SW2020 スペリオルウィッチーズ   作:グリーンベル

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本作のタイトル「スペリオルウィッチーズ」は、本部隊の通称です。登場の機会はあまり多くないと思いますが。


第1話 はじめまして 

どこか白っぽく澄んだ空から、燦々とした太陽が照らす長い滑走路に、一機のティルトローター機が降り立った。機体後部のハッチがゆっくりと開き、その中からバッグを持った少女が現れる。

「うっひゃー……寒いわねー、ココ」

パイロットに別れを告げてティルトローター機から降り、金のショートヘアを揺らしながら、少女が呟いた。彼女の名はジャニス・ボイド。リベリオン空軍所属のウィッチで、今日付けでここ、扶桑の北海道に位置する千歳基地へと配属されたのだった。

「まー、いっか」

きょろきょろと左右を見渡してからそう言い、ジャニスは一度置いたバッグを肩にかけ、灰色の武骨な建物へと歩き始める。彼女のぱっちりとした青い瞳は、どことなく楽しそうに輝いていた。

 

 

 

ジャニスが灰色の建物に入ると、中には一人の少女がいた。真っ黒な髪をボブカットにしており、人懐っこそうな顔立ちだった。

「……あっ、ようこそ千歳へ!お待ちしていました!」

少し遅れてジャニスに気づいたのか、小走りで近づいてきて、少女は言った。

「ジャニス・ボイド中尉で、合ってますよね?リベリオン空軍の!」

「その通り!アナタは?」

どことなく憧れが入った視線を送ってくる少女に、ジャニスは聞き返した。すると、んんっ、と咳払いをした後に、少女は言った。

「私は、第201統合戦闘飛行隊所属、栂井(つがい)レイ少尉です!ボイド中尉、これからよろしくお願いします!」

ずばっ、という効果音が似合いそうなほど、勢いよく礼をして手を差し出すレイ。その勢いに、少しだけ気圧されるジャニス。

「こちらこそよろしくね、レイ。あと、私のことはジャニスでいいよ。中尉も付けなくていいからね」

「わかりました、ジャニスさん!」

握手したままの手をぶんぶんと振り、レイは心底嬉しそうな表情を浮かべる。こうして、扶桑の人間は武士のように礼儀正しく、慎ましい性格なのだろうというジャニスの予想は、たった数秒で撃ち砕かれた。

「ではでは、早速皆さんのいる部屋にご案内しますね!すぐ着きますので!」

「はーい」

ふんふーんとご機嫌な様子で歩くレイの後ろを、基地の内装を確認しながらついて行くジャニス。清潔感のある床や、シミや錆び一つないクリーム色の壁。数年前にウィッチ用の隊舎として作られた施設らしいが、なかなか快適そうだった。

「こちらです!」

隊員が集まっているという部屋は、本当に入り口から近かった。廊下を歩いて二つほど角を曲がり、しばらく進んだところにあったドアの前で、レイが立ち止まる。

「さぁ、中へどうぞ」

高級そうな木製のドアを開け、手で入室を促すレイ。荷物は持ったままだったが、レイを見るにそこまで規律は厳しくない隊なのだろうと勝手に判断し、ジャニスはそのまま進んだ。

「どもども〜」

手を振りながら部屋に入ると、そこには四人のウィッチが二列にわかれて椅子に座っていた。仏頂面が二人、嬉しそうに笑顔を浮かべているのが一人……どことなく不機嫌そうなのが、一人。

「ついに来ていただけましたよ!ジャニスさん、自己紹介をお願いしますね」

「はーい。えーっと、本日付けでここに配属されたジャニス・ボイドです。リベリオン出身で、階級は中尉。これからよろしくね!」

言い終わると同時にぐっ、と親指を立てると、不機嫌そうな一人を除いて、まばらな拍手が送られた。一応は歓迎されているようだと思い、ジャニスは胸を撫で下ろした。

「じゃあ、みなさんも自己紹介をお願いしますね」

まず私から、と嬉しそうな表情の一人が立つ。暗めの茶髪の三つ編みや、東洋人らしい落ち着いた態度。黒いスーツのような制服も相まって、そのウィッチは大人っぽい雰囲気を醸し出していた。

() (ゆう)(しゅん)です。秦出身です。階級は大尉だけど、仲良くしてくれると嬉しいな。よろしくね、ジャニス中尉」

「うん、よろしく!」

言い終わると、游隼はぺこりと礼をして、恥ずかしそうに座った。そう、扶桑の人間はこういうイメージのはずだった。なぜ隣にいるレイは違うのだろう、と別段気にすることでもなかったが、ジャニスは内心首をかしげた。

「次はフラムちゃんだね。どうぞ!」

「だーかーら!フラムちゃん、って呼ぶの止めなさいよ!何回も言ってるじゃない、ツガイ!」

レイにフラムちゃんと呼ばれたちびっ子が、憤慨して立ち上がる。長い金髪を大きな青いリボンでまとめ、濃紺の制服を着ている。名前からも察せられるが、恐らくはガリア出身だろう、とジャニスは予測した。

「まったく……そこのあなた。ボイド、とか言ってたっけ?」

「うん、そうだけど。何?」

「この私自ら説明してあげるんだから、しっかり、心して聞きなさいよ!わかった?」

妙に偉そうに「フラムちゃん」が言う。初対面の相手になぜここまで威張れるのだろうか。頭にきた訳ではないが、そんな疑問が口から出そうになるのを抑え、ジャニスは頷いた。

「うんうん、素直なのはいいことね。じゃあ、よーく聞いてなさいよ!私の名前はフラム・ローズキャリー!パリ出身よ!階級は大尉。私を呼ぶ時は、敬意を表して『ローズキャリー大尉』と呼びなさい。ま、どうしてもって言うなら『フラム様』でもいいけどね!」

おーっほっほ、と笑い出しそうな勢いで語るフラムちゃん。一般兵がこれをやっているなら只の馬鹿の極みなのだが、ローズキャリーという名前にはジャニスにも聞き覚えがあった。確か、ガリアの有名な貿易会社の名前もそうだったはずだ。なるほど、社長令嬢ということか。ならばこの態度も頷ける、とジャニスは納得した。

「わかった。んじゃよろしくネ、フラムちゃん」

「全然わかってないじゃない!この……」

「お嬢様、落ち着いて下さい。彼女はお嬢様とお会いすることができて緊張しているのです。だから、思わぬことを口走っているのでしょう」

「な、なるほど……そうね!私としたことが取り乱しちゃったわ。ボイド中尉!今のは聞かなかったことにしてあげる。次から気をつけることね!」

こちらに飛んできそうな勢いだったフラムを、逆側に座っていた仏頂面の片割れが冷静になだめた。お嬢様という口ぶりから察するに、メイドか従者なんだろうか?と考えるジャニス。

「申し遅れました、私はマチルダ・カニンガム。ブリタニア出身、階級は大尉です。私の役目はAWACSですので戦闘に参加することはできませんが、精一杯サポートさせて頂きます」

深々と頭を下げるマチルダ。シニョンの黒髪や縁のない眼鏡、深緑の制服が、游隼とはまた違った大人っぽさを感じさせた。何より彼女は、かなりグラマラスだった。

「AWACS付きの部隊とはまた豪華だね。よろしく!」

「最後はアナさん、お願いします!」

「……わかった」

アナと呼ばれた最後の一人が、仏頂面のまま立ち上がった。高い身長に長い銀髪、冷ややかな視線。白いコートも相まって、ジャニスはおとぎ話に出てきた雪の妖精を思い出していた。

「……アナスタシア・P・スリャーノフ。オラーシャ生まれ。大尉。よろしく」

「アナスタシア、ね。んー……長い!なんて呼んだらいいかな?」

「……任せるよ。向こうじゃターシャかナーシャって呼ばれてたけど、レイには」

アナスタシアが指した方を見ると、何故か自信満々な表情のレイが、

「アナさんって呼んでます!」

と一言コメントした。視線を戻すと、アナスタシアは半ば諦めたような笑みを浮かべていた。

「なるほどね。じゃ、私もアナで。これなら短いし」

「……やれやれ、困ったね」

呆れたように笑いながら肩をすくめて、腰を下ろすアナ。自己紹介の淡白な喋り方や表情から最初は無愛想な人物かと思ったが、案外悪いやつでもないのかもしれない、とジャニスは思った。

「さて、今日は出撃もありませんし、ジャニスさんをお部屋に案内してきますね!」

「解散ってことでいいかな」

「はい!」

アナへのレイの軽快な返事を合図に、4人はぞろぞろと席を立った。

「ジャニス、レイと同じ部屋なんでしょ?今度遊びに行かせてもらうね」

「うんうん!他のみんなも来ていいからね〜」

游隼に手を振りながらジャニスが言ったが、アナは「すぐ行くのは遠慮しとくよ」と告げ、フラムはジャニスの方を睨み、カニンガムは礼をして去っていった。

(「慣れてくのには、ちょっと時間がいりそうかな……」)

何故か楽しそうな笑顔を浮かべているレイの所に行きながら、ジャニスは密かに思った。




実は何話かストックがあるので、できれば1週間か2週間に1話投稿していきたいなと思ってます。他の方々のように短いスパンで投稿していきたいのも山々なのですが、ゆっくりと待っていただけると嬉しいです。(2話のみこの後9時に投稿します。
ちなみに、この部隊の各キャラクターの名前にはそれぞれに元ネタとなる作品があります(アナスタシア以外)。元ネタがわかり次第、この作品の感想欄なり僕のTwitterアカウント(@Greenbe70416327)に送りつけるなりしてくださると僕が嬉しいので、どうぞよろしくお願いします。
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