い元気な艦娘と、肩で息をする茶髪でショートヘアの艦娘、そしてメガネが似合う知的な艦娘が立ち塞がっていた。

 

勘弁してよォ、小中高ボッチだった俺が、3人同時に話し掛けられて対応出来るわけ無いに決まってんじゃん。

榛名姉は1対1で、且つ幼少期に遊んで貰った記憶が有るので何とか話せたが、ほぼ初対面の女の子3人から話し掛けられるなんてパニック必至である。

 

「あ、えっとぉ...その、あ、貴女達は..」

 

「Nice to meet you,テートク!英国で生まれた帰国子女の金剛デース。ヨロシクオネガイシマース!」

 

今し方走って来たであろうにロングヘアの艦娘は元気よく少し片言の日本語で自己紹介してくれた。

 

「ハァ、ハァ...金剛お姉さまの妹分、比叡です。ハァ...」

 

ショートヘアの比叡と名乗る艦娘はまだ息が整わない様だ。

 

「はじめまして、私、霧島です。」

 

メガネの艦娘は見た目に依らずもう息が落ち着いたらしい。

 

・・・にしてもだ、マズい。非常にマズい。

こんなにも早く艦娘達に見つかるとは。

他の艦娘にも見つかり俺が新任と提督と認められれば本当に逃げ場が無くなる。

取り敢えず、この4姉妹迄で情報を止めなければ。

 

だが、舐められてはいけない。

提督らしく・・・あ艦(あかん)、漢らしく堂々としなければ。

 

雀の涙程の勇気を振り絞り口を開く。

 

「い、良いですか、俺が此処に来て提督として働く事は他の娘には口外しないで下さい。まだ完全に決まった訳でも無いのに混乱させるのも申し訳無いですからね。」

 

3人もの美女に囲まれながら(榛名は少し後ろに控えている)噛まずに喋れた自分を褒めてやりたい。よく言えた俺。凄いぞ俺。ヨーシヨシヨシ。

 

「え?決まってないのデスか?」

 

確かに驚きを隠せないか。金剛姉が目を丸くする。

可愛い。

だが、すまんな。

こんなに素敵な娘を騙してまで提督なんてしたくないのだ。

 

「提督、先程辞めるって。辞めるって事はもう既に決まってるって事じゃあないのですか?」

 

榛名姉ぇぇええ!余計な事を言わんでくれぇぇええ!!

だが、ここで取り乱せば榛名の思う壷だ。(違います)

 

「え、えっと推薦されてるのを辞退、やめると言ってたのでしゅ...」

 

噛んだ。動揺したのバレた。絶対バレた。

榛名はキョトンとしてるし、比叡はフフって笑ってるの隠してるつもりかも知れないが思いっ切りバレてるからな。気付いてるからな。

霧島はちょっと呆れてるし。

金剛に関しては

 

「顔真っ赤のテートク so cuteデース!」

 

とか言いながら思いっ切り胸押し付けて抱き着いてるし。

恥ずかしからホントやめて。ホント。

俺は低身長でそれがコンプレックスだった。

異常な迄に小さいって程でも無いが4姉妹から見下ろされる位にはスモールボーイだ。(身長が)

うん、なんか腹立ってきたな。

 

「ぷはっ...こ、金剛姉恥ずかしからホントに勘弁して下しゃい」

 

2つの豊満な胸部装甲に顔を圧迫され上手く発音できない。

あと、めちゃ柔らかいし。

めちゃ匂いするし。

めちゃ心地いいし。

正直この瞬間がずっと続けば良いなぁ、とか思ったがそんな誘惑に負けそうな自分を叱責し金剛姉を突き放す。

うん、まぁパンピー(一般ピープル)が艦娘に力比べで勝てるわけないよね。

 

「テートク、なんで辞めたいんデスか?私、寂しくて泣いちゃうヨー」

 

女の子を泣かせるなんて「男のしてはいけない事ランキング」1位と言ってもいだろう。

だが、仕方が無いのだ。

 

「提督、下手な嘘は止めて下さい。元帥からの伝令で新任の提督が貴方で決定してる事は分かってますよ」

 

嗚呼・・・ヤバい、本気(ガチ)でヤバい。霧島姉には気付かれてるのか?

 

「それはホントーデスか?!じゃあ提督とお別れしなくて良いんデスネ!」

 

新しい玩具を与えられた子供の様な無邪気な反応を示した瞬間、腕の力が少し緩み俺はその隙を見逃さなかった。

 

隙あり!しゃがんで金剛姉の拘束を抜け出す。

悲鳴を上げる身体に鞭を打ちドアと反対の窓に向かい走り出す。運良く窓は空いていた。

 

奇声を上げながらA.スペースの力を借り飛び出す。

 

「俺は提督を辞めるぞ!ジ○ジ○ォォォオオオ!!」

 

だが、奮闘虚しく窓淵に足を引っ掛け盛大に転んでしまった。




stand name:アローズ・インハー(A.インハー)
stand master:猿渡芳一(元帥)
stand spec
パワーA
スピードA
射程距離D
持続力B
精密動作性B
成長性E
全身に矢印があしらわれた近距離パワー型の人型スタンド。
少し先の未来を見る(正確には数秒後に物が動く方向を矢印で知る事が出来る)能力と触れた物を任意の方向に飛ばす(動かす)能力。

名前の由来
洋楽 Arrows in her より

https://youtu.be/E6mBqvLJhKU

やっと本格的に艦娘が登場しました。
あと、元帥は能督が執務室に入る前に握手しています。
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