その日の空は雲が無く、きれいな満月が大地と2人のウィッチを照らしていた。連なる木々や小高い丘の輪郭がくっきりと浮かび上がった、昼間のような明るさだった。
『レーダーサイトからのデータによれば、そのエリアにネウロイの反応があったようです。こちらに反応はありませんが、それらしき物体は視認できますか?』
「うーん……これと言って、変なものは見当たりませんね。ネウロイも居なさそうですよ」
背の高い木の天辺に触れそうな高度まで降り、周囲を見回してレイが言う。
「こっちも同じく。カニンガムの方に反応が無いんなら、もう逃げたか、あり得ないとは思うけど誤情報だったんじゃないの?」
レイの上空500mほどの高さで、周囲を確認しながら游隼が言う。2人の報告に、ふむ、と声を漏らすカニンガム。
『その可能性が高そうですね。とりあえず、怪しい物体があれば報告をお願いします』
「了解です!じゃあ、もうちょっと探しましょうか」
上昇してきたレイに、首肯を返す游隼。ふと、何かを発見したのか、開けた土地の方向に飛んでいく。
「そうだね……ん?何だろう、あれ」
「なんですか?怪しいものですか!?」
游隼と並んで飛びつつ、正面の空き地に目を凝らしながら、何故か少し嬉しそうに言うレイ。
「いや、何か建物があったから」
「んんー?……あぁ、アレは多分、牛舎ですね。でも、ボロボロだ。ネウロイに攻撃されたんでしょうか」
土地の片隅に、ほぼ平らに近い三角形の屋根の建物があった。塗装が所々剥げていたり屋根に穴が空いていたりと、損傷がそれなりに激しくはあったが、原型は保っていた。
『そのようですね。以前はここも一つの牧場だったようですが、ネウロイの影響で管理者が離れてしまったのでしょう』
「牛舎って、あの、牛が入る部屋みたいなのがいっぱいある、アレ?」
「そうですよ。生で見たことないんですか?」
さも見たことがあるのが当然であるかのようにレイが言い、游隼が首を横に振る。
「テレビでなら見たことはあるけど、牧場に行ったこと自体はないよ、実家の近くにも無かったし。よく知ってたね」
「北海道にはいっぱいありますから。小学校で乳搾り体験をする地方があったりもしますし、牧場の知識はそれなりにあると思いますね」
「じゃあ、アレは?」
なぜか誇らしげに言うレイ。へえー、と関心したように頷いた游隼が、牛舎の右隣にあった塔のような建物を指さす。縦に細長いレンガ作りの塔を見て、今度はレイが声を上げた。
「おぉー!あれはサイロといって、牧草の貯蔵庫みたいなものです。でも効率が悪いとかで、最近は結構数が減ってるんですよ……あんなにきれいってことは、こっちは狙われなかったみたいですね。あと、うちの近くにあったのはただの円柱形だったんですけど、これみたいに屋根が丸いタイプもあって、それは……」
『栂井少尉。少尉の知識があるのはわかりましたが、ネウロイらしき物体は確認できませんか?』
「あー……はい。他にも建物がありますけど、やっぱりそれらしい物は何もないです……」
カニンガムの若干厳しめな物言いに、マシンガントークを止め、しゅんとして周囲の状況を確認するレイ。
『そうですか、了解しました。お2人とも、今日の哨戒はこれで終わりにしましょう。これ以上の成果は見込めないと判断します』
「まあね。じゃ、帰るとしますか」
「はい!」
2人が基地に帰った数時間後の朝、フラムとレイが食堂で話していた。
「そういえばツガイ、昨日の夜出撃したんでしょ。どうだったの?」
紅茶の入ったティーカップを置き、フラムが聞く。
「うーん……反応はあったみたいなんだけど、何も見つからなかったんだ。カニンガムさんも見つからないって言ってたし、そのまま帰ってきたよ」
「そうそう。雲がなかったから簡単に見つけられると思ったんだけど、なんの収穫もなし」
せっかく頑張って起きたのに、とぼやくレイの前にピザトーストを置き、自分も会話に参加する游隼。
「あったものと言えば、古い牧場ぐらい?」
「ふぉう!んぐ……そう、ありました!」
ピザトーストを飲み込んで喋りつつ、游隼に同意するように指をさすレイ。
「そこの牧場、なんと……サイロがあったんですよ!」
「「サイロ……!?」」
溜めを挟んだレイの言葉に、既に朝食を食べ終わって食卓から離れていたジャニスとアナが反応する。
「随分物騒なものがある牧場だね……いや、実は牧場に偽装した発射施設だったとか?ありえないかな」
「でも、オラーシャでは鉄道に偽装した発射装置も作られてる。可能性はゼロじゃない」
「実は、ネウロイの進行を予知していた扶桑政府が秘密裏に作った施設だったりして……」
「……とんでもないものを発見してしまったのかも」
小声で何事かを囁きあっているアナとジャニスを横目で見ながら、フラムが聞く。
「で、何よそれ」
「簡単に言うと、牧草のタンクかな。で、ついでに発酵させて、牛が食べやすいようにするの」
「ふうん……まあいいわ、今日の夜も忘れないようにしなさいよ」
「うん!」
「行くわよ、カニンガム」
「はい、お嬢様」
レイの返事を聞いて椅子から立ち上がり、カニンガムと一緒に食堂を出るフラム。柔らかな日差しが差し込む廊下を歩いていると、カニンガムが口を開いた。
「お嬢様、例の日までもう一月を切りましたが」
「……そういえばそうだったかしら。やる事は去年と変わらないのよね?」
カニンガムの言葉に、あからさまに嫌そうな表情で聞き返すフラム。
「はい。しかし、スリャーノフ大尉とボイド中尉はあの日よりも後に当基地に配属されています。1週間以内に資料が届くそうなので、届き次第、再び全体への説明の機会を作りましょう」
「広報のためとはいえ……ちょっと苦手なのよね、アレ」
ため息混じりに言うフラムに、カニンガムが無表情のまま告げる。
「ひいては未来のためです。それに、
「……そうね、いい提案だわ。そうさせてもらいましょうか」
カニンガムの提案に、フラムが意地の悪そうな笑顔を浮かべる。それと同じタイミングで少し離れた食堂にて、レイの説明を聞いても未だに別のサイロの話をしていたアナとジャニスの背中に、悪寒が走っていた。
「……なんだか」
「嫌な予感がする……」
「昨日の夜、反応があったのがここら辺なんだっけ?」
その日の昼、昨晩レイと游隼が訪れた地点に、ジャニスとフラムが哨戒に来ていた。夜とはうってかわって、空は雲に覆われていた。
『はい。現在もネウロイの反応はありませんが、何らかの異常があれば発見次第報告をお願いします』
「任せなさい。もし見つけても倒しちゃっていいのよね?居れば、の話だけど」
背の高い針葉樹林を見下ろしながら、悠々とフラムが言う。
『ええ。しかし、くれぐれもお気をつけください。相手はネウロイです。どんな手を使ってくるかわかりません』
「そうは言ってもねえ。まあ、何かないか探してはみるけどさ」
それから10分ほど、2人が周囲の林や丘をくまなく捜索したものの異常は見当たらず、林の上空で合流した2人が互いの成果を確認し合うも、吉報は返ってこなかった。
「うーん……この辺は本当に何もなさそうね」
「地中に潜ったような痕跡も出現したような痕跡も無し、となると、残ってるのはレイが言ってたあの牧場ぐらいかな」
ジャニスが開けた土地に目をやり、フラムが共に飛ぶ。十数時間前にレイと游隼が訪れた場所は、夜と何も変わらず寂れていた。
2人が、ボロボロになった牧場を見下ろして言う。
「あの建物、中が気になるわね……」
「私が降りるよ、離陸も早いし」
『少尉によると、その平坦な建物が牛舎だそうです』
「なおさら中を見てみなくちゃ!」
「じゃあ、私は周囲の警戒をしておくわね」
ゆっくりと下降し、牛によって踏み固められたであろう草原に降りるジャニス。白い柵に腰を預け、ストライカーを片足ずつ脱いで立てかける。一緒にイコライザーと給弾パックも下ろし、ほぼ素手の状態で牛舎に向かう。
「おじゃましまーす……」
鍵の空いていた扉を開け、恐る恐るという風に牛舎の中に入るジャニス。曇り故か屋根の穴から差し込む光も少なく、牛舎の中は薄暗い。多目的ゴーグルの横についていたライトで足元を照らし、牛舎の中を見回しながら歩くジャニス。
「うーん……何もいないよ。死骸っぽいのもない。ネウロイって、人以外は襲わないんだったっけ?」
牛どころか生命の気配すらない静かな牛舎の中で、ジャニスが独り言をつぶやいているように話す。
『ええ、危害を加えてこなければ襲わないはずよ。基本的に野生動物は逃げ出すから、ネウロイによる家畜の被害もあまり無いらしいわね……死骸すらないってことは、元の牧場主がうまく逃げさせられたのかしら』
「そうみたい。エサっぽいものも残ってないし、どこもかなり綺麗だから、早々に逃げたみたいだね……ん?」
『どうしたの、ボイド』
牛舎の真ん中あたりまで確認を終えていたジャニスが、入ってきたのとは反対側の扉の方向に振り向きながら声を上げた。フラムもそれに反応し、姿は見えずとも牛舎のジャニスがいるらしき方に目をやる。
「いや……何か音が聞こえた気がして」
『油断しないようにしなさいよ。こっちからは見えないけど、小型でもいるかもしれない』
「わかってる」
ジャケットの内側のポケットから、M1911A1拳銃を取り出すジャニス。祖母ことジェニファー・ボイドが現役の時代に使用しており、ジャニスがリベリオン空軍に入隊した時にプレゼントとして渡された宝物だった。
M1911を構えながら、扉の右横の大きな柱にじりじりと近づくジャニス。そこだけは、唯一視線が通っていなかった。物音の正体はそこにいるのだろうとジャニスは踏んでいた。
「そこっ!……って、何もないじゃん!」
両手で拳銃を構え、勢いよく飛び出したジャニスだが、柱の影には何もなく、壁の一部が壊れていただけだった。ジャニスが聞いた音とは、隙間風の通る音だったのだ。
「……あー、こちらジャニス。結局、牛舎内には何もなし。音も風の音だったみたい。ゴメンね」
『ハァ……全く、焦って損したわよ。早く戻ってきなさい』
「はいはーい……そうだ、こっちには何かないのかな〜、っと」
閉じられていたもう一つの扉を開け、その先の風景に目をやるジャニス。が、少し行ったところに林があるだけで、動くものといえば風に揺れる枝葉くらいだった。
「うーん、無いかぁ。今度は外通ってみよ」
牛舎の右側に回り込み、ストライカーの立て掛けてある柵の方、つまり入ってきた扉の方向へと歩くジャニス。上空には浮遊しているフラムが、横にはレンガづくりのサイロがあったが、やはり目新しいものは無いのだった。
「これってさぁ、本当にミサイルサイロじゃないのかな。巧妙に偽装されてるだけだったりしない?ちょっと確かめてみない?」
「そんな訳ないでしょ。それに、もし本当にこれがミサイルを撃つ設備なら、円錐形なんて撃ちづらい形の屋根なんて付けないでただの蓋にするでしょうに」
まだ夢を諦められていないジャニスに、フラムが冷静に突っ込む。それを聞いたカニンガムが、ハッと息を漏らした。
『お嬢様、今なんと?』
「いや、これがミサイルサイロな訳ないでしょって話よ。そんなに気になった?」
『いえ。その後の、屋根の形についてです』
「ん?円錐形の屋根なんて付けないでしょ、って」
『……お2人とも、直ちに警戒してください。昨晩栂井少尉が言っていたそのサイロの屋根の形は、
「えっ!?」
「ボイド!さっさと上がりなさい!」
カニンガムの言葉で、立ち止まってサイロを見上げたジャニスに、鋭くフラムが言う。逡巡も束の間、ジャニスが再びストライカーの置いてある柵へと走る。
「……うん、わかった、何かあったら援護よろしく!」
「どういうつもりか知らないけど、遠慮なしでいかせてもらうわよ!」
フラムが機関砲を構え、円錐の中心部に向けて短く掃射する。放たれた機関砲弾は、黒い屋根が命中の直前に大きく形を変えたことによって、サイロの奥にある林へと落ちていった。
『お嬢様、お気をつけください。ネウロイの反応が出現しました』
「そんなの……見ればわかるわよ!」
驚きを隠しきれないのか、荒い語気で答えるフラム。その目の前では、サイロの屋根だった真っ黒な物体がスライムのようにぐにゃぐにゃと変形し、中へと落ちる様に沈み込んでいった。
「何よ、今更隠れるつもり?」
「フラム!ごめん、待たせた!」
野に置かれていた状態から準備したにしてはかなりの速度で離陸したジャニスが、フラムの横に並ぶ。2人の正面には、屋根だけがきれいに無くなり、ただの円柱と化したサイロがあった。
「あれの中に屋根が落ちてったの?」
「ええ。多分、あのネウロイは擬態できるタイプね。色々なものになりすまして南下して来て、やっと発見されたって感じかしら」
「なるほどね。レーダーに引っかからないルートで来たのか、ジャミングを調整してきたのかはわからないけど、また厄介なのが来たねぇ」
「全くね……カニンガム、あんなタイプのネウロイが今まで北海道で出現したことがあるか、調べられる?」
『既に終えています。北海道では初のようですが、3週間ほど前から、似た性質のネウロイが数回清北部に出現しているとのことです』
「新種が発生したのかな?でも、同じ地域に何度も似た個体が出ることはそう多くないし……」
「とにかく、今は目の前の相手を倒すわよ!」
「そうだね!」
眼前のサイロに向けて、油断なく機関砲を構えるジャニスとフラム。サイロ自体の高さは6mほどしかないので、2人は左右に別れつつ上昇し、内部をギリギリ狙える角度に移行する。
「一気に仕留めるよ!」
「わかってるわ!」
外に出ようとするでもなく、円筒の中でぐにゃぐにゃと蠢くネウロイに、2人が同時に機関砲を斉射する。音速を超える速度で飛来した機関砲弾が命中した瞬間、ネウロイが空に向かって無数に棘を生み出し、剣山のような姿に変わった。
「わっ!?」
一部の棘が自分たちと同じ高さまで伸びてきたことによってジャニスが体勢を崩したが、すぐに立て直して攻撃を再開する。ネウロイは次々に棘を生み出すものの、再生が折られる速度に間に合わず、徐々に平らな面が見え始める。
「……あっ、見えた!コア!」
サイロ内に広がっていた底部の中心から、赤い光が漏れ出す。すぐに再生した棘によって隠されてしまったものの、それはコアの光に間違いなかった。2人がここぞとばかりに集中砲火を加え、棘を次々に折っていく。
「いただき!」
完全にコアが丸裸になった瞬間、フラムが狙い澄ました一撃を叩き込む。陶器が砕けるような音と同時に、ネウロイ全体が真っ白な光に包まれ、空気に薄れるように消えていった。
『反応の消滅を確認。お2人とも、お疲れ様でした』
「なんというか……思ったより楽に倒せたね」
肩に機関砲を担ぎ、フラムと並ぶジャニス。口調は普段と変わりないものだったが、視線は依然サイロの中に向けており、警戒を続けたままだった。
「そうね。でも、謎が残ったわ。あんなに自身の形状を変形させられるネウロイなんて聞いたことがないもの。しかも、あんなに柔軟に」
同じくサイロの中を見ていたフラムが、思索を巡らせるように顎に手を当てる。
「毎度のことながら、不思議な敵だよ……ん?」
「どうしたの?って、ちょっとボイド!危ないわよ!」
「大丈夫大丈夫、もう倒したんだから」
ふと、ジャニスがサイロの中へと降下を始めた。慌てたフラムが静止するも、まるで気にしていない様子だった。
日光にさらされた故か枯れてしまった牧草の山の上に、灰色に染まった部分があった。ストライカーによって牧草が巻き上がる中、直接変色した部分に触れないようにしながら牧草の束を掴み取って上昇し、しげしげと観察するジャニス。
「これは、腐ってるってわけじゃなさそうだね」
「そんなの触るんじゃないわよ、何かあったらどうするの?」
汚いものでも見るような目で、ジャニスの持った束を見るフラム。
「何もないよ、直接触ってるわけじゃないんだし。でもさ、この牧草がなんでこんな色になってるのか気にならない?」
「それは……調べないとわからないでしょ」
「だよね。だから、持って帰って調べてもらおうよ。もしかしたらネウロイの影響かもしれないし、あのネウロイのこともわかるかも?」
『私も中尉の意見に賛成です。ネウロイとの直接的な接触があった物体は調査を行う必要性がありますので』
「ほら、カニンガムもこう言ってるよ」
ジャニスが、牧草を指揮棒のようにフラムに向ける。カニンガムの加勢に、渋々という風に首を縦に振るフラム。
「まあ、別にいいけど……」
『では、陸軍に回収の要請を行います。直接基地に持ち帰る必要はありませんよ、中尉』
「あ、そうなの?なぁんだ」
どこか残念そうに言いながら、牧草の束をサイロ内に投げ捨てるジャニス。
「周囲に反応も無いし、今日の哨戒はもう終わりで良さそうね」
「それじゃあ、帰ろっか」
「ええ」
ジャニスとフラムが、擬態ネウロイを撃破した日の数日後のこと。INRC(International-Neuroi-Research-Center)こと、国際ネウロイ研究所から届いた報告書を読んで、カニンガムはわずかに眉をひそめていた。
「なるほど、水銀ですか」
その内容とは、牧草に付着していた物体は水銀であり、あのネウロイが高度な柔軟性や変形能力を有していたのは体が水銀で出来ていたからではないか、というものだった。
ネウロイは万物を吸収して自分のものにでき、その上自己進化も可能だ。だとしても自らの天敵である水を吸収せずに、進化の過程で例のネウロイのような柔軟性を確保したと考えるには、期間の前後における出現個体の傾向や数などからみても無理がある。
では、水銀なら?金属でありながら、常温で液体と化して水のように振る舞う性質を持った物体ならばどうだろうか。ネウロイ自身には影響を及ぼさず、更にはその性質を元にして柔軟な活動を行うこともできる。
「確かに、筋は通っていますが」
しかし、その場合にはまた新たな疑問が生まれる。「ネウロイがどうやって水銀に接触・吸収したのか」ということだ。
最初に例のネウロイが表れたのは、清北部の、一般人の立ち入りが禁止されていた地域だった。森林で木に同化していたネウロイを、魔眼を所有していたウィッチが発見。柔軟な肉体を活かして逃亡を図ったようだったが、撃破。その場には何も残らず、ただの特異な一個体として処理されたという。
1週間後、再びその地域に同型ネウロイが出現。巨岩に扮していたネウロイを、前例と同じウィッチが発見、撃破。更に2週間後、またもや同地域に同型ネウロイが出現し、撃破された。
清は水銀の原料となる辰砂の鉱山や、自然水銀の鉱山を所有している。ただ、そのどれもが清南部に位置しており、例のネウロイが出現した地域からは遥か遠くにあったのだ。もし南部でネウロイが(なんらかの理由により)水銀を得、同地域で暴れていた、というのなら納得はできよう。だが、そうではないのだ。
「……ネウロイに水銀を与えた者が居る、ということなのでしょうか。いや、それは考え過ぎですね」
それ以外に理由が見当たらないとはいえ、自分の口を突いて出た突拍子もない推察を、自身で否定するカニンガム。
「しかし、何故あの個体だけが水銀を排出したのか。単にネウロイ化が進行していなかっただけなのか、はたまた別の理由で……今は、考えるだけ無駄ということですかね」
そうひとりごち、書類を机に置くカニンガム。一つ溜息をついた後、縁のない眼鏡を外し、マッサージをするように目元を揉みほぐす。
「全く、厄介な敵」
カニンガムの言葉は、虚空に消えていった。
今回、冒頭で牛舎とサイロが出てきましたが、皆さんはこれらの2つの実物を見たことがあるでしょうか。道産子ならきっと共感していただけると思いますが、北海道ではちょっとした旅行等で都市部から離れた道を通ると大体見かけます。廃牧場は流石にそう多くないですが、一度か二度、見たことがあります。もし見たことがない皆さんがコロナ騒動が落ち着いて北海道に旅行に来ることがあれば、ぜひ探してみてください。