SW2020 スペリオルウィッチーズ   作:グリーンベル

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ここ数話投稿が遅れに遅れてばかりで申し訳ありません
学校も始まるし頑張って早く書けるようにならんと……


第13話 ラッキー・デイ

『──えー、只今!趙国家主席の姿を確認いたしました!手を振りながらタラップを降りています!扶桑海上空で謎の武装勢力から攻撃を受けたとの情報でしたが、無事に、ここ羽田空港に到着です!』

男性リポーターの興奮気味なリポートとともに、笑顔で政府専用機から出てきた国家主席にズームアップした映像がテレビに流れる。

『今、佐藤外務大臣と握手を交わしています!趙主席は二年ぶり、三度目の来扶ですが、今回の来扶は清空軍と国防空軍の戦闘機隊に両国のウィッチ部隊も加えた、過去最大規模の護衛体制だったとされています。今は、政府関係者と言葉を交わし、挨拶を……あっ、今、国防空軍のウィッチとも握手をしています!何か話しているようですが、上機嫌な様子にも見えますね』

テレビの中では、歓迎の列の最後に並んでいた201部隊の面々と握手をし、その中でも一番端にいた游隼と何事か会話している国家主席が映し出されていた。

『えー、この後国家主席は、只今乗り込んだ専用車で厳戒態勢がしかれた都内を走っていきます──』

「いやはや、まさか列に並ばされて、握手までされるとは。降りてすぐ行かなきゃいけなかったから、結構焦ったよね」

「本当ね。もっと早く言ってくれれば良いのに、到着直前になって言うんだから。こっちも心の準備ってものが必要なのに」

テレビから向き直り、ジャニスとフラムが言う。

趙主席が羽田空港に到着した2日後の朝、千歳基地の食堂にて。朝食を終えた部隊の全員が、到着した日のニュース番組の中継映像を見ていた。

「でも、良かったじゃないですか。お礼の言葉も直接言ってもらえましたし、游隼さんはもう一言二言何か話されていましたし、それに……」

「全国放送にも映れたし?」

テレビを見ながら笑みを浮かべるレイにアナが言う。返事の代わりに、頷きを返すレイ。

「ところで、李大尉は趙主席とどんなお話をされていたのですか?そろそろ落ち着かれたでしょう」

5人が座っていたソファーとは別に椅子に座っていたカニンガムが、ジャニスの横にいた游隼に聞く。

「えっ!?あー、えーっと」

カニンガムに言われ、かじりつくようにテレビを見ていた游隼が驚いて振り返る。

実は、カニンガム以外の4人もこれ以前に同じ質問をしていた。しかし当日も次の日も、あまりのショックに游隼が自我を失ったように呆然としていたため、聞き出すことは出来ていなかった。

「なんせ、直接的に守ったのは游隼さんですからね。まさか、愛の言葉ですか!?」

「国家主席といちウィッチの間に芽生え始める恋!」

「はいはい、静かに。で、李大尉、どんな話をしたの?」

茶化す2人をあしらい、フラムが聞く。

「えっと……興奮しちゃってあんまり覚えてないんだけど、最初に『我々を守ってくれてありがとう』、って」

「それは私達も言われた。でも、もう少し何か言ってたよね」

「うん。それで次に『君は我々の命の恩人だ』って言われたから、それは皆も同じですって答えたんだ」

「カッコいい〜」

口笛を吹き、ジャニスが言う。それに照れながらも、続ける游隼。

「えへへ……そしたら、ニコってして『今後の活躍に期待しておくよ。特に、君のね』って……きゃー!」

言い終わると同時に、頭を抱えてじたばたと暴れる游隼。その普段とかけ離れた様子を、フラムとアナが若干引き気味に見ていた。

すると、食堂の壁に備え付けられていた電話が鳴り響く。電話に出ようとカニンガムが立つが、先にソファーから立ったジャニスが小走りで電話に向かった。

「私が行くよ……はーい、もしもーし」

『もしもし。その声から察するに、おそらく君はボイド中尉かな。合っているかい?』

受話器から聞こえてきた男性の声に、ジャニスが声を低くして答える。

「その通りですけど、どちら様?基地の関係者って訳じゃなさそうな気がする」

『ふむ。数日前に、同じ声を聞いた覚えはないだろうか』

「うーん、と。そんな、とっても偉いような人の声を聞いたことがあったっけ。忘れちゃったや」

電話の向こうで、男性がはっはっはと笑う。

『いや、君もなかなか面白い。今は何をしていた所だったかな?』

「朝ごはん食べてから、おたくと私達が握手してるニュースを見てたとこ。全く、とんだサプライズだったよ。皆喜んでたけどさ」

『喜んでもらえたのなら幸いなんだがね。それに、まだサプライズは残っている。1、2日でそちらに届くはずだ』

「ふぅん?清の銘菓でも送ってくれたのかな」

『その様な安い物ではないよ、私でも用意するのにそれなりの手間がかかるような物さ……む、そろそろ時間かな』

「もう切っちゃうの?游隼に変わってあげようと思ったのに……いや、別にいいかも」

ジャニスがちらりと振り返ると、游隼は変わらずバタバタと身悶えしていた。

『自分からかけておいて申し訳無いが、これでも案外多忙な身でね』

「ジャニス、誰からの電話?」

長く話しすぎたためか、ジャニスの背後から近づいてきたアナが声をかけてきた。

「あのー、仲いい……おじさんから」

「……スマホ使いなよ」

正論を述べてふい、と去っていくアナを見て、安堵のため息をつくジャニス。

「もしもし」

再び受話器に耳を当てると、電話越しで苦笑しているような声がした。

『せめて男の人、とかにしてくれないかな』

「でも主席、40歳くらいでしょ?私にとって四十路はおじさんだよ」

『……まあ、おじさんでもいいさ。ではまたいつか』

「さよなら〜……っと、さて。(国家主席ともあろう人が、用意に手間がかかる物ってなんだろ?)」

受話器を置き、テレビの方向に戻りながら考えるジャニス。

ふと、カニンガムの横を通ったあたりで足を止め、ひそひそ声で聞く。

「……ねーカニンガム、今日ってどっかから輸送が来る予定ある?」

(急なのもあろうが)予想外の質問だったのか、数ミリほど目を見開いてからカニンガムが手元のタブレットを操作し、言う。

「中尉がそんな事を気にされるとは、珍しいですね……1600時頃に、清からの輸送機が到着する予定になっていますが」

「へー。積荷は?」

「李大尉のJ-16Hの整備部品となっていますが。何か気になる点でもありましたか」

「いや、別に。近々他に輸送が来る予定は無いの?」

「そうですね……私たちのためのものではありませんが、来週の火曜日、インド空軍のストライカーが運ばれてくるようです。真意は図りかねますが、寒冷地試験がしたいとのことで」

カニンガムの言葉に、思い切り怪訝そうな表情を浮かべるジャニス。

「寒冷地試験!?まだ真夏だよ?インド空軍の人、何考えてるんだろ……」

「ですから真意は図りかねます、と。その程度でしょうか。スリャーノフ大尉がストライカーを壊した場合にはまた別ですが」

名を呼ばれたことで反応したアナに、気にしないで、と手を振るジャニス。

「1600ね、わかった。ありがとカニンガム」

「お気になさらず……続きは見ていかれないんですか?」

「もう満足したからね〜」

録画した映像を見てあーだこーだと話をする游隼らを置いて、ジャニスは一足先に部屋へと戻った。

 

 

 

 

「んー?」

その日の夕方、ジャニスが格納庫へと赴くと、既にそこには先約がいた。しかも、3人も。

「これまた、揃いも揃ってどうしたのみんな」

自然を装って歩み寄ってきたジャニスに、ストライカーが並んでいる段差に腰掛けていたフラムが振り返る。

「やっぱり来たわね」

「やっぱりって?」

ジャニスが首を傾げると、フラムの横で立っていたカニンガムが口を開いた。

「朝の件です。中尉が私に輸送機の予定を聞くことなどまずなかったので、妙に思いまして。念の為、お嬢様に報告をさせていただきました」

「いーよいーよ。別にやましいことじゃないし」

頭を下げるカニンガムに、笑顔で手を振るジャニス。

「じゃあ、説明してほしいな」

「それもいーよ。でも、もうちょっと待ってくれない?そろそろ輸送機が来るだろうし、積み荷を確認してからにしたいんだ」

「……いいよ」

天井、というより上方向を指して言うジャニスに、アナが頷く。ゴオオォォン……という大型ジェットエンジンの音が徐々に大きさを増し、4人だけが居る格納庫の頭上を飛び去っていく。

「見に行こうよ!」

ジャニスが真っ先に走り出し、3人もそれを追って格納庫から出る。

「大きいねぇー」

「C-17と同じくらい?いや、少し小さい?」

「いつもと同じ物を運んでないのは確かでしょうね」

轟音の主である輸送機が着陸し、後部ハッチが重々しく開く。

「戦車でも降りてきそうな雰囲気ね……」

フラムが言うと、ハッチからストライカーの駐機台を積んだ小型トラックが降り、4人のいる格納庫の方向へと向かってきた。

「マチルダ・カニンガム大尉ですね?受領のサインをお願いします」

黒い制服を着た運転手がトラックを格納庫内に停めて降り、書類の挟まったクリップボードをカニンガムに渡す。

「……どうぞ」

胸ポケットからペンを取り出し、さらさらと書類に記入して返すカニンガム。

「確かにいただきました。おい!」

受け取った男性が合図し、トラックに乗っていた他の数人とともにストライカーの駐機台を下ろす。

「では、我々はこれで」

「おつかれさまでしたー」

トラックに乗って輸送機へと戻っていく隊員に、ひらひれと手を振るジャニス。トラックを収容した輸送機はすぐにエンジンを始動させ、離陸していった。  

「……あれだけ大きい輸送機で来て、置いていったのはストライカー一対だけとはね。拍子抜けというかなんというか」

「何が来たのか不明瞭にさせるのが目的なのでしょう……それだけ、この機が特異である証拠ですね」

格納庫内へと戻りながらフラムが話し、カニンガムが駐機台を指さす。

「うーん……西側じゃ見たことないタイプのストライカーだね、これ。アナはどう思う?」

「私も見たことがない。清の最新鋭機だと思うけど、でもなんでそれがここに?」

顎に手を当てて考える、ジャニスとアナ。そのジャニスの背中をぽんと叩き、フラムが言う。

「その理由をあなたが知ってるんでしょ、ボイド。勿体ぶらないでさっさと説明「戻りましたー!」」

フラムの言葉に重なるように、哨戒任務から帰ってきたレイの声が格納庫内に響く。

「あれ?なんでみんな居るの?」

同じく哨戒任務から帰ってきた游隼が驚いたように言い、ジャニスが指をパチンと打ち鳴らす。

「2人とも、ナイスタイミング!手間が省けたよ」

「なんか、すごく大きい輸送機が来てませんでした?なんですかあれ!それに、このストライカーも!」

「あれってうち()のY-20だよね。これを運んできたの?何このストライカー!何か知ってるの、ジャニス!」

「まあまあ、落ち着いて2人とも。今説明するから」

手早くストライカーを脱ぎ、興奮気味にジャニスに詰め寄る2人。それを手で制し、ごほん、と咳払いをしてから話し出す。

「なんと、このストライカーは!」

5人がジャニスの言葉に耳を傾け、静まる。

「……今回の我々の活躍、特に游隼のを評価していただいた趙国家主席からの贈り物です!」

ジャニスが言い切ると、フラム、アナ、レイ、游隼が、おおおお、という歓声を上げる。

「本当に度量の大きい方だこと……」

「事前通告くらいしてくれてもいいと思うけどね」

「すごいじゃないですか、游隼さん!」

「う、うん……!」

まだ現実を受け入れられてないのか、レイに若干呆けたように返す游隼。

「先程受領した際の書類で確認しましたが、機体名称は『J-20』のようです。ご存知ないですか、李大尉」

「知ってる!でも、ストライカーは、最近完成したとかしないとかって話のはずなのに……」

カニンガムの説明を聞き、口に手当てながら游隼が言う。

「用意するのにそれなりの手間がかかった、って言ってたし、無理言って持ってきて貰ったんじゃない?」

ジャニスが肩を組みながら言うと、游隼の目から涙が溢れ、ぽろぽろと涙の粒が落ち始めた。慌ててジャニスがハンカチを差し出す。

「わ、ちょ、ちょっと、どうしたの游隼!」

「あ、あれ?おかしいな……嬉しすぎて、泣けてきちゃった……」

泣き笑いを浮かべながら震えた声で言い、渡されたハンカチで目元を拭う游隼。

「ま、まあとにかく。少しそのストライカーで飛んで見たら?」

「それがいいと思う」

「そうですね!きっと、すごくいい性能ですよ!」

すかさずフラムとアナがフォローにまわり、レイもそれに賛同する。

「ありがとう……うん、それじゃ、ちょっと使ってみようかな」

「ちょーっと待った!」

游隼が笑顔で頷き、ストライカーの方へと歩き出したのを、ジャニスが声で止める。

「な、なに?」

「このストライカー……いや、J-20。游隼のために贈られてきたものであることは間違いないし、これから游隼の専用機になる訳だよね」

「当然でしょ」

「そう!」

ジャニスが勢いよくフラムの方に向き直る。

「游隼はずっとこのストライカーを使うし、自分に合ったカスタマイズをする。だったら、まだ誰の色にも染まってない今のうちに、どんなものかと試してみてもいいんじゃないかと思うのさ、私は」

「まあ、一理あると言えなくもないけど」

「……それは、確かにそうかもね」

身振り手振りを交えながらのジャニスの語りに、フラムも游隼本人も納得させられたようにつぶやく。

「いい機会だし、みんなで何回かストライカーをシャッフルしてみない?そのストライカーの原点はわからないと思うけど、こんなのを使ってるんだ、ってのはわかるじゃん。それに、私もJ-20使いたいし!」

「私は賛成。前から少し、F-15Fを使ってみたかったんだ」

ジャニスの提案にアナが組んだ手を挙げ、残ったカニンガムに視線が集まる。

「一度の飛行が数分であれば構いませんよ」

「よし!じゃあ早速、公平にじゃんけんで選ぶ順番を決めるとしようか!」

カニンガムの許可を得てガッツポーズをし、全員に呼びかけるジャニス。そして突き出された4つの拳を見て、唯一拳を出していなかったカニンガムに聞く。

「カニンガムもやらないの?」

「私は……では、参加しますか。私よりも先に負けた方にはE-767の使い心地も確かめてもらうとしましょう」

珍しくいたずらっぽい微笑みを浮かべ、カニンガムも拳を突き出す。

「じゃあいくよ!じゃーんけーん!」

ジャニスの音頭に合わせて全員が拳を振り上げ、同じタイミングで振り下ろす。

1人を覗いて、手がその形を変えることなく出される。それは、唯一手を大きく開いた人物が一人で勝ったことを意味していた。

「やっ……たー!!」

手を開いていた人物──游隼が飛び跳ねるようにしながら歓喜の声を上げ、びしりと指差した。

「私が使うのは、これ!」

目の前にあった、J-20を。




次回、なんと201部隊に待望(?)の新入隊員が……!?
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