SW2020 スペリオルウィッチーズ   作:グリーンベル

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タイトルが思いつかなかったので有識者に聞いた結果こうなりました
(すでに目にした方は混乱されてしまうかもしれませんが、タイトルを変更しました)


第14話 新たな仲間

「〜♪」

上機嫌な様子で、鼻歌交じりに片手でキャリーバッグを引く少女。

『──AFAより、ご登場時刻とご案内順についてお知らせいたします。東京、羽田空港行き、9時ちょうど発、522便の飛行機へのご案内は──』

頭上でアナウンスが鳴る中、行き交う人々の間できょろきょろと左右を見回し、感嘆の溜め息をつく少女。

「やっぱり扶桑は凄い……あ、あのラーメン美味しそう」

大写しでラーメンが描かれた看板にすたすたと近寄る少女。そのまま入り口に歩くが、自動ドアは反応せず、店内に入ることはできなかった。

「開くのは9時からか。あれ、何時のバスに乗るんだったかな。うーんと……ま、多少だったら遅れても許してくれるよね」

額に手を当て、記憶を辿りながら唸る少女。が、すぐに手を下ろし、あっけらかんと言う。

「そうと決まれば、開くまで待とう……ん〜♪」

椅子に腰掛け、再び鼻歌交じりにスマートフォンを操作する少女。その数分後、本来彼女が乗る予定だったバスは、無事に新千歳空港を出発していた。

 

 

 

 

J-20が千歳基地に贈られてから1週間と2日後。当初は寒冷地試験のためにストライカーとウィッチが千歳基地に来るという名目だったのだが、来る当日になってからインド空軍から、より詳しい説明が201部隊に届いていた。

「……約4ヶ月間当基地に駐在して我々と一緒に戦闘に参加することで、より実戦的なデータを収集しつつ、寒冷地での試験も行うのが本来の目的だということです」

「参加するのは構わないけど、ちゃんと戦力になってくれるのかしら」

カニンガムの報告を受け、腕組みをして聞いていたフラムが言う。

「来るのは実験部隊の人なんでしょ?ストライカーはともかくとして、実力はちょっと心配だよね」

「その点に関してはインド空軍のお墨付きです。詳細は不明ですが、強力な固有魔法を持っているとか」

ジャニスへのカニンガムの返答に、5人が、おーと声を上げる。

ウィッチの中には、固有魔法と呼ばれる特殊な能力を持つ者が極めて稀に存在する。電撃を発せられる者や、ネウロイのコアを透視できる者、速度を飛躍的に増加させられる者、傷を癒やすことができる者と、そのどれもが強力無比であり、世の理をも超越した能力である。

が、第二次ネウロイ大戦時よりもウィッチの絶対数が減った現代において、更にその希少性は増していた。それが、通常かなりの練度が無い限りは入隊もできない統合戦闘飛行隊に、並程度の練度のレイがいる理由である。

「なんでそんな人が実験部隊にいるんだろ……私達みたいに他の国で戦わないのかな」

「会ったら聞いてみましょう!」

首を傾げる游隼にレイが賛同するが、その肩をアナが軽く叩く。

「デリケートな話かもしれないし、すぐに聞くのはやめておいた方がいいと思うよ」

「確かに、そうかもしれませんね……」

アナの冷静な忠告に、しゅんとするレイ。

「とにかく、来るのを待つわよ。何時くらいに着く予定だったかしら?」

「8時半には新千歳空港に着いているそうなので……遅く見積もってあと10分ほどでしょうか」

ちらりとカニンガムが腕時計を見て言う。現時刻は8時55分。新千歳空港からは千歳基地付近へのバスが出ており、それに乗れば30分程度で千歳基地へと着くことができる。

「わかったわ。じゃあ皆、それまでに自分の部屋を片付けておきなさい。みっともない所を見せたくなかったらね!」

と、フラムが全員に向けて意気込んだのはいいものの。

それから1時間ほど待っても、インドからのウィッチは現れずにいた。

「……全然来ないね」

「来ませんねー。もう10時になっちゃいますよ」

基地の入り口の前で仁王立ちし、来訪を待っていたジャニスとレイが言う。

「本当に来るのかな……ん、なんか来た」

「輸送機でしょうか?」

すると、J-20が運ばれてきた時と同じように大型エンジンの轟音が響き、滑走路方向へと進んでいった。

「ストライカーを運んできたのかな。ウィッチが先に来るっていう話だったのに、あべこべだよ」

「見に行きましょうよ!実験機、気になりません?」

「そうだね。行こっか!」

顔を見合わせて頷き、廊下を走るジャニスとレイ。その数十秒後、扉が開けられた。

格納庫には、やはり2人以外の全員が集まっていた。

「その様子だと、まだ来てないみたいだね」

「まあね。それが例の実験機?」

ジャニスが、集まっている4人の中心にあった駐機台を指しながら言う。その質問に、首肯を返すカニンガム。

「はい。インド空軍が開発中の軽航空戦闘ストライカー、テジャスです」

駐機台に近づき、ストライカーをためつすがめつするレイとジャニス。

エンジンが単発な上に寸も短く、レイのF-15FやアナのSu-35に比べて一回りほっそりとした形状。フラムのラファールと似ているが少し異なる三角形の主翼。

「へー、なんだかちっちゃいですね。こういうストライカーって誰か使ったことありますか?」

レイの問いに、游隼とジャニスが順番に答える。

「軍が輸出用に開発したのを、少し使わせてもらったよ。あんまり慣れなかったけど」

「私は練習機がこんな感じだったね。小回りが利いていい機体だったなー……」

目を閉じて頷きながら、思い出深そうに語るジャニス。ふと目を開き、横にいたアナの方を向く。

「アナは?」

「私は基本的に大型の双発機しか使ったことがない。練習機も双発だったし、先週ジャニスのF-35を使ったのが初めて」

「へぇ、だから少し手間取ってたのね。でも、初めてにしてはあれだけ飛べれば十分じゃないかしら?」

フラムが少し驚いたように言う。

201部隊の面々は先週のJ-20が来た日、ジャニスの提案によって、それぞれのストライカーを交換して飛行するという、一種の遊びに興じていた。

そこでアナは意外にもF-35とラファールの操作に苦戦し、慣れてからは見事な機動を披露したのだが、使い始めて数分間は空を右往左往していたのだった。

「……まあ、私はスヴォリノフ社のストライカーさえ使っていればいいから」

「ふうん。ま、それは置いておいて。例のウィッチが来る前にさ、ちょっと使ってみない?このストライカー」

「そんなの、ダメに決まってるでしょ!」

悪そうな笑顔を浮かべて言うジャニスを、フラムが焦って制止する。

「実験機なんだから、余計なことしてデータが正確に取れなかったらどうするのよ!」

「大丈夫だって。そんな時のために予備のパーツも持ってきてるんだし」

「やめなさいって言ってるじゃない!」

悪びれる様子もなくストライカーを履こうとするジャニスの腕を掴み、ぐいぐいと引っ張るフラム。が、体格差もあってジャニスがずるずると駐機台に近づく。

「……誰か、手伝いなさいよ!」

「いいですよ、使っても」

6人の背後から、高すぎない落ち着いた声がかけられる。初めて聞く声にジャニスとフラム以外が振り返り、あっと息を呑んだ。

「ほら、いいって言ってるよ!」

「ダメ!……誰よ、そんなこと言ったのは!」

未だ止まらないジャニスの腕を引っ張りながら、顔だけを背後に振り向かせるフラム。そして、声の主と思しき人物を確認し、手をぱっと離した。

「うわわっ……と。どしたのさフラム、急に離すなんて……って」

突然腕を離されたことにより、つんのめるように駐機台の前に落ちそうになったジャニスが、フラムにそう言って振り向く。そして、そこにいた人物を目にした。

「どうかしましたか?私は構いませんよ、テジャスをお使いになられても」

小麦色の肌と眠たげな焦げ茶色の瞳に、赤毛のショートヘア。半袖のワイシャツの上に水色のベストを着、襟には青いリボン、更には黒いベルト履きという独特な出で立ち。

話の内容と、明らかに整備兵ではない服装から、全員がこの少女がインドから来たウィッチだと確信していた。

「……あなたが、今日来る予定のウィッチ?」

フラムが聞くと、少女は首を傾げる。

はい(ハーン)。予定の10時には少し遅れてしまいましたが、大目に見て頂けると嬉しいです」

「「「「「「10時?」」」」」」

少女の言葉に、今度は全員が首を傾げた。

「?」

 

 

 

 

「なるほど、来るのは9時でしたか。空港にすごく美味しそうなラーメン屋さんがあったので、つい寄ってしまいました。すいません」

6人に深々と頭を下げるウィッチ。

現在は場所をミーティングルームに移し、ウィッチと自己紹介をし合う時間だった。

「いえ、何かトラブルに巻き込まれたのかと心配していましたが、無事なようで我々にとっては何よりです……事情も把握できましたし、この件についての話はこれぐらいにしましょう」

フラムの横に座っていたカニンガムが話を切り上げると、さらにその後ろにいたレイが立ち上がって言う。

「じゃあ早速、自己紹介をお願いします!」

「はい……インド空軍中尉、フィーニクス・クベーラ・プラカーシュです。12月までの間ということですが、これからよろしくお願いします」

そう言って合掌してお辞儀をし、柔らかな笑顔を浮かべて座るフィーニクスを拍手が包む。

「じゃあ、次は私達の番ですね!私は扶桑出身の、栂井レイ少尉です!えーっと、なんと呼べばいいでしょうか、フィーニクスさん?」

「フィーネ、と呼んで下さい、ツガイ少尉。自分の名ながら、フィーニクス(不死鳥)という名は、あまり、好きではないので」

勢いよくまくし立てるレイに、苦笑気味の笑顔で答えるフィーネ。その笑顔に悲しさのようなものを感じつつも、元気に言うレイ。

「はい、フィーネさん!じゃあ、私もレイって呼んでください」

「ありがとうございます、レイ」

「……次は私かな。私はジャニス・ボイト。リベリオン出身の中尉だよ。ジャニスって呼んでね、フィーネ」

立ち上がり、頭を掻きながら言うジャニス。それに「はい、ジャニス」と答えるフィーネ。

「ところでさ、失礼だとは思うんだけど……フィーネの固有魔法って、どんななの?強力だって聞いてるんだけど、ちょっと教えてくれない?」

一瞬きょとんとした表情を浮かべたフィーネだったが、すぐに笑みを取り戻す。が、それは先程までの柔和なものに比べ、どこか鋭さを含んでいるようだった。

「私はそこまで強いとは思っていませんが……いいですよ。これはあくまで便宜的に付けられた名称なのですが、私の固有魔法は、『時空流制御』です」

「時空流制御?」

今まで聞き及んだことがない名の固有魔法への6人の驚きを代表するように、ジャニスが復唱する。

「はい。ですが、この場で使うにはあまり適していませんし、発動は別の機会にさせてください」

残念そうに笑うフィーネに、珍しく呆気にとられたようにジャニスが言う。

「い、いいけど……」

「ありがとうございます。さて、次はどなたでしょうか」

にこりと笑い、眠たげな瞳のままフィーネが言った。




というわけで新キャラのフィーネちゃんです
フラムに「今日来る予定?」と聞かれた時に首を傾げているのは、インドでは肯定する時に首を傾げるからだそうです
テジャスストライカーは現実のものの5割増しくらいのスペックなので、他のストライカーとのパワーバランスもそれくらいを目安に考えていただければちょうどいいかと思います

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