武人勇者の戦闘記 ~最強殺人剣の継承者、勇者に選ばれたので、異世界で死合を謳歌する~   作:カゲムチャ(虎馬チキン)

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「あのー……そろそろいいですか?」

 

 私の高ぶりがようやく沈静化されてきた頃、何故か怯えたような顔をしたナナが、おずおずと話しかけてきた。

 まるで狂人でも見るかのような視線を向けてくる。

 顔は真っ青だ。

 私は心底不思議な気持ちになった。

 

「何故、そんなに怯えているのだ?」

「いや、そりゃ怯えもしますよ! 自覚ないみたいだから言いますけど、さっきまでのリュウマさんは完全に危ない人でしたからね!?

 返り血を浴びて高笑いとか、どこの世紀末覇王ですか!?

 完全に悪役の姿でしたよアレは!

 わかったら、今後こういう事はやめてください!」

「ぬ……承知した。すまなかった」

 

 私は素直に頭を下げた。

 これは言い返せぬ。

 本当に見苦しいところを見せた。

 感情の制御ができなくなるなど、武人として未熟な証。

 恥ずべき事だ。

 いくら積年の望みが叶ったとはいえ、ああまで感情を剥き出しにしてしまうなど……先程までの私はどうかしていたな。

 こんな軟弱な精神では、せっかく本質へと至った剣技が泣いてしまう。

 以後、くれぐれも気をつけるとしよう。

 

「わかってくれたならいいです。では、さっきの説明の続きに戻りますけど、いいですか?」

「ああ」

 

 さっきまで膝をガクガクさせていた幼い少女が、それでも尚、己の責務を全うすると言っているのだ。

 口を挟む事などない。

 私は話を聞くべく、抜いた刀を鞘に納め

 

 バキン

 

 ようとした瞬間、不吉な音が鳴り響いた。

 まさかと思い手元を見れば、そこには案の定、ボロボロにひび割れ中程から折れてしまった刀があった。

 こ、これは……!?

 

「な、なんという事だ……!」

「あー、やっぱり初期装備のナマクラじゃ今の戦いには耐えきれませんでしたか。当たり前と言えば当たり前ですね、って、リュウマさん?

 なんで、膝をついて項垂れてるんですか?」

「お、おぉ……!」

 

 武器が折れるのは、使い手の腕が未熟な証。

 それも、新品の刀をたったの一戦で折ってしまうとは!

 いや、刀が折れた事は百歩譲ってまだ許せる。

 あれだけの強度の物体を斬り付けたのだから、当然と言えば当然の事。

 だが、折れる寸前までその事に気づかぬとは、なんたる不覚!

 戦いに熱中するあまり、武器の状態にまで気が回らなかった。

 もしも、刀が戦闘中に折れていれば、死んでいたのは私の方だったかもしれぬというのに。

 

 なんという失態。

 なんという生き恥。

 せっかくの技が泣いている。

 この技を継承してきたご先祖様に顔向けできぬ。

 かくなる上は……

 

「腹を切って詫びるしかあるまい」

「なんで!?」

 

 私は折れた刀を鞘へと納めて腰から外し、胴着を脱ぎ、折れて地面に落ちた刀の切っ先を握り締めた。

 いざ。

 

「ふんっ!」

「ホントにやった!?」

 

 私は、一切の躊躇なく刃を腹へと突き立てた。

 だが、ここで予想外の事が起こる。

 腹へと突き立てた刃が、なんと再びバキンという音を立てて砕け散ったのだ。

 しかも、私の体に付いたのは、ほんの掠り傷程度。

 その傷も一秒としない内に綺麗さっぱり消え去った。

 

「こ、これは……!?」

 

 まるで、鋼に刃を突き立てたかのような感触がした。

 いくら既にボロボロの刃による切腹だったとはいえ、いくらなんでも、これはおかしい。

 どうなっている?

 

「リュウマさん! 突然奇行に走らないでください! というか、これはもう奇行じゃなくて狂行ですよ! いきなりのハラキリとか頭おかしいんじゃないですか!? いえ、疑問系で言う事ではありませんね。訂正します。あなた頭おかしいですよ!」

 

 ナナが何やら喚いている。

 だが、私はそれどころではない。

 たった今、我が身に怪奇現象が起こっているのだ。

 ますは説明が欲しい。

 切実に。

 

「ナナ、これはいったい……」

「私の話を聞いてるんですか!? ……と言いたいところですけど、凄く凄く言いたいところですけど、今は我慢して説明を優先してあげます。私に感謝してください」

 

 そうして、ナナはぷんすかと怒りながらも説明を始めてくれた。

 ありがたい。

 

「あなたの体が刃を弾いた理由ですが……言うより見せた方が早そうですね。とりあえず、もう一度ステータスを開いてください」

「わかった。ステータス」

 

 ナナに言われた通り、もう一度ステータスという言葉を口に出した。

 今度は言われた通り、普通の声量でだ。

 そして、私の前に再びあの半透明の板が現れる。

 だが、先程とは書かれた数値が違っていた。

 

ーーー

 

 異世界人 Lv36

 名前 シジョウイン・リュウマ

 

 HP 3680/3680

 MP 155/155

 SP 4322/4322

 

 攻撃 3250

 防御 3011

 魔力 88

 魔耐 2033

 速度 3244

 

 スキル

 

 『超回復:Lv5』『成長補正:Lv━━』『鑑定:Lv極』『アイテムボックス:Lv5』

 

 スキルポイント 400

 

ーーー

 

「随分と数値が高くなっているな」

「そうですね……わたしも、ちょっとこの数値は予想外です。いくら勇者は『成長補正』のおかげで強くなりやすいと言ってもこれは……ま、まあ、それはいいとして。

 とにかく、これがあなたの疑問の答えですよ。わかりましたか?」

「ああ、理解できた」

 

 恐らくだが、防御のステータスが上がった事によって、私の身体はまるで鋼のような頑強さとなり、刃を弾いたのだろう。

 それを確かめるべく、地面を思いっきり殴り付けてみた。

 結果、地面は凹み、オーガ程の規模ではないが地面にクレーターを作り出す事に成功した。

 攻撃のステータスが上がった結果だろう。

 本当に、ステータスが身体能力に直結するのだな。

 鍛練もなしに、人の限界を超越した力が手に入ってしまうなど、未だに信じられん。

 だが、紛れもない現実だ。

 受け入れる他あるまい。 

 

「……理解力はあるんですよね、この人。ただ、致命的にものを知らなすぎるだけで」

 

 何やら、ナナがボソッと呟いたような気がしたが、私の耳には入らなかった。

 

「さて、では気を取り直して、説明の続きに戻りますよ!

 次はスキルポイントの使い方と、できれば取得しておいた方がいいおすすめスキルについてです」

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