SW2020 スペリオルウィッチーズ   作:グリーンベル

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かなり初期の前書きか後書きで書いていたと思いますが、これからは1週間か2週間に一話ペースで投稿させていただきます
理由は、学校が通常授業に戻るために執筆の時間の確保が難しいだろうと判断したからです
投稿する際の時間帯は変わらないので、毎週月曜日の午前0時に来ていただけると嬉しいです


第15話 ガンジスの流れの如く

「ねぇ、フィーネ中尉」

フィーネが千歳基地に来てから5日が経過した、日曜日の昼。游隼お手製の清料理に舌鼓を打ち、幸せそうな表情で座っていたフィーネに、フラムが話しかける。

「なんですか、フラム」

「そろそろ、あなたの固有魔法を私達に見せてくれないかしら。名前だけじゃ、いざという時の戦力になるかわからないもの」

フラムの言葉に、同じく食堂にいた5人が聞き耳を立てる。自己紹介の時に「発動は別の機会に」と断られたために、鳴り物入りで伝わっていたフィーネの固有魔法について、名前しか聞けていなかったからだ。

しかも、この5日間にこれといった出撃は無く、見たことも聞いたこともない魔法に想像を膨らませることしか出来なかったので、全員がその能力の真実を知りたがるのは当然と言えよう。

フラムは、影ながら5人の意思の代弁をしたというわけだった。

「なるほど……確かに、フラムの言う通りですね。流石は戦闘隊長です。私も勿体ぶり過ぎました」

反省です、とフィーネ。その反応に、フラムは胸を撫で下ろした。もし断られるようならば、余程のことがない限りはその能力について知ることが出来ないと踏んでいたからだ。

「では、早速実践してみましょう……と言いたいところですが、如何せんここでは狭すぎますね」

食堂をぐるりと見回しながらフィーネが言う。

自己紹介のときもそうだったが、この「室内での使用にはあまり適していない」と言わんばかりのフィーネの反応も、全員がその固有魔法の正体が突き詰められない原因の一つだった。

「外に行きましょうか……あっ、と。どなたか、拳銃をお持ちですか?どんな物でも構いません」

立ち上がったフィーネが6人に聞く。その質問にジャニスがジャケットの内側を漁り、うわ、と声を漏らす。

「今部屋にあるんだった……取って来る!」

愛用のM1911を取りに戻ろうと走りかけたジャニスの顔の前に手を出し、静止させるカニンガム。

「ボイド中尉、お待ちを。これでいいでしょうか?」

そして、片手を制服の内に入れ、すらりとある物を取り出した。黒ぐろとしたM1911よりも小ぶりな拳銃の、グロック19を。

それを見て、フィーネが頷く。

「構いませんよ。では、いい場所を探しますか」

そう言って、鼻歌交じりに歩き出すフィーネ。その後ろを、期待感を溢れさせた6人が無言で着いて行った。

 

 

 

「……お手数をかけましたね、カニンガムさん」

格納庫の裏手から進んだところにある草地で、フィーネが言う。食堂を出て少ししてからフィーネに耳打ちされて別れたカニンガムが、遅れて到着したタイミングだった。

「ええ。拳銃とはいえ、短時間で発砲の許可を得るのにはそれなりに骨が折れました。次からは事前に知らせておいて下さい」

額にうっすらと汗を滲ませたカニンガムが言い、フィーネもそれに対してぺこりと頭を下げる。

「申し訳ありません。ですが、わかりやすいかと思いまして」

「じゃあ早速披露してもらいましょうか。その、わかりやすいやり方でさ」

しびれを切らしたようにジャニスが言い、フィーネもそれに答えるように微笑みを浮かべる。

「先に説明をさせてください。先日述べた私の固有魔法──便宜的に『時空流制御』と呼ばれているものは、その名の通り、時間の流れを操るものです。効果を発揮できるのは私の体の周りのごく狭い範囲……皮膚に直接触れているくらいですね」

フィーネの説明を、固唾をのんで聞く6人。ふわりと風が吹き、フィーネの赤毛を揺らす。

「私の固有魔法は、簡単に言うと『私だけの時間を加速させる能力』です。だから、漫画やアニメのように時間を『止める』ことはできません。似たようなことなら出来ますけどね」

「……例えば?加速だけなら私も出来る」

平然と発された異様な内容に、思わずという風にアナが聞く。それを受け、カニンガムに頷きかけるフィーネ。

「それを今から実演しましょう。カニンガムさん、私を撃ってください。私はその弾丸をキャッチします」

「どこか狙いますか?」

制服の内からグロックを取り出し、安全装置を外すカニンガム。横にいたフラムが一歩、二歩と後ずさり、アナやジャニスも距離を取る。

「外して回収するのも面倒ですし、末端部以外なら大丈夫ですよ」

「では……栂井少尉、いざという時は頼みます」

「は、はい!」

カニンガムに言われ、息を凝らして2人の様子を見ていたレイが慌てて反応する。

「いきますよ」

「どうぞ」

グロックを両手で保持したカニンガムが言い、フィーネがそれに答える。

片足に体重をかけた楽な姿勢に、緊張感が欠片もないような微笑みさえ浮かべた表情。フィーネの全身に一切余計な力が籠もっていないのは、誰の目から見ても明らかだった。

カニンガムの指が引き金にかかり、一拍置いてから引かれた。軽い破裂音とともに、9×19mmパラベラム弾がグロックから放たれ、空気を引き裂きながら真っ直ぐにフィーネの右肩へと直進する。

青いベストごと肩を貫こうとした弾丸は、猛烈な速度で動いたフィーネの左手によって、一切ベストに触れることもなく掴まれた。

そしてその動きは、しっかりと全身を注視していた6人全員が捉えられず、まるでフィーネの腕が瞬間移動したかのように各々の目に映っていた。

「はい、この通り」

何事もなかったかのように6人に近づき、左手を差し出して開くフィーネ。手のひらには、先端が僅かに潰れた弾丸が握られていた。

「…………すっ、ごい……」

「うっひゃー、ヤバいね」

「ど、どうやったの!?」

「見えなかった……」

「これは、想定外だわ」

「……まさかとは思いましたが」

目の前で繰り広げられた現実離れした光景に、口々に感想を漏らす6人。

拳銃の弾丸を受け止めること自体は、およそシールドを展開できるウィッチであれば誰でもできるだろう。ネウロイのレーザーよりも遥かに威力の低い拳銃弾など、10人から同時に放たれたとしても、防ぐことはウィッチにとっては苦ではない。

しかしそれは、予め撃つ場所を知らされ、先に展開していた場合に限る。いかに威力が低くとも、いかに防御力が高くとも、ウィッチがそれを捉えられなければ意味がない。

どんな名捕手でも、目で捕捉できない速度な上にどこに投げてくるかわからないボールは取れないだろう。しかし、フィーネはそれを成し遂げたのだ。

「ごほん……説明に戻りましょうか。『私だけの時間を加速させる』というよりも、『私の周りの時間だけを加速させる』というのが正しいでしょうか。アナさんの『加速』とは、自らのその周囲の空間を念動力によって動かし、増速させる魔法ですよね?」

「そう……過去にも、同じタイプの固有魔法の保持者は何人かいたみたい」

「つまり、周囲の時間の速さは変わっていません。でも私は、それを遅くさせられるんです。私が普通の人の倍の速さで動くのではなく、周囲の人が半分の速さで動く中で普通の速さで動くことができる、ということですね。だから、アナさんのもののように、周囲に影響を及ぼさせることはできません」

「うーん、よくわかりません……」

「確かにね……原理とか、どうしてそうなるのかってことはわかってるの?」

フィーネの説明に落ち込んだようにレイが言う。

「さっぱりわかりません。科学的な説明はまだ付けられていないんです。今言ったのも、私が発動できるようになった日から確かめてみて、わかっていることだけです」

游隼の質問に微笑みを浮かべたフィーネがあっけらかんと言い放ち、説明を聞いていた游隼が拍子抜けしたような顔になる。

「発動できるようになったきっかけとかはあるんですか?」

「初めてはっきりと発動できたと確信したのは、幼少の頃に交通事故に巻き込まれた時です。皆さん、タキサイキア現象という現象を知っていますか?危険な状態に陥った時に、周囲の光景がスローのように見える現象のことなんですが」

最初に現象の名前を聞いた時は全員が首を傾げていたが、具体例を出されたことによって理解できたようで、フラムと質問したレイ以外が頷いた。

「タキサイキア現象によって、私は自分が轢かれる様子がはっきりと確認できました。通常は確認できるだけなんですが、私はその凝縮された時間の中を、普段と何ら変わらない速度で移動できたんです」

「生命の危機に瀕して、固有魔法が開花する例ね……そう多くないけど、確かにそのパターンは存在するわ」

腕組みをしてフラムが言う。

「その時から、私は自分で自分の能力について調べました。幸い、インドはのんびりした国ですから、軍で私の魔法を詳しく調べようとする人はいませんでした。他の国なら別でしょうけど」

「まあ、空港でラーメンを食べるような真似はできなかっただろうね」

「その件も含めて、他言はしないでください」

アナの茶化しに、口に人差し指を当ててフィーネが言う。

「他にわかってることはないの?使用できる限界時間とか、再使用までの時間とか……」

ようやく本来の目的を思い出したのか、フラムが聞く。

「実は、加速度には倍率があるんです。通常の2倍とか、10倍とか、100倍とか。その倍率と秒数をかけて、180になる秒数しか活動できません。倍速なら90秒、10倍なら18秒という感じですね」

「十分すぎるわ……で、再使用まではどれくらいかかるの?」

「再使用までの時間は……」

効果の絶大さを知ったために、フィーネの返事により興味津々というように耳を傾ける6人。

「……1日です」

「「「「「「1日!?」」」」」」

全員が口を揃えて言い、その様子を見てフィーネが笑う。

「全身に負担がかかりますし、魔法力の消費も多いので。ガンジスの流れのように、ゆ〜っくりと魔法力を貯め直さないといけないんです」

「じゃあ、今日はもう使えないの?」

加速による対決でも望んでいたのか、がっかりしたような声色でアナが聞く。

「はい。たとえ2倍で1分半動いても、100倍で1.8秒動いても、そこに関しては変わりません。負担は違いますけどね」

「なるほどね……連続発動もできないし、長時間の使用も無理、と。それじゃあ、フィーネ中尉はいざというときの切り札ね」

「ネウロイ相手にはそう強力でもないんですが。ストライカーの加速はできないし、機関砲弾やミサイルは放たれた瞬間に通常の速度になってしまいます。ネウロイは弾丸を撃ってくれる訳でもありませんから」

「いや、全然強いと思うけど……」

「私にとっては、『50秒』とあだ名が付く程の技術がある方が嬉しいんです」

呆れたような言葉にフィーネが微笑むが、その能力を知った上での言はジャニスにとって謙遜にしか聞こえていなかった。

「皆さん、わかってもらえましたか?私の固有魔法について」

「ええ。手間をかけさせたわね、フィーネ中尉。カニンガムも」

「お気になさらず」

フラムの返事に、グロックを制服の中に仕舞ったカニンガムが頭を下げる。

「……では、私はこれで失礼しますね。少々やりたいことがありまして」

それを見ていたフィーネが、ふうと一息ついてから改めて全員に言う。

「別にいいけど、何を?」

フラムが聞き返すと、ウィンクと笑顔とともにフィーネが勢いよく答える。

「1時間ほど昼寝です!」

あまりにも力強い返答に加え、颯爽と去っていくフィーネの後ろ姿に6人は何も言い返せず、数分間立ち尽くしていた。




今回はフィーネちゃんの能力紹介回となってしまいましたが、やはり時間操作系の能力というものは強力ですよね
ただ本人の弁の通りネウロイ相手には効果が薄いため、他の面での活躍をさせていきたいと思います
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