パースさん進水日ということで、進水日記念の短いお話です。
こと。私のことに関して、私の提督はとてもわかりやすい。
元々、嘘の下手な人だと、知っている。いつも真面目で、正直で、律儀で、とにかく真っ直ぐで。そんなところを、私はいつも、可愛らしく思っている。愛おしいと思っている。
嘘の吐けない提督は、だからいつも、ただありのままに、私を愛してくれる。初対面でプロポーズされるなんて、そんな普通じゃ考えられないような出会いをしたけれど。あなたが最初から、一つも、噓を吐いていないことは、今の私がよく知っているわ。
……そう、だから。嘘の吐けないあなたは、今日もとても、わかりやすい。
「進水日おめでとう、パース」
かつての私が、この身を海に浮かべた日。人で言えば、誕生日にあたる日。そんな一日の始まりを、彼は飾らない言葉と、ありったけの笑顔と、優しいキスで、告げてくれた。私の方が、驚きと喜びで、面食らってしまったくらいだ。
「――ありがとう。ふふ、そういえば、今日だったわね」
溢れる愛しさに任せて、私が頬を緩めて。それに、彼もまた、表情を綻ばせた。
思えば、その時からだった。朝食の席、午前の執務、昼食休憩、午後の演習、そして執務後のティータイム。そのどれも、提督は私を見つめては、そわそわしていた。宝物を見つめるようないつもの瞳に、期待と、願いと、ほんの少しの悪戯心が、見えていた。
ふふ。嘘が苦手なあなた。だから、私には、あなたの考えていることが、手に取るようにわかるわ。何か
大好きな、あなたのことだもの。私には、何だってわかってしまうわ。
……でも。でも、それはきっと、あなたも同じよね。
「なあに、提督?」
ほんの少し、意地悪な心持で、私は提督に尋ねるのだ。目が合うたび、彼が微笑むたび、私の愛おしさが溢れるたび、その視線に応えて、尋ねる。何でもないよ、と提督が首を振るたび、隠しきれていない嘘に、つい笑ってしまう。あなたを見つめるたびに、微笑んで、目を細めて、頬を緩めて、唇を綻ばせて。
私のことが大好きなあなただもの。きっと、私があなたの企みに気づいていることも、お見通しだったはず。
そういうわけだから。もしかしたらこれは、サプライズとは、言えないのかもしれないわね。お互い、隠し事をするには、少し器用さが足りないもの。
だからこそ。私は今日も、明日も、これから先も、ずっと。真っ直ぐなあなたの愛に、言葉に、微笑みに、素直な私で応えるわ。
「改めて、進水日おめでとう、パース」
特別な一日の終わりに、二人の特別な時間。あなたの気合が滲み出た、特別なディナーを前に、私はまた、我ながらだらしなく、相好を崩す。私にとって、あなたとの毎日は、掛け替えのない、特別なものだけれど。今日は一段と、そんな風に感じるのだ。
「ありがとう。……知らなかったわ。誕生日を祝われるのは、こんなに、嬉しいことなのね」
私の言葉に微笑んだ提督が、咳払いを一つ。今日一日、見てきたのと同じ。愛おしい輝きに、悪戯の色が混じっている。彼は後ろ手に、何かを隠している。
「それで、パース。君に、贈り物があるんだ」
「まあ、何かしら。楽しみだわ」
あなたは、私に何を贈るというのだろう。その、この身を包み込むほどの愛以外に、何をくれるというのだろう。それが、今は楽しみで仕方がない。
ええ、そうね。だからこれは、やっぱり、サプライズだわ。
微笑むあなたを、ただ、見つめている。今、この時、私はすでに、あなたが愛おしくて、堪らなかった。
パースさん…好き…