メ ン タ ル ヘ ル ス 秒 読 み ド ク タ ー   作:pilot

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つかれたかって?
つかれたにきまってんだろ(理性0)


第1話

なにもない。

体力も、金も、気力も、家族も、体力も、まともな健康も、経験も、記憶も、何もない。

何もないがある。

もうなにかわからん

 

何度理性回復剤を流し込んだ?

頭がいたいのはもういつものことだ。

寝ても覚めても頭痛、頭痛、頭痛。

いけどもいけども頭痛。

いっそ寿命も縮めてくれれば苦しみが短くなるかもしれないのに。

 

どうしたって以前の私はここまで働き者だったのだろう。

私がいくら頑張ったって、以前の私は今の私より上を行っていたらしい。

記憶喪失?

違うな、生まれ変わったんだ、前の私と今の私じゃあまるで別人だ。

だのに皆私を通して「私」 を見るんだ。

 

どれだけ身を粉にして働いたって実感がないのに、それでも働かなければという意識だけが先行する。

 

「疲れた?」

 

ああ疲れたさ。とっても、つかれた。

 

「いいや、大丈夫だよ、大丈夫......」

 

真逆の言葉を紡ぐという行為だけはもう達人級だ。

 

銀髪の、狼。あの種はループスというんだったか。

彼女がレッドだったよな。

赤い服装をしてるから覚えやすくて助かる。

秘書にしたのは私だというのに仕事に向き合う時間がながすぎてそれすら忘れかけていた。

スケジュール管理は、終日仕事と書き込むだけでいいからな。

 

そういえば赤いやつには気を付けろとか言ってるやつがいたな。

皆こいつのことを指していたのか?

少しだけできた、次の地獄の待ち時間で私はやっとこの秘書に意識を向けたのだ。

 

突然私は気になった。

コイツが私を今殺さない確証はない。ということに、気づいた。とそのときは思っていた。

落ち着いて考えればそんなもの、突然彼女が私ごときを殺したところでどうなるのかと言われてしまえばそこまでなのだが、溜まりに溜まった疲労と薬物によりそのときの私は大きな陰謀に気づいてしまったかのような気分になっていた。

 

でも私はどうすることもできず、ただ睨むことしかできない。

ああ無力だ。

仮にコイツが私を殺そうとして、私は抵抗することすらできないのだ。

ああなんて嘆かわしいのだろう。

ひたすらに情けない。

 

作戦立案などもうシルバーアッシュにでも任せておけばいいじゃないか。

正式に雇え。協力してやれ。彼はきっと私より大きなリターンを出してくれる。

基地運用はもうアーミヤも十分できるだろう。

戦闘は言わずもがな。

 

ああ!もう私いらないじゃないか!!!バカらしい!アホらしい!!!

殺してくれ!いっそ!

 

「うグググうううウウウうう......」

 

気づけば私は唸っていた。

我ながら末期だ。

表に出してはいけない感情なのはわかっていた。

こんなのが、ロドスの最高責任者の内の一人だなんて恥でしかない。

レッドは私をどう見るのだろうか。

 

ちらりと向こうを見やる。

目が、あった。

純真な目だ。殺しあいの中に身を置いているのに、そんなにもきれいな目をしている。

私の目は寝不足と薬のやりすぎで真っ赤になっていた。

 

そんな目を見て、なんて言葉を出すのだろう。

 

「狼の......真似......?

上手だと、レッド、思う。」

 

静かに、控えめに、でも少し嬉しそうに。

口を開けば、そんな話だ。

ああ、自分の無力さよ。

どうしてこんなにも彼女たちは眩しいんだろう。

 

真似、真似かぁ。

私に真似る資格があるかな。

近付かれて迷惑じゃないかな。

もうとうに、誇大妄想と被害妄想は消えていた。

浅かった。その程度かと聞かれれば、確かに真剣だったはずなのに。

 

もう少しだけ、もう少しだけ、彼女、彼たちのために頑張ろう。私。


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